こんにちは。今回は 「SHANLING H2」です。高音質&多機能で好評の「Shanling」のUSB-DAC/ポータブルアンプ製品によりコンパクトサイズのモデルが登場しました。既存の「H7」「H5」同様にUSB-DACに加え「LDAC」対応ハイレゾBluetoothレシーバー、「EddictPlayer」アプリ連携による「ローカルファイル再生機能」を搭載し、高音質・高出力で「全部入り」構成をスマホとも合わせやすいサイズ感と3万円以下の低価格で実現しています。
■ 製品概要と購入方法について
ポータブルオーディオの世界で高い実績により確固たるポジションを築きあげている「Shanling」ブランドのポータブルアンプ「Hシリーズ」のコンパクトなモデルが今回の「SHANLING H2」です。
→ 過去記事(一覧): SHANLING製品のレビュー
「SHANLING H2」は「Hシリーズ」のなかでも最もコンパクトなUSB-DAC&ポータブルアンプ製品で、ハイグレーモデルの「SHANLING H7」、ミドルグレード「SHANLING H5」に続きリリースされました。USB-DAC、バランス出力対応の高出力ヘッドホンアンプ、そしてmicroSDカードによるローカル再生機能など「Hシリーズ」の機能性を踏襲し、スマートフォンと組み合わせて使用しやすいコンパクトサイズを実現しています。
「SHANLING H2」はDACチップにCirrus Logic「CS43198」、USBインターフェースにXMOS「XU208」を搭載。USB-DACモード時PCM 32bit/384kHz、DSD256のハイレゾに対応。さらにオペアンプには低ノイズ、ハイスピードレスポンスに定評のある、SG Micro「SGM8262-2」をデュアルで採用。他にも「SilmicⅡ」電解コンデンサなどを使用し回路設計を新開発。高い駆動力とダイナミックレンジを叶えながら、温かみのある滑らかなサウンドを実現しています。
またヘッドホン出力は3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスに対応し、2段階のゲインモード設定が可能です。ハイゲイン時の最大出力はバランス出力時に680mW@32Ωに達します。さらにコンパクトな本体に2,100mAhのバッテリーと独自PMUチップによる電源管理を行うことで、シングルエンドで最大12.5時間、バランスでも最大10.5時間の再生が可能です。
また独立した電源用I/Fを搭載し充電時のノイズを分離。伝送用のUSBインターフェースはスマートフォン、タブレット、PC/Macなど様々なデバイスと接続しUSB-DAC/アンプとして利用可能。さらにLDACコーデックに対応したBluetooth5.0レシーバー機能によるワイヤレスアンプとしての利用も可能。さらに専用アプリ「EddictPlayer」の「SyncLink機能」を利用し、スマートフォンと連携することでmicroSDに保存されたデータを再生するローカル再生機能も利用可能。「SHANLING H2」をオーディオプレーヤーとして活用することも可能です。
「SHANLING H2」の詳細な概要および仕様は、国内販売元のMUSIN社ページを参照ください。
→ MUSINサイト「SHANLING H2」製品情報
「SHANLING H2」の購入はMUSIN社の各公式ストア、または主要専門店にて。
価格はアマゾンで税込み28,218円です。
Amazon.co.jp(MUSIN公式ストア): SHANLING H2
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして MUSIN様 より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「SHANLING H2」は2万円台の価格設定で、普通にUSB-DAC製品としても低価格帯に含まれますが、パッケージは上位モデル同様の一貫性のあるデザインとなっています。今回は「ブラック」モデルで提供いただきました。
パッケージ内容は、本体、OTGケーブル(Type-C/Type-C)、充電用ケーブル、マニュアル、保証書など。マニュアルは各国語の記載となっており日本語での記述ももちろんあります。
「SHANLING H2」の本体サイズは71.5mm×100mm×21.5mm、重量185gとiPhoneとほぼ同様の横幅で組み合わせて利用しても違和感のないサイズ感となっています。前面のインジケータパネルはカラー表示となり、むしろ「H7」「H5」より見やすくなっていますね。「Hシリーズ」で特徴的な左右のダイアルは「SHANLING H2」では操作ボタンを配置した上部パネルに挟まれるように配置しており、操作性は既存の「Hシリーズ」を踏襲しています。
ヘッドホン出力は3.5mmと4.4mmの両方を確保していますが、「H7」「H5」では上部に配置していたのに対し、「SHANLING H2」ではUSB、充電用USB、microSDスロットと併せてすべて下部に集中して配置する仕様となっています。
これは「H7」「H5」がバッテリー稼働でも基本的にはテーブルトップでの利用が中心になると思われるのに対し、「SHANLING H2」は(バンド等で固定して)スマートフォンと組み合わせたり、単独でポータブルプレーヤーとして携行して利用することも想定されるため、実用性に配慮したレイアウトを採用していると捉えることができますね。逆にポータブルに特化しているという意味では「H7」「H5」が搭載しているSPDIF(デジタル)入力やRCA出力(ラインアウト)は省略されています。
■ USB-DAC/ポータブルアンプ機能
「SHANLING H2」はUSB-DACおよびポータブルアンプとして、USB接続では各種スマートフォンやタブレット、PC/Macなどに対応。付属のOTGケーブルはType-C仕様のみですが、iPhone14以前の場合もLightning-OTGケーブルを組み合わせることで問題なく利用できます。またUSB-DACモードで接続時は専用アプリ「Eddict Player」では本体のステータス及び各種設定の変更も可能です。
MacやスマートフォンはUAC2.0(USB Audio Class 2.0)で接続され、ドライバー等は特に必要なく認識されます(Macの場合DSDはDoP転送となるためDSD128が上限となります)。Windows(10/11)でもApple MusicやAmazon Musicなどの利用ではドライバーは不要ですが、「foobar2000」などのソフトでDSDのネイティブ再生などASIOで接続する場合はサポートサイトでドライバーをダウンロードしインストールすることで利用が可能になります。また本体設定で「UAC1.0」モードに変更することでSwitchなどのゲーム機に接続することも可能です。
再生時は「CONTROL」ボタンを長押しすることで「ゲイン」(High/Low)やプレイモード(繰り返し再生のON/OFF)など各種競っての変更が可能です。ゲインの変更は様々なイヤホンやヘッドホンを使い分ける方であれば頻繁に使用する可能性がありますね。左右のダイヤルは右側が音量調節など、左側が「CONTROL」モードでの各種設定変更などで使用します。
またインジケータパネル下の左側のLEDはサンプリングレートを表示しており、再生する音源より点灯する色で判断することができます。
■ Bluetoothレシーバー機能/「SyncLink」によるローカル再生機能
「CONTROL」ボタンで「Bluetooth」モードに変更することで「SHANLING H2」はワイヤレスレシーバーとして利用できます。ワイヤレス接続ではBluetooth 5.0準拠でハイレゾ対応の「LDAC」および「AAC」「SBC」の各コーデックに対応します。対応するAndroidスマートフォンやプレーヤーなどでは「LDAC」コーデック、iPhone/iPadなどではAACコーデックでペアリングされます。
「LDAC」コーデックのワイヤレス再生品質では「高音質」と「ベストエフォート」が選択できます。開発者向けオプションを有効にするとより詳細なビットレートも確認出来ます。開発者向けオプションを確認すると、「LDAC」以外には「AAC」と「SBC」コーデックをサポートし、「LDAC」モードでは最大96kbps、32bitでのLDAC接続が可能なことが確認出来ます。
そして、「Hシリーズ」のもうひとつの特徴がローカル再生機能で、「SHANLING H2」をポータブルプレーヤーとして利用できるモードです。microSDに格納した音楽データを再生可能で、操作はAndroid/iOS用の専用アプリ「Eddict Player」を使用し「SyncLink機能」でBluetoothペアリングすることで利用できます。また「SyncLink」で接続時もUSB接続時と同様に「SHANLING H2」のステータスの確認やモード変更等も行えます(こちらの画面では電源OFFや再起動も選択できます)。
「Eddict Player」アプリで「SyncLink」接続後の操作はShanlingのAndroid搭載DAPとほぼ同様のインターフェースで、「SHANLING H2」を遠隔操作することが可能です。スマートフォンとはBluetoothで接続されますが、「SHANLING H2」本体に格納した音楽データを直接再生する機能ですので、コーデックにより音質が劣化することなく、ハイレゾ音源をクリアなサウンドで楽しむことが可能です。小型のDAP(デジタルオーディオプレーヤー)ではアンプ出力に不満を感じるような方であれば、同様のサイズ感で最大680mWのバランス接続で駆動できる「SHANLING H2」のローカル再生機能はかなり魅力的な選択肢になるのではと思います。
■ サウンドインプレッション
「SHANLING H2」の音質傾向は癖の無いニュートラルな傾向ながら、音の輪郭は比較的ハッキリしており、中音域付近が僅かにカマボコ気味の印象も感じます。音色としては全般的に聴き馴染みのあるShanlingのDAP製品などと共通する一貫した音作りですが、「SHANLING H2」についてはそのなかでもポップスやアニソンなどのボーカル曲と相性が良さそうな印象ですね。
高出力が特徴のポータブルアンプ製品ですが、CIEMなど非常に敏感なイヤホンなどもノイズレスで見通しの良いクリアなサウンドを楽しめます。また「SHANLING H2」の音量はペアリングしたスマートフォン側のデジタルボリュームとは独立しているため音量調整が難しい反応の良いイヤホンでも適切に音量を調整出来ることもメリットでしょう。
ちなみにDACチップとしては音質面で定評のある「CS43918」を採用しつつもシングルで、対応する最大のPCMサンプリングレートも384kHzと、同じチップをデュアルで搭載し768kHzまで対応する小型オーディオアダプター製品よりスペック面では一見すると見劣りする印象も受けます。特に低価格帯の製品ではこの辺の「仕様」を気にする方が結構多いだろうとも思われます。
しかし「SHANLING H2」では「CS43918」をD/A変換プロセスのみに限定して使用しており、以降のポータブルアンプとしてのプロセスで回路設計やデュアル搭載された「SGM8262-2」アンプチップなどによる低ノイズで高駆動の出力を実現しており、小型オーディオアダプター製品や同様のサイズ感の小型DAPと比較して明らかに音の厚みや空間表現に差を感じる「余裕を持った再生能力」を実感出来ます。オーディオ的にもアンプ部などのアナログ性能により重点を置くのは特に高価格帯であれば普通のことで、「SHANLING H2」はむしろセオリー通りの音質強化を行っているとも解釈できますね。
高インピーダンスのヘッドホンを余裕で鳴らし切る最大680mWの高出力はもちろんポータブルアンプならではのものですが、イヤホンでの利用でも「アナログ性能」という側面ではミドルグレード以上のDAP製品と比較しても十分な能力を実感することができるでしょう。もちろんグレードの違いを感じさせる要素も皆無ではないのですが、利用方法やシチュエーション、さらには好みなども踏まえると「SHANLING H2」のサウンドで十分に満足できる方も結構いらっしゃるのでは、と感じます。
■ まとめ
というわけで、Shanlingの「Hシリーズ」も「H7」「H5」、そして今回の「SHANLING H2」と順次紹介をしてきましたが、それぞれのモデルでワイヤレス機能やローカル再生機能など多機能な側面は踏襲しつつ、価格帯やサイズ感など、クラスに応じた最適化がされており、単純にグレードの違いだけではない点がとても興味深く感じました。
今回の「SHANLING H2」は3万円以下の価格設定で、例えばドングル型の小型オーディオアダプター等からステップアップとして、USB-DAC/ポータブルアンプ製品に挑戦したいと考えている方にも購入しやすく、それ以外にも様々なシーンで利用できる非常にお買い得感のある製品だと思います。
また「SHANLING H2」は「Hシリーズ」のなかでは特にポータブル用途に特化したモデルですが、独立した電源供給もできるため一応は据置き的にも使えるかもしれません(とはいえ、もし据置き/ポータブル兼用の利用の場合はできればSPDIF入力およびRCA出力のある「H5」のほうがオススメかもですね)。
現時点では各ショップで在庫もありそうですので、興味のある方は春先に向けて「SHANLING H2」を携えて出かけてみるのも良いのではと思いますよ(^^)。