こんにちは。今回は 「iBasso Audio 3T-154」です。「iBasso Audio」の最新モデルでイヤホンとしては業界最大級の15.4mm振動板(ベリリウムコート)と3T(テスラ)の圧倒的な強力マグネットを搭載するシングルダイナミック構成モデルです。2万円台のミドルグレードながら高級ヘッドホンのような壮大で深く、かつ鮮やかなサウンドを楽しめる製品です。国内では2月20日より発売となり、13日より予約受付が開始しています。今回MUSIN様のご厚意で事前にレビューさせていただくことができました。
■ 製品概要と購入方法について
中国のオーディオブランド「iBasso Audio」はDAPやポータブルアンプ製品、さらにはイヤホンなども含めオーディオマニアにはお馴染みの老舗ブランド。私のブログでも同社のオーディオアダプターやイヤホン製品を紹介していますが、他にもレビューとしては未掲載ながら現在メインDAPとして使用している「iBasso DX320」のほか、過去にもDXシリーズは「DX150」「DX220」とアップグレードしながら購入していたり、イヤホンも何種類の製品を所有しています。品質面および性能面でも定評があり個人的にも好きなブランドのひとつです。
今回紹介する「iBasso Audio 3T-154」は日本では2024年2月20日より発売予定の最新モデルです。スペックがそのまま製品名となっており、非常に個性的なドライバーを搭載するシングルダイナミック構成のモデルです。「iBasso Audio 3T-154」が搭載するダイナミックドライバーは、ベリリウムコートを採用し、その大きさは15.4mmとイヤホンとしては最大級の振動板を搭載。
さらに革新的な二重磁気構造の回路設計にカスタマイズされた高磁力N55 NdFeBマグネットを組み合わせることで代表的なIEM(1T程度)や、フラグシップ機の1.6T程度を遙かに上回る3T(テスラ)という驚異的な磁束を実現しています。
さらに革新的な二重磁気構造の回路設計にカスタマイズされた高磁力N55 NdFeBマグネットを組み合わせることで代表的なIEM(1T程度)や、フラグシップ機の1.6T程度を遙かに上回る3T(テスラ)という驚異的な磁束を実現しています。
「iBasso Audio 3T-154」は業界最大級の15.4mmダイヤフラム・ダイナミックドライバーをシングルで搭載。ドライバーユニットのサイズ縮小化したコンパクト設計により、この超大口径の振動板(ダイヤフラム)の搭載を実現したようです。大口径化はより優れた音圧レベルを可能としダイナミックなサウンドを実現します。また振動板にはハイグレードイヤホンでの採用が増えているベリリウムコートが施され、優れた内部抵抗と優れた剛性を実現。さらに高精度エンボス成形技術により耐久性と強度を高め、歪みを極限まで低減することに成功しているそうです。
さらに「iBasso Audio 3T-154」ではシェルに高硬度マグネシウム合金を採用。一般的なアルミニウム合金と比べ36%も軽量ながら強度および剛性に優れており、高い制振性を持っています。大口径のドライバーユニットを搭載しつ片側9g程度の軽量に仕上げつつサウンド面でも安定性を確保しています。
ケーブルは0.78mm 2pinコネクタを採用した高純度銀メッキ銅線ケーブルでプラグには独自の1.2mmクイックプラグスイッチシステムによる交換式プラグを採用。一般的な交換式と比較し約2.3倍広い接触面積があり高い伝導性を実現します。
「iBasso Audio 3T-154」の詳細情報はMUSINの製品ページを参照ください。カラーバリエーションは「ブラック」と「シルバー」の2色から選択できます。
→ MUSIN公式サイト:iBasso Audio 3T-154
価格は24,750円(税込)。発売開始は2024年2月20日からで今週13日より予約開始しました。購入は国内代理店のMUSINのオンラインショップおよび各専門店にて。
Amazon.co.jp(MUSIN 公式ストア): iBasso Audio 3T-154
楽天市場(MUSIN 公式ストア): iBasso Audio 3T-154
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして MUSIN様 より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「iBasso Audio 3T-154」のパッケージは製品画像を掲載したシンプルなデザイン。本体サイズにあわせて結構大きめのボックスですね。今回は「シルバー」のモデルで届きました。
パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル(3.5mmプラグ装着済み)、交換用4.4mmプラグ、プラグ交換用専用ドライバー、イヤーピース5種(シリコンタイプ4種・それぞれS/M/Lサイズ、ウレタンタイプ大/小サイズ)、スペアノズル、ケース、説明書、保証書。今回も非常に充実した内容ですね。
本体はマグネシウム合金による金属製でシェルサイズはかなり大きめです。以前レビューした「IT05」と比較して二回りは大きい印象ですね。サンドブラスト処理された表面は重厚な外観を演出していますが実際は樹脂筐体のイヤホンのような軽量さ(片側9g)です。そのため重さで耳から落ちる、という心配はなく、形状的にも耳にしっかりホールドできますが、ステムノズルも結構太めのタイプのため装着性そのもには多少個人差があるかもしれません(合う方と合わせにくい方がいらっしゃる場合があります)。
「iBasso Audio 3T-154」ではイヤーピースはシリコンタイプ4種類およびウレタンタイプと5種類が各サイズ付属します。大抵の場合は付属イヤーピースのどれかで問題ないと思いますが、ポイントとしては本体が耳に対してまっすぐ装着でき、かつしっかりフィットするものを選ぶのが良いでしょう。本体のステムノズルの角度と耳穴の位置が全ての方が同じわけではないと思いますので、耳穴が大きく多少角度を付ける必要がある場合は長めのタイプ、まっすぐ装着できる場合は短めを選択し、逆に耳穴が小さく付属イヤーピースで十分な装着感を得られない場合は太いノズルに併せてJVC「スパイラルドット」のSSサイズやラディウス「ディープマウント」のXSサイズなどを選択するのも良いと思います。
なお、「iBasso Audio 3T-154」のステムノズルは取り外し交換が可能です。とはいってもフィルター付きというわけではなく、あくまで予備の交換用。Moondropなどでは交換用のメッシュパーツが付属したりしますが、「iBasso Audio 3T-154」ではメッシュ部分がノズルにしっかりと固定されているため、詰まったりメッシュが破れた場合はノズルごと交換する仕様になっているらしいですね。
付属ケーブルはブラックの樹脂被膜による4芯タイプで線材は高純度銅銀メッキ線ケーブルとのこと。コネクタは一般的な0.78mm 2pin仕様で、従来のiBasso製品のMMCXから変更になりましたね。リケーブルの選択肢も増えました。また付属ケーブルはプラグ交換式で3.5mmと4.4mmバランスの2種類のプラグが付属します。この交換プラグは他のメーカーの製品では接続部で0.78mmピンで内部結線しているのに対して、「iBasso Audio 3T-154」のケーブルでは1.2mmピン仕様となっており、より伝達性が向上しているとのこと。またプラグを固定するため専用の1.5mmドライバーでよりしっかりと固定する仕様になっています。この固定方法は以前のDXシリーズ(DX200/DX150/DX220)のアンプモジュールの固定ギミックを彷彿とさせ、いかにも「iBassoらしい」質実剛健さを感じますね(^^)。
■ サウンドインプレッション
「iBasso Audio 3T-154」の音質傾向はニュートラル方向の印象でフラットから緩やかなU字方向のバランス。超大型ドライバーにより描写される空間表現そのものに広さがあり、かつ強力な磁気回路とシャープさが特徴のベリリウムの恩恵もあってかレスポンスは非常に高速です。例えるならAKGの上位モデルやbeyerdynamicのようなモニター系サウンドのハイグレードヘッドホンを聴いているような印象ですね。大口径らしく低域は量感と厚みがあり非常にパワフルですが過度な強調は無く、中高域も分離もよくしっかりとした存在感があるためスッキリとしたバランスの中で迫力のある臨場感を楽しめるサウンドです。
なお、インピーダンス16Ω、感度116dB/mWと音量は取りやすい仕様ですが、ケーブルや再生環境でかなり印象の変化が大きいため、試聴においてはいろいろな環境で聴いてみるのがおすすめです。
実際に「iBasso Audio 3T-154」をiBassoのアプローチの異なる3種類のプレーヤーやアダプタで聴き比べてみると、やはり最も相性が良かったのはハイグレードDAP(デジタルオーディオプレーヤー)に分類される「DX320」で聴いた場合で、3.5mmシングルエンド、4.4mmバランスのどちらの場合でも癖の無いニュートラルな出力ながらクリーンかつ高い駆動力でパワフルな低域とより鮮やかさのある中高域とバランス良く見通しの良い印象で鳴ってくれました。「iBasso Audio 3T-154」の場合ある程度駆動力のある再生環境でしっかり鳴らした方がよりニュートラルなバランスとなるようですね。
これに対し、「iBasso DC-Elite」ではダイヤルによるゲインステップが中間くらいの設定で音量を調整すると、全体的な印象は踏襲しつつ低域の主張がより強めのキャラクターが顔を出してきます。特に3.5mmシングルエンドでは低音がより顕著に強いバランスになりますね。とはいえ分離は良く中高域が曇るような事は皆無ですので、より低域が強めのほうが好みの方にはこのバランスもありだと思います。なお、「DC-Elite」ではゲインステップを最大にして代わりに端末側の音量を低めに調整することで「DX320」に近い、よりニュートラル方向のバランスで楽しめます。このような懐の深さも「DC-Elite」の特徴ですね。
また低価格アダプターの「iBasso DC03 Pro」の場合は思ったより低域が強調されることも無く、結構元気な印象でバランス良く鳴ってくれたのが印象的でした。DACチップにデュアル「CS43131」を採用した「DC03 Pro」はDCシリーズのなかでもESS系DACを搭載するモデルと比較するとより滑らかな印象のサウンドですが、実際はゲインを上げるとややカマボコ気味になることで小型アダプターとしての駆動力のハンデを補う調整がされているのが実感出来ますね。「DX320」のより広く深く鳴る感じとは異なりますが、これはこれで楽しそうです。
「iBasso Audio 3T-154」の高域は明瞭で直線的な伸びのある音を鳴らします。鮮やかさを感じる音色で適度な煌めきがあり見通しも良い印象です。解像感も十分に高く特にバランス接続では分離感が向上します。いっぽうで大口径ドライバーらしい特徴もあり、小口径ドライバーやBAのような機敏に鳴る印象とは異なる、広大な空間で余裕を持って再生される大らかさも感じられます。そのためベリリウムコートらしいキレの良さや明瞭感があるものの、寒色系ハイブリッドなどと比較してスピード感はあまり感じないかもしれませんね。この鳴り方も「iBasso Audio 3T-154」の特徴のひとつといえるでしょう。
中音域は癖の無いニュートラルな音を鳴らします。特に凹むことはなく自然な位置で定位します。ただし前述の通り再生環境により低域のバランスが異なるため、低域が強めに感じる再生環境では若干下がった印象になるかもしれません。音場は広さがあり1音1音が余裕を持って鳴っているのを実感します。これはドンシャリ系のような「多層的な広がり」や、開放型のような「抜け感」とは異なる、そもそも描写される空間そのものに広さがある、といった印象で、「iBasso Audio 3T-154」のサウンドが「ヘッドホン的」と感じさせる理由でもあると思います。
さらに十分な駆動力のあるクリーンな再生環境ではボーカル域と演奏の分離、それぞれの楽器の定位、そして1音1音の粒立ちや余韻などがより鮮明に描写され、非常に立体感のある壮大な臨場感を味わうことができます。この「壮大さ」こそが「iBasso Audio 3T-154」の醍醐味と感じます。
いっぽうで、高域同様に印象としては中低域を中心に適度にウォームで、十分な解像感はあるものの大振りな印象があり、キレッキレの明瞭感やノリの良さを好まれる方にはあまり合わないかもしれません。
低域は超大口径ドライバーとしての特徴を最大限に感じる非常にパワフルで深さのある音を鳴らします。駆動力が低めの環境ではより低域が強めに出ますので、気になる方はより情報量の多い銀メッキ線や純銀線などのケーブルに交換してみるのも良いかもしれませんね。
ミッドベースは厚みのある量感のある音を鳴らしますが自然な輪郭と分離の良さがあり、直線的な印象で鳴ります。奥行きを感じさせ、心地よい臨場感で迫力を感じさせるサウンドを楽しめます。重低音も非常に深く、また解像度の高い質の良い音を鳴らします。いわゆる低音イヤホンとは性格が異なるものの、低域をしっかり聴きたい方には非常に魅力的な選択肢のひとつとなると思います。
傾向としてはロック、ポップス、アニソンなどのボーカル曲に加え各種インストゥルメンタルやオーケストラ演奏なども非常に楽しく聴くことができると思います。
■ まとめ
というわけで「iBasso Audio 3T-154」は、スペックをそのまま製品名にした、という、他のメーカーの神話とか動物とかいろいろウンチクを唱えるような製品とは真逆の、何とも生真面目さすら感じるイヤホンで、デザインもかなり無骨な印象にまとまっています。
この外観に対して、サウンドは超大口径、強磁束、ベリリウム、といった特徴を最大限に活かした、非常に雄大な空間表現を持つ高級ヘッドホンのような音作りが印象的でした。発売前の価格とかをよく知らない段階で今回のレビュー依頼をいただきましたので、アンダー200ドル級、超円安の現在の日本でも2.5万円程度という価格設定が個人的には最大の驚きでした。だって見た目からしてもっと高そう、って思いません?(笑)。そのうえ音作りも非常に特徴的で、よりハイグレードな製品といわれても納得しそうな仕上がりでした。大口径ドライバー故の装着性の相性や再生環境の変化などもあるため、可能であれば試聴などで事前に確認した方が良いとは思いますが、個人的にはより多くのマニアの方にお勧めできるイヤホンだと感じました。例によって発売後はすぐに完売しそうな気もしますので、興味のある方は事前に予約したほうがいいですよ(^^)。