
こんにちは。今回は「KZ Krila」および「KZ D-Fi」です。 低価格中華イヤホンのブランドとしてお馴染みの「KZ」ですが、製品はコンスタントに購入しているもののレビューはわりと久しぶりかも知れませんね。「KZ Krila」が最近届いたので、以前から書きかけだった「KZ D-Fi」の2バージョンのレビューと一緒にまとめてみました。そのため、従来より結構長文(つか2倍の長さ)になっております・・・(汗
■ 製品概要からのまとめと購入方法について
私のブログでは毎度おなじみ低価格中華イヤホンブランド「KZ(KZ ACOUSTICS)」ですが、最近は「ZST」以降のTFZ風のシェルデザインから一新し、ちょっとイメージを変えてきている雰囲気がありますね。また過去にレビューしたこともある「Joyodio」が、実はKZの関連で新製品のテスト的な位置づけだったことが判明し、以降のKZ製品でも「スイッチつきモデル」に一気にシフトしてきています。今回の2モデルはまさに「Joyodio SHINE」を踏襲しているシェル形状&スイッチ仕様の製品ですね。
【 KZ D-Fi 】
まずKZから2023年の春頃にリリースされたのがシングルダイナミック仕様の「KZ D-Fi」です。10mm二重磁気回路デュアルキャビティ複合振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載。金属製のシェルを採用したモデルです。


シングルドライバーこうせいながらネットワーク回路による電気制御により出力がコントロールされており、スイッチ付モデルでは4種類のスイッチにより、低域の量感上昇させる3つのモードと、全体の出力をアップさせるモードに切り替えが可能です。またスイッチ無しモデルはスイッチつきの「全OFF」に近いものの完全に同じ仕様ではないため、微妙に傾向も異なるようです。


「KZ D-Fi」の価格は、スイッチ無しモデルが29ドル前後、スイッチつきモデルが32ドル前後、アマゾンではスイッチ無しが4,500円~、スイッチつきが4,900円~です。
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Amazon.co.jp(KZ Flagship Store): KZ D-Fi
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): KZ D-Fi ※掲載時プライム扱い/10%クーポンあり
【 KZ Krila 】
そして7月頃にリリースされたのが1BA+1DDハイブリッド構成の「KZ Krila」です。「千ドル以下では敵無し」みたいななかなかアグレッシブな煽り広告でちょっと話題になりましたね(^^;)。メーカーサイトによるとハイグレード製品のf値に匹敵するチューニングで、かつスイッチつきのギミックなどということで、結構強引な比較表を載せていたりするなど、まあネタ的に思っておくのが正解でしょう。


構成としてはKZとしてはお馴染みの「30095」BAと「10mmドライバー」の組み合わせで、「KZ ZSTX」など同社の定番モデルなど数々の製品と同様のパターンですが、今回の「KZ Krila」の特徴は「30095」BAを完全に再設計して高音質化した、という点と、ダイナミックドライバーでは当初TWS製品向けに開発された密閉シャーシ構造の「XUN」ドライバーの第2世代ユニットを採用している点。


「KZ Krila」のシェルは金属製の「D-Fi」とは異なり、亜鉛合金製のフェイスプレートに対してハウジング部は樹脂製を採用しつつ、4系統のスイッチコントロールを搭載。3種類の低域をアップさせるモードと、もっとも低域が強いモード+高域を抑制し聴きやすくしたモードに変更が可能です。
「KZ Krila」の価格は17ドル前後、アマゾンでは2,700円~です。
AliExpress(KZ Offical Store): KZ Krila
Amazon.co.jp(GK Offical Store): KZ Krila ※掲載時プライム扱い
「KZ Krila」「KZ D-Fi」ともパッケージはお馴染みのコンパクトな白箱タイプです。ただパッケージ内容は製品によってちょっと異なるようです。今回は「KZ D-Fi」のスイッチ有り、無し、そして「KZ Krila」(どれもマイクなし)を購入しています。
【 KZ D-Fi 】
「KZ D-Fi」のパッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピースは装着済みのウレタンタイプと柔らかい白色タイプ、赤軸のグレータイプ。シリコンタイプ2種類はそれぞれS/M/Lサイズが付属。スイッチつきモデルは切替用のピン、説明書。「KZ D-Fi」はイヤーピースが従来モデルよりちょっと豪華仕様になっていますね。


シェルは比較的コンパクトな金属製。シェル部分もフェイスプレートと同じ亜鉛合金製と思われます。そのため従来のKZ製イヤホンに比べると重量がありますが、耳に収まりやすい形状のため、装着時に耳から落ちることはほぼ無いでしょう。フェイスプレートの下部に大きめの穴があり、ベント(空気孔)になっているようですね。


スイッチの有り/無しでフェイスプレートは同一ですがハウジング部分の厚みが異なります。装着性にはほとんど差はありませんがで、少しでも軽量コンパクトな方が良い方にはスイッチ無しを選ぶのも良いと思います。


コネクタおよびケーブルは従来通りのタイプC仕様の銀メッキ線ケーブルが付属します。イヤーピースは従来のKZとは異なるものが付属しますが、実は先行する「Joyodio SHINE」の付属イヤースピースとほぼ同じだったりします。
【 KZ Krila 】
「KZ Krila」のパッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピースは従来と同じ黒色シリコンタイプがS/M/Lサイズ、装着済みウレタンタイプ(1ペア)、スイッチ切り替え用ピン、説明書。


「KZ D-Fi」でも装着済みだったウレタンイヤーピースは「KZ PR1 PRO」以降の一部モデルで付属するようになりましたね。ただしこちらはシリコンタイプは従来通りのフジツボタイプが付属します。


「KZ Krila」のシェル形状は一見すると「KZ D-Fi」と同様に見えますが、実際はさらにコンパクトにまとめられています。また亜鉛合金製のフェイスプレートに対して本体は樹脂製のためより軽量で、耳の小さな方でも装着性が増していると思います。フェイスパネルのデザインも「KZ D-Fi」とは異なりますが、下部にベント(空気孔)が空いている点は同様ですね。


コネクタはKZタイプCで銀メッキ線タイプのケーブルが付属する点も同様です。
「KZ Krila」と「KZ D-Fi」、さらに「Joyodio SHINE」の外観を比較してみると、どれも非常によく似ていますがフェイスデザイン以外にもシェル形状が異なっていることが分かります。


本体は3Dプリントによる樹脂製の「Joyodio SHINE」は「KZ D-Fi」と非常によく似た形状ですがフェイスが僅かに小さく、ステムも短いことがわかります。ちなみに「Joyodio SHINE」は「KZ Krila」および「KZ D-Fi」より小口径の7mmダイナミックドライバーを搭載し、本体側のスペースに「30019」「29689」のBAを搭載するなど内部的にはかなり異なる仕様になっています。そして「KZ Krila」はこれら2製品より厚みは同様ですが明らかにコンパクトにまとまっています。またステムノズル部に「30095」BAの存在が確認出来ますね。
■ サウンドインプレッション
「KZ D-Fi」および「KZ Krila」のサウンドは、従来のKZのドンシャリ系のチューニングと比べるとかなりニュートラルなサウンドで仕上げられています。具体的には○○ターゲット的なカーブを描き、さらにそのなかでもMoondropやTanchjim といったミドルグレードの有名モデルを彷彿とさせるサウンドバランスを意識しているようです。このバランスはHiFi(原音忠実)的な要素とリスニング的な愉しさを両立しているという点で優れている反面、ドライバーの性能が如実に表れる、という意味で「非常に粗が出やすい」という側面もあり、低価格でこのようなチューニングをした製品には完成度的にちょっと残念なものも少なくないのが実態です。そんななかで「KZ Krila」および「KZ D-Fi」はさすがに「1000ドル以下に敵無し」は誇大広告かなと思いますが(^^;)、アンダー50ドルクラスのイヤホンとしてはかなりよくまとまっていると思います。「KZ D-Fi」はやや温かい印象で中低域が厚く全体的に滑らかで、「KZ Krila」はKZのハイブリッドらしい寒色系のスッキリした印象とメリハリがあります。
【 KZ D-Fi 】
「KZ D-Fi」はスイッチ有り、スイッチ無しの2種類のモデルがリリースされており、有りモデルはインピーダンス29Ω~48Ω(スイッチにより可変)、無しモデルは23.5Ωという仕様になっています。つまりスイッチ有りモデルのどのモードでも厳密的には無しモデルとは異なるサウンドになるわけですが、実際に聴いてみると無しモデルと、有りモデルのスイッチをすべてON(1111)での印象の違いはほぼ誤差の範囲と言って良いかも知れません。強いて言うならば有りモデル(1111)のほうが僅かにメリハリがあります。
なお、「KZ D-Fi」では装着済みのウレタンタイプに加え、「Joyodio SHINE」に付属していたものと同様の開口部が広いイヤーピースが付属します。ウレタンタイプは遮音性を高め低域をより感じられるものの解像感の低下などがあるため好みが分かれますね。また付属のイヤーピースは耳に合うひとは良いかもしれませんが、どちらかというと合わない方のほうが多いかも。個人的にはTRNの「T-Eartips」に交換をしましたが、同様に耳に合うイヤーピースに交換するのが良いでしょう。
スイッチつきモデルについてはメーカーサイトでは「すべてOFF(0000)」、「1のみON(1000)」=低域1dB アップ、「1+2がON(1100)」=低域2dBアップ、「1+2+3がON(1110)」=低域3dBアップ、「すべてON(1111)」=インピーダンス変更、の4種類が記載されています。それ以外のスイッチ構成でもそれぞれ僅かですが異なる変化があるため、いろいろ試して好みのチューニングを探してみるのも良いでしょう。ただ個人的には、再生環境、つまりプレーヤー側の駆動力や出力に応じて「すべてOFF(0000)」または「すべてON(1111)」を切り替える程度で良いかな、という印象です。要するに「スイッチ無しモデル」ですでに十分にチューニングとして完成しているところで、次の「KZ Krila」に向けた人柱的モデル(汗)として「スイッチ付き」をリリースしたのかな、という感じがしています。
というわけで、「KZ D-Fi」のスイッチ無しモデルを中心に見てみると、高域はスッキリした印象はあるものの、従来の派手さのあるKZサウンドと比べると若干暗く、より自然な印象の音を鳴らします。刺さりなどはほぼ無く聴きやすい印象。ある程度の主張はあるため不足は無いものの、伸び感や透明感は価格的には良い方という印象です。
中音域は凹むことなく鳴ります。ボーカルはやや近いものの定位は自然でニュートラルなサウンドバランス。中高域は比較的スッキリしており抜けは良い印象。中低域付近は僅かに温かみがあり聴きやすい印象ですが、分離性は一般的で解像感や見通しの良さより雰囲気を楽しむタイプの音作り。やはり粗の出やすい音域ということもあり、価格帯を考慮すると妥当なチューニングだと思います。
低域は従来のKZ製イヤホンに比べると量的には控えめで、全体としてフラット方向のバランスにまとめられています。ミッドベースはスッキリめで分離は良く、小気味良さがあります。重低音は結構深くまで届き、同社のドライバーの進化を実感します。スイッチでは低域の量感を主にチューニングしますが全体のバランスを維持している範囲で、ミッドベース付近はそこまで大きな変化は無いため実際の印象では差はあまり大きくはありません。
【 KZ Krila 】
「KZ Krila」の音質傾向はKZらしい寒色系のハイブリッドサウンドを踏襲しつつ、よりニュートラルなバランスと質感の向上を実現しています。前述の「KZ D-Fi」が「Joyodio SHINE」を踏まえつつ、KZのシングルドライバーでニュートラル方向のサウンドで仕上げた製品で、スイッチ付きモデルについては正直「あまり意味が無い」仕様だったのに対し、「KZ Krila」は結構「満を持して」製品化した印象があります。サウンドバランスはハイブリッドらしいドンシャリ傾向の「KZ ZSTX」に比べ、よりニュートラルな方向に調整されていますが、KZらしいスッキリした高域と締まりがありパワフルな低域を持つ、寒色系弱ドンシャリのサウンドもある程度は感じる事が出来ます。
しかしインピーダンス12Ωの「KZ ZSTX」で得られた明瞭感やキレの良さは「KZ Krila」には無く、「KZ D-Fi」ほどでは無いものの僅かに温かく、良く言えば自然な輪郭、人によってはやや緩く感じる印象であることは考慮すべきでしょう。KZである以上、当然ですがMoondropやTanchjimとは違う、ということですね。
「KZ Krila」のスイッチは「KZ D-Fi」同様の低域を1dB~3dBアップさせる3段階の切替と、高域を抑える「すべてON(1111)」の4段階目の設定になっています。この設定をみて、「すべてON(1111)」の設定ではBAをOFFにしているのかな?とも思ったのですが、実際に聴いてみると相対的に出力は抑えられてはいるもののBAの存在も感じる事は出来ました。
「KZ Krila」の高域はKZらしいやや硬質感のあるスッキリした音を鳴らします。「KZ D-Fi」と比較しても「KZ Krila」に搭載された「30095」BAの存在をしっかり実感出来ます。ただ以前のKZにあった金属質のギラつきはほぼ皆無でたしかにドライバー自体が進化しているのは感じられますね。とはいえ、ミドルグレード~数百ドルクラスの製品と比較すれば当然粗さはあり、低価格イヤホンの範疇で以前よりは大きく進化している、という印象です。
中音域は曲によっては僅かに凹んで感じますがボーカル域を中心に比較的近くでハッキリと定位し、明瞭感のあるスッキリとした癖の無い音を鳴らします。従来のKZのハイブリッドに比べると若干の滑らかさがあり自然な印象ですが、キレの良さや分離感は若干トレードオフしています。それでもアンダー50ドルクラスとしては十分な解像感があり、音場も広く、個々の音も捉えやすい印象。ある程度細かい音もしっかり描写してくれるため、様々な用途で実用性がありますね。
低域はスイッチを「すべてOFF(0000)」の状態ではニュートラル方向の量感で、従来のKZに比べると多少控えめに感じます。それでも「すべてON(1111)」にすることで、低域は3dBアップし、高域を低減させるため、KZらしいパワフルさを感じさせることが出来ます。低域には密閉シャーシ構造のXUNドライバーの第2世代が搭載されており、通常の10mmドライバーよりよりパワフルで強めのアタックが特徴的です。重低音も十分に深く、かつスピードがあり解像度も高いためEDMやハードロックなども十分に楽しめる音を鳴らします。低域の質感の点では同クラスのイヤホンの中でもトップクラスといえるかも知れませんね。
■ まとめ
というわけで「KZ Krila」および「KZ D-Fi」のレビューですが、まとめてみたつもりが普通に2倍の長さになっていますね(汗)。というわけで、「KZ Krila」はこの価格としては結構オススメ、「KZ D-Fi」はスイッチ無しでとりあえず買っておくのもアリ、という感じです。どちらも従来のKZ製品より「普通のスペック」になっているため、イヤーピースやケーブルはいろいろ替えてみるベース機としても良いかと思います。ちょうどケーブルの未レビュー製品も相当たまっているので、この辺のレビューでもちょいちょい登場させようと思っています。
私のブログでは毎度おなじみ低価格中華イヤホンブランド「KZ(KZ ACOUSTICS)」ですが、最近は「ZST」以降のTFZ風のシェルデザインから一新し、ちょっとイメージを変えてきている雰囲気がありますね。また過去にレビューしたこともある「Joyodio」が、実はKZの関連で新製品のテスト的な位置づけだったことが判明し、以降のKZ製品でも「スイッチつきモデル」に一気にシフトしてきています。今回の2モデルはまさに「Joyodio SHINE」を踏襲しているシェル形状&スイッチ仕様の製品ですね。
【 KZ D-Fi 】
まずKZから2023年の春頃にリリースされたのがシングルダイナミック仕様の「KZ D-Fi」です。10mm二重磁気回路デュアルキャビティ複合振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載。金属製のシェルを採用したモデルです。


シングルドライバーこうせいながらネットワーク回路による電気制御により出力がコントロールされており、スイッチ付モデルでは4種類のスイッチにより、低域の量感上昇させる3つのモードと、全体の出力をアップさせるモードに切り替えが可能です。またスイッチ無しモデルはスイッチつきの「全OFF」に近いものの完全に同じ仕様ではないため、微妙に傾向も異なるようです。


「KZ D-Fi」の価格は、スイッチ無しモデルが29ドル前後、スイッチつきモデルが32ドル前後、アマゾンではスイッチ無しが4,500円~、スイッチつきが4,900円~です。
AliExpress(KZ Offical Store): KZ D-Fi
Amazon.co.jp(KZ Flagship Store): KZ D-Fi
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免責事項:
本レビューは個人的に製品を購入し掲載している「購入者レビュー」となります。
本レビューに対してそれ以外の金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
【 KZ Krila 】
そして7月頃にリリースされたのが1BA+1DDハイブリッド構成の「KZ Krila」です。「千ドル以下では敵無し」みたいななかなかアグレッシブな煽り広告でちょっと話題になりましたね(^^;)。メーカーサイトによるとハイグレード製品のf値に匹敵するチューニングで、かつスイッチつきのギミックなどということで、結構強引な比較表を載せていたりするなど、まあネタ的に思っておくのが正解でしょう。


構成としてはKZとしてはお馴染みの「30095」BAと「10mmドライバー」の組み合わせで、「KZ ZSTX」など同社の定番モデルなど数々の製品と同様のパターンですが、今回の「KZ Krila」の特徴は「30095」BAを完全に再設計して高音質化した、という点と、ダイナミックドライバーでは当初TWS製品向けに開発された密閉シャーシ構造の「XUN」ドライバーの第2世代ユニットを採用している点。


「KZ Krila」のシェルは金属製の「D-Fi」とは異なり、亜鉛合金製のフェイスプレートに対してハウジング部は樹脂製を採用しつつ、4系統のスイッチコントロールを搭載。3種類の低域をアップさせるモードと、もっとも低域が強いモード+高域を抑制し聴きやすくしたモードに変更が可能です。
「KZ Krila」の価格は17ドル前後、アマゾンでは2,700円~です。
AliExpress(KZ Offical Store): KZ Krila
Amazon.co.jp(GK Offical Store): KZ Krila ※掲載時プライム扱い
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「KZ Krila」「KZ D-Fi」ともパッケージはお馴染みのコンパクトな白箱タイプです。ただパッケージ内容は製品によってちょっと異なるようです。今回は「KZ D-Fi」のスイッチ有り、無し、そして「KZ Krila」(どれもマイクなし)を購入しています。
【 KZ D-Fi 】
「KZ D-Fi」のパッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピースは装着済みのウレタンタイプと柔らかい白色タイプ、赤軸のグレータイプ。シリコンタイプ2種類はそれぞれS/M/Lサイズが付属。スイッチつきモデルは切替用のピン、説明書。「KZ D-Fi」はイヤーピースが従来モデルよりちょっと豪華仕様になっていますね。


シェルは比較的コンパクトな金属製。シェル部分もフェイスプレートと同じ亜鉛合金製と思われます。そのため従来のKZ製イヤホンに比べると重量がありますが、耳に収まりやすい形状のため、装着時に耳から落ちることはほぼ無いでしょう。フェイスプレートの下部に大きめの穴があり、ベント(空気孔)になっているようですね。


スイッチの有り/無しでフェイスプレートは同一ですがハウジング部分の厚みが異なります。装着性にはほとんど差はありませんがで、少しでも軽量コンパクトな方が良い方にはスイッチ無しを選ぶのも良いと思います。


コネクタおよびケーブルは従来通りのタイプC仕様の銀メッキ線ケーブルが付属します。イヤーピースは従来のKZとは異なるものが付属しますが、実は先行する「Joyodio SHINE」の付属イヤースピースとほぼ同じだったりします。
【 KZ Krila 】
「KZ Krila」のパッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピースは従来と同じ黒色シリコンタイプがS/M/Lサイズ、装着済みウレタンタイプ(1ペア)、スイッチ切り替え用ピン、説明書。


「KZ D-Fi」でも装着済みだったウレタンイヤーピースは「KZ PR1 PRO」以降の一部モデルで付属するようになりましたね。ただしこちらはシリコンタイプは従来通りのフジツボタイプが付属します。


「KZ Krila」のシェル形状は一見すると「KZ D-Fi」と同様に見えますが、実際はさらにコンパクトにまとめられています。また亜鉛合金製のフェイスプレートに対して本体は樹脂製のためより軽量で、耳の小さな方でも装着性が増していると思います。フェイスパネルのデザインも「KZ D-Fi」とは異なりますが、下部にベント(空気孔)が空いている点は同様ですね。


コネクタはKZタイプCで銀メッキ線タイプのケーブルが付属する点も同様です。
「KZ Krila」と「KZ D-Fi」、さらに「Joyodio SHINE」の外観を比較してみると、どれも非常によく似ていますがフェイスデザイン以外にもシェル形状が異なっていることが分かります。


本体は3Dプリントによる樹脂製の「Joyodio SHINE」は「KZ D-Fi」と非常によく似た形状ですがフェイスが僅かに小さく、ステムも短いことがわかります。ちなみに「Joyodio SHINE」は「KZ Krila」および「KZ D-Fi」より小口径の7mmダイナミックドライバーを搭載し、本体側のスペースに「30019」「29689」のBAを搭載するなど内部的にはかなり異なる仕様になっています。そして「KZ Krila」はこれら2製品より厚みは同様ですが明らかにコンパクトにまとまっています。またステムノズル部に「30095」BAの存在が確認出来ますね。
■ サウンドインプレッション

【 KZ D-Fi 】

なお、「KZ D-Fi」では装着済みのウレタンタイプに加え、「Joyodio SHINE」に付属していたものと同様の開口部が広いイヤーピースが付属します。ウレタンタイプは遮音性を高め低域をより感じられるものの解像感の低下などがあるため好みが分かれますね。また付属のイヤーピースは耳に合うひとは良いかもしれませんが、どちらかというと合わない方のほうが多いかも。個人的にはTRNの「T-Eartips」に交換をしましたが、同様に耳に合うイヤーピースに交換するのが良いでしょう。

というわけで、「KZ D-Fi」のスイッチ無しモデルを中心に見てみると、高域はスッキリした印象はあるものの、従来の派手さのあるKZサウンドと比べると若干暗く、より自然な印象の音を鳴らします。刺さりなどはほぼ無く聴きやすい印象。ある程度の主張はあるため不足は無いものの、伸び感や透明感は価格的には良い方という印象です。

低域は従来のKZ製イヤホンに比べると量的には控えめで、全体としてフラット方向のバランスにまとめられています。ミッドベースはスッキリめで分離は良く、小気味良さがあります。重低音は結構深くまで届き、同社のドライバーの進化を実感します。スイッチでは低域の量感を主にチューニングしますが全体のバランスを維持している範囲で、ミッドベース付近はそこまで大きな変化は無いため実際の印象では差はあまり大きくはありません。
【 KZ Krila 】

しかしインピーダンス12Ωの「KZ ZSTX」で得られた明瞭感やキレの良さは「KZ Krila」には無く、「KZ D-Fi」ほどでは無いものの僅かに温かく、良く言えば自然な輪郭、人によってはやや緩く感じる印象であることは考慮すべきでしょう。KZである以上、当然ですがMoondropやTanchjimとは違う、ということですね。
「KZ Krila」のスイッチは「KZ D-Fi」同様の低域を1dB~3dBアップさせる3段階の切替と、高域を抑える「すべてON(1111)」の4段階目の設定になっています。この設定をみて、「すべてON(1111)」の設定ではBAをOFFにしているのかな?とも思ったのですが、実際に聴いてみると相対的に出力は抑えられてはいるもののBAの存在も感じる事は出来ました。

中音域は曲によっては僅かに凹んで感じますがボーカル域を中心に比較的近くでハッキリと定位し、明瞭感のあるスッキリとした癖の無い音を鳴らします。従来のKZのハイブリッドに比べると若干の滑らかさがあり自然な印象ですが、キレの良さや分離感は若干トレードオフしています。それでもアンダー50ドルクラスとしては十分な解像感があり、音場も広く、個々の音も捉えやすい印象。ある程度細かい音もしっかり描写してくれるため、様々な用途で実用性がありますね。

■ まとめ
というわけで「KZ Krila」および「KZ D-Fi」のレビューですが、まとめてみたつもりが普通に2倍の長さになっていますね(汗)。というわけで、「KZ Krila」はこの価格としては結構オススメ、「KZ D-Fi」はスイッチ無しでとりあえず買っておくのもアリ、という感じです。どちらも従来のKZ製品より「普通のスペック」になっているため、イヤーピースやケーブルはいろいろ替えてみるベース機としても良いかと思います。ちょうどケーブルの未レビュー製品も相当たまっているので、この辺のレビューでもちょいちょい登場させようと思っています。