LETSHUOER S15

こんにちは。今回は 「LETSHUOER S15」です。同社を一躍有名にした「S12」から大幅に進化し、第3世代の14.8mm平面駆動ドライバーを採用したモデルで、さらに独自開発の6mmパッシブフィルターモジュール(PFM)を搭載した「大口径平面+PFM」構成の高性能イヤホンです。日本でも12月15日より発売を開始しました。

■ 製品概要と購入方法について

LETSHUOER」は2016年に創業したユニバーサルIEM/カスタムIEMのファクトリーブランドで、中国国内ではカスタムIEMビジネスのほか話題のモデルを数多くリリースしています。14mm級平面駆動ドライバーを搭載した人気モデル「S12」「S12 Pro」「Z12」といった一連の派生モデルやシングル構成の「D13」、コラボ仕様のハイブリッドの「Galileo」、最近では3DD+1PR構成の「DZ4」など話題性のあるモデルを次々とリリースしており、最近では日本でも人気ブランドのひとつとして多くのマニアの間で認知されていますね。

今回の「LETSHUOER S15」は、同社を一躍有名にした「S12」からの流れを持つ新しく、よりハイグレードな平面駆動ドライバー搭載モデルで、さらに独自開発の6mmパッシブフィルターモジュール(PRM)を搭載。特許技術「R-Sonic」によりさらに進化したサウンドを実現しています。
LETSHUOER S15LETSHUOER S15

LETSHUOER S15」は、ドライバーに同社として第3世代となる14.8mmの平面磁界駆動型ダイナミックドライバーを搭載。従来より広いサウンドステージを持ち、優れた過渡特性と精緻な再生能力を持っています。さらに独自開発した6mmパッシブフィルターモジュール(PFM)を搭載(いわゆるパッシブラジエーターとして機能)。特許技術 「R-Sonic」を採用し、積極的に低周波応答を改善。全体のバランスと内部の空気圧の調整を取ることができます。
LETSHUOER S15LETSHUOER S15
さらに「LETSHUOER S15」は2系統の音導管によるフィルタークロスオーバー設計を採用。平面駆動ドライバーとパッシブフィルターモジュールの出力を適切に分配し歪みを抑制します。全帯域周波数にわたって高レベルの明瞭さと滑らかさが得られ、豊かなサウンドを実現しています。
本体はHeyGearsの高精細3Dプリントにより一体成形で出力されており、CNC成形されたアルミニウム合金製フェイスプレートにより仕上げられています。
LETSHUOER S15LETSHUOER S15
コネクタは0.78mm 2pin仕様で、ケーブルには合計216本の線材により構成される高純度の単結晶銅銀メッキ線を採用。さらに3.5mmステレオ、2.5mmおよび4.4mmバランスの交換可能なプラグが付属します。

LETSHUOER S15」の購入はLETSHUOERの公式サイト(letshuoer.net)またはアマゾンの公式ストアにて。さらに12月15日より国内代理店を通じて主要専門店でも購入が可能になっています。
価格は329ドル、日本国内では税込み57,000円です。
Amazon.co.jp(LETSHUOER公式ストア): LETSHUOER S15


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして LETSHUOER より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

LETSHUOERの従来の製品同様に「LETSHUOER S15」のパッケージもシンプルなデザインですね。しかしよりハイグレードな300ドルオーバー、5万円以上のモデルのためか内箱はミドルグレードの製品より凝った仕様になっています。
LETSHUOER S15LETSHUOER S15

パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、交換式プラグ(3.5mm、2.5mm、4.4mm)、イヤーピースが2種類でそれぞれS/M/Lサイズ、ハードケース、説明書、保証書ほか。
LETSHUOER S15LETSHUOER S15

本体は3Dプリントによる樹脂製でフェイスプレートはアルミ合金製。出力には高品質で定評があり数々のブランドでも採用されているHeyGearsのプリント技術で一体成形されており、フィット感に優れたシェル形状とともに、内部も精細な設計に沿った内容となっているようです。14.8mmという大口径のドライバーを搭載しつつ、ステムノズルはやや太めですが非常に軽量でソフトな装着性を実現しています。
LETSHUOER S15LETSHUOER S15
スペック重視、音質重視の質実剛健な製品という印象ですが、それでも惜しむらくはデザイン的な意匠で300ドルオーバーらしさというか、もうすこし高級感が欲しかったところでしょう。
LETSHUOER S15LETSHUOER S15
付属品は某UMっぽい円形のハードケースが付属し、イヤーピースはケースに併せた台紙に2種類のイヤーピースが同梱されています。個人的には付属の白色タイプのほか、より耳奥までしっかり装着したい場合はAcoustuneの「AET07」などの円錐形イヤーピースの組み合わせが好印象でした。ほかにも耳穴の大きい方は「スパイラルドット」や「AZLA SednaEarfit」シリーズなどを組み合わせるほうがよいかも知れませんね。
LETSHUOER S15LETSHUOER S15
ケーブルは単結晶銀メッキ銅線の2芯撚り線タイプで、L字タイプ形状の交換式のプラグが付属します。ケーブルは弾力のある被膜ですがしっかり編み込まれており取り回しは悪くありません。また2pin仕様のためリケーブルの選択肢が多いのも良いですね。


■ サウンドインプレッション

LETSHUOER S15LETSHUOER S15」の音質傾向は「S12」シリーズよりニュートラル方向でまとめつつ、パッシブフィルターモジュール(パッシブラジエーター)によって強化された低域が非常に深く存在感のある鳴り方をします。バランスとしては若干中低域寄りで緩やかなU字、またはW字を描く傾向です。中高域も平面駆動らしく歪みのない直線的な印象で伸びもありますが、全体的に聴きやすく刺激をコントロールしたチューニングとなっています。ニュートラル傾向のイヤホンながら全体としてはより近くで定位しつつ、独特の低域の印象は製品説明でも記載されているとおり広大な音場感の演出しています。特にオーケストラ演奏のような音源では臨場感と迫力のあるサウンドで魅了されます。14mm級の平面駆動モデルとしては先日レビューした「SIVGA Nightingale」を上回る価格設定のモデルですが、音質面において「価格を踏まえてもハマる人にはたまらない」といった類いのイヤホンだと感じます。

インピーダンス30Ω、感度106dB/mWと、多くの14mm級製品同様に「平面駆動としては」鳴らしやすいほうですが、それでもしっかりと駆動力のある再生環境で、かつハイゲインで再生することが望ましいでしょう。もし低域が目立つようであれば、再生環境やケーブルを替えることで中高域が覚醒しニュートラルさのあるバランスに変化します。より近く存在感のある印象になると思います。

LETSHUOER S15」の高域は平面駆動らしい直線的な伸びを持ちつつ、刺激を抑えスムーズさと滑らかさのある音で鳴ります。「S12」のようなキレの良さとは異なる印象ですが、駆動力のある再生環境ではより主張が増し明瞭でスッキリした印象で楽しめます。解像感は高く詳細な音もしっかり捉えることができます。

LETSHUOER S15中音域は、ニュートラルなバランスを維持しつつ豊かさのあるリッチなサウンドを楽しめます。比較すると「S12」シリーズの方がドンシャリ方向の凹みがあり、「LETSHUOER S15」の中音域はより近く主張があります。中高域には適度なアクセントがあり女性ボールやピアノの高音は明瞭で直線的な伸びやかさがあります。ボーカルは近くで定位し、女性、男性ボーカルとも豊かさと滑らかさがあります。輪郭は自然ですが緩さは無く明瞭なディテールを実感出来ます。中低域は低域同様に厚みがあり前後の奥行きと広がりのある音場感を演出します。そのためバランスとしてはニュートラルながらハーマンターゲットを含む、いわゆる「○○ターゲット」的な癖の無いサウンドとは異なり、よりエモーショナルに感じさせる演出があります。この点が「S12」シリーズと大きく異なるキャラクターを感じる要素と言えるでしょう。

低域はパッシブラジエーターによりミッドベースに強めの主張があり、全体的な音場感をより分かりやすく演出しつつ、平面駆動らしい滑らかで深い重低音が非常に心地よく響きます。まさに「クセになる低音」といった印象で、さまざまな音源を非常にエモーショナルに、心地よく聴かせてくれます。興味深いのは「LETSHUOER S15」が低域をブーストする役割のパッシブラジエーターに対して、歪みが少なく直線的な質感を特徴とする大口径の平面駆動ドライバーと組み合わせていること。
LETSHUOER S15この構成により低域そのものは平面駆動らしい、非常にニュートラルで癖の無い締まりのある音を鳴らしますが、そのうえでパンチ力やより臨場感を感じさせるエネルギーが欲しい部分でパッシブラジエーターが効果的に働き、適度に温かく存在感を与えてくれます。ミッドベースをパッシブラジエーターがしっかりフォローすることで平面駆動ドライバーは得意とする重低音の質感の向上により注力できている印象もありますね。原音忠実性とは全く別の方向性ですが、音源を活かしつつ広く立体的な音場感を演出するアプローチは好感が持てます。実力を引き出せる再生環境と併せて、この低域の特徴を評価できるかどうかで「LETSHUOER S15」の価格設定に納得できるかどうかが決まりそうですね。


■ まとめ

というわけで、「LETSHUOER S15」は同社の代表的なモデルである「S12」とはまた異なる方向性で非常に質の高いリスニングサウンドを実現しています。○○ターゲット的なニュートラルさに明瞭感と解像感のある「S12」シリーズに対して、より滑らかで聴きやすく、独特な低域と音場表現が魅力的な「LETSHUOER S15」と、両方持っている方も使い分けしやすいのも良いですね。
LETSHUOER S15ただシンプルな外観に対し、国内モデルでは為替の影響もあり6万円近い価格設定となるためその辺がやはりウイークポイントとなるかもしれません(最近ちょっと円高方向に振れているため海外版のほうのほうが割安になってきましたね)。とはいえ国内版もほぼ同時にリリースされたため主要な専門店で試聴可能なのは朗報といえるでしょう。可能であればまずは店頭などで試聴していただき、そのうえで検討されるのが良いと思います。
個人的にも非常にエモいサウンドだと思いますし、多くの方にとっても好みに合えば十分に価格に見合うイヤホンだと思いますよ(^^)。