こんにちは。今回は 「Kinera Celest Wyvern Pro」です。中華イヤホンメーカー「Kinera」のサブブランドのひとつとして優れたコストパフォーマンスでスペックやデザイン面などで個性的な製品を相次いでリリースしている「Celest」ラインの多用途モデルです。通常のイヤホンマイク付きケーブルの「Wyvern」とゲーミングやライブ配信などにも最適なヘッドセットマイク付きの「Wyvern Pro」の2機種がリリースされています。
■ 製品概要からのまとめと購入方法について
「Kinera」は2011年に設立されたメーカーのひとつで、自社でBAドライバーの製造を行う規模のラインを持っています。自社のイヤホンブランドの「Kinera」としては2016年に最初の製品をリリースし、その後ラインナップを拡充させ、幅広く認知されるようになりました。2022年に展開を開始した低価格ラインの「Celest」では個性的な構成の製品を急速に展開しており、マニアの間で現在最も注目されるブランドのひとつになっているといえるでしょう。また「Celest」シリーズでは最新技術を織り込みつつ、製品名所およびコンセプトに中国の古代神話になぞらえた展開を行っている点も興味深いところです。
今回の「Kinera Celest Wyvern Pro / Wyvern」はその名称のとおり、「Wyvern(ワイバーン)」をモチーフににしています。ワイバーンはRPGなどで出てくる飛龍(中国語読みだと「Feilong」)として多くの方に馴染みのある存在ですが、中国の古代神話では「黄龍(Huanglong)」とも呼ばれ、翼と4本の爪を持ち、火を吐き、風と雨を吐き、空や地下を飛ぶとき、それは雷と稲妻を引き起こします。 天と地の間の風と雨を司る存在とされています。そして多くのゲームやファンタジーの題材で登場するように神話の中でも様々な場面で登場しています。
このイメージを受け継ぐ「Kinera Celest Wyvern Pro / Wyvern」は、10mm LCP(液晶ポリマー)振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載しており、音楽リスニング用途以外にも、映像、ゲーム、ミーティング、ライブ配信などの「多用途向け」イヤホンとしてリリースされました。そのためケーブルはマイク付きのみで、通常のイヤホンマイク仕様の「Celest Wyvern」と、ヘッドセットマイクケーブルが付属する「Celest Wyvern Pro」の2製品を展開しています。
「Kinera Celest Wyvern Pro / Wyvern」のシェルは3Dプリントによる樹脂製で、フェイスにはシルバーカラーの金属プレートを埋め込んでいます。ドライバーには10mm LCP(液晶ポリマー)振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載。LCP振動板は明るさ、高周波応答、低歪み、および高い信頼性の特性を持っており、解像度を向上させ非線形歪みと調和歪みを低減することで、音声をより正確に表現します。
またサウンドチューニングはハーマンターゲットカーブ(H-2019)を元にした科学的な調整を行い、バランスが良く、さまざまなジャンルの音楽を楽しめます。
コネクタは0.78mm 2pin仕様でリケーブルが可能。またモデルにより2種類の異なるケーブルを設定しています。標準モデルの「Celest Wyvern」ではイヤホンマイク付きケーブルが付属。そしてアップグレード仕様の「Celest Wyvern Pro」では脱着式ヘッドセットマイクが装着可能なケーブルが付属します。
「Kinera Celest Wyvern Pro / Wyvern」の購入は「Angeldac Audio Store」にて。
価格は「Celest Wyvern」が25ドル前後、「Celest Wyvern Pro」が29ドル前後です。
AliExpress(Angeldac Audio Store): Kinera Celest Wyvern / Celest Wyvern Pro
パッケージ内容は、イヤホン本体およびケーブル、Proモデルでは脱着式ヘッドセットマイクとマイク用のスポンジカバー、イヤーピースは2種類、それぞれS/M/Lサイズ、説明書と、「Celest」シリーズではお馴染み製品名称のイメージデザインのメタルアクセサリー。
本体は3Dプリントによるレジン製で、乳白色に淡いグリーンが入ったデザイン。フェイスプレートは金属製のパネルです。ワイバーンと纏っている装甲や甲冑、というイメージらしいですね。個人的には同社では最初期の「KINERA H3」あたりを思い出すような原点回帰のデザインですが、当時と比べて価格は大幅に下げつつ質感は大きく向上しており20ドル台の低価格イヤホンながらイヤーモニターのような装着感がありますね。
イヤーピースは通常の白色タイプといわゆる「AET07」互換タイプ。AET互換タイプのほうが開口部が広くよりダイレクトサウンドが楽しめますね。イヤーピースをしっかり耳に合わせることで十分な遮音性を確保でき、高い没入感を楽しめます。
そしてケーブルは「Kinera Celest Wyvern Pro」ではいわゆるゲーミングヘッドセット仕様の脱着式マイクが付いています。ケーブル仕様は1.22mmコアの銀メッキ銅線が使用されていて、柔らかく弾力のある被膜で取り回しも良好です。ヘッドセットマイクは可動式で口元に位置合わせもしやすい印象。より指向性のあるマイクで着実に音声を拾ってくれます。
これに対し、「Celest Wyvern」では一般的なマイク付きケーブルで、仕様は1.8mmコアのOFC銀メッキ線となっており、比較するとよりオーディオ向けに高品質な線材が使用されていることがわかります。「Celest Wyvern」について、「低価格でLCP振動板+3Dプリントシェルのイヤホンを」と考えている場合、最初からリケーブル前提の方も多いと思いますので、どちらの線材でもあまり影響はないかもしれません。しかし、「マイク付きケーブルのほうが便利」という方の場合、よりオーディオ向けなのは「Celest Wyvern」、ハードなゲーミングや配信など音声での対話をより重視される方は「Celest Wyvern Pro」を、という選び方になると思います。
■ サウンドインプレッション
「Kinera Celest Wyvern Pro」の音質傾向はニュートラルで緩やかなU字傾向のサウンド。インピーダンス32Ω、感度105dBというスペックで、ややウォーム寄りながら比較的元気な印象で鳴るため、スマホ直挿しでも通常の音量で聴きやすい印象のサウンドが楽しめるチューニングになっています。想定している最も多い用途がスマホやタブレット、PC、ゲーム機などに直差しでの利用の製品ですので、この調整は最適といえるでしょう。
特筆すべきなのは、いわゆる「ゲーミングイヤホン」的な製品の場合、通常はV字傾向の分かりやすいドンシャリであることが多かったり、低域モリモリだったりするのですが、「Kinera Celest Wyvern Pro」ではスマートフォン直挿しでもハーマンターゲットカーブ準拠のニュートラルなサウンドバランスの自然なサウンドである点でしょう。そのため、立体的な奥行き感や包み込むような臨場感というはドンシャリ傾向より少なく、ありのままの音を鳴らす、という感じですが、高域や低域は十分な量感があり、バランスとして過不足の無い印象になっています。
なお、「Kinera Celest Wyvern Pro」は再生環境による変化がかなり大きく、付属のヘッドセット付きケーブルでも、据置きアンプなど駆動力のある環境で鳴らすとV字方向にメリハリが強化さえ、より明瞭で音場感のあるサウンドを楽しめます。同様にリケーブル効果も非常に大きい印象です。おそらく線材の品質的に「Kinera Celest Wyvern Pro」の付属ケーブルより情報量が多いと思われる通常タイプの「Celest Wyvern」のほうが多少メリハリを感じる違いがありそうです。
「Kinera Celest Wyvern Pro」の高域はエネルギッシュで比較的明るい音を鳴らします。聴きやすく適度な温かみも感じる点は「Kineraらしい」と感じる要素ですが、ウォームな製品にありがちな天井の低さはあまり感じず、比較的見通しも良く鮮やかな印象。解像感やキレなどは一般的ですが、ゲーミング用途では十分な性能を持っていると思います。またリスニング的には再生環境により主張が増加し明瞭感が増します。情報量の多い銀メッキ線ケーブルなどにリケーブルすることでかなりスッキリした印象に「化ける」ポテンシャルも持っています。
中音域は僅かに凹み、癖の無い音で自然な距離感で再生されます。付属ケーブルでは派手さはある程度制御されていますがボーカルと演奏は自然に分離し、自然な音場により、立体的な定位感も捉えやすい印象。イヤーモニターとして考えるとそこまで解像感が高いわけではありませんが、たとえば緊迫したゲームシーンで奥の方で鳴る僅かな音を捉える、といった場面では十分に実用的なパフォーマンスを示します。
リスニング的には、「Kinera Celest Wyvern Pro」のケーブルはちょっと大人しく、ボーカルはやや淡泊に感じるかもしれません。ただ中高域にはエネルギーがあるため女性ボーカルの高音などは鮮やかで全体としては聴きやすくも退屈しないチューニングになっています。そして、中音域および低域は後述の通りリケーブルで「激変」します。
低域は比較的ニュートラルなバランスながらパンチ力と豊かさがあり、不足を感じること無く楽しめる印象です。ミッドベースはやや大人しくさっぱりしており、中高域との分離の良さを感じさせるいっぽうで重低音は深くパワーがあります。付属ケーブルでも底から突き上げるような力強さがあり、中低域の弱さを補いつつ、全体的な臨場感を補完しています。
■ まとめ
「Kinera Celest Wyvern Pro」はKineraらしいニュートラル方向、ハーマンターゲットカーブ準拠の音作りを維持しながら、ゲーミングなどの多用途に対応出来るイヤホンとして、突出した良さというものはないものの全体として非常にバランスの良い、使いやすいイヤホンに仕上がっていました。「Kinera Celest Wyvern Pro」バージョンで付属するヘッドセット付きケーブルでは全体として少し距離のある位置で鳴る印象ですが、それだけに定位を捉えやすく、また刺さりなどの刺激や、過度な響きによる籠もり感などを抑えて、まさに様々な用途に使いやすいチューニング仕上がっていると感じました。
いっぽうで、本体のポテンシャルは想像以上に高く、情報量の多いケーブルやしっかりした再生環境で鳴らすことで想像以上に「化ける」イヤホンであることも非常に興味深い点でした。例えば最近レビューした「JSHiFi Werwolf」4芯 単結晶銅銀メッキ線ケーブルにリケーブルしてみたところ、V字方向のサウンドに「激変」。少し遠かった音像は分かりやすく近くで定位し、立体的な音場感はより見通しの良さと透明感を持って実感出来ます。また高域および低域の主張が一気に増し、パワフルなサウンドを補完することで、より迫力と臨場感のあるサウンドを楽しむことが出来ました。この組み合わせであればリスニングイヤホンとしてもかなり楽しい製品だと思います。「Kinera Celest Wyvern Pro」の付属ケーブルは0.78mm仕様の中華2pinタイプで他のイヤホンへの転用もしやすいため、あえて別のイヤホンで組み替えて使用する、というのもアリかも知れませんね。どちらにせよ、色々と「遊べる」かなり楽しいイヤホンだと思いました(^^)。
「Kinera」は2011年に設立されたメーカーのひとつで、自社でBAドライバーの製造を行う規模のラインを持っています。自社のイヤホンブランドの「Kinera」としては2016年に最初の製品をリリースし、その後ラインナップを拡充させ、幅広く認知されるようになりました。2022年に展開を開始した低価格ラインの「Celest」では個性的な構成の製品を急速に展開しており、マニアの間で現在最も注目されるブランドのひとつになっているといえるでしょう。また「Celest」シリーズでは最新技術を織り込みつつ、製品名所およびコンセプトに中国の古代神話になぞらえた展開を行っている点も興味深いところです。
今回の「Kinera Celest Wyvern Pro / Wyvern」はその名称のとおり、「Wyvern(ワイバーン)」をモチーフににしています。ワイバーンはRPGなどで出てくる飛龍(中国語読みだと「Feilong」)として多くの方に馴染みのある存在ですが、中国の古代神話では「黄龍(Huanglong)」とも呼ばれ、翼と4本の爪を持ち、火を吐き、風と雨を吐き、空や地下を飛ぶとき、それは雷と稲妻を引き起こします。 天と地の間の風と雨を司る存在とされています。そして多くのゲームやファンタジーの題材で登場するように神話の中でも様々な場面で登場しています。
このイメージを受け継ぐ「Kinera Celest Wyvern Pro / Wyvern」は、10mm LCP(液晶ポリマー)振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載しており、音楽リスニング用途以外にも、映像、ゲーム、ミーティング、ライブ配信などの「多用途向け」イヤホンとしてリリースされました。そのためケーブルはマイク付きのみで、通常のイヤホンマイク仕様の「Celest Wyvern」と、ヘッドセットマイクケーブルが付属する「Celest Wyvern Pro」の2製品を展開しています。
「Kinera Celest Wyvern Pro / Wyvern」のシェルは3Dプリントによる樹脂製で、フェイスにはシルバーカラーの金属プレートを埋め込んでいます。ドライバーには10mm LCP(液晶ポリマー)振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載。LCP振動板は明るさ、高周波応答、低歪み、および高い信頼性の特性を持っており、解像度を向上させ非線形歪みと調和歪みを低減することで、音声をより正確に表現します。
またサウンドチューニングはハーマンターゲットカーブ(H-2019)を元にした科学的な調整を行い、バランスが良く、さまざまなジャンルの音楽を楽しめます。
コネクタは0.78mm 2pin仕様でリケーブルが可能。またモデルにより2種類の異なるケーブルを設定しています。標準モデルの「Celest Wyvern」ではイヤホンマイク付きケーブルが付属。そしてアップグレード仕様の「Celest Wyvern Pro」では脱着式ヘッドセットマイクが装着可能なケーブルが付属します。
「Kinera Celest Wyvern Pro / Wyvern」の購入は「Angeldac Audio Store」にて。
価格は「Celest Wyvern」が25ドル前後、「Celest Wyvern Pro」が29ドル前後です。
AliExpress(Angeldac Audio Store): Kinera Celest Wyvern / Celest Wyvern Pro
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとしてAngeldac Audioより製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
今回はヘッドセットマイク付きの「Kinera Celest Wyvern Pro」でオーダーしました。パッケージはブラックのシンプルなデザイン。「Celest」シリーズはパッケージごとに全て異なる雰囲気があって面白いですね。
パッケージ内容は、イヤホン本体およびケーブル、Proモデルでは脱着式ヘッドセットマイクとマイク用のスポンジカバー、イヤーピースは2種類、それぞれS/M/Lサイズ、説明書と、「Celest」シリーズではお馴染み製品名称のイメージデザインのメタルアクセサリー。
本体は3Dプリントによるレジン製で、乳白色に淡いグリーンが入ったデザイン。フェイスプレートは金属製のパネルです。ワイバーンと纏っている装甲や甲冑、というイメージらしいですね。個人的には同社では最初期の「KINERA H3」あたりを思い出すような原点回帰のデザインですが、当時と比べて価格は大幅に下げつつ質感は大きく向上しており20ドル台の低価格イヤホンながらイヤーモニターのような装着感がありますね。
イヤーピースは通常の白色タイプといわゆる「AET07」互換タイプ。AET互換タイプのほうが開口部が広くよりダイレクトサウンドが楽しめますね。イヤーピースをしっかり耳に合わせることで十分な遮音性を確保でき、高い没入感を楽しめます。
そしてケーブルは「Kinera Celest Wyvern Pro」ではいわゆるゲーミングヘッドセット仕様の脱着式マイクが付いています。ケーブル仕様は1.22mmコアの銀メッキ銅線が使用されていて、柔らかく弾力のある被膜で取り回しも良好です。ヘッドセットマイクは可動式で口元に位置合わせもしやすい印象。より指向性のあるマイクで着実に音声を拾ってくれます。
これに対し、「Celest Wyvern」では一般的なマイク付きケーブルで、仕様は1.8mmコアのOFC銀メッキ線となっており、比較するとよりオーディオ向けに高品質な線材が使用されていることがわかります。「Celest Wyvern」について、「低価格でLCP振動板+3Dプリントシェルのイヤホンを」と考えている場合、最初からリケーブル前提の方も多いと思いますので、どちらの線材でもあまり影響はないかもしれません。しかし、「マイク付きケーブルのほうが便利」という方の場合、よりオーディオ向けなのは「Celest Wyvern」、ハードなゲーミングや配信など音声での対話をより重視される方は「Celest Wyvern Pro」を、という選び方になると思います。
■ サウンドインプレッション
「Kinera Celest Wyvern Pro」の音質傾向はニュートラルで緩やかなU字傾向のサウンド。インピーダンス32Ω、感度105dBというスペックで、ややウォーム寄りながら比較的元気な印象で鳴るため、スマホ直挿しでも通常の音量で聴きやすい印象のサウンドが楽しめるチューニングになっています。想定している最も多い用途がスマホやタブレット、PC、ゲーム機などに直差しでの利用の製品ですので、この調整は最適といえるでしょう。
特筆すべきなのは、いわゆる「ゲーミングイヤホン」的な製品の場合、通常はV字傾向の分かりやすいドンシャリであることが多かったり、低域モリモリだったりするのですが、「Kinera Celest Wyvern Pro」ではスマートフォン直挿しでもハーマンターゲットカーブ準拠のニュートラルなサウンドバランスの自然なサウンドである点でしょう。そのため、立体的な奥行き感や包み込むような臨場感というはドンシャリ傾向より少なく、ありのままの音を鳴らす、という感じですが、高域や低域は十分な量感があり、バランスとして過不足の無い印象になっています。
なお、「Kinera Celest Wyvern Pro」は再生環境による変化がかなり大きく、付属のヘッドセット付きケーブルでも、据置きアンプなど駆動力のある環境で鳴らすとV字方向にメリハリが強化さえ、より明瞭で音場感のあるサウンドを楽しめます。同様にリケーブル効果も非常に大きい印象です。おそらく線材の品質的に「Kinera Celest Wyvern Pro」の付属ケーブルより情報量が多いと思われる通常タイプの「Celest Wyvern」のほうが多少メリハリを感じる違いがありそうです。
「Kinera Celest Wyvern Pro」の高域はエネルギッシュで比較的明るい音を鳴らします。聴きやすく適度な温かみも感じる点は「Kineraらしい」と感じる要素ですが、ウォームな製品にありがちな天井の低さはあまり感じず、比較的見通しも良く鮮やかな印象。解像感やキレなどは一般的ですが、ゲーミング用途では十分な性能を持っていると思います。またリスニング的には再生環境により主張が増加し明瞭感が増します。情報量の多い銀メッキ線ケーブルなどにリケーブルすることでかなりスッキリした印象に「化ける」ポテンシャルも持っています。
中音域は僅かに凹み、癖の無い音で自然な距離感で再生されます。付属ケーブルでは派手さはある程度制御されていますがボーカルと演奏は自然に分離し、自然な音場により、立体的な定位感も捉えやすい印象。イヤーモニターとして考えるとそこまで解像感が高いわけではありませんが、たとえば緊迫したゲームシーンで奥の方で鳴る僅かな音を捉える、といった場面では十分に実用的なパフォーマンスを示します。
リスニング的には、「Kinera Celest Wyvern Pro」のケーブルはちょっと大人しく、ボーカルはやや淡泊に感じるかもしれません。ただ中高域にはエネルギーがあるため女性ボーカルの高音などは鮮やかで全体としては聴きやすくも退屈しないチューニングになっています。そして、中音域および低域は後述の通りリケーブルで「激変」します。
低域は比較的ニュートラルなバランスながらパンチ力と豊かさがあり、不足を感じること無く楽しめる印象です。ミッドベースはやや大人しくさっぱりしており、中高域との分離の良さを感じさせるいっぽうで重低音は深くパワーがあります。付属ケーブルでも底から突き上げるような力強さがあり、中低域の弱さを補いつつ、全体的な臨場感を補完しています。
■ まとめ
「Kinera Celest Wyvern Pro」はKineraらしいニュートラル方向、ハーマンターゲットカーブ準拠の音作りを維持しながら、ゲーミングなどの多用途に対応出来るイヤホンとして、突出した良さというものはないものの全体として非常にバランスの良い、使いやすいイヤホンに仕上がっていました。「Kinera Celest Wyvern Pro」バージョンで付属するヘッドセット付きケーブルでは全体として少し距離のある位置で鳴る印象ですが、それだけに定位を捉えやすく、また刺さりなどの刺激や、過度な響きによる籠もり感などを抑えて、まさに様々な用途に使いやすいチューニング仕上がっていると感じました。
いっぽうで、本体のポテンシャルは想像以上に高く、情報量の多いケーブルやしっかりした再生環境で鳴らすことで想像以上に「化ける」イヤホンであることも非常に興味深い点でした。例えば最近レビューした「JSHiFi Werwolf」4芯 単結晶銅銀メッキ線ケーブルにリケーブルしてみたところ、V字方向のサウンドに「激変」。少し遠かった音像は分かりやすく近くで定位し、立体的な音場感はより見通しの良さと透明感を持って実感出来ます。また高域および低域の主張が一気に増し、パワフルなサウンドを補完することで、より迫力と臨場感のあるサウンドを楽しむことが出来ました。この組み合わせであればリスニングイヤホンとしてもかなり楽しい製品だと思います。「Kinera Celest Wyvern Pro」の付属ケーブルは0.78mm仕様の中華2pinタイプで他のイヤホンへの転用もしやすいため、あえて別のイヤホンで組み替えて使用する、というのもアリかも知れませんね。どちらにせよ、色々と「遊べる」かなり楽しいイヤホンだと思いました(^^)。