
こんにちは。今回は 「Astrotec GX70PLUS」です。中国の老舗ブランド「Astrotec」の新しいエントリーモデルです。2019年頃にリリースされた「GX70」から満を持してのアップデートという感じですね。従来のGXシリーズを踏まえたダイヤモンドカットデザインのコンパクトシェルに、新開発のドライバーを搭載。上位モデルの技術を流用し妥協の無いエントリーモデルを目指したとのことで、非常に完成度の高いサウンドを楽しめる製品に仕上がっています。
■ 製品概要と購入方法について
「Astrotec」は中国でも老舗のオーディブランドで、もともと大手メーカーへのOEM/ODM等で長い実績を持ちます。製造メーカーらしい豊富なラインナップと技術力には定評がありますね。「Astrotec GX70PLUS」は同社の「GX70」の後継となる新たなエントリーモデルです。GXシリーズの特徴であるクリスタルカットのハウジングデザインを踏襲しつつ、フェイスパネルにはCNC加工された航空グレードのアルミ合金を採用。新開発のダイナミックドライバーをはじめ随所に妥協しないエントリーモデルを目指した製品とのことです。


「Astrotec GX70PLUS」には新開発の10mm CCAWコイルにPU+LCP(液晶ポリマー)複合振動版ダイナミックドライバーをシングルで搭載。またNdFeB(希土類永久磁石ネオジム鉄ボロン)高磁束マグネットを採用し、高レスポンスおよびパワフルな駆動力を実現しています。またシェル設計も見直しが行われており装着性を改善するとともに内部構造においても音響構造を調整。この新しいドライバーおよび筐体設計においては「AM850MK2」などのミドルグレード以上のモデルでの技術等を反映しています。


「Astrotec GX70PLUS」のコネクタにはMMCXを採用。パーツ精度の高い厳選したMMCX端子を使用し安定した接続性と装着感を実現しています。ケーブルは個別に販売している「AT-C01」ケーブルをベースに取り回しや快適性を向上させた高純度OFC銀メッキ線ケーブルを採用しています。


「Astrotec GX70PLUS」の価格は税込み6,000円です。購入は国内販売元の「IC-CONNECT」の各直営ストアおよび主要専門店にて。
Amazon.co.jp(IC-CONNECT): Astrotec GX70PLUS
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして IC-CONNECT様 より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
パッケージは製品が確認できるタイプのシンプルなパッケージ。最近の中華イヤホンというとこの価格帯の製品ではKZなどのような極端にミニマルなタイプか、逆に懲りまくったデザインのパッケージの両極端とうイメージですが、幅広くは販売してきた老舗ブランドの製品らしく質実剛健というか、ちょっと日本メーカーの製品ぽいというか、要するに家電量販店や専門店の棚で販売しやすく手に取りやすい現実的なサイズ感のパッケージという印象です。


パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(シリコンタイプがS/M/Lサイズ、ウレタンタイプが1ペア)、USB Type-C変換ケーブル、布製ポーチ、説明書など。
この価格帯の製品でUSB Type-Cの変換ケーブルが付属するのはちょっと珍しいですね。MoondropやTANCHJIMも50ドル以下のエントリークラスでUSBモデルをラインナップしていますし、スマホ直結のニーズはこのクラスではポイントとなるようですね。ただしこの変換ケーブルはDACを内蔵していないタイプで、Xiaomiなどの対応するスマートフォン向けとなります。


本体は樹脂製のハウジングにアルミニウム合金性のフェイスプレートを組み合わせたデザイン。ダイヤモンドカットされたデザインが特徴的です。従来のGXシリーズのサイズ感を踏襲していますが、印象として最近のイヤホンの中でも特にコンパクトにまとまっています。相対的にステムノズルが大きく見えますが実際はKZやTFZなどのノズルと同程度の太さで、いかに本体が小さいかが伺えます。


装着性についても既存モデルより改善されているということで、イヤーピースを合わせれば耳への収まりも良くしっかりとホールドされます。Shureなどの耳掛け型ぽいデザインですが、ケーブルがほぼ直角に接続する形状のため、実際はイヤホン本体は縦位置で耳に固定されます。


ケーブルはOFC銀メッキ線の撚り線タイプ。被膜はしなやかで取り回しは良く、思った以上に絡まらない印象で使いやすく仕上がっています。イヤーピースはしっかりコシがありサイズが合えば十分にホールドできる質感の良いものが付属します。付属品のほかSpinFitシリーズやTRN T-Eartipsなどを合わせるのも良いでしょう。
■ サウンドインプレッション
「Astrotec GX70PLUS」の音質傾向は癖の無いニュートラルなバランスを維持しジャンルを問わず楽しめる自然なサウンド。同時にLCP振動板らしい寒色系のハッキリとした分離の良さも感じます。とはいえ過度な派手さは無く、ナチュラルサウンドという記載の通り、という印象です。
全体として曲によっては多少あっさりした感じもありますが、高域の煌めきや低域も締まりもあり、聴きやすくもバランスは良好。中高域に適度なアクセントがあり女性ボーカルは伸びやかで、中音域の見通しの良さからインストゥルメンタルもとても心地よい印象。印象としては100ドル台後半以上のミドルグレード製品のような音作りで、かつ低価格ながらほぼ粗さも感じさせないポテンシャルの高さも感じられます。エントリークラスの製品としてはかなり興味深い仕上がりだと思います。傾向的に好みに合えば1万円以下ではこの製品がベストと感じる方もいらっしゃるのではと感じさせるイヤホンです。また音量は若干取りにくいもののスマートフォン直挿しても楽しめる鳴らしやすさも特徴で、エントリークラスとしての要件もクリアしています。ただイヤホン本体のポテンシャルが非常に高いため、ある程度しっかしたDAPやアンプで再生するほうがより「本気」を感じることができるでしょう。またリケーブルでもかなり化ける印象があり、見通しの良い合金線(より透明感や解像感が増します)や、情報量の多い銀メッキ線(より寒色傾向がアップしスッキリします)、ミックス線(よりメリハリのあるサウンドが楽しめます)との組み合わせでさらに変化を楽しめます。
「Astrotec GX70PLUS」の高域は複合振動板による明瞭な音を鳴らします。駆動力のある再生環境で鳴らすことで、より硬質でハッキリした音を鳴らし、煌めきなどもしっかり表現されます。それでも刺さり等の刺激はコントロールされており、聴きやすさは維持されます。スマホ直挿しでも鳴らせるような低価格で上流の変化の大きいイヤホンの場合、過度に駆動力をあげるとギラつきなどの歪みを発生させやすくなることも多いのですが、「Astrotec GX70PLUS」ではそのような傾向はほぼ無くポテンシャルの高さを感じます。中音域は癖の無いフラット方向の音を鳴らします。音場は適度な広さがあり立体的な印象。分離も良く定位もかなり正確な印象があります。そのためボーカルは自然な距離で定位しますが見通しが良く不足を感じることはありません。
中高域のアクセントにより女性ボーカルやピアノの高音も伸びやかです。また寒色傾向ながらドライになりすぎず、男性ボーカルも自然な艶感があります。モニター的な音作りでは無く、全体としてボーカル域にフォーカスした印象ではないものの、音色は非常に豊かで鮮やかがあるため、インストゥルメンタルの瑞々しさと同時に、ボーカル曲でも非常に美しく息づかいや余韻も精緻かつ自然に描写されます。オールラウンダーとして完成度の高さを感じ、しっかりとした再生環境で聴き入るとクラスを超えた充実感がありますね。低域は全体としてニュートラルなバランスながらミッドベースを中心に力強さと十分な量感があり、心地よい音を鳴らします。キレの良いドライバーの特性により自然な輪郭ながら締まりは良く、中高域とも綺麗に分離します。重低音はある程度の深さながら重量感がありしっかりと全体を下支えします。
■ まとめ
というわけで、「Astrotec GX70PLUS」は同社が満を持してリリースしたアップデートらしく、非常に完成度の高いイヤホンに仕上がっていました。粗の出やすい寒色寄りニュートラル系の音作りながら非常に手堅く仕上げられており、さまざまなジャンルの音源を楽しむことができるイヤホンだと感じました。国内でも初回分は早々に完売しており人気及び評価の高さが伺えますね。本レビュー掲載くらいのタイミングで再入荷しているようですので興味のある方はお早めに購入される方が良さそうです。非常に完成度の高いイヤホンですのでマニアであれば是非とも持っていたいアイテムのひとつになると思いますよ。








