KBEAR Flash

こんにちは。今回は 「KBEAR Flash」です。20ドル台、3千円台の低価格ながら音質面で定評のあるPU+PEEK複合振動板ダイナミックドライバーを採用した1BA+1DDのハイブリッド構成のイヤホンです。クールなデザインのアルミ合金製のフェイスプレートも良いですね。また4種類のカラーバリエーションに加え、2mのロングケーブル付きモデルがラインナップされるなど、同社の低価格スタンダードモデルとしての意気込みも感じられますね。

■ 製品概要と購入方法について

中国のイヤホンブランド「KBEAR」はEasy Earphonesなどのセラーを中心に販売されるブランドで、姉妹ブランドの「TRI Audio」と併せて意欲的な新製品を数多くリリースしています。同社自体はファブレスのため、製造を行うファクトリーごとに複数のラインが存在しまが、同社エンジニアによる一貫したチューニングにより、ブランドとして統一性のあるサウンドを実現しているのも特徴的です。
過去記事(一覧): KBEAR/TRI製品のレビュー

KBEAR Flash」は10mm PU+PEEK複合振動板ダイナミックドライバーとバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーによる1BA+1DDのハイブリッド構成のモデルです。「PU+PEEK振動板」ドライバーを搭載したモデルとしては1DD構成の「KBEAR Storm」がリリースされており、今回の「KBEAR Flash」はシェル形状や仕様的にもこの上位モデルという位置づけだと考えられますね。
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1DD構成の「KBEAR Storm」はフェイスプレートも樹脂製でしたが、「KBEAR Flash」では5軸CNC加工により成形されたアルミニウム合金製のフェイスプレートを採用。シルバーまたはブラックのカラーリングで表面処理を行っています。ドライバー構成は1BA+1DDのハイブリッドで、ダイナミックドライバー部には10mmの強磁気PU+PEEK複合振動板ダイナミックドライバーを搭載。「PU+PEEK複合振動板」は、「PU(ポリウレタン)」と「PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)」という異なる特徴を持つ高分子樹脂素材を組み合わせることで、滑らかな質感と各音域のバランスに優れたサウンドを実現するのに適しているとされています。
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KBEAR Flash」ではこのダイナミックドライバーにカスタマイズされた高域用のBAドライバーを組み合わせることでより純粋かつ忠実な表現効果をもたらします。シェルデザインにおいてはこのハイブリッドのパフォーマンスを最適化するために大口径の金属製ノズルを使用し、ノズル内にBAドライバーを埋め込む設計を採用しました。

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また「KBEAR Flash」ではqdcコネクタとカバー形状に互換性のあるタイプC仕様の2pinコネクタを採用。リケーブルおよびワイヤレスアダプタへの交換が可能です。付属ケーブルは4N高純度銀メッキ線リッツケーブルが付属。「KBEAR Flash」では通常の1.2mケーブルのほか、2.0mのロングケーブルが付属するモデルを選択することも可能です。カラーバリエーションは「ブラック」「グレー」「ブルー」「パープル」の4色を用意しています。

KBEAR Flash」の購入はAliExpressのEasy EarphonesまたはアマゾンのYinyoo-JPにて。
価格は24.99ドル~、アマゾンでは3,499円、2.0mケーブル仕様はそれぞれ25.99ドル3,699円です。
AliExpress(Easy Earphones): KBEAR Flash
Amazon.co.jp(Yinyoo-JP): KBEAR Flash ※レビュー掲載時10% OFFクーポン配布中


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Easy Earphones より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

今回はグレー(シルバー)の通常モデルとブラックの2.0mロングケーブルモデルが届きました。どちらもパッケージはいわゆるKZのボックス大で、ラインアートによるシンプルなパッケージ。
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KBEAR Flash」のパッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル(ケーブルバンド付き)、イヤーピースが2種類でそれぞれS/M/Lサイズ、説明書。低価格モデルと言うこともあり必要最小限ですがイヤーピースが2種類付属するところが同社らしいですね。
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KBEAR Flash」のイヤホン本体は軽量な樹脂製でフェイスプレートは厚みのあるアルミ合金製、またステムノズル部分も金属製です。コネクタ仕様はqdcとカバー形状に互換性のある(KZタイプC互換の)0.78mm 2pin仕様です。ハウジング部分のシェル形状は「KBEAR Storm」と同様ですが、金属製フェイスプレートの意匠が異なるほか、BAドライバーを内蔵するためステムノズルはより太さのある形状となっています。
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ステムノズルは太くなったものの、耳にフィットしやすいシェル形状のため装着感は良く「KBEAR Flash」も耳にしっかりホールドできます。ケーブルコネクタはqdcとカバー部分の形状に互換性がありつつ0.78mm 2pin仕様のタイプ。qdc用およびKZタイプC仕様のケーブルが利用できる形状です。
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ケーブルは細めの撚り線タイプでこちらも「KBEAR Storm」と同様です。若干絡まりやすいですが癖が無く柔らかいのでとても使いやすいケーブルです。また2.0mロングケーブルも同じ線材でより長さを確保しています。ロングケーブルが必要な方には選択肢があるのは朗報でしょう。どちらもケーブルバンドが付属しており結束できるのは便利かもですね。
イヤーピースは一般的な形状のグレータイプと開口部の広い浅めの白色タイプが付属します。開口部の広い方がよりダイレクトな印象がありますね。他にもWTSUN Audio取扱いでは「AET07」互換の「KBEAR 07」や「TRI Clarion」への交換もお勧めです。他には定番の「スパイラルドット」や「SpinFit CP100+」、個人的におすすめの「TRN T-Eartips」なども良いでしょう。


■ サウンドインプレッション

KBEAR Flash」の音質傾向はバランスが良い中低域寄りのドンシャリ傾向。カスタマイズされたBAドライバーはスッキリとしたBAらしい硬質な音を鳴らしつつ、刺さりやすい帯域をコントロールし刺激を抑えた聴きやすい印象で鳴ります。またPU+PEEK複合振動板ダイナミックドライバーによる中音域および低域は滑らかさとキレの良さが両立した印象で、V字傾向の非常に分かりやすく楽しいイヤホンに仕上げられています。
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とはいえ同様のドライバーをシングルで搭載しメリハリ強めのサウンドを楽しめる「KBEAR Storm」と比較すると、付属ケーブルでは「KBEAR Flash」のほうがややニュートラル方向で大人しめに感じるかもしれませんね。付属ケーブルでのサウンドもやや中低域寄りで聴きやすい印象ではあるのですが、よりキレのあるサウンドを好まれる場合は、情報量の多い銀メッキ線ケーブルなどにリケーブルし、できればバランス接続をすることで「KBEAR Flash」のポテンシャルを引き出し、よりアグレッシブなサウンドを堪能できます。スマートフォン直挿しでも十分に鳴らしやすいイヤホンすが、ドライバーの個性が強くシンプルな構造のハイブリッドのため遊べる余地も大きそうですね。

KBEAR FlashKBEAR Flash」の高域はスッキリとしたBAらしい音を鳴らしつつ、付属ケーブルの場合はやや暗めで滑らかさを感じる印象になります。搭載されるBAユニットはよくカスタマイズされており、低価格中華ハイブリッドにありがちな金属質のギラつきはなくこの価格帯の製品としては十分に直線的な伸びがあります。また、より情報量の多い銀メッキ線ケーブルなどにリケーブルすることで高域~中高域の主張が一気に増し、鮮やかさを持つ音に覚醒します。この場合は煌びやかさは増しますが、中低域の主張も強いため相対的に刺激は抑えられ、聴きやすさは維持されています。

中音域はV字傾向のバランスのため曲によっては僅かに凹みます。しかし女性ボーカルなど中高域の強めの主張とともに全体的にキレとスピード感があり、解像度や分離感は同価格帯の既存の中華ハイブリッドと大きく違いはないものの見通しは良く、ボーカルは鮮やかな色彩を持っています。
KBEAR Flashこちらも付属ケーブルはやや滑らかさ強調され、男性ボーカルは温かみを感じる印象となります。音場は自然な広がりと奥行きがあり、付属ケーブルでは臨場感を強調するようなことはないものの、ゲーミング用途などでも使いやすい定位感があります。
付属ケーブルでも全体的に聴きやすく、BGMとして気軽なリスニングを行う際には最適な印象ですが、よりメリハリのあるサウンドを好まれる方はリケーブルなどで大きく「覚醒」させることができます。特にバランス接続では各ドライバーの主張が一気に増すためより鮮やかで力強いサウンドが楽しめると思います。また臨場感も向上した印象になると思います。

低域は締まりが良くエネルギッシュな音を鳴らします。中高域との分離は良く、ミッドベースは過度に膨らむことなく力強い印象があります。こちらもよりメリハリのある低音を得るためにはリケーブルが必須となります。付属ケーブルでも低域は十分にパワフルですがやはり聴きやすい範疇でまとめられており、臨場感を増すため音量を上げるとややバランスが崩れる印象となります。
KBEAR Flash量的にはミッドベースが多く存在感がありますが、重低音は量的には控えめな印象です。ただし十分な深さはありキレも良いため、しっかり鳴らすことで音数の追い曲でも楽しめる印象の低域です。
ドンシャリ傾向のイヤホンのため、分析的なリスニングなどには向きません。しかし付属ケーブルでは解像感がやや下がる代わりに適度に暖かく、滑らかなバランスとなるため、明瞭なサウンドながらバラードなどの曲調でも違和感無く楽しめるでしょう。逆にキレとスピード感のあるパワフルさを活かしたい場合はリケーブルなどで「覚醒」させることでJ-POPやアニソンなど数の多い曲でも元気なサウンドを楽しめると思います。


■ まとめ

というわけで、「KBEAR Flash」はKBEARらしいドンシャリサウンドを踏襲しつつ、付属ケーブルでは聴きやすく使いやすいサウンドバランスでライトユーザも使いやすい傾向にまとめつつ、リケーブルなどで一気にメリハリが強調されたサウンドに覚醒するポテンシャルも持った楽しいイヤホンという点ではマニアも結構楽しめそうな印象でした。
KBEAR FlashまたスマートフォンやPC、ゲーム機などに直挿しでも鳴らしやすい特性で、付属ケーブルでは派手さは無いものの長時間のリスニングやゲーミング用途でも結構使いやすい点はライトユーザー向けとしても最適です。また用途に応じてロングケーブルが選べるのも興味深いですね。そしてアルミ製のフェイスプレートも落ち着いた印象でデザイン的に好感を持つ方も多そうです。
KBEAR Flash」はオールラウンダーとして個々の性能的には及第点といった印象もありますが様々な用途で気軽に使えるという点でライトユーザーを含めた多くの方に勧めやすいイヤホンに仕上がっていると感じました。