NF AUDIO RA10

こんにちは。今回は 「NF AUDIO RA10」です。前回に引き続き「NF AUDIO」の新モデルですね。6mmサイズのマイクロダイナミックドライバーをシングルで搭載する非常にコンパクトなイヤホンです。3種類のポップなカラーリングの軽くて丈夫なシェルで軽快な装着感を実現しており、バランスの良いニュートラルサウンドを気軽に楽しめる製品に仕上がっています。

■ 製品の概要について

「NF AUDIO」は中国国内ではCIEMメーカーとしても知られる、2014年設立の古株の中華イヤホンのブランドのひとつとです。個人的にも「NM2」「NA2」シリーズは結構お気に入りのシリーズ。前回紹介した「NF AUDIO NA3 ESSENTIALS」も含め、「NF AUDIO」でこれらの製品は「MUSICシリーズ」というラインに含まれるそうです。

「MUSICシリーズ」のラインに新たに加わった「Rシリーズ」の第一弾モデルが今回の「NF AUDIO RA10」です。「Rシリーズ」は「Rules」のイニシャルを冠しており、エルゴノミクス(人間工学)、アコースティック(音響)、アピアランス(外観)において既存のイヤホンのルールを変える製品というコンセプトだそうです。

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NF AUDIO RA10」のドライバーは自社開発の6mm口径マイクロダイナミックドライバー「MCL-6」を搭載。極薄6umの高分子ポリマー振動板とNdFebネオジウム磁気回路を採用し、中剛性で軽量かつ高強度の振動板と最適化された強力な磁場により超低歪みと広い周波数帯域において鮮明なサウンドを実現します。このドライバーユニットはHRTF(Head Related Transfer Function / 頭部伝達関数)カーブに基づいたチューニングを実施しており、ジャンルを問わず重低音から高域まで優れたパフォーマンスを実現します。
NF AUDIO RA10NF AUDIO RA10
NF AUDIO RA10」では非常に個性的な外観デザインを採用しています。NF AUDIOがCIEMの製造で蓄積した膨大なサンプルデータを研究し、軽くて快適な装着感を実現する独自の形状を設計しました。高品質かつ軽量なポリカーボネート素材で構成された3色のバリエーションから選択することが出来ます。また「NF AUDIO RA10」では高品質な「MS42」シリコンイヤーピースを付属。最適なパフォーマンスとともに安全で快適なフィット感を提供します。
NF AUDIO RA10NF AUDIO RA10

カラーバリエーションは「ホワイト」「オレンジ」「グリーン」の3色から選択できます。
NF AUDIO RA10」の購入は国内代理店の主要専門店などにて。
価格はオープンで9,720円前後で販売されています。


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして 伊藤屋国際様 より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

前回に引き続きの「NF AUDIO」製品で、今回も国内代理店の伊藤屋国際より依頼を受けてのレビューとなります。「NF AUDIO RA10」については「グリーン」を選択しました。コンパクトなモデルと言うことでパッケージもより小振りとなっていますが、やはりロゴタイプに凝ったデザインは健在です。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(「NF AUDIO MS42」イヤーピース、XS/S/M/Lの4サイズ)、交換用メッシュパーツ、レザーポーチ、説明書。
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本体はNF AUDIOが多く採用するポリカーボネート製ですが、6mmサイズの小型ドライバーをシングルで搭載するモデルのため非常に小型です。耳の小さい方でも余裕ですっぽり収まるサイズ感ですね。ポップなカラーバリエーションを用意するなどデザイン的にも可愛らしさを意識したものになっています。
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前回レビューした「NA3 ESSENTIALS」と比較するとそのコンパクトさが改めてよく分かりますね。本来「NA3」もこのタイプのイヤホンとしては比較的コンパクトなサイズなのですが比べるととても大きく見えてしまいます。実際「NF AUDIO RA10」の装着性は良好でしっかりとホールドして装着出来ます。
NF AUDIO RA10NF AUDIO RA10
ケーブルは銀メッキ5N OFC線材を採用した2芯撚り線タイプ。芯ごとに薄い透明な被膜で覆われており適度に弾力があり取り回しは良いです。コネクタはカバー形状がqdc互換の0.78mm 2pinタイプですのでこのサイズながらリケーブルも可能です。イヤーピースは小型の本体に合わせて新タイプのシリコンイヤーピース「MS42」が4サイズ付属します。個人的にはXSサイズも入っていたのが有り難いですね。適度に弾力がありフィット感も良好な印象です。ただしイヤーピースがやや短いタイプのため、耳が大きい方の場合長さが足りない場合もありますので、必要において最適なものを選ぶのが良いでしょう。


■ サウンドインプレッション

NF AUDIO RA10NF AUDIO RA10」の音質傾向はニュートラルなバランスで、いわゆるU字タイプのサウンドです。製品説明にもHRTFカーブ準拠とあるとおり、ハーマンターゲットなどの○○ターゲット的なサウンドバランスに寄せた印象ですね。ただし小口径のドライバーの特徴がよく反映されており、中高域は明瞭で軽快さがあり、低域も想像以上に深くアタックもスピード感があります。
ニュートラルで小気味良いレスポンスの良さを感じる良作、といった印象ですが、いっぽうで音場は狭く、低域の厚みや重さといった小口径のドライバーがあまり得意としない部分はある程度割り切った音作りをしています。また刺さりなどの刺激を押さえる柔らか目の音作りなのも特徴的です。フラット方向にニュートラルなサウンドの場合、低価格帯のイヤホンではどうしてもハイグレード製品と比較しての解像感や音像表現などの違い、いわゆる粗さを感じてしまうのですが、「NF AUDIO RA10」はおそらく比較的小音量で気軽に聴くような、あるいは耳にすっぽり収まるコンパクトさを活かして「寝ホン」的な用途も考慮しているのでは、と感じました。ポップな見た目通り、神経質なリスニングはこのイヤホンには無粋かも知れませんね。

NF AUDIO RA10また「NF AUDIO RA10」は15Ω、102dB/mWという仕様ですが、そのスペック以上に鳴らしにくく、本領を発揮するためには相応に駆動力を必要とします。もっともこれも6mmくらいの小口径ドライバー搭載のイヤホンではわりと「あるある」で、有名なところでは「final E3000」のように低価格なのに本気出すのには結構しっかりした上流が必要、という製品は意外と多いですね。「NF AUDIO RA10」はqdcタイプのケーブルでリケーブルも可能ですので、情報量が多い銀メッキ線ケーブルでバランス接続にすることで駆動力を稼ぐ、というアプローチも良いと思います。

NF AUDIO RA10」の高域は明るく軽快さのある音を鳴らします。刺激は抑えられており、聴きやすくまとめられているため見通しの良さという点では同社のほかの製品に比べると差がありますが籠もることは無く自然な印象。適度な解像感と分離がありハイハット等のシンバル音も綺麗に描写されます。全体としてニュートラルなため量的にはほかの音域と同様ですが、印象として若干カマボコ寄りに感じる場合もあります。

NF AUDIO RA10中音域はこの製品が最もフォーカスしている音域と思われます。全体的に味付けのないニュートラルな印象ですが同社の既存のMUSICシリーズの製品に比べてやや前方に定位します。中高域にややアクセントがあり、女性ボーカルの高音なども明瞭感があります。特徴的なのは小気味良い軽快さをもちつつ、自然な柔らかさがあり、派手さを抑えたニュートラルな印象を維持している点。前回の「NA3」にも共通していますがおそらくNF AUDIOの音作りというかチューニング的なこだわりがこの辺にありそうな気がします。音像は自然な輪郭ですが緩くなりすぎず、適度な解像感があり、音数の多い曲でも混雑することはありません。いっぽうで音場の広がりは少なく、奥行きも浅めに感じるため、アコースティックな音源で立体的な音場感を楽しみたい方にはあまり向きません。打ち込み系を主体とした最近の音源を心地よく、比較的小音量で聴くことに適したチューニングです。

低域は量的にはやや控えめで、厚みや重量感こそあまり感じないものの、適度なパンチ力があり、重低音も深さがあります。ミッドベースは直線的で適度に締まりが良く、アタックのスピード感があるため全体の軽快な印象を損なうことなく心地よい低域で中音域を下支えする印象。分離も良く音数の多いEDMなどの音源でも想像以上に楽しめます。またヒップホップなど音数を減らして低域の響きを印象づけるアレンジでも心地よいグルーヴ感を表現できており、これらの音源との相性の良さを感じます。


■ まとめ

というわけで、「NF AUDIO RA10」ですが、個人的には当初コンパクトさが売りの低価格イヤホン、というくらいのイメージくらいだったのですが、想像以上にしっかりとした音作りがされており、またドライバーの特性を理解し、従来のNAやNMといったシリーズとは異なるアプローチを提示している点はとても興味深く感じました。正直「狙っている方向性が異なる」ので、いわゆるHi-Fi的なイヤホンとの比較での評価は前述の通り「無粋」だと感じました。
NF AUDIO RA10いっぽうでポップなデザインでライトユーザーにも受けそうな外観に対し、思ったより鳴らしにくくある程度のマニア層をターゲットにしている点など、もしかしたらコンセプトとのギャップもあるかもしれない、というのがウィークポイントになるかもしれませんね。私のブログでも紹介した「Shanling M0Pro」や「Hidizs AP80 Pro-X」などの小型DAPとの組み合わせで日常的に気軽に使うイヤホン、というのが個人的にがもっとも「しっくり」きた利用イメージのイヤホンでした。興味のある方は購入してみてくださいね(^^)。