
こんにちは。今回は 「Kinera Freya 2.0」です。ミドルグレードの3BA+1DDのハイブリッド構成で、数年前にリリースされた「Freya」から搭載ドライバーやシェルデザインを見直し、新たに生まれ変わったアップデートモデルとなります。この構成で250ドル超、3.5万円オーバーの価格設定は最近の競合の多い中では多少ユーザーを選びそうですが、その前提でトラディショナルなV字チューニングでドライバーの特徴を活かした鮮明なサウンドと美しいシェルデザインで魅力的な仕上がりになっていると思います。
■ 製品概要と購入方法について
「Kinera」は2016年に中国で設立されたイヤホンブランドで、紆余曲折を経つつ、製造メーカーとしての実績とデザイン性の高い製品展開で幅広く認知されるようになりました。メインとなる「Kinera」ブランドに加え、2021年に姉妹ブランドの「QoA」を設立し、最近では新しい低価格サブブランド「Celest」を2022年に設立するなどなど幅広い展開をおこなっています。そして「Kinera」のミドルグレードの製品としてリリースされロングセラーを続けていた「Freya」のアップデートモデルが「Kinera Freya 2.0」として登場しました。
「Kinera Freya 2.0」はシェルサイズを30%コンパクト化することで装着性がさらに向上。また3BA+1DDのハイブリッド構成を維持しつつ搭載ドライバーを見直し、新しいダイナミックドライバーとKnowles製に統一されたBAドライバーによりさらに洗練されたサウンドに進化。水色の手描きのフェイスプレートも魅力的です。


「Kinera Freya 2.0」は新たに開発された7mmダイナミックドライバーを搭載。PU+グラフェン複合振動板を採用し鮮明でパンチの効いたダイナミックなローエンドを実現します。また3基のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーはすべてKnowles製ユニットを採用し、高域および中高域の質感を改善しました。


「Kinera Freya 2.0」のシェルはコーティングを施した高品質の透明樹脂素材を使用。フェイスプレートは手描きによるデザインで、空をイメージした水色に複雑なテクスチャでグラデーションを表現しています。繊細なデザインが高級感を演出します。
付属するケーブルは銅合金を使用したリッツ構造の線材を使用し、3.5mmまたは4.4mmプラグに交換可能となっています。また「final E」タイプを含む3種類のイヤーピースが各サイズ付属するなどアクセサリーも充実しています。


「Kinera Freya 2.0」の価格は269ドルです。代理店経由で国内版も最近リリースされており(日本では「Freya 2.0 LTD」という製品名で販売されています)こちらは35,500円程度です。
HiFiGo(hifigo.com): Kinera Freya 2.0
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして HiFiGo より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Kinera Freya 2.0」のパッケージはミドルグレード以上および「Kinera Imperial」ブランドでお馴染みのヘキサゴン形状の大きめのボックス。本体カラーのイメージに合わせてライトブルーの流線のイメージが描かれています。パッケージの高級感においては同ブランドは抜きん出た印象がありますね。


パッケージ内容は本体、ケーブル、交換プラグ(3.5mm、4.4mm)、イヤーピースはメタルプレートにダークブルーの軸の開口部の広いタイプ、「AET07」タイプの2種類がそれぞれS/M/Lサイズ、「final E」タイプイヤーピースが「SS/S/M/L/LL」の5サイズ、クリーニングブラシ、ハードケース、説明書、保証書など。


「Kinera Freya 2.0」のシェルはハンドメイドによる透明レジン製。最近では3Dプリントシェルがむしろ主流になりつつあり、同社でも低価格サブブランドの「Celest」では積極的に3Dプリントシェルを採用していますが、ミドルグレード以上の「Kinera」および「Kinera Imperial」ブランドでは丁寧なハンドメイドによる造形にこだわっているようですね。


シェル形状は従来の「Freya (Freya 1.0)」よく似たシルエットですが、両者を比較すると「Kinera Freya 2.0」がひとまわり小さくなっているのがよくわかりますね。また透明なレジンを採用することでドライバーの配置などがよりしっかりと伺えます。もともとの「Freya」でも装着性は良かったですがよりコンパクトになることで装着感は大幅に向上しています。


ケーブルは銅合金のリッツ線による4芯ケーブル。メタリックカラーで重厚なカラーリングである程度太さもあるケーブルですが取り回しは良い印象です。イヤーピースは「final E」タイプを含む3種類が付属します。
■ サウンドインプレッション
「Kinera Freya 2.0」の音質傾向は緩やかなV字を描く弱ドンシャリ。中高域により強めのアクセントがありシンバル音などはより硬質で主張があり明るくスッキリした印象ですが、刺さりやすい帯域はある程度調整されており、聴きやすくまとめられています。ただし「Kinera」および「Kinera Imperial」の同等事情の製品同様に再生環境やケーブルでの変化は大きく、付属ケーブルでもバランス接続である程度駆動力の高い環境ではより中高域が派手めの寒色系の傾向となり、ゲインを下げると高域の刺激が多少抑えられ中音域にウォームさを感じるサウンドになります。個人的にはある程度駆動力に余裕があり、ノイズ特性の高いDAPやアンプなどでローゲインで鳴らすのが最も良い印象となりました。最近のミドルグレード以上のハイブリッドではネットワーク回路などのクロスオーバー制御をかなり強めに行うことで一貫性のある音作りを行うアプローチが増えていますが、透明シェルとなり内部構造を確認しやすくなった「Kinera Freya 2.0」では電気的なアプローチはほぼ無く、伝統的なハンドメイドによるサウンドチューニングが行われていることがわかります。


「Kinera Freya 2.0」のような従来からの手法によるチューニングではケーブルや再生環境による変化が比較的出やすいという側面があるいっぽうで、個々のドライバーが持つ音色を最大限活かした音作りであるという特徴もあります。この辺はガッツリと出力をコントロールしているタイプのハイブリッドと比較してそれぞれメリットとデメリットがあり、どちらが正解とも言い切れない部分です。とはいえ「Kinera Freya 2.0」のようなタイプのイヤホンでは、最適なサウンドを得るために再生環境をある程度選ぶということを認識しておく必要があるでしょう。
「Kinera Freya 2.0」の高域は、スッキリして伸びやかな音を鳴らします。BAらしい硬質で寒色系の音ですが、高域にもKnowles製BAによるツィーターユニットを採用したことで「Freya 1.0」より質感が向上し、より強めの主張でチューニングされています。DAPなどでゲインを上げるとちょっと派手目に鳴る場合があります。
中音域は癖の無いニュートラルな音を鳴らします。高域および低域に主張があるためバランスとしてはV字傾向ですが特に凹むことはなく自然な印象。ボーカルは近すぎず自然な定位ですが、全体として奥行き感はやや浅く音場は左右に広がるタイプのため窮屈さは無いもののあまり深さはありません。最近のニュートラル傾向のリスニングチューニング同様に女性ボーカルやピアノの高音などの中高域にアクセントがありより鮮やかさを持った印象に感じさせます。
男性ボーカルは適度に温かく余韻もありますが、女性ボーカルほどの主張は無くやや下がって感じます。全体の解像感はミドルグレードの水準としては可もなく不可もなく、といった感じで特筆すべき部分はないものの、演奏との分離は自然でリスニング的に楽しめるサウンドです。ボーカル曲を中心としたリスニングと相性の良いイヤホンといえるでしょう。
低域は厚みがあり、ミッドベースはパンチ力があります。中高域との分離の良さを感じつつ全体的に温かみがあり自然な印象で鳴り、また十分な深さがあります。ただし全体のバランスとしてはニュートラルなため、重量感などはそこまで強くはありません。ミッドベースは十分な存在感がありエネルギッシュに鳴りますが過度に響くことは無く締まりの良さがあります。重低音はかなり深く沈みかなり低い周波数帯でもしっかり捉える解像感があります。ネットワークで過度にドライバーの出力を制御しないことで、7mmドライバーの持つポテンシャルをしっかり反映できている点は好感が持てるところでしょう。
■ まとめ
というわけで、「Kinera Freya 2.0」は「Freya」からのアップデートとしてよりコンパクトで派手すぎないデザインにまとめられ、音質面でもハイブリッドらしさをもちつつ、個々のドライバーの特徴を活かしたリスニングイヤホンとしてバランスの良い仕上がりとなっているのが印象的でした。
最近では3Dプリントによるシェル成形が一般化したことでコスト削減ができるようになり、同時に複雑な音響設計を組み込むことでクロスオーバーを徹底的に制御する「シングルドライバーのようなまとまりのあるハイブリッド」というアプローチがひとつの流れとしてむしろ主流になっている印象すらあります。
そういう視点ではハンドメイドによるシェル成形で従来通りの音導管とフィルターによるサウンドチューニングや、いかにもハイブリッドなサウンドはややネガティブに捉えられるかもしれません。しかし「Kinera Freya 2.0」は再生環境を整えれば質感や表現力の高さを感じられる楽しいイヤホンだと思います。価格的にも内容的にも同クラスの中でより多くの方にお勧めできるイヤホンとは言えないかも知れませんが、トラディショナルかつバランスの良い仕上がりということもあり、興味のあるマニアの方であればコレクションのひとつに加えるのも良いのではと感じました。








