こんにちは。今回は「Dethonray Pegasus SG1」です。以前「新製品情報」としてニュースを掲載した製品ですが、以降「グリーン」および「パープル」のカラーバリエーションも追加されており、今回Dethonray社よりEasy Eaphones経由で紹介する機会をいただきました。Dethonray独自の「DPPU」電源システムにより非常にクリーンで透明度の高いサウンドを実現する同社のポータブルアンプ製品のなかでも「ワイヤレス専用」という潔さにくわえ、2種類のファームウェアを入れ替えることで全く事な音色傾向を楽しめるというかなり尖った仕様で、文字通り「玄人向け」のアイテムとして非常に魅力的な製品だと感じました。
■ 製品の概要について
「Dethonray」は中国深圳のオーディオブランドで、DAP製品の「DTR1+」(999ドル)やポータブルアンプの「Honey H1」(799ドル)などポータブル分野でのハイグレードなオーディオ製品を展開しています。
→ 「Dethonray」社Webサイト(dethonray.com)
そして、同社が2022年にリリースした「ワイヤレス専用」ポータブルアンプが「Dethonray Pegasus SG1」です。「Dethonray」の優れたオーディオ設計を踏襲しつつ、「LDAC」や「aptx HD」といったハイレゾワイヤレスコーデックに対応し、Bluetooth入力専用機とすることで399ドルと従来機種より比較的購入しやすい価格設定になっています。
■ 進化した独自開発の「DPPU」 (Desktop Plus Power Unit)
「Dethonray」製品が搭載する大きな特徴のひとつは、自社開発の「DPPU」 (Desktop Plus Power Unit) 電源システムです。サウンドパフォーマンスの忠実度を高めるために設計されたデュアル高密度バッテリー電源を採用し、デジタルおよびアナログ回路の電源を確実に供給します。この電源システムはハイエンドオーディオの高性能プレーヤーとハイパワーのアンプシステムの組み合わせに相当する安定した電源供給によるサウンドをコンパクトな筐体とミニマムな構造で実現しています。
今回「Dethonray Pegasus SG1」向けの新しい「DPPU」アーキテクチャにより、同製品は比類のないサウンドパフォーマンスを実現し、クリーンなバックグラウンドと出力の歪みの抑制を実現しています。
■ 「LDAC」「aptX HD」コーデック対応、「ES9038Q2M」搭載、4.4mmバランス対応。
「Dethonray Pegasus SG1」も高精度の CNC機械加工により精巧に成形された高品種アルミニウム合金シャーシを採用。独自形状のボリュームノブはスムーズで正確な音量調整が可能ですワイヤレス入力専用の「Dethonray Pegasus SG1」は、ハイレゾコーデックの「LDAC」「aptX HD」および「AptX LL」「aptX」「AAC」「MP3」「SBC」各コーデックをサポート。DACチップにはESS製「ES9038Q2M」および専用設計の LPF およびヘッドフォンアンプを装備。ワイヤレスでも「Dethonray」の優れたサウンドを活かすことができます。出力はシングルエンドの3.5mm出力に加えて、バランス接続の4.4mmヘッドホン出力を搭載しています。
■ ファームウェア変更によるDAC/LPFチューニングのカスタマイズに対応
さらに「Dethonray Pegasus SG1」の独自の特徴として、ファームウェアを入れ替えることでDACとLPF回路の設定を変更し、異なるサウンドチューニングを楽しむことができます。専用ファームウェアは現在「Serenade」と「Rhapsody」の2種類が提供されています。
それぞれ、「Serenade」は「Exquisite & Silky(絶妙でシルキーなサウンド)」、「Rhapsody」は「Vigorous & Flamboyant(元気で華やかなサウンド)」という特徴が設定されています。
「Dethonray Pegasus SG1」の購入はAliExpressの「Easy Eaphones」にて。価格は399ドルでカラーバリエーションは「レッド」「グリーン」「パープル」の3色が選択できます(「ブラック」は販売終了)。
AliExpress(Easy Eaphones): Dethonray Pegasus SG1
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Dethonray Pegasus SG1」のパッケージはシンプルはボックスで、内容も本体、充電(およびファームウェア交換)用のUSBケーブル、簡易説明書、保証書。
CNC加工によるアルミ合金製の本体は非常にシンプルなデザイン。前面は電源/ボリュームノブと3.5mmおよび4.4mmの端子、側面は再生/停止と送り/戻しのボタン、ゲイン切替えスイッチ、背面が充電用のUSB Type-C端子と充電状況を示すLEDとなっています。
「Dethonray Pegasus SG1」はワイヤレス専用機でUSB-DACの機能は持っていないため、USB端子には充電マークが記載されていますね。電源を入れると上面の「Dethonray」ロゴ部分がブルーに点灯し、背面のLEDがグリーンに点灯します。充電中は背面のLEDはオレンジになります。
なお、ボリュームは独立で、ペアリングしたデバイス側と本体のボリュームノブは別々に動作します。デバイス側の音量を最大にして、「Dethonray Pegasus SG1」もハイゲインにするとそれなりの音量が取れるため、ある程度は鳴らしにくいヘッドホンでも問題なく使えるでしょう。ただパワーより静寂性や透明性が特徴の機種のため、最大出力が1000mWを超えるような最近のハイパワーな製品に比べると随分と大人しい印象です。逆に敏感なCIEMなどでもノイズのない非常にクリーンなサウンドが楽しめます。
■ ワイヤレス性能について
Bluetoothの接続はスムーズで対応するAndroid端末などで接続すると標準ではLDACコーデックで接続されます。接続性は良好で途切れることなく安定した接続を維持することができました。「ワイヤレス再生品質」では高音質(96kHz固定)とベストエフォートが選択できるのもほかのLDAC対応機器と同様ですね。
開発者向けオプションを確認するとコーデックは「LDAC」「aptX HD」「aptX」「AAC」「SBC」が選択可能でした。なお、電源を入れてからひとつひとつの切替えなどには数秒(通常は2~3秒)程度の開始ラグがあります。アナログ回路を多く搭載するハイエンドなオーディオ機器ではよくあることですが、内部で安定性を重視した設計になっているのがわかりますね。逆にギャップノイズなどの切替ノイズは皆無で同社が売りとしている電源設計の質の高さを実感します。
実際のワイヤレス再生においてもLDACでは24bit/96kHz、aptX HDでは24bit/48kHzでのハイレゾ再生ができることを確認出来ました。
■ ファームウェアの切替えについて
「Dethonray Pegasus SG1」の最大の特徴は前述の通り2種類のファームウェアを入れ替えることで全く異なるサウンドを楽しめる点にあります。DACとLPF回路のチューニングをファームウェアごとに変更することで全く異なるサウンドを提供しようというアプローチですね。
専用ファームウェアは「Dethonray」社サイトの「DOWNLOADS」にリンクがあります。
→ 「Dethonray」社サイト/Downloadsページ
ここで「Wireless AMP」という項目を選択するとGoogle Driveのファイル置き場にジャンプします(表示言語場がEnglishの場合。中国語の場合はBauduのサイトに移動するためご注意ください)。いくつかファイルがありますが、最新のrarアーカイブ(ここでは「Firmware-2022-1018.rar」)のみをダウンロードすればマニュアルも含めすべて入っていました。
rarアーカイブを展開して、Windows環境にて「CH341SER.EXE」を実行してシリアルドライバーをインストールします。「Dethonray Pegasus SG1」はUSB-DACのインターフェースは搭載していませんが充電ポートはファームウェア交換用にシリアル接続は出来るようになっているみたいですね。「Dethonray Pegasus SG1」を本体付属のUSBケーブルでPCと接続し、電源を入れます。
次に同じフォルダの「FlyMcu.exe」を実行します。「EnumPort」メニューでポートを「Free USB-SERIAL CH340」を選択し、画面下の項目を「Reset@DTR Low(<3V),ISP@RTS High」にします(この画面下の項目の変更がマニュアルに載ってなかったような、で一瞬迷いました^^;)。
あとはファイル選択でファームウェアを選んで選択し、「Start ISP(P)」を押せばファームウェア変更が実行されます。入れ替え後はUSBケーブルを外し、いったん電源をOFFにしてから再度電源ONで再起動することでファームウェアが適用されます。
なお、「Dethonray Pegasus SG1」の専用ファームウェアは「Serenade」(セレナーデ)と「Rhapsody」(ラプソディ)の2種類が提供されており、.hexファイルがファームウェアとなります。
標準では「Serenade」のファームウェアがインストールされているようですね。
■ サウンドインプレッション
「Dethonray Pegasus SG1」の音色傾向は非常にニュートラルで、ハイエンドらしいノイズレスな透明感や見通しの良さがやはり最大の特徴として感じられます。特にAmazon Music のUltraHDやLDAC対応のDAPやラディウスのAndroid用アプリ「NePlayer」のようなハイレゾFLACをパススルーでLDACに送る再生環境では通常のワイヤレスアンプと比べても空気の膜をひとつ取り除いたような自然かつ明瞭な音像を確認できました。
「Dethonray Pegasus SG1」はTHD 0.06%、SNR 104dBとスペック上も優れたノイズ特性を持っていますが同社の「DPPU」アーキテクチャはこれらの仕様以上に「静寂性」をもたらしており、その優れた性能はワイヤレスにおいても遺憾なく発揮されいると感じられました。非常に敏感でインピーダンスの低いCIEMなどでも高い透明性を持っています。
そして、「Serenade」と「Rhapsody」という2種類のファームウェアは全く異なる印象を「Dethonray Pegasus SG1」で生み出しています。メーカーの記載では、「Serenade」は「Exquisite & Silky(絶妙でシルキーなサウンド)」、「Rhapsody」は「Vigorous & Flamboyant(元気で華やかなサウンド)」という特徴が設定されています。
出荷時の設定では「Serenade」のファームウェアがインストールされており、この状態での印象は「とにかく穏やか」という感じです。傾向としてはフラットで、音源をありのままに鳴らす、という印象です。個人的にはESS系のDACチップセットはどちらかというとメリハリのある元気な印象で、AKM系はニュートラル、というイメージがありますが、「Serenade」はパワフルなアンプを搭載した最近増えている傾向のポータブルアンプはもちろん、よりESS系のカラーが強い複合SoC(アンプ部分も含むDACチップセット)とくらべても相当大人しく、かといってAKM系の音色とも異なる印象を持っています。確かに「シルキー」と呼べるような柔らかさや滑らかさを感じさせますが、同時にポップスやアニソンなど派手めの楽曲ではちょっと淡泊に感じる方も多いかもしれませんね。とはいえクラシックなど音源をよりじっくり楽しみたい方にはワイヤレスでもここまで出せるのか、と感じさせる実力がありますね。また個人的にはイヤホンや音源の特徴、というか良し悪しを捉えやすく、レビュアー向けとしては結構実用的に感じたりもしました(^^;)。
これに対して「Rhapsody」はよりハッキリとしたサウンドで、「Serenade」とは逆にポップスやロック、アニソンなどのボーカル曲と非常に相性の良いサウンドです。方向性としてはTHX AAAアンプを搭載した「FiiO BTR7」などと同様の方向性のチューニングといえるでしょう。よりメリハリが効いており低域はパワフルで高域は伸びやかさがあり、ボーカルは前面に感じられます。そのため同じボリュームでも「Serenade」より音量が1段階上がったような印象を感じるでしょう。おそらく多くの方が好感するのは「Rhapsody」のほうだと思いますが、「Serenade」と比べると分かりやすい味付けのようにも感じられます。原音忠実か、リスニングサウンドとしての楽しさを求めるか、というアプローチの違いといった感じですね。とはいえ「Rhapsody」のほうも同様の透明感とノイズの少なさを持っており、ワイヤレスにおける質の高さという点では同様であると思います。
■ まとめ
というわけで、実際に「Dethonray Pegasus SG1」を使ってみた印象ですが、ワイヤレス専用という制約はあるものの、用途が合えば300ドル台の価格設定は十分に「アリ」だなと思いました。出力の強さ、駆動力という点で言えば以前から使っている「xDuoo XD05 BAL」のような製品もありますし、適度なパワーと実用的なサウンド、そしてコンパクトさや利便性という点では「FiiO BTR7」は非常にコストパフォーマンスの高い機種と言えるでしょう。しかし「ワイヤレスでの音質」という点に特化すれば、「Dethonray Pegasus SG1」は個人的に聴いた範囲ではDACチップに「ES9038Q2M」あるいは同等品を搭載した製品の中でもトップクラスに優れたサウンドだと感じます。「Shanling H7」クラスになればワイヤレスでもかなり高音質ですが、さすがにポケットに入れて使うわけにはいきません。そういった意味ではギリギリポータブルで普段使い可能な「Dethonray Pegasus SG1」は、確かにユーザーを選ぶ製品ですが個人的には非常に良いと感じました。
「Dethonray」は中国深圳のオーディオブランドで、DAP製品の「DTR1+」(999ドル)やポータブルアンプの「Honey H1」(799ドル)などポータブル分野でのハイグレードなオーディオ製品を展開しています。
→ 「Dethonray」社Webサイト(dethonray.com)
そして、同社が2022年にリリースした「ワイヤレス専用」ポータブルアンプが「Dethonray Pegasus SG1」です。「Dethonray」の優れたオーディオ設計を踏襲しつつ、「LDAC」や「aptx HD」といったハイレゾワイヤレスコーデックに対応し、Bluetooth入力専用機とすることで399ドルと従来機種より比較的購入しやすい価格設定になっています。
■ 進化した独自開発の「DPPU」 (Desktop Plus Power Unit)
「Dethonray」製品が搭載する大きな特徴のひとつは、自社開発の「DPPU」 (Desktop Plus Power Unit) 電源システムです。サウンドパフォーマンスの忠実度を高めるために設計されたデュアル高密度バッテリー電源を採用し、デジタルおよびアナログ回路の電源を確実に供給します。この電源システムはハイエンドオーディオの高性能プレーヤーとハイパワーのアンプシステムの組み合わせに相当する安定した電源供給によるサウンドをコンパクトな筐体とミニマムな構造で実現しています。
今回「Dethonray Pegasus SG1」向けの新しい「DPPU」アーキテクチャにより、同製品は比類のないサウンドパフォーマンスを実現し、クリーンなバックグラウンドと出力の歪みの抑制を実現しています。
■ 「LDAC」「aptX HD」コーデック対応、「ES9038Q2M」搭載、4.4mmバランス対応。
「Dethonray Pegasus SG1」も高精度の CNC機械加工により精巧に成形された高品種アルミニウム合金シャーシを採用。独自形状のボリュームノブはスムーズで正確な音量調整が可能ですワイヤレス入力専用の「Dethonray Pegasus SG1」は、ハイレゾコーデックの「LDAC」「aptX HD」および「AptX LL」「aptX」「AAC」「MP3」「SBC」各コーデックをサポート。DACチップにはESS製「ES9038Q2M」および専用設計の LPF およびヘッドフォンアンプを装備。ワイヤレスでも「Dethonray」の優れたサウンドを活かすことができます。出力はシングルエンドの3.5mm出力に加えて、バランス接続の4.4mmヘッドホン出力を搭載しています。
さらに「Dethonray Pegasus SG1」の独自の特徴として、ファームウェアを入れ替えることでDACとLPF回路の設定を変更し、異なるサウンドチューニングを楽しむことができます。専用ファームウェアは現在「Serenade」と「Rhapsody」の2種類が提供されています。
それぞれ、「Serenade」は「Exquisite & Silky(絶妙でシルキーなサウンド)」、「Rhapsody」は「Vigorous & Flamboyant(元気で華やかなサウンド)」という特徴が設定されています。
AliExpress(Easy Eaphones): Dethonray Pegasus SG1
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Dethonray より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Dethonray Pegasus SG1」のパッケージはシンプルはボックスで、内容も本体、充電(およびファームウェア交換)用のUSBケーブル、簡易説明書、保証書。
CNC加工によるアルミ合金製の本体は非常にシンプルなデザイン。前面は電源/ボリュームノブと3.5mmおよび4.4mmの端子、側面は再生/停止と送り/戻しのボタン、ゲイン切替えスイッチ、背面が充電用のUSB Type-C端子と充電状況を示すLEDとなっています。
「Dethonray Pegasus SG1」はワイヤレス専用機でUSB-DACの機能は持っていないため、USB端子には充電マークが記載されていますね。電源を入れると上面の「Dethonray」ロゴ部分がブルーに点灯し、背面のLEDがグリーンに点灯します。充電中は背面のLEDはオレンジになります。
なお、ボリュームは独立で、ペアリングしたデバイス側と本体のボリュームノブは別々に動作します。デバイス側の音量を最大にして、「Dethonray Pegasus SG1」もハイゲインにするとそれなりの音量が取れるため、ある程度は鳴らしにくいヘッドホンでも問題なく使えるでしょう。ただパワーより静寂性や透明性が特徴の機種のため、最大出力が1000mWを超えるような最近のハイパワーな製品に比べると随分と大人しい印象です。逆に敏感なCIEMなどでもノイズのない非常にクリーンなサウンドが楽しめます。
■ ワイヤレス性能について
Bluetoothの接続はスムーズで対応するAndroid端末などで接続すると標準ではLDACコーデックで接続されます。接続性は良好で途切れることなく安定した接続を維持することができました。「ワイヤレス再生品質」では高音質(96kHz固定)とベストエフォートが選択できるのもほかのLDAC対応機器と同様ですね。
開発者向けオプションを確認するとコーデックは「LDAC」「aptX HD」「aptX」「AAC」「SBC」が選択可能でした。なお、電源を入れてからひとつひとつの切替えなどには数秒(通常は2~3秒)程度の開始ラグがあります。アナログ回路を多く搭載するハイエンドなオーディオ機器ではよくあることですが、内部で安定性を重視した設計になっているのがわかりますね。逆にギャップノイズなどの切替ノイズは皆無で同社が売りとしている電源設計の質の高さを実感します。
実際のワイヤレス再生においてもLDACでは24bit/96kHz、aptX HDでは24bit/48kHzでのハイレゾ再生ができることを確認出来ました。
■ ファームウェアの切替えについて
「Dethonray Pegasus SG1」の最大の特徴は前述の通り2種類のファームウェアを入れ替えることで全く異なるサウンドを楽しめる点にあります。DACとLPF回路のチューニングをファームウェアごとに変更することで全く異なるサウンドを提供しようというアプローチですね。
専用ファームウェアは「Dethonray」社サイトの「DOWNLOADS」にリンクがあります。
→ 「Dethonray」社サイト/Downloadsページ
ここで「Wireless AMP」という項目を選択するとGoogle Driveのファイル置き場にジャンプします(表示言語場がEnglishの場合。中国語の場合はBauduのサイトに移動するためご注意ください)。いくつかファイルがありますが、最新のrarアーカイブ(ここでは「Firmware-2022-1018.rar」)のみをダウンロードすればマニュアルも含めすべて入っていました。
rarアーカイブを展開して、Windows環境にて「CH341SER.EXE」を実行してシリアルドライバーをインストールします。「Dethonray Pegasus SG1」はUSB-DACのインターフェースは搭載していませんが充電ポートはファームウェア交換用にシリアル接続は出来るようになっているみたいですね。「Dethonray Pegasus SG1」を本体付属のUSBケーブルでPCと接続し、電源を入れます。
次に同じフォルダの「FlyMcu.exe」を実行します。「EnumPort」メニューでポートを「Free USB-SERIAL CH340」を選択し、画面下の項目を「Reset@DTR Low(<3V),ISP@RTS High」にします(この画面下の項目の変更がマニュアルに載ってなかったような、で一瞬迷いました^^;)。
あとはファイル選択でファームウェアを選んで選択し、「Start ISP(P)」を押せばファームウェア変更が実行されます。入れ替え後はUSBケーブルを外し、いったん電源をOFFにしてから再度電源ONで再起動することでファームウェアが適用されます。
なお、「Dethonray Pegasus SG1」の専用ファームウェアは「Serenade」(セレナーデ)と「Rhapsody」(ラプソディ)の2種類が提供されており、.hexファイルがファームウェアとなります。
標準では「Serenade」のファームウェアがインストールされているようですね。
■ サウンドインプレッション
「Dethonray Pegasus SG1」の音色傾向は非常にニュートラルで、ハイエンドらしいノイズレスな透明感や見通しの良さがやはり最大の特徴として感じられます。特にAmazon Music のUltraHDやLDAC対応のDAPやラディウスのAndroid用アプリ「NePlayer」のようなハイレゾFLACをパススルーでLDACに送る再生環境では通常のワイヤレスアンプと比べても空気の膜をひとつ取り除いたような自然かつ明瞭な音像を確認できました。
「Dethonray Pegasus SG1」はTHD 0.06%、SNR 104dBとスペック上も優れたノイズ特性を持っていますが同社の「DPPU」アーキテクチャはこれらの仕様以上に「静寂性」をもたらしており、その優れた性能はワイヤレスにおいても遺憾なく発揮されいると感じられました。非常に敏感でインピーダンスの低いCIEMなどでも高い透明性を持っています。
そして、「Serenade」と「Rhapsody」という2種類のファームウェアは全く異なる印象を「Dethonray Pegasus SG1」で生み出しています。メーカーの記載では、「Serenade」は「Exquisite & Silky(絶妙でシルキーなサウンド)」、「Rhapsody」は「Vigorous & Flamboyant(元気で華やかなサウンド)」という特徴が設定されています。
出荷時の設定では「Serenade」のファームウェアがインストールされており、この状態での印象は「とにかく穏やか」という感じです。傾向としてはフラットで、音源をありのままに鳴らす、という印象です。個人的にはESS系のDACチップセットはどちらかというとメリハリのある元気な印象で、AKM系はニュートラル、というイメージがありますが、「Serenade」はパワフルなアンプを搭載した最近増えている傾向のポータブルアンプはもちろん、よりESS系のカラーが強い複合SoC(アンプ部分も含むDACチップセット)とくらべても相当大人しく、かといってAKM系の音色とも異なる印象を持っています。確かに「シルキー」と呼べるような柔らかさや滑らかさを感じさせますが、同時にポップスやアニソンなど派手めの楽曲ではちょっと淡泊に感じる方も多いかもしれませんね。とはいえクラシックなど音源をよりじっくり楽しみたい方にはワイヤレスでもここまで出せるのか、と感じさせる実力がありますね。また個人的にはイヤホンや音源の特徴、というか良し悪しを捉えやすく、レビュアー向けとしては結構実用的に感じたりもしました(^^;)。
これに対して「Rhapsody」はよりハッキリとしたサウンドで、「Serenade」とは逆にポップスやロック、アニソンなどのボーカル曲と非常に相性の良いサウンドです。方向性としてはTHX AAAアンプを搭載した「FiiO BTR7」などと同様の方向性のチューニングといえるでしょう。よりメリハリが効いており低域はパワフルで高域は伸びやかさがあり、ボーカルは前面に感じられます。そのため同じボリュームでも「Serenade」より音量が1段階上がったような印象を感じるでしょう。おそらく多くの方が好感するのは「Rhapsody」のほうだと思いますが、「Serenade」と比べると分かりやすい味付けのようにも感じられます。原音忠実か、リスニングサウンドとしての楽しさを求めるか、というアプローチの違いといった感じですね。とはいえ「Rhapsody」のほうも同様の透明感とノイズの少なさを持っており、ワイヤレスにおける質の高さという点では同様であると思います。
■ まとめ
というわけで、実際に「Dethonray Pegasus SG1」を使ってみた印象ですが、ワイヤレス専用という制約はあるものの、用途が合えば300ドル台の価格設定は十分に「アリ」だなと思いました。出力の強さ、駆動力という点で言えば以前から使っている「xDuoo XD05 BAL」のような製品もありますし、適度なパワーと実用的なサウンド、そしてコンパクトさや利便性という点では「FiiO BTR7」は非常にコストパフォーマンスの高い機種と言えるでしょう。しかし「ワイヤレスでの音質」という点に特化すれば、「Dethonray Pegasus SG1」は個人的に聴いた範囲ではDACチップに「ES9038Q2M」あるいは同等品を搭載した製品の中でもトップクラスに優れたサウンドだと感じます。「Shanling H7」クラスになればワイヤレスでもかなり高音質ですが、さすがにポケットに入れて使うわけにはいきません。そういった意味ではギリギリポータブルで普段使い可能な「Dethonray Pegasus SG1」は、確かにユーザーを選ぶ製品ですが個人的には非常に良いと感じました。