AFUL Magic One

こんにちは。今回は 「AFUL Magic One」です。美しいクリアホワイトのシェルデザインにAFULらしい独自技術が満載されたシングルBA構成のモデルです。「Performer」シリーズでマニアの間での存在感を高めた「AFUL」が手がけた話題のイヤホンですね。ニュートラルなバランスで鮮やかさと滑らかさがあり、さらに深く沈む質の良い低域など魅力的な製品に仕上がっています。

■ 製品の概要について

AFUL Magic One「AFUL Acoustics」は中国の新進気鋭の中華イヤホンブランドで、これまでにリリースされた「Performer5」および「Performer8」は、数々の独自特許技術に裏付けられた自然かつ上質なサウンドにより高い評価を受けています。これらの製品で成功を収めたAFULが次に取り組んだのは革新的なシングルBAライバー構成による新しいIEMを開発することでした。そして登場したのが今回の「AFUL MagicOne」です。
バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーの構造上、通常は1基のドライバーでカバーできる周波数帯域に限界があります。しかし、AFULは3年以上にわたる徹底的な研究開発を経て「AFUL MagicOne」専用BAドライバーを設計。AFULの特許技術を取り入れ、アルミニウム・マグネシウム(Al-Mg)合金の振動板や特別設計のフォールディングリングなど高品質素材を使用。柔軟で自然な音色を提供し、AFULが求める優れたパフォーマンスを実現することに成功しました。

AFUL MagicOneまた「AFUL」は「Performer5」「Performer8」で採用されている「RLCネットワーク周波数分割補正技術」(RLC Network Frequency Division Technology)という特許技術が特徴のひとつですが、「AFUL MagicOne」で採用されいる「SE-Math」ではRLC音響ネットワーク回路と複雑な音響構造を通じ、ドライバーから生成されるサウンドと実際の音との不一致を補正します。
「SE-Math」の採用により、高域レスポンスが改善され、卓越した伸びと明瞭な高音域性能を提供します。より繊細なディテールを識別し、空気感を高め、全体的にシームレスな高域のレスポンスを楽しむことができます。

さらに、「AFUL MagicOne」では低音域のレスポンスをさらに向上させるため、独自設計のリアキャビティ構造を採用しました。この構造には、B&W社のハイエンドスピーカー「Nautilus」の設計にヒントを得て、特別に設計された長くて極薄の音響管が含まれています。この複雑なチューブ・デザインにより「AFUL MagicOne」のシングルBAドライバーはパワフルで正確な低域レスポンスを実現します。
AFUL MagicOneAFUL MagicOne

AFULは「AFUL MagicOne」のチューニングについて、パワフルで力強いレスポンスを実現しました。深く弾力のある低域、美しい中音域、そして滑らかで繊細な高域を備えています。
AFUL MagicOneAFUL MagicOne
AFUL MagicOne」は降り積もる雪の美しさをイメージした美しいクリアホワイトのデザインで仕上げられています。フェイスデザインは「粉雪」をテーマに雪の美しさを芸術的に表現しており、3Dプリントによる透明なシェルは長時間に使用しても快適な装着性を実現しています。

AFUL MagicOne」の購入はHiFiGoの直営店またはアマゾンのストアページにて。
HiFiGoでの価格は139.99ドル、アマゾンでは17,338円(※値下げしました)で購入できます。
HiFiGo(hifigo.com):AFUL MagicOne
Amazon.co.jp(HiFiGo): AFUL Magic One ※15%OFFクーポン配布中

免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして HiFiGo より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

AFUL MagicOne」のパッケージは従来の「Performer」シリーズとは異なるサイズで製品写真を載せたシンプルなデザインは踏襲しています。
AFUL Magic OneAFUL Magic One

パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(2種類、それぞれS/M/Lサイズ)、ハードケース、説明書など。
AFUL Magic OneAFUL Magic One

3Dプリントによるシェルは透明感のあるレジン充填タイプのデザインで「雪のようなイメージ」をよく表しています。コンパクトで装着性に優れた形状です。ステム直下のカスタムBAと背面から伸びる長い音導管が独特の存在感を感じさせますね。
AFUL Magic OneAFUL Magic One
ケーブルは高純度無酸素銅(OFC)および銀メッキ(SPC)線のハイブリッドケーブルが付属します。仕様としてはタイプ4リッツ同軸シールド編組による32+37本構成とのこと。被膜はやや硬めですが4芯線としてしっかり編み込まれており取り回しは良好です。
AFUL Magic OneAFUL Magic One
イヤーピースは2種類のタイプが付属しますが、好みに応じてよりフィット感の良いもに交換するのもよいでしょう。「スパイラルドット」や「AET07」(互換品を含む)、「SpinFit CP100+」などが定番ですね。今回私は「SpinFit CP100+」を選択しました。


■ サウンドインプレッション

AFUL Magic OneAFUL MagicOne」の音質傾向はニュートラルな音色でバランスとしてはフラットからややU字方向のサウンド。1BA機らしいボーカル域にフォーカスしたミッドセントリックな印象も若干は感じられますが、高域の伸び感や低域の量感も十分確保されている印象。1BA構成特有のダイナミックレンジの狭さはほぼ感じない仕上がりになっています。特に低域については量感こそやや控えめなものの、重低音はかなり深く沈み存在感のある音を鳴らします。中音域はフラットながら鮮やかさがあり、僅かに温かく、滑らかさがあります。

またフラット的なバランスと言っても「ER4SR」のようなモニター的な傾向とは異なり、全体としてはリスニングチューンで、さらに音場感より特にボーカル域にフォーカスした印象です。AFUL独自の特許技術に基づくサウンドがしっかり下支えしたうえで、かつ1BA機として「聴かせどころ」をしっかり楽しむような音作りを感じさせます。そういった意味ではマルチドライバーによるハイブリッド構成の「Performer」シリーズとは棲み分けがしっかり行われており、「1BA構成で製品化する理由」をちゃんと感じさせるイヤホンだと思います。

AFUL Magic Oneなお、1BA機には「あるある」ですが、「AFUL MagicOne」も非常に鳴らしにくく、本来の音色を楽しむためには再生環境に十分なパワーと駆動力が必要です。小型のオーディオアダプターを使用する場合はバランス対応のよりハイパワーなアダプタを選択し、また「AFUL MagicOne」も購入時に4.4mmプラグを選択することでより駆動力を稼ぐ利用方法がおすすめです。据置きの「FiiO K9 PRO LTD」で鳴らす場合でもハイゲインのモードで鳴らす方が確実に好印象でした。

AFUL MagicOne」の高域は、刺さりやすい音域のピークを抑えつつ自然で伸びのある音を鳴らします。1BA機の場合、例えば多くの製品で用いられるKnowles「ED-29689」BAドライバーはマルチBA機やハイブリッドではミッドに配置されることも多く、専用にツィーターユニットに比べると高高域の表現力は及ばないことも多くあります。「AFUL MagicOne」のカスタムBAユニットは中音域の質感をしっかり維持しながら明瞭で伸びのある高域を実現しています。直線的な見通しの良さや解像感においても好感できる高音だと思います。

AFUL Magic One中音域は癖の無いフラットな印象の音を鳴らします。バランスとしてはシングルBA機らしいミッドセントリックさもありますが、高域および低域がしっかり存在感を示すことで全体としては中音域は過度に主張せず(カマボコにならず)ニュートラルで自然なサウンドになっています。適度な解像感があり個々の音は捉えやすいものの、音色としてはやや温かく滑らかで、輪郭も自然な印象。「Performer」シリーズの特許技術を積み重ねて自然な音色を作り上げた「AFUL」らしさも感じられるチューニングといえそうです。ただしモニター的な分離感を前面に出した印象や寒色系のキレ重視のサウンドに慣れている方には若干緩く感じる場合もあります。ボーカル域は自然な位置で定位しつつ鮮やかさを感じる音で特にポップスやアニソンなどとの相性の良さがあります。音場は自然な広さと奥行きを感じさせるものの、1BA構成の特徴を活かし、音場感よりボーカル域にフォーカスした音作りとなっています。

AFUL Magic One低域はニュートラルなバランスにまとめられており、駆動力のある再生環境でしっかり鳴らせば必要十分な量感と非常に深く質の良い重低音を楽しめます。中高域とのつながりは非常で滑らかでシングルドライバーの特徴を活かしつつBAらしい粒立ちが良くクリーンな印象の低音を鳴らします。ミッドベースは直線的で過度な響きはないものの自然な輪郭でキレよりも滑らかさを感じさせます。ダイナミックドライバーのような濃密さこそないものの十分に質感は良く、いっぽうでアタックは早くスピード感があります。重低音は1BAとは思えない深い沈み込みと存在感があります。もちろん低域に特徴のあるシングルダイナミック機に及ぶものではありませんが、1BA機として下支えする低域としてはかなり上質なものでしょう。非常に複雑な音導管の仕組みは多くのシングルBA機とは異次元の低域を実現させることに成功したようです。


■ まとめ

AFUL Magic Oneというわけで、結構鳴り物入りで登場したAFULのシングルBAモデル「AFUL MagicOne」は、多くの期待に応える「上質」さを感じさせるリスニングイヤホンに仕上がっていました。ただし、「シングルBA」構成はドライバー数の多い製品に対してエントリーという位置づけではなく、多くの名機と呼ばれている製品は「あえてシングルBAという特性を選択した音作り」をしていることが共通の特徴といえるでしょう。「AFUL MagicOne」もそういったジャンルのイヤホンであり、「AFUL」らしさは十分に感じられるものの「Performer」シリーズとは別のアプローチの製品であることを理解する必要があります。「AFUL MagicOne」はニュートラルでバランスに優れたイヤホンですが、オールラウンダーを想定した製品ではないため、そういった製品を「選択」したい方には向きません。しかし、既に多くのイヤホンを所有しているマニアであれば、加える価値は十分にあるイヤホンだと思いますよ。