
こんにちは。今回は「Moondrop Blessing3」です。購入済み未レビューの製品を「棚から引っ張り出して」紹介する「棚からレビュー」 企画ですね。前回「CHU II」をレビューしましたので、Moondropつながりで、「いまさら」ではありますが、5月くらいから放置状態だったこの記事を振り返ってみようかと(^^;)。実は結構色々なイヤホンを購入したまま未レビューになっていて、さらに最近の「積み」も増えていますが、こちらのほうも少しずつ消化していきたいと思っています(^^;)。
■ 製品の概要まとめ、および市場での評価等について
「Moondrop Blessing3」は「水月雨(Moondrop)」の4BA+2DD構成のハイブリッドモデルです。同社では4BA+1DD構成の「Blessing2」がニュートラル方向の非常に完成度の高いチューニングでこのクラスの「定番」とされるほど高い評価を得ています。私のブログではCrinacle氏コラボによるチューニング版の「Blessing2:Dusk」を過去にレビューしています。現在ではすっかり人気ブランドとなったMoondropで、様々な製品を購入およびレビューしていますが、「Blessing2:Dusk」は現在もお気に入りのイヤホンのひとつです。
→ 過去記事: 【棚からレビュー】 「Moondrop x Crinacle Blessing2:Dusk」 洗練され完成形に近づいた美音系4BA+1DDハイブリッド。コラボモデルの「名機」を振り返ってみた。
またMoondrop製品については購入した全てではないものの、都度都度でレビューを書いています。
→ 過去記事(一覧) : Moondrop製品のレビュー
そして、春頃にリリースしたモデルが「Moondrop Blessing3」となります。ドライバー構成は4BA+2DDと「Blessing2」を踏襲しつつ低域用のダイナミックドライバーを水平対向型のデュアルユニット仕様に進化。さまざまなアップグレードが行われていますね。私は購入したのが海外版がリリースされてすぐで、4月末頃に届いていました。掲載時点ではさらに国内版がリリースされて数ヶ月が経過し、中古なども結構価格が下がってきましたので、より入手はしやすくなっているでしょう。


「Moondrop Blessing3」は5万円前後の製品のなかでは人気モデルのため販売数も多いと思いますが、傾向として原音忠実性が高く、しっかり楽しむ上では相応な追い込みが必要ですし、そもそもリスニングイヤホンとしては好みが分かれるかもしれません(やはりある程度メリハリのあるサウンドのほうが市場全体では受けが良い)。そのため相対的に中古の数も増えて価格も下がってくるのかもですね。
あと、ミドルグレード以上の「Moondrop」製品のなかでも付属品が充実した「KATO」あたりに比べて「Moondrop Blessing3」や「VARIATIONS」などは、付属ケーブルやイヤーピースが今ひとつと感じており、店頭試聴での印象に対しても少なからず影響しているのでは、と思っています。


それはさておき、「Moondrop Blessing3」についても「いまさら」ですが、ちょっとだけ概要について触れておきます。「Moondrop Blessing3」は4BA+2DDのハイブリッド構成で、高域用BA×2基、中音域用BA×2基、低域用ダイナミックドライバー×2基の3Way構成を採用しています。3Dプリントシェル、ステンレス製フェイスプレートなど「Blessing2」の要素を踏襲しつつ、内部での最大の変更点は低域用の水平対向2DDユニットですね。
新たに開発された10mmサイズの「HODDDUS」(Horizontally Opposed Dual-Dynamic Drivers Unit System/水平対向型デュアルダイナミックドライバー)は2基のドライバーを向かい合わせて配置することで2倍の音圧となり、磁気ギャップに磁界が均一化することで伝送効率が向上し非線形歪みを低減させることができます。このようなドライバーは最近だと「THIEAUDIO Hype 2」で採用されている「アイソバリック式2DDユニット」と構造的には同様と思われ、どちらも低域の質感を向上させつつ出力を強化する手法として採用されています。また「Moondrop Blessing3」の2DDユニットは振動板にペーパードーム&フレキシブルエッジを採用しています。
「Moondrop Blessing3」の価格は国内版が48,510円、海外版が319.99ドルです。現在の為替レートだと海外版を購入しても国内版とほぼ似たような金額になりますね(汗)。
HiFiGo(hifigo.com): Moondrop Blessing3
Amazon.co.jp(国内正規品): Moondrop Blessing3
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
パッケージ内容は、いつものMoondropですが、価格相応の大きさで手の込んだパッケージとなっています。上位モデルほどシンプルなデザインになるような気がしますね。


パッケージ内容は本体、ケーブル、航空機用アダプタ、イヤーピース、レザーケース、説明書、保証書、ほか。


「Moondrop Blessing3」の本体は3Dプリントされたレジン製で、「Blessing2」のシェル形状を踏襲しています。鏡面仕上げのクールなフェイスプレートに目が行きますがシェル形状そのものには大きな変更点はありません。


「Moondrop Blessing3」では水平対向ダイナミックドライバーを固定する部分でクリアブルーのパーツが使用されており、これが良い感じで「差し色」になって「青色」のイメージになっています。またフェイスプレートには「Blessing2」とは異なる位置のベント(空気孔)があります。装着性自体は比較的良好ですが、「Blessing2」同様にステムノズルが太く、イヤーピースは芯の部分の後継が大きい独自のタイプとなります。そのためイヤピを交換する場合は軸部分がある程度大きいものを選ぶ必要がありますね。


ケーブルは取り回しの良い銀メッキ線タイプのケーブルが付属します。適度に柔らかく使いやすいケーブルです。ただし付属ケーブルについては製品ページでも多くの言及が無く、むしろ「リケーブル可能」である点をトピックスにしていることからも「リケーブルが前提」の製品であると思った方がよさそうです。
■ サウンドインプレッション
「Moondrop Blessing3」の音質傾向はニュートラルでフラット方向に自然なサウンド。まさに「Blessing2」のアップグレード版という印象で、低域はより厚みを増しパワフルで、中高域も滑らかさと音場感が向上してます。中音域は癖の無い自然な印象ながらより丁寧で精緻な描写により瑞々しさがあり、高音域は非常に透明で見通しが良く、それぞれの音の輪郭が詳細に表現されています。そして新たなドライバーによる低域は上品な空気感を纏いつつ、量感とともに力強くパンチ力が増しています。
ただし、いわゆるハーマンターゲットカーブおよびそこから派生してよりリスニング傾向を高めたU字あるいはW字の音質傾向と比べると「Blessing 2」同様にかなりフラット方向の印象で、「Moondrop Blessing3」でよりパワフルな低域を実現しているとはいえ、全体の傾向は維持してます。滑らかで適度な艶感のあるサウンドで、より広く、深さがあり、さらに正確な空間表現を得られるという点で、あらゆるジャンルの曲を楽しめる製品だと思います。
「Moondrop Blessing3」の高域は、自然な透明感を持ち、個々の音をより正確に、かつ忠実に再現する表現力を持っています。刺激は抑えつつ適度に光沢がありディテールの表現は豊かです。付属ケーブルではやや穏やかですが、しっかり追い込むことで明瞭感が増し、シンバル音はより生き生きと鳴り、個々の音の実在感が向上します。
中音域はフラット方向にニュートラルで、ありのままの音を極めて精緻に表現します。高域同様に音像は自然で過度な強調感はありませんが、しっとりとした滑らかさと艶感があり、広く立体的な音場でボーカルやそれぞれの楽器が実在感を持って表現されます。非常に優れた原音忠実性を持っているため、いっぽうで音源の良し悪しがハッキリ出てしまう、という点もあります。特に「きしめん状」の高い音圧でコンプレッションを効かせているポップスやアニソンなどでは、ちょっと籠もり気味の音に感じる場合があります。これらの傾向が気になる場合はよりスッキリ目の銀メッキ線ケーブルなどへのリケーブルにより印象は激変しそうです。
低域は水平対向2DDの恩恵により、非常にパワフルでパンチ力のある音を鳴らします。前述の通り量感自体はフラットにまとめているものの、非常に深くエネルギーのある低域のため存在感は「Blessing2」より確実にアップしています。ミッドベースは直線的でスピード感があり、重低音はより深く沈みます。ただゴリゴリの分厚い低域を期待すると、それでも淡泊に感じるかもしれません。あらゆる音源で正確にそれぞれの音を描写するイメージです。そのため特別キレが良いというわけではないものの、音数の多い曲でも籠もること無くしっかり描写されます。
「Moondrop Blessing3」は非常に優れた音響特性を持っていますが、それでも付属ケーブルでは本来の実力を発揮できていないようなそんな気分になることも事実です。試聴でもう少し明瞭感が欲しいと感じる場合も、再生する音源の種類のほか、リケーブルでしっかりと変化を実感出来るはずです。


情報量が多く、わりと派手めに変化する銀メッキ線やスッキリした印象の合金ケーブルなどではよりハッキリした印象の明瞭なサウンドに変化します。自然な滑らかさを持った輪郭はくっきりとした印象に変化し、様々な音源でよりメリハリのあるサウンドを楽しめると思います。いっぽうでよりニュートラル傾向の銀メッキ線や高純度銅線などでは滑らかさや艶感を維持しつつ情報量を底上げすることで透明度や音場感が向上し、1音1音のきめ細かさが向上できます。相応のグレードのケーブルを使用すると全体としてはそれなりの価格になりますが、「Moondrop Blessing3」は十分に応えうるポテンシャルを持ち合わせていると感じます。
■ まとめ
というわけで、本来は5月くらいに掲載するつもりだった「Moondrop Blessing3」のレビューは結果的に春夏とじっくり堪能した上での紹介になりました。リケーブルやポータブルアンプなど様々なレビューで登場し、それぞれの違いを確認するためのリファレンス的なイヤホンとして日常的に利用しています。


気がつけば今年に入ってから新旧含めこの価格帯の製品をいろいろ購入したりしていますし、レビューでも結構増えており、「Moondrop Blessing3」はそのなかでずば抜けて良い、ということは既に無くなっているのが正直なところです。それでも個人的には良し悪しというより、ちょっと特別な存在としてそこにいる、という感じがします。ひとつの選択肢として、持ってて嬉しいイヤホンとして、たぶん今後も結構ちょくちょく活用することになりそうですね。
「Moondrop Blessing3」は「水月雨(Moondrop)」の4BA+2DD構成のハイブリッドモデルです。同社では4BA+1DD構成の「Blessing2」がニュートラル方向の非常に完成度の高いチューニングでこのクラスの「定番」とされるほど高い評価を得ています。私のブログではCrinacle氏コラボによるチューニング版の「Blessing2:Dusk」を過去にレビューしています。現在ではすっかり人気ブランドとなったMoondropで、様々な製品を購入およびレビューしていますが、「Blessing2:Dusk」は現在もお気に入りのイヤホンのひとつです。
→ 過去記事: 【棚からレビュー】 「Moondrop x Crinacle Blessing2:Dusk」 洗練され完成形に近づいた美音系4BA+1DDハイブリッド。コラボモデルの「名機」を振り返ってみた。
またMoondrop製品については購入した全てではないものの、都度都度でレビューを書いています。
→ 過去記事(一覧) : Moondrop製品のレビュー
そして、春頃にリリースしたモデルが「Moondrop Blessing3」となります。ドライバー構成は4BA+2DDと「Blessing2」を踏襲しつつ低域用のダイナミックドライバーを水平対向型のデュアルユニット仕様に進化。さまざまなアップグレードが行われていますね。私は購入したのが海外版がリリースされてすぐで、4月末頃に届いていました。掲載時点ではさらに国内版がリリースされて数ヶ月が経過し、中古なども結構価格が下がってきましたので、より入手はしやすくなっているでしょう。


「Moondrop Blessing3」は5万円前後の製品のなかでは人気モデルのため販売数も多いと思いますが、傾向として原音忠実性が高く、しっかり楽しむ上では相応な追い込みが必要ですし、そもそもリスニングイヤホンとしては好みが分かれるかもしれません(やはりある程度メリハリのあるサウンドのほうが市場全体では受けが良い)。そのため相対的に中古の数も増えて価格も下がってくるのかもですね。
あと、ミドルグレード以上の「Moondrop」製品のなかでも付属品が充実した「KATO」あたりに比べて「Moondrop Blessing3」や「VARIATIONS」などは、付属ケーブルやイヤーピースが今ひとつと感じており、店頭試聴での印象に対しても少なからず影響しているのでは、と思っています。


それはさておき、「Moondrop Blessing3」についても「いまさら」ですが、ちょっとだけ概要について触れておきます。「Moondrop Blessing3」は4BA+2DDのハイブリッド構成で、高域用BA×2基、中音域用BA×2基、低域用ダイナミックドライバー×2基の3Way構成を採用しています。3Dプリントシェル、ステンレス製フェイスプレートなど「Blessing2」の要素を踏襲しつつ、内部での最大の変更点は低域用の水平対向2DDユニットですね。

「Moondrop Blessing3」の価格は国内版が48,510円、海外版が319.99ドルです。現在の為替レートだと海外版を購入しても国内版とほぼ似たような金額になりますね(汗)。
HiFiGo(hifigo.com): Moondrop Blessing3
Amazon.co.jp(国内正規品): Moondrop Blessing3
免責事項:
本レビューは個人的に製品を購入し掲載している「購入者レビュー」となります。
本レビューに対してそれ以外の金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
パッケージ内容は、いつものMoondropですが、価格相応の大きさで手の込んだパッケージとなっています。上位モデルほどシンプルなデザインになるような気がしますね。


パッケージ内容は本体、ケーブル、航空機用アダプタ、イヤーピース、レザーケース、説明書、保証書、ほか。


「Moondrop Blessing3」の本体は3Dプリントされたレジン製で、「Blessing2」のシェル形状を踏襲しています。鏡面仕上げのクールなフェイスプレートに目が行きますがシェル形状そのものには大きな変更点はありません。


「Moondrop Blessing3」では水平対向ダイナミックドライバーを固定する部分でクリアブルーのパーツが使用されており、これが良い感じで「差し色」になって「青色」のイメージになっています。またフェイスプレートには「Blessing2」とは異なる位置のベント(空気孔)があります。装着性自体は比較的良好ですが、「Blessing2」同様にステムノズルが太く、イヤーピースは芯の部分の後継が大きい独自のタイプとなります。そのためイヤピを交換する場合は軸部分がある程度大きいものを選ぶ必要がありますね。


ケーブルは取り回しの良い銀メッキ線タイプのケーブルが付属します。適度に柔らかく使いやすいケーブルです。ただし付属ケーブルについては製品ページでも多くの言及が無く、むしろ「リケーブル可能」である点をトピックスにしていることからも「リケーブルが前提」の製品であると思った方がよさそうです。
■ サウンドインプレッション

ただし、いわゆるハーマンターゲットカーブおよびそこから派生してよりリスニング傾向を高めたU字あるいはW字の音質傾向と比べると「Blessing 2」同様にかなりフラット方向の印象で、「Moondrop Blessing3」でよりパワフルな低域を実現しているとはいえ、全体の傾向は維持してます。滑らかで適度な艶感のあるサウンドで、より広く、深さがあり、さらに正確な空間表現を得られるという点で、あらゆるジャンルの曲を楽しめる製品だと思います。
「Moondrop Blessing3」の高域は、自然な透明感を持ち、個々の音をより正確に、かつ忠実に再現する表現力を持っています。刺激は抑えつつ適度に光沢がありディテールの表現は豊かです。付属ケーブルではやや穏やかですが、しっかり追い込むことで明瞭感が増し、シンバル音はより生き生きと鳴り、個々の音の実在感が向上します。


「Moondrop Blessing3」は非常に優れた音響特性を持っていますが、それでも付属ケーブルでは本来の実力を発揮できていないようなそんな気分になることも事実です。試聴でもう少し明瞭感が欲しいと感じる場合も、再生する音源の種類のほか、リケーブルでしっかりと変化を実感出来るはずです。


情報量が多く、わりと派手めに変化する銀メッキ線やスッキリした印象の合金ケーブルなどではよりハッキリした印象の明瞭なサウンドに変化します。自然な滑らかさを持った輪郭はくっきりとした印象に変化し、様々な音源でよりメリハリのあるサウンドを楽しめると思います。いっぽうでよりニュートラル傾向の銀メッキ線や高純度銅線などでは滑らかさや艶感を維持しつつ情報量を底上げすることで透明度や音場感が向上し、1音1音のきめ細かさが向上できます。相応のグレードのケーブルを使用すると全体としてはそれなりの価格になりますが、「Moondrop Blessing3」は十分に応えうるポテンシャルを持ち合わせていると感じます。
■ まとめ
というわけで、本来は5月くらいに掲載するつもりだった「Moondrop Blessing3」のレビューは結果的に春夏とじっくり堪能した上での紹介になりました。リケーブルやポータブルアンプなど様々なレビューで登場し、それぞれの違いを確認するためのリファレンス的なイヤホンとして日常的に利用しています。


気がつけば今年に入ってから新旧含めこの価格帯の製品をいろいろ購入したりしていますし、レビューでも結構増えており、「Moondrop Blessing3」はそのなかでずば抜けて良い、ということは既に無くなっているのが正直なところです。それでも個人的には良し悪しというより、ちょっと特別な存在としてそこにいる、という感じがします。ひとつの選択肢として、持ってて嬉しいイヤホンとして、たぶん今後も結構ちょくちょく活用することになりそうですね。