こんにちは。今回は 「SeeAudio x Angelears Yume Ultra」です。2021年に日本市場に登場以降、急速に知名度を向上している「SeeAudio」と数々のコラボモデルで存在感をアップしているAliExpressの大手セラーのひとつ「Angelears」との新たなコラボモデルです。「SeeAudio」が最初にリリースしたユニバーサルモデルである2BA+1DD構成の「Yume」をベースに、新たなフェイスデザインとサウンドチューニング、そしてケーブルを備えて生まれ変わった新モデルです。
■ 製品の概要について
「SeeAudio」は2019年に生まれた深圳発のブランドで中国国内でCIEM(カスタムIEM)メーカーとして評価を高め、その後数々のユニバーサルモデルで本格的に市場参入を果たしました。最初のグローバルモデルとして2BA+1DD構成の「Yume」、そして日本市場限定の3BAモデル「ANOU」をリリース後、4BAモデルの「Bravery」や金属シェルの「Yume II」など数々の人気モデルをリリースし、急速に存在感を増しています。またコラボモデルや各国仕様の特別バージョンが多いのも特徴で、私のブログでも様々なモデルを紹介しています。
→ 過去記事(一覧): SeeAudio製イヤホンのレビュー
「SeeAudio Yume Ultra」は2BA+1DD構成の最新モデル。2020年にリリースされたオリジナルの「Yume」は香港版などの限定版のほか、Crinacle氏コラボの「Yume Midnight」、金属シェルを採用した「Yume II」と言ったモデルが既にリリースされており、いずれも高い人気をもっていました。これらの「Yume」シリーズでは2基のカスタムBA(バランスド・アーマチュア)ドライバーとリキッドシリコン振動板ダイナミックドライバーを搭載し、独自技術の「L.F.C.(Low-Frequency Filter Conversion)テクノロジー」によるチューニングを行っている点が特徴となっています。そしてオリジナルの「Yume」は、中国国内でCIEMメーカーとしてスタートした「SeeAudio」が2020年に最初にリリースしたユニバーサルモデルで、サウンドチューニングで「ハーマンターゲットカーブ(2020 Harman Target Curve)」準拠を明記していました。
しかし、今回の「SeeAudio Yume Ultra」では「Yume」とも「Yume II」とも異なる全く新しいサウンドチューニングを採用。ダイナミックドライバー部で新たに10mmサイズのチタニウム振動板ダイナミックドライバーを搭載し、従来モデルより高い低域の解像度と応答速度を実現。
「SeeAudio Yume Ultra」ではインピーダンス12Ω、感度113dBと「Yume II」(17Ω、113dB)よりさらにローインピーダンス仕様となり、オリジナル「Yume」の32Ω、106dBと比較すると全く異なるチューニングを行っています。より高いディテールとビビットなシグネチャを備え、改善された低域とともに、優れた高域応答、自然なボーカルにより、質の高いモニターチューニングに仕上げられています。
また付属するケーブルは3.5mm/2.5mm/4.4mmのモジュールによるプラグ交換が可能な高純度 6N OFC銀メッキ線ケーブルを採用。0.78mm 2pin仕様でリケーブルも可能です。
今回は発売前の評価用サンプルを使用してのレビューとなります。そのためパッケージなどの付属品は同梱されていませんでしたが、実際の製品では本体、ケーブルおよび交換用プラグ、イヤーピースは5サイズ+ウレタン1ペア、メタルケース、説明書など。他にもアクリルスタンドなども載っていますね。
「SeeAudio Yume Ultra」のシェルはレジン製でオリジナルの「Yume」に原点回帰したようにも見えます。しかしシェル形状は「Yume」とは微妙に違っており(僅かに大きい)、実際には4BAモデルの「Bravery AE/RB」のレッド/ブルーシェルの形状に近いサイズになっています。「SeeAudio Yume Ultra」ではクリアーブラックのシェルを採用し、フェイスパネルはブルーを基調としたラメ模様が入っており落ち着いた鮮やかさがあります。
「Yume」には既にCrinacle氏コラボの「Yume Midnight」と金属シェルを採用した「Yume II」がありますが、少なくとも外観上は共通点はありません。2BA+1DD構成という点のみが同じ、という感じでしょうか。そういう意味では製品名称を変えた方が良いのでは、という意見も結構ありそうですが、個人的には後述の通り「SeeAudio」なりの意図も感じています。
ケーブルはシルバーカラーの銀メッキ線ケーブルが付属します。線材は「Yume II」の付属ケーブルと同様のものだと思いますが、他のAngelearsコラボ製品同様にコネクタは0.78mmの2pin仕様です。プラグ交換式のギミックを採用しており、3.5mmのほか2.5mmろ4.4mmのバランス接続にも対応します。付属ケーブルはオリジナル「Yume」の銅線ケーブルよりかなりグレードアップしていますね。
今回のサンプルにはイヤーピースは付属しませんでしたが、実際の製品では「AET07」タイプのイヤーピースが5サイズ付属するようです。この辺も「Yume II」と同様ですね。多くの場合は標準のもので問題ないと思いますが、他にも定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustuneも新タイプの「AEX07」および「AEX70」、より密着感の強いタイプではSpinFit「CP100+」、TRN「T-Eartips」などへの交換も良いと思います。
■ サウンドインプレッション
「SeeAudio Yume Ultra」の音質傾向はフラット方向のニュートラルサウンドで、最近の「Yume」シリーズのなかでは最もオリジナルの「Yume」を踏襲した印象。いっぽうで「Yume」と比べて低域の締まりや明瞭感がアップし、量的には自然なバランスを維持しつつ、より存在感を感じる解像感とアタックの力強さを感じます。またオリジナルで最も指摘された高域は女性ボーカルやピアノの高音などの中高域から上にアクセントができ、スッキリした明瞭感と見通しの良さを感じるようになりました。「Yume II」で感じた解像感や音像の明瞭さを受け継ぎつつ、サウンドバランスとしてはオリジナルのハーマンターゲットに準拠した方向性を維持し、味付けのないモニター的な表現力をもった製品に仕上がっています。
100ドル級の「Rinko」や200ドル級の現在の「Yume II」は全く異なるバランスながらどちらもリスニング方向のチューニングに仕上げられているのに対し、「SeeAudio Yume Ultra」では「Bravery」より上位の、多少モニター的な音作りで改めて仕上げたイヤホン、という印象です。
オリジナルの「Yume」はSeeAudioにとって最初のユニバーサルモデル、最初の中国国外にむけたインターナショナルモデルということもあり、リリースされた2020年当時、多くの海外レビューアーが評価軸としてた「2020 Harman Target Curve」 に寄せる、という分かりやすい戦略を取りました。SeeAudioがもともとがCIEMメーカーであったという点でモニターサウンドに精通していたことも理由のひとつでしょう。そして、おそらく目標としたチューニングを200ドル以下で実現するために採用した構成が2BA+1DDというハイブリッドだった、というのが実情かもしれません。
今回の「SeeAudio Yume Ultra」では、これまでの「Yume」シリーズとは異なる新たなダイナミックドライバーを搭載し、最新の技術でオリジナルをリファインしたようなサウンドバランスで仕上げたイヤホンという意味で、見た目以上に「Yume Midnight」や「Yume II」とは異質な存在で、「Angelears」とのコラボらからこそ生まれた製品といえるかもですね。
「SeeAudio Yume Ultra」の高域は滑らかさを維持しつつ、より明るく伸びやかさを感じる音を鳴らします。ややウォームにも感じる「Yume」や聴きやすいチューニングの「Yume II」と比べると多少「Midnight」のような明るさがありますが、「Midnight」がより個々のドライバーの存在感が強調された「いかにもハイブリッド」的な音作りなのに対し、モニター的にニュートラルなサウンドバランスで滑らかさを維持している点がポイント。具体的にはf値のグラフの通り高高域は自然なバランスに調整しつつ、4kHzより上の明瞭感やスッキリ感(あるいは煌めきや鋭さなども含む)を感じる音域にアクセントを置くことで、全体としては寒色系の音作りではないものの適度に明るく直線的な抜け感を感じる音作りをしています。個人的には「Yume」シリーズの中では最も好感が持てる高域です。
中音域はフラットで味付けの無いニュートラルな音を鳴らします。印象としてはオリジナルの「Yume」に最も近く滑らかさとと僅かながら自然な温かさもあります。さらに解像感や分離の良さは向上しており、自然な音色ながら1音1音をより正確に捉えることができ定位も正確です。この辺は「Midnight」「Yume II」といったアップデーされた製品のフィードバックを受け、「Yume」よりは確実に進化している部分でしょう。いっぽうで「Midnight」のようなエッジの効いたメリハリや、逆に「Yume II」のような音場感やリスニング的な空間表現は無く、モニター的で音源をありのままに鳴らす印象の音作りです。
低域はバランスとしては「Yume」を踏襲しているものの、新しい10mmドライバーの採用で解像感や締まりが確実に向上しており、より直線的で力強さのあるミッドベースと深く沈み分離の良い重低音と質感の向上を感じさせます。モニター的な音作りであるため、重低音の響きや重さなどリスニング的な臨場感は控えめで、どちらかというと小気味よいサウンドですが、全体としてサウンドを引き締め、やや緩さも感じた「Yume」のサウンドを1ランク上の製品に押し上げるような印象も感じさせます。
オーケストラなどのより広い空間表現を楽しむような音源だと多少物足りないかもしれませんし、リスニング的な楽しさを求める場合は「Yume II」のほうが向いていると思いますが、ボーカル曲、インストルメンタルを問わず様々なジャンルの曲で音源をありのままに楽しみたい方には最適なサウンドです。
■ まとめ
というわけで、「SeeAudio Yume Ultra」は既に1000ドルオーバーのハイエンド製品も出している「SeeAudio」が作るモニターサウンドを「比較的」お手頃価格で楽しめる、そんなイヤホンだと思いました。前述の通り、形式上「Yume」の後継モデルとなっている「Yume II」は「アンダー200ドル」という価格設定と「Yume =2BA+1DD」といった構成ありきの上で、モニター的な製品をより上の価格帯にシフトするマーケティングな意図でリスニングサウンドのモデルに「鞍替えした」モデル、という見方もできるかもしれません。また「Yume II」の金属シェルの採用は「かつてのYumeとは違う」ということをアピールする手法としては分かりやすいアプローチです。
これに対し、今回の「SeeAudio Yume Ultra」は「Angelears」とのコラボ製品という体裁ではあるものの、マニアの間で人気ブランドに成長した「SeeAudio」が改めて原点であるオリジナル「Yume」に取り組んだ、ある意味「正当な後継モデル」という印象もあります。その想いは金属シェルを採用した「Yume II」ですらダイナミックドライバー部は最初の「Yume」と同じ「9.2mm リキッドシリコン振動板ドライバー」を使用していたのに対し、今回の「SeeAudio Yume Ultra」で初めて10mmのチタニウム振動板ドライバーに変更した点からも伺えます。
「アンダー200ドル」はリスニングサウンド、というマーケティング的なクラスチェンジを受けた「Yume II」に対し、ドライバー変更によりちょっとだけ価格が上がってしまったものの、「Angelears」がコラボモデルという形で、双方の考えをうまく組み上げ「SeeAudio Yume Ultra」という主流のラインナップからは外れつつ、いろいろ想いが詰まっていそうな製品として実現できたことはとても良いことだと思いました。というわけで、200ドル台でSeeAudioの質の高いモニターサウンドを楽しみたい方は是非とも挑戦してみていただきたいイヤホンだと思いました。ちょうど良い落とし所の製品として、個人的にもお勧めですよ(^^)。
「SeeAudio」は2019年に生まれた深圳発のブランドで中国国内でCIEM(カスタムIEM)メーカーとして評価を高め、その後数々のユニバーサルモデルで本格的に市場参入を果たしました。最初のグローバルモデルとして2BA+1DD構成の「Yume」、そして日本市場限定の3BAモデル「ANOU」をリリース後、4BAモデルの「Bravery」や金属シェルの「Yume II」など数々の人気モデルをリリースし、急速に存在感を増しています。またコラボモデルや各国仕様の特別バージョンが多いのも特徴で、私のブログでも様々なモデルを紹介しています。
→ 過去記事(一覧): SeeAudio製イヤホンのレビュー
また「Angelears Audio」はAliExprssなどでショップを展開する中国のセラーでこれまでも様々なコラボ製品をリリースしている事でも知られます。私のブログでもこれまで「SeeAudio Bravery AE」や「7Hz Timeless AE」などの製品製品をレビューしています。そして前回は6月1日発売予定の「BQEYZ Winter Ultra」を紹介しました。今回の「SeeAudio Yume Ultra」は「Winter Ultra」とほぼ同時期に発表された最新のコラボモデルとなります。
「SeeAudio Yume Ultra」は2BA+1DD構成の最新モデル。2020年にリリースされたオリジナルの「Yume」は香港版などの限定版のほか、Crinacle氏コラボの「Yume Midnight」、金属シェルを採用した「Yume II」と言ったモデルが既にリリースされており、いずれも高い人気をもっていました。これらの「Yume」シリーズでは2基のカスタムBA(バランスド・アーマチュア)ドライバーとリキッドシリコン振動板ダイナミックドライバーを搭載し、独自技術の「L.F.C.(Low-Frequency Filter Conversion)テクノロジー」によるチューニングを行っている点が特徴となっています。そしてオリジナルの「Yume」は、中国国内でCIEMメーカーとしてスタートした「SeeAudio」が2020年に最初にリリースしたユニバーサルモデルで、サウンドチューニングで「ハーマンターゲットカーブ(2020 Harman Target Curve)」準拠を明記していました。
しかし、今回の「SeeAudio Yume Ultra」では「Yume」とも「Yume II」とも異なる全く新しいサウンドチューニングを採用。ダイナミックドライバー部で新たに10mmサイズのチタニウム振動板ダイナミックドライバーを搭載し、従来モデルより高い低域の解像度と応答速度を実現。
「SeeAudio Yume Ultra」ではインピーダンス12Ω、感度113dBと「Yume II」(17Ω、113dB)よりさらにローインピーダンス仕様となり、オリジナル「Yume」の32Ω、106dBと比較すると全く異なるチューニングを行っています。より高いディテールとビビットなシグネチャを備え、改善された低域とともに、優れた高域応答、自然なボーカルにより、質の高いモニターチューニングに仕上げられています。
また付属するケーブルは3.5mm/2.5mm/4.4mmのモジュールによるプラグ交換が可能な高純度 6N OFC銀メッキ線ケーブルを採用。0.78mm 2pin仕様でリケーブルも可能です。
購入はAliExpressのAngelears Audio Storeにて。表示価格は229ドルです。
現在10ドルOFFのストアクーポン「K6CLTCT71TSW」で20ドルOFFの219ドルで購入可能です。
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Angelears より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
今回は発売前の評価用サンプルを使用してのレビューとなります。そのためパッケージなどの付属品は同梱されていませんでしたが、実際の製品では本体、ケーブルおよび交換用プラグ、イヤーピースは5サイズ+ウレタン1ペア、メタルケース、説明書など。他にもアクリルスタンドなども載っていますね。
「SeeAudio Yume Ultra」のシェルはレジン製でオリジナルの「Yume」に原点回帰したようにも見えます。しかしシェル形状は「Yume」とは微妙に違っており(僅かに大きい)、実際には4BAモデルの「Bravery AE/RB」のレッド/ブルーシェルの形状に近いサイズになっています。「SeeAudio Yume Ultra」ではクリアーブラックのシェルを採用し、フェイスパネルはブルーを基調としたラメ模様が入っており落ち着いた鮮やかさがあります。
「Yume」には既にCrinacle氏コラボの「Yume Midnight」と金属シェルを採用した「Yume II」がありますが、少なくとも外観上は共通点はありません。2BA+1DD構成という点のみが同じ、という感じでしょうか。そういう意味では製品名称を変えた方が良いのでは、という意見も結構ありそうですが、個人的には後述の通り「SeeAudio」なりの意図も感じています。
ケーブルはシルバーカラーの銀メッキ線ケーブルが付属します。線材は「Yume II」の付属ケーブルと同様のものだと思いますが、他のAngelearsコラボ製品同様にコネクタは0.78mmの2pin仕様です。プラグ交換式のギミックを採用しており、3.5mmのほか2.5mmろ4.4mmのバランス接続にも対応します。付属ケーブルはオリジナル「Yume」の銅線ケーブルよりかなりグレードアップしていますね。
今回のサンプルにはイヤーピースは付属しませんでしたが、実際の製品では「AET07」タイプのイヤーピースが5サイズ付属するようです。この辺も「Yume II」と同様ですね。多くの場合は標準のもので問題ないと思いますが、他にも定番のJVC「スパイラルドット」やAcoustuneも新タイプの「AEX07」および「AEX70」、より密着感の強いタイプではSpinFit「CP100+」、TRN「T-Eartips」などへの交換も良いと思います。
■ サウンドインプレッション
「SeeAudio Yume Ultra」の音質傾向はフラット方向のニュートラルサウンドで、最近の「Yume」シリーズのなかでは最もオリジナルの「Yume」を踏襲した印象。いっぽうで「Yume」と比べて低域の締まりや明瞭感がアップし、量的には自然なバランスを維持しつつ、より存在感を感じる解像感とアタックの力強さを感じます。またオリジナルで最も指摘された高域は女性ボーカルやピアノの高音などの中高域から上にアクセントができ、スッキリした明瞭感と見通しの良さを感じるようになりました。「Yume II」で感じた解像感や音像の明瞭さを受け継ぎつつ、サウンドバランスとしてはオリジナルのハーマンターゲットに準拠した方向性を維持し、味付けのないモニター的な表現力をもった製品に仕上がっています。
100ドル級の「Rinko」や200ドル級の現在の「Yume II」は全く異なるバランスながらどちらもリスニング方向のチューニングに仕上げられているのに対し、「SeeAudio Yume Ultra」では「Bravery」より上位の、多少モニター的な音作りで改めて仕上げたイヤホン、という印象です。
オリジナルの「Yume」はSeeAudioにとって最初のユニバーサルモデル、最初の中国国外にむけたインターナショナルモデルということもあり、リリースされた2020年当時、多くの海外レビューアーが評価軸としてた「2020 Harman Target Curve」 に寄せる、という分かりやすい戦略を取りました。SeeAudioがもともとがCIEMメーカーであったという点でモニターサウンドに精通していたことも理由のひとつでしょう。そして、おそらく目標としたチューニングを200ドル以下で実現するために採用した構成が2BA+1DDというハイブリッドだった、というのが実情かもしれません。
今回の「SeeAudio Yume Ultra」では、これまでの「Yume」シリーズとは異なる新たなダイナミックドライバーを搭載し、最新の技術でオリジナルをリファインしたようなサウンドバランスで仕上げたイヤホンという意味で、見た目以上に「Yume Midnight」や「Yume II」とは異質な存在で、「Angelears」とのコラボらからこそ生まれた製品といえるかもですね。
「SeeAudio Yume Ultra」の高域は滑らかさを維持しつつ、より明るく伸びやかさを感じる音を鳴らします。ややウォームにも感じる「Yume」や聴きやすいチューニングの「Yume II」と比べると多少「Midnight」のような明るさがありますが、「Midnight」がより個々のドライバーの存在感が強調された「いかにもハイブリッド」的な音作りなのに対し、モニター的にニュートラルなサウンドバランスで滑らかさを維持している点がポイント。具体的にはf値のグラフの通り高高域は自然なバランスに調整しつつ、4kHzより上の明瞭感やスッキリ感(あるいは煌めきや鋭さなども含む)を感じる音域にアクセントを置くことで、全体としては寒色系の音作りではないものの適度に明るく直線的な抜け感を感じる音作りをしています。個人的には「Yume」シリーズの中では最も好感が持てる高域です。
中音域はフラットで味付けの無いニュートラルな音を鳴らします。印象としてはオリジナルの「Yume」に最も近く滑らかさとと僅かながら自然な温かさもあります。さらに解像感や分離の良さは向上しており、自然な音色ながら1音1音をより正確に捉えることができ定位も正確です。この辺は「Midnight」「Yume II」といったアップデーされた製品のフィードバックを受け、「Yume」よりは確実に進化している部分でしょう。いっぽうで「Midnight」のようなエッジの効いたメリハリや、逆に「Yume II」のような音場感やリスニング的な空間表現は無く、モニター的で音源をありのままに鳴らす印象の音作りです。
低域はバランスとしては「Yume」を踏襲しているものの、新しい10mmドライバーの採用で解像感や締まりが確実に向上しており、より直線的で力強さのあるミッドベースと深く沈み分離の良い重低音と質感の向上を感じさせます。モニター的な音作りであるため、重低音の響きや重さなどリスニング的な臨場感は控えめで、どちらかというと小気味よいサウンドですが、全体としてサウンドを引き締め、やや緩さも感じた「Yume」のサウンドを1ランク上の製品に押し上げるような印象も感じさせます。
オーケストラなどのより広い空間表現を楽しむような音源だと多少物足りないかもしれませんし、リスニング的な楽しさを求める場合は「Yume II」のほうが向いていると思いますが、ボーカル曲、インストルメンタルを問わず様々なジャンルの曲で音源をありのままに楽しみたい方には最適なサウンドです。
■ まとめ
というわけで、「SeeAudio Yume Ultra」は既に1000ドルオーバーのハイエンド製品も出している「SeeAudio」が作るモニターサウンドを「比較的」お手頃価格で楽しめる、そんなイヤホンだと思いました。前述の通り、形式上「Yume」の後継モデルとなっている「Yume II」は「アンダー200ドル」という価格設定と「Yume =2BA+1DD」といった構成ありきの上で、モニター的な製品をより上の価格帯にシフトするマーケティングな意図でリスニングサウンドのモデルに「鞍替えした」モデル、という見方もできるかもしれません。また「Yume II」の金属シェルの採用は「かつてのYumeとは違う」ということをアピールする手法としては分かりやすいアプローチです。
これに対し、今回の「SeeAudio Yume Ultra」は「Angelears」とのコラボ製品という体裁ではあるものの、マニアの間で人気ブランドに成長した「SeeAudio」が改めて原点であるオリジナル「Yume」に取り組んだ、ある意味「正当な後継モデル」という印象もあります。その想いは金属シェルを採用した「Yume II」ですらダイナミックドライバー部は最初の「Yume」と同じ「9.2mm リキッドシリコン振動板ドライバー」を使用していたのに対し、今回の「SeeAudio Yume Ultra」で初めて10mmのチタニウム振動板ドライバーに変更した点からも伺えます。
「アンダー200ドル」はリスニングサウンド、というマーケティング的なクラスチェンジを受けた「Yume II」に対し、ドライバー変更によりちょっとだけ価格が上がってしまったものの、「Angelears」がコラボモデルという形で、双方の考えをうまく組み上げ「SeeAudio Yume Ultra」という主流のラインナップからは外れつつ、いろいろ想いが詰まっていそうな製品として実現できたことはとても良いことだと思いました。というわけで、200ドル台でSeeAudioの質の高いモニターサウンドを楽しみたい方は是非とも挑戦してみていただきたいイヤホンだと思いました。ちょうど良い落とし所の製品として、個人的にもお勧めですよ(^^)。