LETSHUOER DZ4

こんにちは。今回は 「LETSHUOER DZ4」です。7月15日(PST)発売予定のアンダー100ドル級の最新モデル。「3DD+1PR(パッシブラジエーター)」という、非常に個性的な片側4ユニット構成のイヤホンです。音質的にはケーブルや上流で多少変化は楽しめるものの、滑らかで適度な温かみのあるリスニングサウンドで、柔らかい印象のデザイン同様に特にアコースティックな音源との相性の良さを感じます。

■ 製品の概要について

LETSHUOER」は2016年に創業したユニバーサルIEM/カスタムIEMのファクトリーブランドで、中国国内ではカスタムIEMビジネスのほか話題のモデルを数多くリリースしています。14mm級平面駆動ドライバーを搭載した人気モデル「S12」「S12 Pro」「Z12」といった一連の派生モデルやシングル構成の「D13」、コラボ仕様のハイブリッドの「Galileo」など話題性のあるモデルを次々とリリースしており、最近では日本でも人気ブランドのひとつとして多くのマニアの間で認知されていますね。

そして今回の「LETSHUOER DZ4」は7月15日にリリースされる最新モデルで、トリプルダイナミックドライバーとシングルパッシブラジエーターという異色の組み合わせによるイヤホンとなります。
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LETSHUOER DZ4」はHeyGearsの高精細3Dプリンティング技術により生成される軽量な樹脂製ハウジングと、アルミニウム合金製のフェイスプレートによるシンプルかつ個性的なデザインのシェルはセミオープン構造を採用。
ドライバーには6mmチタニウム振動板ダイナミックドライバーを3基と、独自の6mmパッシブラジエーターを1基搭載。3基のフルレンジドライバーが並列で稼働することで音の歪みを減少し、より高い解像度を確保。パッシブラジエーターは、ダイナミックドライバーの圧力から共振することで動作し、より深い低音を生み出します。
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また各ダイナミックドライバーユニット背面のFPCフレキシブル基板による制御を行います。そして「LETSHUOER DZ4」はそれぞれのドライバーユニットに接続された4本の音導管から並列稼働する3基のフルレンジ・ダイナミックドライバーと1基パッシブラジエーターの2Wayにまとめられて出力され、さらにKnowles社製ダンパーを使用することで圧力をコントロールし、振動板の正確で安定した動作を実現します。
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ケーブルは0.78mm 2pin仕様で0.05mm線材を216本束ねた4芯 高純度銀メッキ銅線ケーブルが付属します。
LETSHUOER DZ4」の日本時間で7月15日16時から各オフィシャルストアにて受注開始となります。
販売価格は89ドル、日本円では13,999円の予定です。
LETSHUOER公式サイト(letshuoer.net): LETSHUOER DZ4
AliExpress(Letshuoer Official Store): LETSHUOER DZ4


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして LETSHUOER より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

LETSHUOER DZ4」のパッケージデザインはシンプルかつスタイリッシュな印象ですね。今回はレビュアーサンプルとして、少し前に届いていました。価格はレビュー掲載直前に発表となりましたが、内容的には今回も「想像以上にお手頃価格」だなという印象です。
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パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(2種類、それぞれS/M/Lサイズ)、ハードケース、説明書、保証書など。
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本体は3Dプリントによる樹脂製でHeyGearsの3Dプリントシステムを使用してるということで、樹脂の質感はTruthearのつや消しシェルのモデルに近い肌触りのソフトな印象。フェイスプレートはアルミ合金製で全体としては非常に軽量です。フェイスプレートにデザインされたスリットはそのままベント(空気孔)になっており、裏から貼られたオレンジのメッシュプレートから抜けるセミオープン仕様になっています。
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丸みを帯びたシェルはステムノズルがちょっと太いものの装着性は比較的良い印象。なおシルエットは同社の「Galileo」とほぼ同様で、デザインや使用している素材、質感などは全く異なりますが3Dの形状データはある程度共有されているようです。
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ちなみに3基のダイナミックドライバーというと、「Unique Melody 3DT (3D Terminator)」を思い浮かべる方も多いでしょう。ただ「3DT」は7mm×2+10mmの2Way構成で、6mm×3基にパッシブラジエーターを加えた「LETSHUOER DZ4」とは内容的にはかなり異なり、外観も「3DT」のほうがひとまわり以上大きいことがわかります。
ちなみに付属のハードケースは硬質な樹脂製ですが円筒形でフタは回転式。このケースをみればやはり「Unique Melody」のお馴染みのメタルケースを思い出さずにはいられないでしょう。従来とは異なり「LETSHUOER DZ4」でわざわざこのデザインのケースを採用していることからも「狙って」やっているのは確実ですね(^^)。イヤーピースは「Galileo」同様に太いステムノズルに合わせた2種類のタイプが付属します。
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ケーブルも「S12」や「Galileo」など「LETSHUOER」製のイヤホンで多く採用されている4芯タイプの線材を使用してますが、コネクタやプラグ部分は本体のカラーリングにあわせてシャンパンゴールドの部品を採用しています。なおコネクタは3.5mmのみで4.4mmモデルの指定は無いようです。


■ サウンドインプレッション

LETSHUOER DZ4LETSHUOER DZ4」の音質傾向はニュートラル方向に緩やかなV字を描く弱ドンシャリのサウンド。ボーカル域にフォーカスがあり、ややW字方向の印象もありますね。小口径ドライバーを3基並列で稼働させパッシブラジエーターで低域を補う構成ということで、同社の「S12」とも「Galileo」とも結構印象が異なりますね。付属のシングルエンド(3.5mm)ケーブルでの印象は比較的ウォームな感じはあるものの、「LETSHUOER DZ4」はよりニュートラル感があります。また低域の質感などにちょっとだけ「Unique Melody 3DT」っぽさもあり、鮮明さやシャープさでは相応の違いがあるものの、より滑らかでアナログ感のあるサウンドにまとめられた印象です。並列稼働のフルレンジに低域を補完した構成でアプローチはかなり異なるものの、やはりチューニングにおいてある程度は意識しているのかもと想像させますね。
ちなみに、「Galileo」に付属していた同様の線材の4.4mmケーブルにリケーブルしてみたところ、中高域のシャープさが増し、よりハキハキしたサウンドに変化しました。バランス接続で駆動力のアンプで鳴らすとだと逆に「3DT」よりメリハリが強めに感じるかも知れませんね。インピーダンス12Ωという仕様もあり、比較的音量は取りやすいものの、上流による変化は結構大きい印象です。

LETSHUOER DZ4LETSHUOER DZ4」の高域は聴きやすくコントロールされているものの適度な明瞭感が有り、直線的なスッキリした印象を保ちつつ過度に硬質にならず自然な滑らかさを持っています。明瞭感のある小口径ダイナミックドライバーを並列で稼働させるメリットを活かした高域といえるでしょう。反応の良い小口径ドライバーは明瞭な高域を持つ反面、ゲインを上げることで歪みを発生しやすくなります。ここで同じドライバーを並列稼働させ、電気的ネットワークでコントロールして出力を分散させることで十分な出力を確保しつつ歪みを抑えた直線的なサウンドを実現します。なお、バランス接続にリケーブルして駆動力を高めた場合、より明瞭感が増しキレのある高域を楽しめます。

中音域はニュートラルな印象を保ちつつ付属ケーブルでは適度に温かく、ボーカルは比較的近くで自然に鳴ります。「LETSHUOER」には「S12」シリーズのように非常に明瞭感のあるサウンドを実現した製品があるためか、個性的なドライバー構成を持つ「LETSHUOER DZ4」ではバランスとしては比較的近いW字寄りの方向性ながら全く異なるキャラクターを与えています。
LETSHUOER DZ43基のフルレンジドライバーは小口径らしいスピード感のある音を鳴らすものの印象としてはウォーム方向にまとめられており、ボーカルは滑らかで甘く、適度な艶感があります。いっぽうで全体としてニュートラルで、メリハリのある濃いめのサウンドを好まれる方にはやや大人しく感じるかもしれません。このような部分は従来の「LETSHUOER」製のイヤホンより例えば「Unique Melody 3DT」などの雰囲気をちょっと意識しているかもしれませんね。特にスタジオレコーディングのアコースティックな音源と相性が良く非常に自然で、それぞれの楽器の調和感は心地よさがあります。いっぽうでモニター的な分離感や解像感を求める方にはやや物足りないかも知れません。

低域はニュートラル方向にバランスの良さをもちつつ、直線的で心地よいインパクトのあるミッドベースと深く沈む重低音が楽しめます。フルレンジドライバーによりつながりは自然で滑らかですが、中高域をマスクすることはなく分離の良さがあります。またパッシブラジエーターは特に重低音において十分な深さと奥行きを演出します。低域も解像感やキレ感を強調するタイプではありませんが、レスポンスは良く、音数の多い曲でも自然な分離があります。量的にはそこまで多いわけではありませんが適度に厚みがあり、表現力は豊かで芳醇な雰囲気を楽しめる低域です。


■ まとめ

というわけで、「LETSHUOER DZ4」はアンダー100ドルクラスの製品としてはかなり個性的で、同価格帯のほかの製品と比べても直接的な競合は無いイヤホンといえるでしょう。価格も手頃で音質的に「被らない」ので複数のイヤホンを使い分ける方にもお勧めしやすい製品ですね。アナログ的なウォームさがありつつ明瞭感も楽しめる、といったリスニングサウンドで、真空管アンプなどの雰囲気が好みの方には結構刺さる製品かもしれません。
LETSHUOER DZ4また標準ケーブルでのややウォームでアナログ的なサウンドもこれはこれでで良いと思いますが、バランス接続でケーブル等をいろいろ変更し、しっかり追い込むことでまた違った方向性も楽しめます。さすがに3倍以上の価格「3DT」との比較は無理があるかも知れませんが、思ったよりいい線までいけそうな余地も感じられます。3DD+1PRというドライバー構成の面白さもあり、個人的にも結構楽しめたイヤホンでした。とりあえず複数のイヤホンを持つマニアであれば購入しアイテムのひとつに加えるのも良いと思いますよ(^^)。