FiiO x Crinacle FHE:Eclipse

こんにちは。今回も購入済み未レビューのイヤホンを紹介する「棚からレビュー」企画です。
今回は 「FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」です。「FiiO」の2BA+1DDモデル「FiiO FH3」をベースにCrinacle氏とコラボによるチューニングが行われたモデルです。「FH3」は過去にレビューを掲載していますが実はこっちのほうも昨年購入していました。前回からCrinacle氏コラボつながり、ということで(^^;)。

■ 製品の概要について

中国の大手ポータブルオーディオブランド「FiiO」が2020年に発売した2BA+1DD構成のハイブリッドモデル「FiiO FH3」をベースに、海外の有名レビュアーのCrinacle氏とのコラボで2021年末頃に発売されたコラボモデルが「FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」です。購入したのは2022年の・・・たぶん半年以上は経っているかも(^^;)。ちなみに「FH3」も2021年にレビューを掲載しています。
→ 過去記事: 【棚からレビュー】 「FiiO FH3」 100ドル台、アンダー2万円クラスの定番2BA+1DDハイブリッドイヤホンを改めて振り返ってみました。

またCrinacle氏はKZ、Moondrop、SeeAudioなどとのコラボ製品をリリースしており、これらの製品についてもレビューを掲載しています。
→ 過去記事(一覧): Crinacle氏コラボモデルのレビュー

FiiO x Crinacle FHE:EclipseFiiO x Crinacle FHE:Eclipse
FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」の構成も「FH3」同様に、Knowles製のバランスド・アーマチュア型(BA)ドライバーを2基と、ベリリウムコーティング振動板を採用した10mmダイナミックドライバーの組み合わせによるハイブリッドモデルです。搭載されているBAは高域用がFiiO製イヤホンでは定番の「RAB-33518」、中音域用が「ED-30262」を使用しています。FiiOの特許技術「S.TURBO Acoustic Design」による物理的・電気的手法を組み合わせた3wayのクロスオーバー処理により、各音域に渡りスムーズなサウンドを実現しているようです。
FiiO x Crinacle FHE:EclipseFiiO x Crinacle FHE:Eclipse
さらに「FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」では、350Hz以下の低域をより強調した「BIG BASS」チューニングに加え、中音域から中高域についてはCrinacle氏独自の「IEF Neutral Target」に基づいた調整を行っています。
FiiO x Crinacle FHE:EclipseFiiO x Crinacle FHE:Eclipse

FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」の購入はSHENZHENAUDIOの直営店またはAliExpress店舗で購入できます。価格は149.99ドルです。
SHENZHENAUDIO: FiiO x Crinacle FHE:Eclipse ※現在119.99ドルで販売中。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」のパッケージも「FH3」と同様のサイズのボックスですが、パッケージデザインと箱裏面のf値グラフが特徴的です。
FiiO x Crinacle FHE:EclipseFiiO x Crinacle FHE:Eclipse

パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピースはシリコンタイプ3種類(それぞれS/M/Lサイズ)、ウレタンタイプ2種類、クリーニングブラシ、布製ポーチ、ハードケース、説明書など。
FiiO x Crinacle FHE:EclipseFiiO x Crinacle FHE:Eclipse

ブラックの金属製ハウジングはシンプルなデザインながらフェイス部分の波形模様が特徴的。耳にフィットしやすいデザインで装着性も良好です。付属するイヤーピースのバリエーションが多く、合うものを選びやすいのも良いですね。
FiiO x Crinacle FHE:EclipseFiiO x Crinacle FHE:Eclipse

なお、外観上は「FH3」と酷似しており、一見しただけではほぼ同じに見えます。実際の相違点はフェイス部分の波形模様が3本なのが「FH3」で、「FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」は2本になっています。見た目だけだと間違えやすいので、両方持っている場合は注意が必要です(^^;)。
FiiO x Crinacle FHE:EclipseFiiO x Crinacle FHE:Eclipse
付属のケーブルも「FH3」と同じ銀メッキ単結晶銅線のMMCXケーブルで、硬めの被膜で覆われた線材です。見比べるとちょっと硬さが違う気もするのですが、単純に購入時期の違いでそう感じるだけかも知れません。MMCXコネクタを採用していることもありリケーブルは容易なので、好みに合ったケーブルを選択するのも良いでしょう。


■ サウンドインプレッション

FiiO x Crinacle FHE:EclipseFiiO x Crinacle FHE:Eclipse」の音質傾向は中低域寄りの弱ドンシャリ。フラット寄りの印象だった「FH3」と比較すると、「BIG BASS」という表記の通り、低域、特に重低音が強化されており、底から持ち上げるような音場感があります。中高域にもアクセントがあり、主張が増しているようですが、印象としては高域は「FH3」のほうがスッキリと感じるかもしれません。
ベースとなった「FH3」もCrinacle氏の「IEF Neutral」ターゲットカーブと比較すると結構低域が強調されており、ボーカル域などにフォーカスしたリスニングサウンドに仕上げられています。それでも「FH3」がより明るく鮮明さを感じるのに対し、「FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」はニュートラルさを崩さない範囲でさらに低域が強調されています。特に重低音は非常に深く、同時に暗くなりすぎないようにV字方向にメリハリを強めることで、「FH3」とはまた異なったアプローチを取っていることがわかります。改めてどちらのイヤホンも100ドル~級のハイブリッド製品としては優れたパフォーマンスを持ったイヤホンだと実感しました。

高域は伸びやかで明瞭な音を鳴らします。「FH3」と比べ中高域付近により強いアクセントがあり、音量を上げる主張が強くなりますが、全体としては強調された低域とのバランスにより印象としては「FH3」のほうが明るく、「FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」の高域は少し落ち着いた雰囲気になっています。全体のバランスとしては優れており、籠もったり曇ったりする印象は皆無です。いっぽうでハイブリッドらしい(?)別々のドライバーが鳴っていると感じさせる箇所があり、滑らかさという点ではFiiOの上位モデルには及ばないと感じさせるのは「FH3」と同様です。

FiiO x Crinacle FHE:Eclipse音域はニュートラルで癖のない音を鳴らします。よりドンシャリ方向に調整されているため曲によっては若干凹みます。いっぽうで「FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」の中音域は「IEF Neutral」ターゲットカーブに準拠したチューニングが加えられているとされており、より明るくボーカル域の主張は際立つ印象があります。特に女性ボーカルやピアノの高音などの中高域はより前面で鮮やかさを感じさせます。比較すると「FH3」のほうがややウォームな印象で自然な穏やかさがあります。音場は強調された低域と中低域とのコントラストでより広がりを感じさせます。

低域は「FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」によって最も強調された箇所で、その変更を「BIG BASS」に応えるもの、としています。もともと「FH3」も「FH5」などと比べると低域が強調されたチューニングで多少ハーマンターゲット寄りになっている傾向でしたが、「FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」ではさらに重低音が強化されており、より深く底から響くような強さが加わりました。いっぽうでミッドベースは十分な量感を持ちつつも直線的で締まりがあるため過度に膨らむような印象は無く、あくまでニュートラルなイメージを踏襲します。「FH3」はポップスやアニソンなどで女性ボーカルの高音などがより心地よく楽しめる印象でしたが、「FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」はロック、ヒップホップ、EDMなどで低域の響きを楽しみたい方がより好印象を持ちそうです。


■ まとめ

というわけで、購入するだけしておいてレビューをすっかり忘れていた「FiiO x Crinacle FHE:Eclipse」ですが、このタイミングで仕上げてみました。気がついたらこのエディションも発売から1年以上経過していますが、ドンシャリ方向のサウンドに回帰しているような昨今の傾向を考慮すると、発売当時よりトレンド的には近い製品かもしれませんね。改めて当時の海外レビューを覗いてみるとCrinacle氏コラボの傑作とされる「Moondrop Blessing2:Dusk」に対しての比較についての言及が多いのが興味深いですね。まあ、構成こそどちらもハイブリッドですが、内容的や傾向的にはかなり異なっており、同氏は製品のキャラクターをベースにチューニングの方向性を変えているため、この手の比較はあまり意味が無い、ということがこれ以降のコラボ製品でより明らかになっていくわけですね。そういった変化も含めてちょっとだけ以前の製品を振り返ってみるのも楽しいなと思う今日この頃でした(^^)。