Kiwi Ears Melody

こんにちは。今回は 「Kiwi Ears Melody」です。例によって結構前から書きかけになっていた記事です(汗)。12mm平面駆動ドライバーを搭載し低域を強化したチューニングが特徴のアンダー100ドル級イヤホンです。本体のポテンシャルが高いものの本気を出すためには相応に追い込む必要があるため、よりマニア向けな製品に仕上がっている印象ですね。

■ 製品概要と購入方法について

Kiwi Ears MelodyKiwi Ears」は2021年に登場した新しい中華イヤホンのブランドで、8BA構成の「Orchestra」および先日レビューした「Orchestra Lite」、ベリリウム(コート)ドライバーと3Dプリントシェルを採用しつつ低価格を実現した「Cadenza」、そしてマルチドライバー構成の「Quartet」や「Quintet」など、美しいデザインと質の高いサウンドで多くのマニアから注目を集めています。

今回の「Kiwi Ears Melody」はKiwi Earsとしては初めてとなる平面駆動モデルです。アンダー100ドル級の価格設定で12mmサイズの平面駆動ドライバーをシングルで搭載。優れた高速応答性と高解像度を実現しています。サウンドにおいては重低音をより発揮できるチューニングを行うなど平面駆動ドライバーによる特性を活かした低域を意識した音作りを行っています。

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Kiwi Ears Melody」はが搭載する自社製の12mm平面駆動ドライバーは、5Hz ~ 40,000Hzのダイナミックレンジを持ち、重低音から高高域の微細なディテールに至るまで、ニュアンスを忠実に再現できる仕様です。またSOUNDSTAGEは広くリアルで正確なイメージングが再現されます。

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Kiwi Ears Melody」の購入はLinsoul(linsoul.com)またはアマゾン店舗(LINSOUL-JP)にて。
価格は89ドル、アマゾンでは14,800円です。
Linsoul(linsoul.com): Kiwi Ears Melody
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): Kiwi Ears Melody

免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Linsoul より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

Kiwi Ears Melody」のパッケージはコンパクトなボックスでパッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(2種類、3サイズ)、説明書、と最小限と構成となっています。まさにドライバーなどに全振りした内容ですね。
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シェルは3Dプリントによる樹脂製でフェイススレートは金属製。非常にシンプルなデザインですね。12mm系の平面駆動ドライバーを搭載した構成のため、「Quartet」や「Quintet」などと比べると丸みを帯びて少しシェルサイズも大きくなっています。
Kiwi Ears MelodyKiwi Ears Melody
それでも同様に12mm平面駆動ドライバーを搭載するKZのPRシリーズなどと比べるとよりコンパクトにまとめられています。そのため装着性はまずまず良好です。
ケーブルは0.78mm 2pinタイプの4芯ケーブルで線材の種類については未記載(たぶん一般的な高純度銅線タイプと思われます)。取り回しは良好です。とはいえ実際にはある程度リケーブルでの利用を想定しているようなフシもありますね。
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イヤーピースは一般的なタイプとより浅く開口部が広いタイプの2種類のイヤーピースが付属します。Moondropあたりもそうですが、コシが弱くあまりフィット感に優れたものではありません。できれば定番の「スパイラルドット」や「AET07」(互換品含む)、「Spinfit CP100+」など好みに応じてよりフィット感のあるイヤーピースに交換を推奨します。私は例によって大量購入済みの「TRN T-Eartips」を組み合わせました。


■ サウンドインプレッション

Kiwi Ears MelodyKiwi Ears Melody」の音質傾向は中低域寄りのドンシャリ。全体として暗めながら非常にパワフルかつ締まりのある低域が特徴的なサウンドです。
ただし、インピーダンス18Ω、感度102dBという仕様ながら、多くの平面駆動ドライバー搭載イヤホンの例に漏れず、本来の実力を発揮するためにはかなり出力の大きいDAPやアンプを使用する必要があります。また多くの再生環境でハイゲインの設定のほうが良いでしょう。もし小型オーディオアダプターなどを使用する場合は、最低限、情報量の多い線材によるバランスケーブルへのリケーブルが「必須」と考えた方が良いでしょう(一般的に小型のオーディオアダプターもバランス接続のほうが倍近い出力を確保出来るため)。
最近の充実した付属品で今すぐ楽しめる、みたいなより万人向けの製品とは真逆で、「Kiwi Ears Melody」はお手頃価格ながら「本体以外の付属品はほぼオマケ」で、再生環境、ケーブル、イヤーピースなどを追い込むことで本来のポテンシャルを引き出せるマニア向けイヤホン、という、数年以上前の中華イヤホンでみかけたタイプの製品の風情ですね(^^;)。

Kiwi Ears Melody」の高域は、やや控えめな印象ながら聴きやすく同時に平面駆動らしい直線的な明瞭感があります。刺激を感じやすい帯域はコントロールされており、シングルドライバーらしい滑らかさもありますが、高高域にいくつかのアクセントがあり鮮やかさや明瞭感も感じさせる印象になっています。やや暗い印象ですが曇ること無く明瞭さを持っており全体としてニュートラルな音場感を感じさせる高音になっています。

Kiwi Ears Melody中音域は僅かに凹む印象があり、また全体としてニュートラルながら若干ウォームな印象の音を鳴らします。キレや解像感を意識する方にはやや緩いと感じるかも知れませんが、高純度銀メッキ線や合金線など明瞭さを引き立たせるタイプのバランスケーブルへのリケーブルすることで分離感は大きく向上しかなり印象は改善されます。しっかりした再生環境で鳴らせば平面駆動らしい歪みのない音色で音場は広く定位も捉えやすい印象。ボーカル域はやや前傾で多少U字またはW字を意識したチューニングが行われているかも知れませんね。

低域はサブベースを中心により深く奥行きと広がりのある音を鳴らします。最近のハーマンターゲットカーブ寄りでニュートラル傾向のサウンドと比べると低域の量感はかなり多く、同時にパワフルさを感じさせます。いっぽうで平面駆動らしい直線的で締まりのある低音を鳴らすことで、過度の協調感や膨らむような響きは無く、厚みのある音ながら分離感のよいミッドベースと深く沈む重低音を実現しています。


■ まとめ

というわけで、「Kiwi Ears Melody」は中低域寄りのイヤホンとして平面駆動らしい低域の質感を追求しつつ、100ドル以下、1.5万円程度のお手頃価格を実現するため本体性能に「極振り」して、本来の実力を発揮するためには相応に追い込める(または必要な追加コストを惜しまない)「相当のマニア向け」なイヤホンでした。発売時にちょっと話題になったのもこの特徴に少なからず影響されているかもしれませんね。
Kiwi Ears Melody2010年代の中華イヤホン界隈は「とにかく怪しいパチもの」と「圧倒的な低価格売りの」が前面に出るいっぽうでコアなマニア向けにはハンドメイドによる受注製造の性能特化のイヤホンがメインでした。それらはケーブルなどの本体以外の要素は自身で追い込んでいくのが当然で、これが現在の豊富ラインナップを持つ中華ケーブルなどに発展していくわけですが、中華イヤホン自身は市場が拡大し、その過程でコモディティ化してきたともいえるでしょう。まあTRNがパッケージとしての完成度を高めているのに対し、今でもKZあたりはリケーブルやイヤピ交換が当然なマニア仕様を貫いていますけどね(^^)。そういった意味で「Kiwi Ears Melody」は低域好きの方で、かつマニア的なアプローチをちゃんと分かって購入すればスルメみたいに味が出る、結構おいしいイヤホンだと思いました。