こんにちは。今回は 「NICEHCK DB2」です。お馴染みHCK Earphonesのオリジナルブランド「NICEHCK」の低価格1BA+1DDハイブリッドモデルです。以前から「DB3」と「DB1」はありましたが、確かにDB2は無かったね、というわけでリリースされたワケですが、パッケージングからフェイスデザインまで超低価格仕様だった過去モデルとは一新し、アンダー30ドルに抑えつつもいろいろグレードアップしたイヤホンに仕上がっています。
■ 製品概要と購入方法について
中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」は私のブログでもお馴染みの老舗中華イヤホンセラーで、多くのマニアに絶大な支持を受けていることでも知られています。そのオリジナルブランドの「NICEHCK」もまた多くのマニアに寄り添った、「他とはちょっと違う製品」が特徴だったりもしますね。
なかでも「変態イヤホン」的アプローチの代表格なのがピエゾセラミックドライバーを含む片側7ドライバー搭載のハイブリッド仕様の「NX7」シリーズで現在「NX7 MK4」までリリースされています。逆に20ドル以下の超低価格帯のモデルが1BA+2DD構成の「DB3」と1DD構成の「DB1」で、発売からそれなりに経っていますが現在も根強い人気があります。
そして今回の「NICEHCK DB2」はトラディショナルな1BA+1DD構成のハイブリッド仕様で、モデル名称としては「DB3」と「DB1」の中間になります。しかし、「DB3」よりグレードアップしたダイナミックドライバーを採用し、シェルデザインは「NX7 MK4」を踏襲した高級感のある金属ベゼルとレジンフェイスパネルを採用。パッケージも「DB1」より萌え絵の本気度が増した豪華版になりました。並み居る強豪が登場しているアンダー30ドル級の低価格イヤホンに挑んでいるモデルとなっています。
「NICEHCK DB2」のダイナミックドライバー部は10mmのチタンコートグラフェン振動版ダイナミックドライバーを採用。高域用BAとの組み合わせにより最適なチューニングを実施しています。「NICEHCK DB2」のフェイスプレートは「NX7 MK4」と同じプロセスで製造されており金属製のベゼルに覆われたレジン製パネルは「ブルー」「パープル」「ブラック」の3種類のカラーバリエーションを選択できます。またケーブルはマイク付きモデルが選択できます。
「NICEHCK DB2」の購入はAliExpressの「NiceHCK Audio Store」にて。価格は22.99ドルです。
※2月末まで有効のクーポンコード「DB22024」をいただきました。ぜひご利用ください。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): NICEHCK DB2
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして HCK Earphones より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
というわけで、「NICEHCK DB2」ですが、低価格モデルの萌え絵パッケージもいよいよえげつないレベルに達していますね。今回はオマケの缶バッジも届きました(これは初回分だけかもしれません)。
パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、ケーブタイ、イヤーピース(グレーの通常のタイプがS/M/Lサイズ、「NICEHCK 07」(AET07互換)が5サイズ、レザーポーチ、キャラクターカード、説明書、保証書など。20ドルちょっとの製品としてはえげつない充実ぶりですね。
本体形状は以前の「DB3」「DB1」より一気にグレードアップし、印象的なフェイスプレートを含め、「NX7 MK4」を踏襲したデザインになっています。コネクタも「NX7」シリーズ同様の形状を採用しており、カバー部分はTFZ製イヤホンのコネクタと互換性があります。リケーブルではCIEM 2pin、中華2pin、そしてTFZ用の2pinが使用できます(KZやTRNなどのタイプC、あるいはqdcタイプはカバー形状が合わないため使用できません)。
10mmドライバーとBAによるシンプルなハイブリッドながら最近のイヤホンのなかでは大きめのフェイスに厚さをおさえたシェル形状で、耳全体を覆うような装着感となります。
装着性自体は良好なのですが耳が小さい方などは軸が短めのイヤーピースではステムノズルが耳穴まで届かず十分な装着感が得られない場合があります。私もまず何も考えずにいつも使用してる「TRN T-Eartips」を組み合わせたらリーチが足りず、結局付属イヤーピースの「NICEHCK 07」を使用しました。
ケーブルは細い撚り線タイプで取り回しは良いものの、線材そのものは価格に見合ったものになっています。最近のHCKはイヤホンよりケーブルのほうが圧倒的に種類が多いですし、「NICEHCK DB2」より高価なケーブルの方がたぶん多かったりしますが、ここはそういったリケーブル製品で「遊ぶ」余地を残していると考えるべきでしょう。
■ サウンドインプレッション
「NICEHCK DB2」の音質傾向は高域をやや抑えボーカル域が少し強調されており多少W字寄りの印象も感じさせるチューニングで、バランスとしては弱ドンシャリ。ボーカルはより近く定位しており、分かりやすくミッドセントリックなサウンドです。高域はハイハットの存在感などは抑えつつ基本は控えめで中音域を下支えしつつ、女性ボーカルの高音などの中高域は一般的なV字傾向のイヤホンより持ち上げられており、鮮やかでエネルギッシュな印象を受けます。低域も力強く十分な量感があり、締まりの良いキレのある音を鳴らしますが、中音域の存在感により、アニソンやJ-POPなどのボーカル曲ではそこまで低域が目立つことはありません。HCKはある程度のライトユーザーを想定したクラスの製品として、アニソンなどの女性ボーカル曲との相性が良い音作りを意識している、あるいはそれらのジャンル向けに「割り切っている」という印象も受けますね。
「NICEHCK DB2」では「NX7 MK4」とよく似た外観を与えつつ、音質面では低価格イヤホンとしてボーカル曲特化で使いやすくまとめていることで、明確な棲み分け行われているのを実感させます。オーディオ的な解像感や全体的な表現力を高め、本格的にサウンドを楽しみたい場合は「NX7 MK4」へアップグレードをオススメしますよ、という流れなのかもですね。
また「NICEHCK DB2」は幅広い再生環境で鳴らしやすく、ライトユーザーにも最適な仕様で、スマートフォン直挿し、あるいはゲーム機直挿しでも十分に楽しめる印象です。高域は刺激を抑えており、低域は量感を持ちつつキレとスピード感があり、中音域から中高域にかけてはボディが厚く存在感があるため、ゲーミングの用途でもかなり相性が良いイヤホンではと思います。いっぽうで動画視聴では若干淡泊でもう少し響きを増して包み込むような臨場感があった方が魅力的かもしれませんね。
「NICEHCK DB2」の高域はBAによりハイハットなどの要所でアクセントを与えつつ、全体としては控えめで聴きやすくまとめられています。中音域では女性ボーカルの高音など中高域付近での主張が強めにあるものの、一般的に刺激を感じやすい帯域で急速に落ち込んでおり、高域の伸び感や見通しははそれほど感じさせません。しかしその上で高域用BAが補完しハイハットなどの音色を与えることでメリハリを付けている印象です。そのためBA特有の煌めきなどは感じるものの刺激は抑えており、ボーカル域を下支えしている高域という印象です。
中音域は中高域付近にアクセントがあるためV字傾向ながらあまり凹まず、やや「W字ぽい」印象を受けます。ただ一般的にW字(またはU字)と呼ばれる傾向とはやや異なり、あくまで全体としてはV字傾向のサウンドのため、ちょっと独特の傾向とも言えます。
そのため最近では低価格イヤホンでも多く採用しているU字傾向の製品を多く聴いている人ほど違和感を持ちやすいかもしれませんね。それでもライトユーザーの多くにとっては女性ボーカルなどの聴きたい音域がより近く表現され、それなりに分離感も演出されているため心地よく感じると思いますし、ゲーミング用途でも刺激を抑えつつ明瞭感があり注意したい音を捉えやすそうです。もっとも、こういった実用的な「割り切り」のなかにオーディオ的にはやはり変態性が見え隠れしてしまうところが「いかにもHCK」ではあるかもしれません(^^)。
低域は十分な量感があり、ミッドベースは力強く鳴ります。薄く硬質なグラフェン振動版にチタンコートを加えることでキレが良く締まりのある音を鳴らします。ある程度音数の多い曲でも混雑すること無く楽しめる印象です。反面、響きは少なく音場的な広がりの演出は無く、臨場感は少なめになります。重低音もミッドベースほど目立ちませんがこの価格帯としては十分に深く、厚みがあり重量感もあります。低域はイヤーピースの変更や、リケーブルおよび再生環境の違い等でのアップグレード効果が大きく、より質感を高めたい場合はいろいろ試して見るのも良いと思います。
■ まとめ
というわけで、強烈な萌え絵パッケージ推しと、高級感マシマシのフェイスデザインで低価格イヤホンながらちょっとグレードアップした印象も感じさせる「NICEHCK DB2」ですが、音質傾向的にはライトユーザーも想定しつつコストとの折り合いも考慮した、非常にしたたかな音作りを実感したイヤホンでした。決してオールラウンダーではなく、用途がハマれば結構楽しめる、というタイプの製品ですが、それだけに低価格ながら魅力的な外観など同価格帯の他の製品には無い魅力も多いイヤホンだと思います。また様々な価格帯、構成の製品をリリースしているHCKとしての棲み分けも考慮しているのだろうと思いますね。
「NICEHCK DB2」はアニソンやJ-POPなどをストリーミングで楽しんだりするライトユーザーや、ちょっと人とは違うイヤホンを装備したいゲーマーにも最適で、マニアにとっても隠れたHCKの変態性(しつこい)を垣間見ることができる製品として押さえておくのも楽しいのではないでしょうか。