「TANCHJIM Prism」&「Oxygen」

こんにちは。今回は「棚からレビュー」の短縮版ということで 「TANCHJIM Prism」を振り返りたいと思います。前回 「TANCHJIM KARA」をレビューしましたが、そういえば上位モデルの「Prism」のほうは購入後にレビュー予定といいつつ2年近く(汗)放置してたなー、ということを思い出しまして、「KARA」との比較のために改めてじっくり聴いてみましたので、簡単にまとめようかと思います。あとどうせなら、ということで同社の出世作「Oxygen」も少しだけ振り返ります。

免責事項:
本レビューは個人的に製品を購入し掲載している「購入者レビュー」となります。
本レビューに対してそれ以外の金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


【 TANCHJIM Prism について】

まず前回も触れましたが、「TANCHJIM」(タンジジム)について少しだけ。同社は2015年に設立された中国のイヤホンメーカーで、ニュートラルな質の高いサウンドを実現したミドルグレード製品の製品を中心に多くのファンを獲得しています。
科学的な解析やロジックに裏付けられた専門性の高い調整によるニュートラルでバランスのよい音作りに対して、シンプルな製品デザインと、キャラ押し気味のイメージなど、ブランドの方向性として「Moondrop」や「Truthear」との類似点もちょっとだけ感じなくもないですが(^^;)、そのなかでも「TANCHJIM」らしい音作り、製品作りの一貫した姿勢があり、個人的にも非常に好感を持っているメーカーのひとつです。
→過去記事(一覧):「TANCHJIM」製イヤホンのレビュー

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そして「TANCHJIM Prism」は同社のフラグシップとして2年ほど前、2021年の後半にリリースされた2BA+1DD構成のハイブリッドモデルです。ドライバーには「Oxygen」など「TANCHJIM」の主力シングルダイナミック構成のモデルでも採用されている「DMT」ダイナミックドライバーの第4世代ユニットと、Sonion製の2BAユニットを搭載。等価解析によって計算されたクロスオーバー設計により、2種類のドライバーを自然かつスムーズに連携させます。
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フェイスプレートはサファイアガラスを使用し、職人による手作業で磨き上げられ電気メッキとエッチングに作られたパターンを美しく映し出します。本体は最先端の音響技術によって開発された音響メタマテリアルのバックキャビティを採用。ヘルムホルツの共鳴の原理に基づき音響キャビティを設計しています。これにより特定の周波数の反射ノイズを効果的に吸収し、より純粋なサウンドを実現しています。
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さらに「TANCHJIM Prism」の背面には音響メタマテリアルの振動抑制キャビティと合わせるように特別に設計された誘導式通気口が装備されています。空気の通過量を適切に増加することによってキャビティ内の音圧が最適化されます。またノズルにはイタリア製のSAATI フィルターを使用し、さらに疎水性と防塵性があるナノコーティングを施しています。そして外側にはチタン合金製の防塵網が搭載されており、高度な湿気防止と防塵性能および耐久性を実現しています。
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TANCHJIM Prism」の価格は599.99ドル、国内版はアマゾンなどで85,500円です。ただし、eイヤホンのWebストアでは在庫僅少で69,910円のままになっているのでこっそり狙い目。また発売後2年程度立っていることもあり、中古も5万円台で購入できることが多くなっていますね。
Amazon.co.jp(国内正規品): TANCHJIM Prism


■サウンドインプレッション

TANCHJIM Prism」はドライバー構成としては「KARA」よりユニット数の少ない2BA+1DD構成ですが、ダイナミック部分に「Oxygen」や「HANA」などに搭載しているDMTドライバーの第4世代ユニットを採用し、Sonion製BAで補完する構成となっています。
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音質傾向はニュートラルで、ハーマンターゲットカーブに準拠した非常にバランスの良い、緩やかな弱ドンシャリ傾向。解像感、分離の良さ、透明感、高域の伸びやかさ、低域の鮮明さとパンチ力、そして滑らかさ、とりあえず思いつく要素について欠点が無く、多くの項目で500ドルオーバークラスでもトップレベルの完成度を持っています。
TANCHJIM Prism中音域はほぼフラットでハーマンターゲットカーブに準拠していますが、この手の傾向のイヤホンのなかでもミッドレンジの質感は抜群に優れており、透明度の高い空間表現と優れた解像感と分離感、1音1音は瑞々しく、艶感があります。定位は正確ですが、「Oxygen」と比べると僅かに前方に定位し、リスニング的な楽しさを意識した音作りも感じられます。
高域はハーマンターゲットカーブと比べるとやや強めの主張があるようで、より直線的で伸びやかです。中音域同様に非常に見通しが良く、優れた解像感と分離感があり、鮮明で煌びやかな印象です。いっぽうで歯擦音や金属質な粗さは皆無で、スッキリしつつ非常に上品です。
低域はコンパクトなシェルから想像できないほど強力なパンチ力があり、エネルギーがあります。同様に優れた分離と解像度で締まりとキレの良さがありますが、同時に適度に温かみがあり、寒色系には振らずニュートラル感を維持しています。

TANCHJIM Prism本体は金属製ですが「Oxygen」同様に非常にコンパクトで耳の収まりも良いため装着感に問題はありません。また付属する「T-APB 気圧バランスイヤーピース」もソフトな質感で装着感を高めています。ケーブルは0.78mm 2pin仕様ですがコネクタ部分にもこだわりがあることから社外品へのリケーブルは推奨していません。付属ケーブルは単結晶銅銀メッキ線ケーブルで細くしなやかで取り回しも良い印象。さらに私は「TANCHJIM」から「TANCHJIM Prism」専用に販売している「CABLE–R」ケーブルを組み合わせており、透明感を維持しつつ、さらに高い情報量と解像感で押し寄せるようなサウンドを実感出来ています。

「TANCHJIM KARA」もミドルグレードとしては良くできたイヤホンですが、個々の質感と総合力の高さにおいて、「TANCHJIM Prism」は価格差に見合う完成度の高さがあります。もともとクラス以上と言われたサウンドですので、比較的ディスカウントで中古または一部の新品が購入できるのはかなりお買い得感が高いといえるでしょう。このクラスの製品を検討している方なら一度は試聴していただきたいイヤホンだと思います。


【オマケ・TANCHJIM Oxygen について 】

「TANCHJIM」というブランドを語る上で欠かすことが出来ない製品が「TANCHJIM Oxygen」です。その後の「HANA」のベースとなったモデルで「TANCHJIM」の出世作ともいえる製品でしょう。日本では2018年、初期の代理店だった七福神商事の頃にリリースされた製品で、私もその当時に購入しています。国内では既に販売を終了(たぶん)していますが、海外では現在も279ドルで販売されています。カラーは「シルバー」と「ブラック」があります。
TANCHJIM OxygenTANCHJIM Oxygen
音質傾向は2018年当時としてはまだ少なかったハーマンターゲットカーブ(当然H-2019では無く、それ以前のもの)準拠の弱ドンシャリで、「TANCHJIM Oxygen」と「Moondrop KXXS」の大ヒットで中華イヤホン界隈でもハーマンターゲットカーブ寄りの製品が爆増することになります。
改めて聴いてみると「KARA」よりやや中低域寄りで非常に音無く、ありのままの音を自然に鳴らす質実剛健な印象が際立ちます。音場も自然で解像感も高く、特に強調感の無いサウンドながら見通しの良くあらゆる音源を心地よく聴ける、というニュートラル傾向のお手本のようなサウンドです。いっぽうで「Prism」のような圧倒的な解像感の上の鮮やかさや華やかさは無く、「HANA」のような明瞭な伸び感や、「KARA」のボーカルの豊かさ、といった特筆すべき特徴が無いのが逆に「TANCHJIM Oxygen」の特徴と言えるかも知れませんね。


■ まとめ

というわけで、「TANCHJIM」の既存製品をちょっとだけ振り返ってみました。このような感じで手持ちで未レビューのブランドは実は結構あるのですが、依頼や新製品が集中したり、仕事が忙しくなるとついつい後回し、放置状態になってしまうため、たまにはこのように振り返ってみるのも良いなと改めて感じました。とりあえず、今月のうちにSIMGOTとIKKOの「積み」をレビューしたいですね(^^;)。