こんにちは。今回は「Kinera Celest PhoenixCall」です。高級感のあるクリアシェルを採用し、ドライバー構成には「1DD+2BA+2FPD(マイクロ平面ドライバー)」のCelestブランドらしい個性的なドライバーを搭載。美しいデザインとバランスの良いサウンドが魅力的な新製品です。
■ 製品概要からのまとめと購入方法について
「Kinera」は2011年に設立された自社でBAドライバーの製造を行う規模の製造メーカーのひとつで、自社ブランドの「Kinera」としては2016年に最初のイヤホンをリリースすることでスタートしています。その後急速にラインナップを拡充し、マニアの間で幅広く認知されるようになりました。2022年に展開を開始した「Celest」では自社開発の「SPD(Square Planar Driver)」ドライバーを搭載する「Celest Gumiho」や「Celest Pandamon」といった低価格ながら最新技術を織り込み中国の古代神話になぞらえた製品展開で注目を浴びています。
今回リリースされた「Kinera Celest PhoenixCall」は「1DD+2BA+2FPD(マイクロ平面)」の独自の5ドライバー構成を採用し、美しいシェルデザインでまとめつつ、129.99ドルの低価格を実現した最新モデルです。
「Kinera Celest PhoenixCall」のドライバー構成は、低域用の「7mmダイナミックドライバー」、中音域用のと高域用にそれぞれ独自の「カスタマイズされたBAドライバー」を配置し、さらに新たに開発した2基の「6mm FPD(マイクロ平面ドライバー)」を搭載します。
「Kinera Celest PhoenixCall」のシェルは美しく装着性にすぐれたクリアシェルに中国神話の「百鳥歸巣」をイメージした手書きのフェイスプレートを採用。カラーバリエーションは「ピンク&ブルー」と「クリアホワイト」の2色を用意しています。ケーブルは5N 高純度銅銀メッキ線ケーブルが付属し、プラグは3.5mmと4.4mmを購入時に選択可能です。
「Kinera Celest PhoenixCall」の詳細な製品情報については先日掲載した「新製品情報」を参照ください。
→ 《新製品情報》 「Kinera Celest PhoenixCall」 1DD+2BA+2FPD(マイクロ平面)構成に美しいクリアシェルで129.99ドルの魅力的な最新中華イヤホン
「Kinera Celest PhoenixCall」の購入はHiFiGoの直販サイト、またはアマゾンにて。
価格は129.99ドル、アマゾンでは18,606円です。
HiFiGo(hifigo.com): Kinera Celest PhoenixCall
Amazon.co.jp(HiFiGo): Kinera Celest PhoenixCall
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(「Celest 221(ボーカル強調タイプ)」「Celest C-07(バランスタイプ)」の2種類、それぞれS/M/Lサイズ)、ケース、メタルアクセサリー、説明書、保証書、その他。
本体は3Dプリンティングされたレジン製で内部もレジンで充填されており、多少重量感と強度の高さを感じる仕上がり。そのため本体サイズは比較的コンパクトで耳への収まりもよい形状です。また手書きフェイスカバーとクリアシェルのデザインは高級感があり、とても美しい外観に仕上がっています。
シェル内部では、ダイナミックドライバー、2種類のBA、そしてマイクロ平面ドライバーの4Way仕様でそれぞれに3Dプリントにより作られた音導管が接続されています。また音導管の先端にはそれぞれフィルターが設置され出力をコントロールしています。ネットワーク基盤(PCB)はダイナミックドライバーの背面に配置されていますが、クロスオーバー制御は電気的抵抗というよりは各音導管のフィルターが主体となっている構造のようですね。
製品版の前にテスト版が届いており、こちらは「ピンク&ブルー」で届いています。かなり鮮やかなカラーリングのクリアシェルでこちらもとても目を引くデザインですね。ケーブルは5N 高純度銅銀メッキ線ケーブルで「クリアホワイト」ではシルバー、「ピンク&ブルー」では本体と同じピンクとブルーの組み合わせによるカラーケーブルが付属します。比較的太さのある4芯タイプのケーブルで被膜は多少弾力がありますが、取り回しは良く使いやすい印象。
また「Celest」シリーズでは毎回付属するメタルアクセサリーは今回も付属し、鳳凰をかたどったデザインになっています。またしっかりしたケースが付属するのも良いですね。イヤーピースは2種類のタイプが付属しますが、他にも必要に応じてよりフィット感のあるものに交換するのも良いでしょう。
■ サウンドインプレッション
「Kinera Celest PhoenixCall」の音質傾向は最近では結構珍しい、かなりメリハリが強めのドンシャリ傾向。以前届いたテスト版ではもっとニュートラル方向だった気がしますが、製品版では個々のドライバーの個性をかなり前面に出した音作りになっています。
普段使用している(ある程度駆動力のある)レビュー環境ではかなりメリハリの強いサウンドですが、スマートフォンに接続するオーディオアダプターのような駆動力が少なめの環境で、さらにやや小さめの音量で聴いてみると、わかりやすいメリハリ感はあるものの比較的聴きやすく、Kineraっぽいウォームさも感じられたりもします。小音量で優しく鳴らしても、しっかり追い込んで再生してもそれなりにまとまって楽しさがある、という音作りはこのドライバー数になると実は結構難しいのでは、と思います。
高高域を担うマイクロ平面ドライバーは直線的で強い主張がありますが、刺さりやすい帯域に高域用BAとのつなぎ目があって適度な谷になっているため思ったより刺激は少なく、低域も分かりやすくブーストされていますが、中低域に大きな凹みがあるため結果的に分離の良さと音場感を感じるメリハリになっいたります(こちらも「Truthear ZERO」の2基のドライバーの中低域の谷間のようなイメージですね)。個々のドライバーが好き勝手に主張しているようでなぜかチームとして調和が取れているような、そんな印象のサウンドで、最近のクロスオーバーを入念にチューニングした滑らかさを特徴としたハイブリッドとは真逆のアプローチだと感じます。
「Kinera Celest PhoenixCall」の高域は、明瞭で強めの主張の音を鳴らします。2基のFPD(マイクロ平面ドライバー)は高高域で直線的な伸びやかさを持ち、高域用BAを強力に保管します。ただドライバー間のつなぎ目にやや谷があり、その部分が刺激を抑えることになるため、結果的に思ったより刺さらない、という感じになっています。硬質で煌びやかさもありますが、強調されており正確ではありません。
中音域はある程度の駆動力で鳴らすと非常に主張の強い高域と低域により分かりやすく凹みます。ただあえてドライバー間のクロスオーバーをハッキリ分けることで結果的に音域間の分離は良く、小音量でも、逆にガツンと鳴らしてもマスクされることはありません。ボーカル域の中心となる音域は中音域用のBAユニットのみで担っているため、BAらしい粒立ちの良い詳細な表現力があり、結果的にやたら派手な高域と低域の間でもちゃんと存在感を維持しているのが興味深いですね。音場は普通で臨場感のあるサウンドですが、定位は正確ではありません(まあ、そりゃそうですよね^^;)。
低域は非常にパワフルで量感のある音を鳴らします。ダイナミックドライバーは中音域付近から担当し、BAとのクロスオーバーには高域同様に谷がありますが、やはり「Truthear ZERO」のように低域を非常に強く主張させながら籠もらない、マルチドライバーらしい音作りを行っています。7mmの小口径ドライバーながら密閉構造を採用することで、小口径のキレの良さを維持しつつ、重低音が非常に深く、エネルギーのある音を鳴らしてくれます。
さまざまな再生環境でとにかく楽しく、それなりに鳴ってくれるのが「Kinera Celest PhoenixCall」の良いところでしょう。いっぽうで原音忠実性、とかそういったものはどこか別の宇宙に置いてきたのかも知れない、という音作りですので、その辺にこだわる方には全然合わない可能性もあります。もっとも電気的な出力調整を行わず、音域ごとに個々のドライバーがしっかり鳴っているため、イコライザーなどとの相性も良さそうですので、調整してみると案外良い感じになるかも(保証はできませんが・・・)。
■ まとめ
「Kinera Celest PhoenixCall」は改めて、「Kinera」のなかでも「Celest」がド変態ブランド(←褒め言葉)であることを実感させる、かなり楽しいイヤホンでした。これまでのモデルは「刺さる人には刺さる」「キワモノ好きにはたまらない」みたいな、決してポジティブだけとは言い難い部分もありましたが、「Kinera Celest PhoenixCall」は見た目にカッコ良く、ドライバー構成は「Celest」らしく攻めまくり、そしてサウンドは突き抜けたハイブリッド感ながらちゃんと製品として成立しているという、非常に楽しい製品でした。
「Kinera Celest PhoenixCall」ではおそらく、最近では比較的低価格の製品でも多くなっている電気的な出力調整によるクロスオーバー制御はほぼ行っておらず、音導管のダンパーフィルターにより各ドライバーが担う音域を調整すえうことで音作りを行っていると考えられます。もちろん独自ドライバーを含む5ドライバー構成や美しいシェルデザインで低価格を実現するため、という理由も大きいと思いますが、結果的に「そうそうハイブリッドってこういうサウンドだったよね」と思い出させる楽しさがあります。
またドライバーメーカーでもある「Kinera」が手がける製品ということもあって、かつての低価格中華ハイブリッドで多かった「低価格で歩留まりを良くするために下がった品質を別のドライバーで補う」といった視点は皆無で、「Kinera Celest PhoenixCall」を構成する個々のドライバーは、それぞれが非常に質の高い音を鳴らしている点も特筆すべきでしょう。
それは駆動力の低い環境で鳴らしても、逆に大出力でガツンと鳴らしても歪みなどの破綻を起こすことは無く、それぞれに楽しく使えることからも実感出来ます。これはもし「Kinera Celest PhoenixCall」のバランスが好みで無かった場合も、クセの強いケーブルに交換してみたり、あるいはプレーヤー側のイコライザで直接音域を調整しても破綻する可能性が低いことを意味します。要するにマニアにとっても「かなり遊べるイヤホン」と考えて良いと思います。ちょっと最近の本流からは外れますが、100ドル台、1万円台で購入可能なかなり楽しイヤホン、興味のある方はぜひとも挑戦してみてくださいね(^^)。
「Kinera」は2011年に設立された自社でBAドライバーの製造を行う規模の製造メーカーのひとつで、自社ブランドの「Kinera」としては2016年に最初のイヤホンをリリースすることでスタートしています。その後急速にラインナップを拡充し、マニアの間で幅広く認知されるようになりました。2022年に展開を開始した「Celest」では自社開発の「SPD(Square Planar Driver)」ドライバーを搭載する「Celest Gumiho」や「Celest Pandamon」といった低価格ながら最新技術を織り込み中国の古代神話になぞらえた製品展開で注目を浴びています。
今回リリースされた「Kinera Celest PhoenixCall」は「1DD+2BA+2FPD(マイクロ平面)」の独自の5ドライバー構成を採用し、美しいシェルデザインでまとめつつ、129.99ドルの低価格を実現した最新モデルです。
「Kinera Celest PhoenixCall」のドライバー構成は、低域用の「7mmダイナミックドライバー」、中音域用のと高域用にそれぞれ独自の「カスタマイズされたBAドライバー」を配置し、さらに新たに開発した2基の「6mm FPD(マイクロ平面ドライバー)」を搭載します。
「Kinera Celest PhoenixCall」のシェルは美しく装着性にすぐれたクリアシェルに中国神話の「百鳥歸巣」をイメージした手書きのフェイスプレートを採用。カラーバリエーションは「ピンク&ブルー」と「クリアホワイト」の2色を用意しています。ケーブルは5N 高純度銅銀メッキ線ケーブルが付属し、プラグは3.5mmと4.4mmを購入時に選択可能です。
「Kinera Celest PhoenixCall」の詳細な製品情報については先日掲載した「新製品情報」を参照ください。
→ 《新製品情報》 「Kinera Celest PhoenixCall」 1DD+2BA+2FPD(マイクロ平面)構成に美しいクリアシェルで129.99ドルの魅力的な最新中華イヤホン
「Kinera Celest PhoenixCall」の購入はHiFiGoの直販サイト、またはアマゾンにて。
価格は129.99ドル、アマゾンでは18,606円です。
HiFiGo(hifigo.com): Kinera Celest PhoenixCall
Amazon.co.jp(HiFiGo): Kinera Celest PhoenixCall
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして HiFiGo より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Kinera Celest PhoenixCall」のパッケージはパープルカラーの凝ったデザインのボックスで、パッケージを開けると、「Celest」シリーズでは毎回付属する金属製のアクセサリーと、製品名についての説明が記載されたシートが現れます。
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(「Celest 221(ボーカル強調タイプ)」「Celest C-07(バランスタイプ)」の2種類、それぞれS/M/Lサイズ)、ケース、メタルアクセサリー、説明書、保証書、その他。
本体は3Dプリンティングされたレジン製で内部もレジンで充填されており、多少重量感と強度の高さを感じる仕上がり。そのため本体サイズは比較的コンパクトで耳への収まりもよい形状です。また手書きフェイスカバーとクリアシェルのデザインは高級感があり、とても美しい外観に仕上がっています。
シェル内部では、ダイナミックドライバー、2種類のBA、そしてマイクロ平面ドライバーの4Way仕様でそれぞれに3Dプリントにより作られた音導管が接続されています。また音導管の先端にはそれぞれフィルターが設置され出力をコントロールしています。ネットワーク基盤(PCB)はダイナミックドライバーの背面に配置されていますが、クロスオーバー制御は電気的抵抗というよりは各音導管のフィルターが主体となっている構造のようですね。
製品版の前にテスト版が届いており、こちらは「ピンク&ブルー」で届いています。かなり鮮やかなカラーリングのクリアシェルでこちらもとても目を引くデザインですね。ケーブルは5N 高純度銅銀メッキ線ケーブルで「クリアホワイト」ではシルバー、「ピンク&ブルー」では本体と同じピンクとブルーの組み合わせによるカラーケーブルが付属します。比較的太さのある4芯タイプのケーブルで被膜は多少弾力がありますが、取り回しは良く使いやすい印象。
また「Celest」シリーズでは毎回付属するメタルアクセサリーは今回も付属し、鳳凰をかたどったデザインになっています。またしっかりしたケースが付属するのも良いですね。イヤーピースは2種類のタイプが付属しますが、他にも必要に応じてよりフィット感のあるものに交換するのも良いでしょう。
■ サウンドインプレッション
「Kinera Celest PhoenixCall」の音質傾向は最近では結構珍しい、かなりメリハリが強めのドンシャリ傾向。以前届いたテスト版ではもっとニュートラル方向だった気がしますが、製品版では個々のドライバーの個性をかなり前面に出した音作りになっています。
普段使用している(ある程度駆動力のある)レビュー環境ではかなりメリハリの強いサウンドですが、スマートフォンに接続するオーディオアダプターのような駆動力が少なめの環境で、さらにやや小さめの音量で聴いてみると、わかりやすいメリハリ感はあるものの比較的聴きやすく、Kineraっぽいウォームさも感じられたりもします。小音量で優しく鳴らしても、しっかり追い込んで再生してもそれなりにまとまって楽しさがある、という音作りはこのドライバー数になると実は結構難しいのでは、と思います。
高高域を担うマイクロ平面ドライバーは直線的で強い主張がありますが、刺さりやすい帯域に高域用BAとのつなぎ目があって適度な谷になっているため思ったより刺激は少なく、低域も分かりやすくブーストされていますが、中低域に大きな凹みがあるため結果的に分離の良さと音場感を感じるメリハリになっいたります(こちらも「Truthear ZERO」の2基のドライバーの中低域の谷間のようなイメージですね)。個々のドライバーが好き勝手に主張しているようでなぜかチームとして調和が取れているような、そんな印象のサウンドで、最近のクロスオーバーを入念にチューニングした滑らかさを特徴としたハイブリッドとは真逆のアプローチだと感じます。
「Kinera Celest PhoenixCall」の高域は、明瞭で強めの主張の音を鳴らします。2基のFPD(マイクロ平面ドライバー)は高高域で直線的な伸びやかさを持ち、高域用BAを強力に保管します。ただドライバー間のつなぎ目にやや谷があり、その部分が刺激を抑えることになるため、結果的に思ったより刺さらない、という感じになっています。硬質で煌びやかさもありますが、強調されており正確ではありません。
中音域はある程度の駆動力で鳴らすと非常に主張の強い高域と低域により分かりやすく凹みます。ただあえてドライバー間のクロスオーバーをハッキリ分けることで結果的に音域間の分離は良く、小音量でも、逆にガツンと鳴らしてもマスクされることはありません。ボーカル域の中心となる音域は中音域用のBAユニットのみで担っているため、BAらしい粒立ちの良い詳細な表現力があり、結果的にやたら派手な高域と低域の間でもちゃんと存在感を維持しているのが興味深いですね。音場は普通で臨場感のあるサウンドですが、定位は正確ではありません(まあ、そりゃそうですよね^^;)。
低域は非常にパワフルで量感のある音を鳴らします。ダイナミックドライバーは中音域付近から担当し、BAとのクロスオーバーには高域同様に谷がありますが、やはり「Truthear ZERO」のように低域を非常に強く主張させながら籠もらない、マルチドライバーらしい音作りを行っています。7mmの小口径ドライバーながら密閉構造を採用することで、小口径のキレの良さを維持しつつ、重低音が非常に深く、エネルギーのある音を鳴らしてくれます。
さまざまな再生環境でとにかく楽しく、それなりに鳴ってくれるのが「Kinera Celest PhoenixCall」の良いところでしょう。いっぽうで原音忠実性、とかそういったものはどこか別の宇宙に置いてきたのかも知れない、という音作りですので、その辺にこだわる方には全然合わない可能性もあります。もっとも電気的な出力調整を行わず、音域ごとに個々のドライバーがしっかり鳴っているため、イコライザーなどとの相性も良さそうですので、調整してみると案外良い感じになるかも(保証はできませんが・・・)。
■ まとめ
「Kinera Celest PhoenixCall」は改めて、「Kinera」のなかでも「Celest」がド変態ブランド(←褒め言葉)であることを実感させる、かなり楽しいイヤホンでした。これまでのモデルは「刺さる人には刺さる」「キワモノ好きにはたまらない」みたいな、決してポジティブだけとは言い難い部分もありましたが、「Kinera Celest PhoenixCall」は見た目にカッコ良く、ドライバー構成は「Celest」らしく攻めまくり、そしてサウンドは突き抜けたハイブリッド感ながらちゃんと製品として成立しているという、非常に楽しい製品でした。
「Kinera Celest PhoenixCall」ではおそらく、最近では比較的低価格の製品でも多くなっている電気的な出力調整によるクロスオーバー制御はほぼ行っておらず、音導管のダンパーフィルターにより各ドライバーが担う音域を調整すえうことで音作りを行っていると考えられます。もちろん独自ドライバーを含む5ドライバー構成や美しいシェルデザインで低価格を実現するため、という理由も大きいと思いますが、結果的に「そうそうハイブリッドってこういうサウンドだったよね」と思い出させる楽しさがあります。
またドライバーメーカーでもある「Kinera」が手がける製品ということもあって、かつての低価格中華ハイブリッドで多かった「低価格で歩留まりを良くするために下がった品質を別のドライバーで補う」といった視点は皆無で、「Kinera Celest PhoenixCall」を構成する個々のドライバーは、それぞれが非常に質の高い音を鳴らしている点も特筆すべきでしょう。
それは駆動力の低い環境で鳴らしても、逆に大出力でガツンと鳴らしても歪みなどの破綻を起こすことは無く、それぞれに楽しく使えることからも実感出来ます。これはもし「Kinera Celest PhoenixCall」のバランスが好みで無かった場合も、クセの強いケーブルに交換してみたり、あるいはプレーヤー側のイコライザで直接音域を調整しても破綻する可能性が低いことを意味します。要するにマニアにとっても「かなり遊べるイヤホン」と考えて良いと思います。ちょっと最近の本流からは外れますが、100ドル台、1万円台で購入可能なかなり楽しイヤホン、興味のある方はぜひとも挑戦してみてくださいね(^^)。