KBEAR PECKER (啄木鳥)

 こんにちは。今回は「KBEAR PECKER (啄木鳥)」です。同ブランドの低価格ラインの「鳥シリーズ」最新モデルですね。2BA+1DD構成のハイブリッドで30ドルちょっとの低価格中華ハイブリッドです。ダイナミックドライバー部には「Rosefinch(朱雀)」で採用されたちょっとクセ強め複合バイオ振動板が使用されており、リスニングイヤホンとして楽しいドンシャリ傾向にまとめられています。

■ 製品の概要について

「KBEAR」は私のブログではお馴染みの中華イヤホンブランドで、ブランド自体はファブレスで複数のファクトリーとの提携で製品ラインナップを展開するスタイル。そのためデザインや特徴などは全く異なる複数のラインナップが存在しますが、サウンドチューニングに関しては自社エンジニアによる一貫したマネジメントが行われ、ブランドとしての一貫性が確保されているのも特徴のひとつです。

今回の「KBEAR PECKER (啄木鳥)」は「KBEAR KS2」からはじまる低価格ライン「鳥シリーズ」の最新モデルとなり、このシリーズではこれまで「KS2」および「LARK」(1BA+1DD)、「KS1」(1DD)、「Robin」(4BA+1DD)といった製品がリリースされ、最近では1DD構成を強化する方向で「Rosefinch(朱雀)」などがリリースされています。

KBEAR PECKER (啄木鳥)KBEAR PECKER (啄木鳥)

今回の「KBEAR PECKER (啄木鳥)」は亜鉛合金製のフェイスプレートでは高精度ブラスト工法で仕上げられたカラーパネルを備えたシンプルなデザインを採用。ドライバー構成は「2BA+1DD」のハイブリッド仕様で、2基のカスタム・バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーと10mmサイズの複合バイオ振動板ダイナミックドライバーで構成されます。ダイナミックドライバーは極薄のバイオカーボンドームとPUエッジによって構成される複合振動板を採用しており、優れたサウンドパフォーマンスを実現。2基のBAが高域を補完します。
KBEAR PECKER (啄木鳥)KBEAR PECKER (啄木鳥)

双方のドライバーはネットワーク基盤によりクロスオーバーを効率的に制御しています。優れたキャビティ構造と高性能なドライバーにより質の高いHIFIサウンドを実現しています。
KBEAR PECKER (啄木鳥)KBEAR PECKER (啄木鳥)

KBEAR PECKER (啄木鳥)」の購入はAliExpressの「Easy Earphones」またはアマゾンの「Yinyoo-JP」(旧WTSUN Audio)にて。価格はAliExpressが31.95ドル~、アマゾンが4,567円~です。
Amazon.co.jp(Yinyoo-JP): KBEAR PECKER (シルバー/ゴールド)
Amazon.co.jp(Yinyoo-JP): KBEAR PECKER (グレー)
※現在YinYoo-JPではシルバーおよびゴールドのみ商品ページにて10% OFFクーポンを配布中です。


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Easy Eaphones より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

KBEAR PECKER (啄木鳥)」のパッケージはKZ風の白箱タイプです、以前レビューした「Rosefinch (朱雀)」と同様の流れですが、こちらは製品画像が描かれたパッケージデザインとなっています。
KBEAR PECKER (啄木鳥)KBEAR PECKER (啄木鳥)

パッケージ内容は、本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、説明書と最小限の内容となっています。今回は「グレー」をオーダーしましたが、ややダークグリーンぽさもあるカラーリングですね。もしかしたら現在のグレーはもっと異なる色味かもしれません(汗)。
KBEAR PECKER (啄木鳥)KBEAR PECKER (啄木鳥)

KBEAR PECKER」の本体は「Rosefinch(朱雀)」などのシリーズと同様のサイズで、亜鉛合金製の分厚いフェイスプレートと樹脂製のハウジング、アルミ合金製のステムノズルの構成になります。ただフェイスプレート部分は厚みのあるパネルの上面にやはり金属製のカラーパネルが貼り付けられており、従来モデルとはまた異なる意匠となりますね。
KBEAR PECKER (啄木鳥)KBEAR PECKER (啄木鳥)
とはいえ、外観の形状は踏襲しており、KZやTFZなどのイヤホンと同様のサイズ感ですが、装着部分の角度の違いなどから、より装着性が高い印象を受けます。ケーブルは銀メッキ線タイプですが細い撚り線ケーブルである程度最初からリケーブルを想定しているかもしれませんね。コネクタは従来機種同様にTFZタイプの2pinでTFZタイプのほか、中華2pinまたはCIEM 2pinが使用でき、リケーブルの選択肢は選びやすいですね。

イヤーピースは付属品のほか「KBEAR 07」(Acoustune「AET07」とほぼ同等品)や、KBEARの姉妹ブランドのTRI Audioから「TRI Clarion」などに交換するのもお勧めです。他には定番の「スパイラルドット」や「SpinFit CP100+」、「TRN T-Eartips」など自分の耳に合う最適なイヤピースに交換するのも良いでしょう。


■ サウンドインプレッション

KBEAR PECKER」の音質傾向はエネルギッシュな低域とスッキリした高域を持つバランスの良いドンシャリ傾向。ハイブリッドらしいサウンドバランスですがエネルギッシュばバイオ振動板を中心としたサウンドは低価格モデルとして十分な解像感を持っており楽しいイヤホンに仕上がっています。

KBEAR PECKER (啄木鳥)ちなみに、「KBEAR PECKER」が採用する10mmサイズの複合バイオ振動板ダイナミックドライバーはおそらく「Rosefinch(朱雀)」が搭載するドライバーと同一と考えられ、つまり2基の高域用BAを追加し、ネットワークで出力を調整した高域強化版、という考え方も出来ますね。「Rosefinch(朱雀)」は結構特徴的なサウンドで、マイク付きモデルが設定されている低価格イヤホンとして想定されるような、スマートフォン直挿しなどの構成ではやや中低域偏重になるものの、リケーブルなどで情報量を向上し上流の駆動力を上げるといきなり高域が覚醒する、という「KBEAR」のなかでも「変態イヤホン」に属するような製品でした。
今回の「KBEAR PECKER」では「Rosefinch(朱雀)」と同様のインピーダンス16Ω、感度103dBという仕様を踏襲し、改めてこのような環境でも普通に鳴らせるハイブリッドになった、という感じです。正直マニア的な面白み、という点では「Rosefinch(朱雀)」のほうが楽しいかと思いますが、低価格のイヤホンとしての音質面の完成度や使いやすさという上では「KBEAR PECKER」は手頃で良い製品にまとまったと思います。

KBEAR PECKER (啄木鳥)KBEAR PECKER」の高域は明瞭感と煌めきのあるスッキリした音を鳴らします。2BAを追加したことにより、明らかに高域の主張は増しており、付属ケーブルでもハイハット等のシンバル音もハッキリとした音で鳴ります。適度な煌めきが有りますが刺さりなどは無くコントロールされています。また以前のKZやTRNなどの低価格ハイブリッドに多かった金属質のギラつきはほぼ感じず、直線的な伸び感でスッキリまとめている点は好感できます。ただし特定の帯域でかなり分かりやすいアクセントがあり、一部のインスト曲などで想像以上にその音域が強く鳴ってちょっと驚く場面がありました。良い意味でリスニング的な演出がされており原音忠実ではないかもしれませんが、楽しさという点では良いと思います。

中音域は思ったより明瞭で癖の無い印象で鳴ります。分かりやすくドンシャリ傾向のため曲によっては凹みを感じますが、比較的分離は良く見通しの良い音を鳴らすため、ボーカルなどが遠く感じることはそれほどありません。ただ中音域については「Rosefinch(朱雀)」同様に上流やケーブル等で結構変化する部分があるため、ある程度しっかり鳴らせる再生環境を選ぶことや凹みが気になる方はバランス接続などを試した方が良いかも知れませんね。
再生環境を押さえてうえでは、ボーカル域は力強く元気のある印象で、女性ボーカルの抜け感なども明瞭に感じます。音場は包み込むような広がりがあり、心地よい臨場感が楽しめます。また解像感もそこそこあり、輪郭もハッキリしているためウォームさはあまり感じないでしょう。ただし定位自体はそれほど正確ではないため分析的なリスニングには向きません。あくまで楽しいリスニングサウンドという仕上がりです。

KBEAR PECKER (啄木鳥)低域は非常に力強く、パンチのある音を鳴らします。「Rosefinch (朱雀)」同様に量感と厚みのある音で、分かりやすく存在感があります。ミッドベースは直線的で分離は良いため中高域をマスクすることはなく、つながりとして自然な印象とは異なりますがハイブリッドらしいメリハリ感を楽しめます。またよりフィット感のあるイヤーピースを選択することで重低音の締まりも向上する印象です。重低音も低価格イヤホンとしては十分に深く、ヒップホップやEDMなどではその低域は特に存在感を感じると思います。


■ まとめ

というわけで、「KBEAR PECKER (啄木鳥)」は「Rosefinch (朱雀)」と同じ複合バイオ振動板ダイナミックドライバーを搭載することで、非常にパワフルな低域を持つ個性的なサウンドを維持しつつ、ハイブリッド化によるエネルギッシュな高域によりKBEARが得意とするドンシャリ傾向にまとめられた「とにかく楽しい」系のイヤホンでした。
○○ターゲット的なバランスの良さとはある意味対極的な自由さですし、ドンシャリ傾向としてもわりとクセ強めという感じもあり、曲の合う・合わないや再生環境での向き不向きもそれなりにあるのではと思いますが、個人的には非常に楽しく、この価格帯のイヤホンとしては最近では珍しくずっと聴いていたい気分になった製品でした(バランスの良い製品ももちろん良いのですが、同方向でよりグレードの高い製品を持っているとつい、という話ですね)。というわけで、楽しい方向性のサウンドが好きな方、あと普通のイヤホンにちょっと飽きてきたマニアの「息抜き」にも向いてるかもなイヤホンだと思いますよ(^^;)。