こんにちは。今回は 「Moondrop Aria 2」です。Moondrop(水月雨)の人気1DDイヤホンの新世代モデルですね。海外版が発売された直後くらいにオーダーしていたので実は結構長期間「積み」になっていた製品です。未レビューの依頼もまだまだありますが購入したイヤホンもぼちぼち紹介していこうと思います。
■ 製品概要と購入方法について
中華イヤホン分野で高い人気を持つ「Moondrop」(水月雨)で最近のアンダー100ドル級の人気モデルが「Aria」シリーズで、2001年にリリースされた「Aria」および2022年の「Aria Snow Edition」はどちらも日本でも高い人気を持っています。今回の「Moondrop Aria 2」は技術革新に伴う進化を加えて生まれ変わった新モデルです。
→過去記事(一覧): Moondrop製イヤホンのレビュー
「Aria」はLCP振動板、「Aria Snow Edition」のDLC振動板から、「Moondrop Aria 2」が搭載するダイナミックドライバーでは新開発の「TiN セラミックドーム複合振動板」を採用。3種類の素材を複合化することで金属コーティング振動板を凌駕する高域特性と、結晶コーティング振動板を凌駕する低歪性能を実現しているとのこと。「VDSF Target Response」に基づいた科学的な理論と音響エンジニアによるチューニングにより自然で開放的、繊細で原音忠実な音色に仕上げられています。
「Moondrop Aria 2」のシェルは合金鋳造されたシェルをCNC加工で彫刻を施しカスタマイズされたネジを使用して固定されています。また新開発の分散式ディフレクター構造を採用した圧力ベントはより信頼性が向上し、メッキノズルは真鍮製で、「Starfield 2」と同様な取り外しが可能なタイプを採用。目詰まり防止のフィルターも容易に交換できます。付属ケーブルは3.5mmおよび4.4mmプラグの交換が可能な0.78mm 2pin仕様を採用しています。
「Moondrop Aria 2」の価格は89.99ドル、国内版は15,030円前後です。国内版は完売(次回入荷待ち?)で受注を停止しているサイトも多いため、現在は海外版を購入した方が確実かもしれませんね。
HiFiGo(hifigo.com): Moondrop Aria 2
Amazon.co.jp: Moondorp Aria 2 ※検索結果
楽天市場(国内正規品): Moondrop Aria 2
免責事項:
本レビューは個人的に製品を購入し掲載している「購入者レビュー」となります。
本レビューに対してそれ以外の金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
今回は国内版発売前にHiFiGoで購入しました(リワードポイントが結構たまっていたので^^;)。
Moondropのパッケージの中ではAriaシリーズは「わりと」大人しめな印象ですね。
「Moondrop Aria 2」のパッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、交換プラグ、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、レザーケース、説明書、保証書など。
「Moondrop Aria 2」の本体は亜鉛合金製のダイキャストでフェイス部分などのデザインはCNC加工により仕上げられています。フェイスパネルはゴールドの特殊ネジで固定されています。表面はサウンドブランド加工でシルバーカラーに仕上げられています。
フェイスパネルに描かれたデザインやカラーリングおよび表面仕上げなどは異なりますが、シェル形状そのものは以前レビューした「Starfield 2」を踏襲しています。そのため真鍮製のステムノズルが取り外ししてメッシュ部分を交換できるギミックも同様です。
「Aria」は初代の「Starfield」や「KXXS」に比べると厚みを抑えた形状になっていたため、「Moondrop Aria 2」ではフェイスサイズはほぼ同じですがより厚みが増したような印象になりますね。
イヤーピースは従来の「Aria」より進化したバージョンが付属しており装着性は向上しています。しかし「Aria Snow Edition」では「KATO」と同じ「Spring Tips(清泉)」が付属していたので、ちょっと残念に思う方もいらっしゃるかもしれませんね。他にも定番の「スパイラルドット」や「AET07」(互換品を含む)、「SpinFit CP100+」「TRN T-Eartips」など、そして「Stellaris」に付属する「Softears U.C.」など、自分の耳に合う最適なイヤピースを選択するのも良いでしょう。
ケーブルはダークシルバーのワイヤーカラーの4芯タイプのケーブルが付属。ケーブルは「Aria」「Aria Snow Edition」および「Starfield 2」と比較しても確実にグレードアップしていますね。4.4mmプラグに交換できるのも良いですね。被膜は弾力があり取り回しは良い印象です。
■ サウンドインプレッション
「Moondrop Aria 2」の音質傾向はニュートラル方向のバランスのよいサウンド。傾向としては緩やかなU字または弱ドンシャリで、やや「Starfield」寄りでV字傾向だった「Aria」(または「Aria 2021」)より、DLC振動板を採用した「Aria Snow Edition」の方向性をより進化させた印象です。「Aria Snow Edition」がDLC振動板を採用した同社の出世作ともいえる「KXXS」ぽさも感じる製品だったのに対し、「Moondrop Aria 2」は「KXXS」の進化形である「KATO」で真鍮ノズルを組み合わせたリスニング寄りのサウンドに近い印象を受けます(「KATO」はより同社のリファレンス寄りの「Steel」ノズルと、リスニング寄りの「Brass(真鍮)」ノズルを交換できます)。
またスペックとしては「Moondrop Aria 2」は従来の「Aria Snow Edition」より感度がアップしており、より多くの再生環境で鳴らしやすくチューニングされています。つまり、「Moondrop Aria 2」は「Snow Edition」をより進化させ、「KATO」のリスニングチューニングに近いサウンドをより手軽に楽しめるように仕上げた製品、と捉えることができそうです。
Moondropはいわゆる「ハーマンターゲットカーブ」的なサウンドチューニングを行っているニュートラルサウンド寄りの代表的なブランドとして知られていますが、同社がリファレンスとしている独自の「Virtual Diffusion Sound Field (VDSF) Target Response」では、同様な方向性を持ちつつ高域は刺さりやすい帯域を中心に多少コントロールされており、かといって温かくなりすぎないように煌びやかさを維持する、ちょっと繊細なチューニングが特徴的です。「KATO」では「KXXS」と比べさまざまな技術により徹底的な歪みを排除し質感を向上しています。「Moondrop Aria 2」では新たな複合振動板の採用により高音域および低音域のフラットさが向上しているようでコストを抑えつつ、同様のアプローチを目指しているようにも感じます。また真鍮製ノズルとフィルターを採用することで、「KATO」の真鍮ノズル選択時同様にニュートラルなバランスの中で僅かに温かく印象的なボーカルを楽しめるサウンドになっています。
「Moondrop Aria 2」の高域は明瞭かつ伸びの良さを持ちつつ、刺激をコントロールし聴きやすくまとめられています。「Aria 2021」より明るく煌びやかさも感じるものの同時に僅かな温かみもあります。解像感も従来の「Aria」シリーズと同等以上の印象です。ただし上位モデルの「KATO」や「KXXS」のような透明感には及ばず、価格なりの差別化要素でもありますが、中音域を中心に捉えたリスニング的なチューニングとしては使いやすく優れた高音といえるでしょう。
中音域は癖の無いニュートラルな音で明瞭ながら滑らかさのある自然な音色です。「Snow Edition」の中音域にも比較的近いですが、よりフラットな印象を受けます。それでもボーカル域は適度な主張があり、僅かに温かく色彩豊かな表現により、フラット傾向にありがちや淡泊な印象はありません。音場は自然な広さがあり、定位も正確な印象。演奏との分離も自然で、特にバランス接続ではより立体感のある空間表現を楽しめます。「KATO」のような圧倒的な透明感とは異なりますが、解像感も十分に高く、質感も「Snow Edition」より確実に進化しています。
低域は「Aria Snow Edition」同様にニュートラルなバランスの量感で「Aria 2021」より控えめなものの、優れた分離感と締まりの良さにより、十分にインパクトを感じるエネルギッシュな低音を鳴らしてくれます。ミッドベースは力強さとともに締まりがあり直線的な印象。重低音も十分な深さと響きがあります。全体的にタイトで解像感のある印象で、中高域との分離も良く、ボーカルなどを心地よく下支えします。
■ まとめ
というわけで、従来の「Aria」シリーズと比較しても着実に進化した印象のある「Moondrop Aria 2」ですが、傾向としては既に「Snow Edition」を持っている方には音質的にはマイナーチェンジ的な進化と感じる可能性もあります。逆に「Aria 2021」のみを持っている、あるいは同シリーズを持っていない方であれば十分に検討に値するリスニングイヤホンのひとつといえるでしょう。上位モデルの「KATO」は質感としては非常に高いものの、特に「標準」のノズルではニュートラル過ぎる傾向から「無味無臭」感がありリスニングイヤホンとしては合わないという感想の方も結構いらっしゃいました。「Moondrop Aria 2」は「KATO」の「Brass」ノズルでのリスニング方向のチューニングをある程度踏襲しつつ、より多くの再生環境で使いやすく、手頃な価格を実現している、という点で多くの方が好感しやすいサウンドになっていると思います。ニュートラル方向のリスニングイヤホンを検討している方には良い選択肢のひとつとなりそうですね。