こんにちは。今回は購入済み未レビューのイヤホンを紹介する「棚からレビュー」企画です。といっても最近は購入後2~3ヶ月くらい、という製品が多く「もう普通のレビューじゃん」みたいな感じでしたので、今回は本当に棚から引っ張り出したイヤホンです(笑)。
紹介するのは「Truthear x Crinacle ZERO」です。昨年登場した「Truthear」ブランドの最初の製品で、いきなりCrinacle氏コラボで質の高いサウンドを低価格で実現し、マニアの間で一気に話題になったイヤホンですね。同社の「HEXA」および「HOLA」のレビューが結構アクセス数も多く、また、最近の低価格中華イヤホンで2DD構成が増えていますが、おそらくその流れを作った製品でもあるため、改めて原点とも言える「Truthear x Crinacle ZERO」を紹介することにしました。
■ 製品の概要について
というわけで、今回は同社のデビュー作である「Truthear x Crinacle ZERO」です。低域用の10mmダイナミックドライバーと、中高域用の7.8mmダイナミックドライバーを搭載。「Truthear」の以降のモデルでも採用されることになるPU(ポリウレタン)サスペンションとLCP(液晶ポリマー)ドームによる複合振動板およびN52マグネットと独自CCAWボイスコイルを採用し、2基のドライバーの組み合わせにより、臨場感のある低域から中域と風通しの良い高域を実現しています。
本体は高精細のDLP 3Dプリンティングのシェルを採用。シェルはフィルター部分を同時に成形しており、正確に計算された出力により2つのドライバーが最適なパフォーマンスを提供。HRTF特性に沿った優れたサウンドを実現します。
「Truthear x Crinacle ZERO」の購入はSHENZHENAUDIOの直営店、AliExpress店舗、アマゾンテンポで購入できます。価格は49.99ドル、アマゾンでは7,000円です。
シェルはDLP 3Dプリンタによるレジン製でフェイス部分はブルーのラメラメな樹脂を流し込んだパネルを仕様。2DD構成ということでシェルは大きめですがフィットしやすいデザインです。さすがにコンパクトさが特徴でもある「HEXA」と比べるとかなり大きく見えますが、長いステムノズルの設計と開口部の広いイヤーピースの採用しており、しっかり合わせることで耳奥まで装着できると思います。
ステムノズルは結構太めのため、イヤーピースもこの太さに合わせたものが付属します。中華イヤホンのイヤーピースは安っぽいものが多いですが、「Truthear x Crinacle ZERO」に付属のものは使いやすく質感も良い印象です。ただイヤーピースで印象がかなり変わるため、耳に合わず、別のイヤーピースを使用する場合は最適解にちょっと悩むことになるかも知れません。
ケーブルはCIEMに付属するケーブルのようなしなやかな手触りの撚り線でコネクタは2pinタイプ。多少絡まりやすいですが取り回しは良いです。本体部分の埋め込みも浅いため、リケーブルは中華2pinタイプでも問題なく利用できます。
■ サウンドインプレッション
「Truthear x Crinacle ZERO」のサウンドはバランスが良くパワフルな印象で傾向としてはU字方向です。2DD構成らしく低域は力強さがありますが、同時に高域の伸び感もしっかりあるサウンドで、しっかりとしたメリハリ強めのバランスながら一貫した滑らかさも感じさせます。なおこのイヤホンはイヤーピースや再生環境で印象が相当変わる傾向があるのも特徴だったりします。付属イヤーピースがもっともバランス的には優れているのですが、ステムノズルが太いこともあり、一般的に市販されているイヤーピースとは合わないことも多くあります。
ちなみに、昨年この製品が登場し、特に海外のレビュアーの間で非常に高い評価となったポイントは「ほぼ完璧なハーマンターゲット準拠」という点でした。正直なところ、購入後最初に「Truthear x Crinacle ZERO」のサウンドを聴いたときは「そうなの?」と思ったのですが、最初からパワーのあるアンプで鳴らしたため、再生環境での変化が大きく、中音域のフラットさ以上に高域や低域の派手さが目立った印象だったのも理由のひとつだと思います。
ハーマンターゲットというとニュートラルサウンドの代表格みたいな印象がありますが、正確には中音域はフラットなものの、一般的には弱ドンシャリ(緩やかなV字)、最近ではU字といった表現をされるバランスです。そのため、より忠実な傾向の製品の場合、高域および低域は相応に主張があり、再生環境によっては結構派手目のサウンドに感じるかもしれません。しかし「派手なドンシャリ」とは異なり、中音域は大きく凹むことはなく一定の量感でニュートラルさをキープします。ただしニュートラル傾向の低価格イヤホンの場合はこの中音域付近で「粗さ」を感じやすくなるわけですね。その点「Truthear x Crinacle ZERO」については50ドルほどのイヤホンとしては非常に完成度が高く、評価の高さにつながっています。ただし、前述の通り再生環境への依存度が大きいことやイヤーピースで印象がかなり変わる点など、理詰めで作られた製品だけに条件設定がわりとシビア、というウィークポイントはありますね。
高域は「Truthear x Crinacle ZERO」は2DD構成のイヤホンでイメージする印象よりかなり伸びが良く、透明感が高い印象です。しっかりと駆動力を与えることではっきりとした主張が増し、鋭い音も相応の鋭さを持ちます。なお、イヤーピースが合わないと中低域が強調され高域が少し控えめに感じる場合もありますが、逆にそっちのほうが聴きやすいというケースもありそうです(そういった意味でそれぞれの「最適解」を探す必要があるわけですね)。
中音域はフラットかつ見通しの良い音を鳴らします。適度な主張があり凹むことはありませんが、味付けは無くありのままのとを表現する印象。透明度は平均以上で分離も良く奥行きのある定位を実感出来ます。また適度な熱量があり、決して淡泊にならずに余韻も感じられるのも好印象でしょう。ボーカル域は前面で定位するため音場はやや狭く開放的な音ではありません。おそらくスイートスポットをはっきりさせることで質感が損なわれることを避けるチューニングなのでしょう。選択と集中、みたいな音作りですね。その効果もあり50ドル級のイヤホンとは思えない滑らかさをもっています。
低域はミッドベースを中心にエネルギーがあり、パワフルさを持ちます。重低音も適度に存在感がありますが、沈み込みは若干浅く感じるかもしれません。低域については、公開されているf値のカーブでも分かりやすく描かれているとおり、低域方向に200Hz付近までフラットでそこから50Hzまで一気に盛り上がるため、実際に聴いてもミッドベースからサブベースに至る付近はかなり特徴的なエネルギーを持っているように感じます。この低域表現は綿密な計算に基づくものであることは明らかで、単純にドライバーを2基並べただけでは不自然な谷が生まれたり逆にクロスオーバーで籠もったりするだけで「Truthear x Crinacle ZERO」のような感じにはならないでしょう。量感は再生環境、イヤーピース、そしてケーブルで結構変化しますので、いろいろ替えてみるのも良いと思います。
■ まとめ
というわけで、あと数ヶ月でリリースから1年となる「Truthear x Crinacle ZERO」ですが、今思うと改めて同価格帯のイヤホンの中で多少の変化を導いた製品のひとつだろうと感じました。まずはやはり最近の2DD構成イヤホンの復権みたいな流れでしょう。中華イヤホンもハイブリッド全盛になるまでは2DD構成が非常に多かったのですが、一周回って低価格のシングルダイナミック構成でも十分に質の高いサウンドを実現できるようになった現在であらためて2DDで構成する意味みたいなものが模索されているようですね。あとはちょっと意外ですが、実は「Truthear x Crinacle ZERO」あたりから、ドンシャリ系のサウンドも復活の兆し、という流れになったのでは、という気もします。リリース時の海外レビューではハーマン準拠をとにかく評価された「Truthear x Crinacle ZERO」ですが、当時、世間のハーマン類似系のイヤホンがニュートラルサウンドにこだわりすぎている感もあったのに対し、結局は伸びのある高域とパワフルな低域が気持ちいいよね、という側面も実感させた製品でもあったように思います。もし持っていないマニアの方がいらっしゃたらとりあえずは買っておいた方がよいですよ。
次回も昨年購入したイヤホンで「棚からレビュー」の予定です。Crinacle氏つながりかな?(^^;)。
「Truthear」は2022年に登場した深圳の新しい中華イヤホンブランドです。高度な音響設計技術と、DLP 3Dプリンティングによる高精度シェルにより、低価格ながら高品質のイヤホンを相次いでリリースしています。MoondropやSoftearsなどと関係がある企業との情報もあり、同社は科学的で「成熟した」音作りについてのノウハウにより低コストの製品作りを得意としているようです。
同社が最初にリリースした「ZERO」は有名レビュアーのCrinacle氏とコラボした2DDモデルで、そのコストパフォーマンスの高さからマニアの間でも大きく話題になりました。現在までに同社では3BA+1DDの「HEXA」、そして2023年に入り、1DD構成の「HOLA」をリリースしています。
というわけで、今回は同社のデビュー作である「Truthear x Crinacle ZERO」です。低域用の10mmダイナミックドライバーと、中高域用の7.8mmダイナミックドライバーを搭載。「Truthear」の以降のモデルでも採用されることになるPU(ポリウレタン)サスペンションとLCP(液晶ポリマー)ドームによる複合振動板およびN52マグネットと独自CCAWボイスコイルを採用し、2基のドライバーの組み合わせにより、臨場感のある低域から中域と風通しの良い高域を実現しています。
本体は高精細のDLP 3Dプリンティングのシェルを採用。シェルはフィルター部分を同時に成形しており、正確に計算された出力により2つのドライバーが最適なパフォーマンスを提供。HRTF特性に沿った優れたサウンドを実現します。
「Truthear x Crinacle ZERO」の購入はSHENZHENAUDIOの直営店、AliExpress店舗、アマゾンテンポで購入できます。価格は49.99ドル、アマゾンでは7,000円です。
AliExpress(Shenzhenaudio Store): Truthear x Crinacle ZERO
Amazon.co.jp(シンセンオーディオ): Truthear x Crinacle ZERO
Amazon.co.jp(シンセンオーディオ): Truthear x Crinacle ZERO
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Truthear x Crinacle ZERO」のパッケージは以降の製品にも継承される「キャラ絵」タイプです。最近ではこの手のパッケージもほとんど違和感を感じなくなりましたね。購入したのは昨年の秋ぐらいで個人的には仕事が非常に立て込んでいた時期だったため実は年末近くまで未開封だったという説も(汗)。そして説明書の入った薄い箱はパッケージアートのスタンドとしても使える仕様は「Truthear x Crinacle ZERO」から採用され、「HEXA」でも引き継がれていますね。この方法はコストをかけずにオマケを付けるという意味で(要る人にも要らない人にも)良いアイデアだなぁと感心しました。
パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースはシリコンタイプが2種類でS/M/Lサイズ、ウレタンが1ペア、交換用ノズルメッシュ、レザーポーチ、説明書ほか。
シェルはDLP 3Dプリンタによるレジン製でフェイス部分はブルーのラメラメな樹脂を流し込んだパネルを仕様。2DD構成ということでシェルは大きめですがフィットしやすいデザインです。さすがにコンパクトさが特徴でもある「HEXA」と比べるとかなり大きく見えますが、長いステムノズルの設計と開口部の広いイヤーピースの採用しており、しっかり合わせることで耳奥まで装着できると思います。
ステムノズルは結構太めのため、イヤーピースもこの太さに合わせたものが付属します。中華イヤホンのイヤーピースは安っぽいものが多いですが、「Truthear x Crinacle ZERO」に付属のものは使いやすく質感も良い印象です。ただイヤーピースで印象がかなり変わるため、耳に合わず、別のイヤーピースを使用する場合は最適解にちょっと悩むことになるかも知れません。
ケーブルはCIEMに付属するケーブルのようなしなやかな手触りの撚り線でコネクタは2pinタイプ。多少絡まりやすいですが取り回しは良いです。本体部分の埋め込みも浅いため、リケーブルは中華2pinタイプでも問題なく利用できます。
■ サウンドインプレッション
「Truthear x Crinacle ZERO」のサウンドはバランスが良くパワフルな印象で傾向としてはU字方向です。2DD構成らしく低域は力強さがありますが、同時に高域の伸び感もしっかりあるサウンドで、しっかりとしたメリハリ強めのバランスながら一貫した滑らかさも感じさせます。なおこのイヤホンはイヤーピースや再生環境で印象が相当変わる傾向があるのも特徴だったりします。付属イヤーピースがもっともバランス的には優れているのですが、ステムノズルが太いこともあり、一般的に市販されているイヤーピースとは合わないことも多くあります。
ちなみに、昨年この製品が登場し、特に海外のレビュアーの間で非常に高い評価となったポイントは「ほぼ完璧なハーマンターゲット準拠」という点でした。正直なところ、購入後最初に「Truthear x Crinacle ZERO」のサウンドを聴いたときは「そうなの?」と思ったのですが、最初からパワーのあるアンプで鳴らしたため、再生環境での変化が大きく、中音域のフラットさ以上に高域や低域の派手さが目立った印象だったのも理由のひとつだと思います。
ハーマンターゲットというとニュートラルサウンドの代表格みたいな印象がありますが、正確には中音域はフラットなものの、一般的には弱ドンシャリ(緩やかなV字)、最近ではU字といった表現をされるバランスです。そのため、より忠実な傾向の製品の場合、高域および低域は相応に主張があり、再生環境によっては結構派手目のサウンドに感じるかもしれません。しかし「派手なドンシャリ」とは異なり、中音域は大きく凹むことはなく一定の量感でニュートラルさをキープします。ただしニュートラル傾向の低価格イヤホンの場合はこの中音域付近で「粗さ」を感じやすくなるわけですね。その点「Truthear x Crinacle ZERO」については50ドルほどのイヤホンとしては非常に完成度が高く、評価の高さにつながっています。ただし、前述の通り再生環境への依存度が大きいことやイヤーピースで印象がかなり変わる点など、理詰めで作られた製品だけに条件設定がわりとシビア、というウィークポイントはありますね。
高域は「Truthear x Crinacle ZERO」は2DD構成のイヤホンでイメージする印象よりかなり伸びが良く、透明感が高い印象です。しっかりと駆動力を与えることではっきりとした主張が増し、鋭い音も相応の鋭さを持ちます。なお、イヤーピースが合わないと中低域が強調され高域が少し控えめに感じる場合もありますが、逆にそっちのほうが聴きやすいというケースもありそうです(そういった意味でそれぞれの「最適解」を探す必要があるわけですね)。
中音域はフラットかつ見通しの良い音を鳴らします。適度な主張があり凹むことはありませんが、味付けは無くありのままのとを表現する印象。透明度は平均以上で分離も良く奥行きのある定位を実感出来ます。また適度な熱量があり、決して淡泊にならずに余韻も感じられるのも好印象でしょう。ボーカル域は前面で定位するため音場はやや狭く開放的な音ではありません。おそらくスイートスポットをはっきりさせることで質感が損なわれることを避けるチューニングなのでしょう。選択と集中、みたいな音作りですね。その効果もあり50ドル級のイヤホンとは思えない滑らかさをもっています。
低域はミッドベースを中心にエネルギーがあり、パワフルさを持ちます。重低音も適度に存在感がありますが、沈み込みは若干浅く感じるかもしれません。低域については、公開されているf値のカーブでも分かりやすく描かれているとおり、低域方向に200Hz付近までフラットでそこから50Hzまで一気に盛り上がるため、実際に聴いてもミッドベースからサブベースに至る付近はかなり特徴的なエネルギーを持っているように感じます。この低域表現は綿密な計算に基づくものであることは明らかで、単純にドライバーを2基並べただけでは不自然な谷が生まれたり逆にクロスオーバーで籠もったりするだけで「Truthear x Crinacle ZERO」のような感じにはならないでしょう。量感は再生環境、イヤーピース、そしてケーブルで結構変化しますので、いろいろ替えてみるのも良いと思います。
■ まとめ
というわけで、あと数ヶ月でリリースから1年となる「Truthear x Crinacle ZERO」ですが、今思うと改めて同価格帯のイヤホンの中で多少の変化を導いた製品のひとつだろうと感じました。まずはやはり最近の2DD構成イヤホンの復権みたいな流れでしょう。中華イヤホンもハイブリッド全盛になるまでは2DD構成が非常に多かったのですが、一周回って低価格のシングルダイナミック構成でも十分に質の高いサウンドを実現できるようになった現在であらためて2DDで構成する意味みたいなものが模索されているようですね。あとはちょっと意外ですが、実は「Truthear x Crinacle ZERO」あたりから、ドンシャリ系のサウンドも復活の兆し、という流れになったのでは、という気もします。リリース時の海外レビューではハーマン準拠をとにかく評価された「Truthear x Crinacle ZERO」ですが、当時、世間のハーマン類似系のイヤホンがニュートラルサウンドにこだわりすぎている感もあったのに対し、結局は伸びのある高域とパワフルな低域が気持ちいいよね、という側面も実感させた製品でもあったように思います。もし持っていないマニアの方がいらっしゃたらとりあえずは買っておいた方がよいですよ。
次回も昨年購入したイヤホンで「棚からレビュー」の予定です。Crinacle氏つながりかな?(^^;)。
是非、中華イヤホンの値段や音質などでコスパランキングなどやっていただけたらなーって思ってます(^^)w