Kiwi Ears Quintet

こんにちは。 今回は「Kiwi Ears Quintet」です。次々と魅力的な新モデルをリリースしている「Kiwi Ears」のミドルグレードモデルで、「クインテット(五重奏)」という製品名の通り、「1DD+2BA+マイクロ平面(MPT)+PZT(圧電)骨伝導」の5ドライバー構成の個性的な仕様が特徴的です。それぞれのドライバーが役割を果たしつつ絶妙な調和を見せることで自然なバランスながら他には無いサウンドを実現してる高音質イヤホンです。

ちなみに、このところ本業が非常に忙しく、連日出張ばかりしてる関係でどんどん未レビューの「積み」が増してるのがしんどいですねー。せめて写真撮影だけでもお手伝いしてくれる方とか探そうかと本気で考え始めている今日この頃です(^^;)。

■ 製品の概要について

Kiwi Ears」は2021年に登場した新しい中華イヤホンのブランドで、8BA構成の「Orchestra」および先日レビューした「Orchestra Lite」、ベリリウム(コート)ドライバーと3Dプリントシェルを採用しつつ低価格を実現した「Cadenza」、そして2BA+2DD構成の「Quartet」など、美しいデザインと質の高いサウンドで多くのマニアから注目を集めています。

今回の「Kiwi Ears Quintet」は先日レビューした「Quartet」の上位モデルに位置するマルチドライバーモデル「四重奏(カルテット)」の名を持つ「Quartet」は2BA+2DD構成のハイブリッドモデルでしたが、今回の「Kiwi Ears Quintet」は「五重奏(クインテット)」という名称の通り5基のドライバーを組みあせたモデルになります。しかも「DLC振動板ダイナミックドライバー」と2基のBAドライバー、1基の平面駆動ドライバーとさらにPZT(圧電)骨伝導ドライバーをによる4種類のドライバーを使用した非常に個性的なモデルに仕上げられています。
Kiwi Ears QuintetKiwi Ears Quintet
Kiwi Ears Quintet」は、それぞれのドライバー特徴を最大限活用した組み合わせにより、インパクトのある低域、ニュートラルな中音域、詳細な高域、拡張されたサウンドステージを実現し、バランスの取れたサウンドを提供します。
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Kiwi Ears Quintet」は1DD+2BA+1平面+1PZTによる4種類、5基のドライバーで構成されます。低域用のウーファーとして10mm DLC(Diamond-Like Carbon)振動板ダイナミックドライバーを採用し、ミッドレンジには2基のKnowles製バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを搭載。強力なバススラムと自然で解像度の高い中音域を実現します。さらに高域用にはMPT平面磁気ドライバーと圧電(PZT)骨伝導ドライバーを搭載します。

Kiwi Earsは高品質の超高音域を実現するために「MPT (Micro Planar Transducers)」 と呼ばれる新しい平面駆動ドライバーによるツィーターを開発し、4kHz~40kHzの持続的な高域を効率的に生成します。さらにPZTドライバーとの組み合わせにより、高解像度で低ノイズ、高出力、鮮明なサウンドを提供し、質感を向上させます。
Kiwi Ears QuintetKiwi Ears Quintet

購入はLinsoul(linsoul.com)またはAliExpressの「DD-Audio」、アマゾンの「LINSOUL-JP」にて。
「Kiwi Ears Quartet」の価格は 219ドル、アマゾンでは 34,780円です。


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Linsoul より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

「Kiwi Ears Quartet」のパッケージは製品画像を載せたパッケージ。同社らしいハワイアンな印象のデザインですがモノトーンでちょっとレトロ感もありますね。
Kiwi Ears QuintetKiwi Ears Quintet

パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースは2種類、それぞれS/M/Lサイズ、ケース、説明書。ケースの材質やわりとミニマムな付属品など、本体のスペック全振り、という感じもあります。
Kiwi Ears QuintetKiwi Ears Quintet

本体は樹脂製のシェルと金属製のフェイスプレートによるシンプルなデザイン。ドライバー構成を考慮すると随分コンパクトにまとめた印象がありますね。シェルはブラックカラーで、特徴的なドライバー構成を外から垣間見ることは出来ません。これだけ特徴的な構成の製品ですので、内部構造が少しだけでも透けて見えた方が「有り難み」が増すように思うのは私だけ? 正直外観だけだと下位グレードの製品と違いが分かりにくそうなのはちょっと残念な気もしますが、ハウジング全体で骨伝導を行うことも含めたデザインということなのだと思います。
Kiwi Ears QuintetKiwi Ears Quintet
とはいえ全体としては比較的コンパクトにまとまっているため、装着性は比較的良好です。ステムノズルが長めな点と、しっかりハウジングを耳にフィットさせ骨伝導の効果を最大化させるため、少し小さめのイヤーピースで耳奥までしっかり装着したほうがよいでしょう。
Kiwi Ears QuintetKiwi Ears Quintet
付属ケーブルは高純度無酸素銅銀メッキ線ケーブルで、0.78mm 2ipn仕様の4芯タイプです。取り回しは比較的良好で使いやすいケーブルですが、本体のポテンシャルは非常に高いためリケーブルにより変化を楽しむのもよいと思います。

■ サウンドインプレッション

Kiwi Ears QuintetKiwi Ears Quintet」の音質傾向は僅かに中低域寄りながらニュートラル方向の弱ドンシャリ。いわゆる○○ターゲット的なバランスで自然な印象を感じさせつつ、個々の音域の解像感の高さやレスポンスの良さを持っています。方向性としては同様のバランスで比較的スッキリまとめた「Cadenza」から大きく解像感や全体の質感を向上させ、よりハイブリッド的に進化した印象といえるかも。そのため、よりメリハリを強調した印象の「Quartet」や、ややウォーム方向の厚みのある「Dolce」とは結構印象が異なっており、「Kiwi Ears Quintet」より軽快で広がりのあるサウンドを楽しめます。

Kiwi Ears Quintet」が搭載するPZT(圧電)骨伝導ユニットはハウジング全体を振動させて高域を伝えるように機能しており、「BQEYZ Winter」や「RAPTGO Bridge」の骨伝導ドライバーに比べるとほぼ「裏方」的な役割のようです。
Kiwi Ears Quintetいっぽうで平面駆動ドライバーのほうは「MPT」という独自設計による高域専用のツイーターユニットとして機能します。どうやらBAのようなメタルシャーシに格納された小型のマイクロドライバーユニットらしく、一般的な平面駆動ドライバーとも最近登場してきた角形平面ドライバー(SPD)とも異なるものです。ツイーターとして最も利用されるBAドライバーは構造的に高高域に歪みを発生させやすく、最近では静電ドライバーなどを利用するアプローチもあります。これに対し「Kiwi Ears Quintet」では歪みをより抑制できる平面駆動方式でのツイーターユニットを独自に開発することで対応しているわけですね。さらに圧電方式の骨伝導ユニットによりハウジングからの伝達性を高めることで、刺激のある帯域を抑えつつ直線的な伸び良さと解像感のある高域を実感させることに成功しています。

Kiwi Ears Quintet」の高域は全体のバランスとしてはと大人しく聴きやすさを感じる反面、「Cadenza」のようにやや控えめな印象を受けます。しかし、「Kiwi Ears Quintet」ではより高高域が瑞々しく、明瞭な存在感と輝きを持っています。「MPT」平面ドライバーは歪みの無い直線的な伸びやかさを提供しており、PZT(圧電)骨伝導ユニットは表には出ないものの高高域の微細な音を詳細に伝える上で大きな役割を果たしていることを実感させます。全体としてやや硬質でスッキリしており見通しの良い透明感のある高音ですが、自然な滑らかさもあり、「Kiwi Ears Quintet」の最も大きな特徴となっています。

Kiwi Ears Quintet中音域は凹むことなく非常にニュートラルで、癖の無い音を鳴らします。ボーカルは近すぎず自然な距離で定位し、スッキリした見通しの良い印象により音場も広く感じさせます。解像感と分離の良さはミドルグレードの製品としてもかなり優れており、演奏も1音1音をしっかり捉えることが出来ます。比較的モニター的な印象もありますが、伸びやかで質の良い広域同様に「MPT」ドライバーは女性ボーカルやピアノの高音などの中高域に心地よいアクセントを提供し、全体として軽快さと伸びやかな印象を与えます。男性ボーカルも締まりの良い音で濃密さはあまり感じませんが優れた解像感と同時に自然な輪郭を持つことで適度に余韻も感じられ、不足を感じることは少ないでしょう。

低域は直線的で締まりの良いミッドベースと、よりパワフルでエネルギーのある重低音が印象的です。DLC振動板による解像度の高さを活かしたチューニングで、優れたレスポンスを持ちつつ自然な印象も保っています。中高域との分離も良く、ややハイブリッド的な要素もあるため滑らかという印象ではありませんが、全体としてニュートラルなバランスのなかで過度に大人しくならず心地よいレスポンスで楽しめるチューニングは好感できます。またドライバー数の多いイヤホンのため、ある程度駆動力のある再生環境で鳴らすほうが低域はよりパワーがあり楽しさが増します。高純度銅線のバランスケーブルにリケーブルするのも良いかも知れませんね。


■ まとめ

短期間に矢継ぎ早に新製品を投入している印象の「Kiwi Ears」ですが、今回の「Kiwi Ears Quintet」もかなり個性的なドライバー構成ながら非常にまとまりが良く、構成面、音質面の両方で200ドル強の価格設定はかなり魅力的に感じました。全体のサウンドバランスは「Kiwi Ears」のほかの製品同様にニュートラルベースのサウンドバランスを維持しつつ、製品ごと、ドライバー構成ごとにそれぞれ異なったキャラクターを与えているのが興味深いですね。
Kiwi Ears Quintet個人的には複雑なドライバー構成に当初は「NICEHCK NX7シリーズ」のような派手なドンシャリを想像したのですが、実際は非常にニュートラルでむしろバランスの良さを強調した入念なチューニングに驚かされました。しかし、種類の異なるドライバーがちょっとずつ個性を見せる箇所があり、シングルドライバーのような一本通った滑らかさとは異なる「ハイブリッドみ」が、淡泊で無個性になりがちなバランスの中で適度なアクセントを与えているように感じました。
そのため、モニター的な正確さや、シングルドライバーの滑らかさとは一線を画しているものの、ニュートラルなバランスの中で優れた解像感や分離感とリスニング的な「楽しさ」を感じたい方には是非とも挑戦していただきたいミドルグレードのイヤホンだと思います(^^)。