NICEHCK HIMALAYA

こんにちは。今回は「NICEHCK HIMALAYA」です。高品質のチタン合金シェルを採用したHCKのフラグシップ級モデルです。音質面でも従来のHCKのミドルグレード以上のモデルと比較してもレベルの違うクオリティを実現しており、まさにハイエンド級の完成度を持ったイヤホンと言えるでしょう。加工の難しいチタン合金を使用しているため製造数が少ないこともあって発売以降完売が続いていますが、それにしても同社の人気の高さも伺えますね。

■ 製品概要と購入方法について

中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」は私のブログでもお馴染みの老舗中華イヤホンセラーで、多くのマニアに絶大な支持を受けていることでも知られています。そのオリジナルブランドの「NICEHCK」もまた多くのマニアに寄り添った、「他とはちょっと違う製品」が特徴だったりもしますね。

そのHCKが満を持して挑んだ「本気」のハイグレードモデルが今回の「NICEHCK HIMALAYA」です。その製品名からも同社にとって頂点を目指した意気込みを感じさせますね。
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NICEHCK HIMALAYA」の最大の特徴は航空宇宙グレードのチタン合金シェルを採用し、全てにおいて最高を目指した製品作りを行っている点。チタンは軽量かつ高強度の材質として知られていますが、同時に非常に加工が難しく、高精度な製品を作るためには複雑かつ緻密な製造工程を要するため、希少かつ高コストというのが一般的です。「NICEHCK HIMALAYA」ではチタンシェルを精密CNC加工により成形し、高級感のあるの外観とともに高調波を抑制、内部空洞共振を効果的に低減し、出力信号の制御を向上させています。
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NICEHCK HIMALAYA」では特別に開発された10mmダイナミックドライバーユニットをシングルで搭載。ドーム部に22μmの極薄CNT(カーボンナノチューブ)を採用した二層CNT振動板を採用し、強力な二重磁気回路により、力強く生き生きとしたサウンドパフォーマンスを実現。エレガントなボーカル、力強い低音レスポンス、スムーズで自然な高音レスポンスを備えた豊かでパワフルなサウンドを提供します。

また「NICEHCK HIMALAYA」では3種類の交換可能な音響ノズルフィルターを装備しています。標準の「ゴールド」フィルターはバランスの取れたレスポンスを実現し、「ブルー」フィルターは低音レスポンスを強化、「グレー」フィルターは高周波のディテールを強化します。フィルターを交換することで様々なサウンドプロファイルを楽しむことができます。
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NICEHCK HIMALAYA」のケーブルは0.78mm 2pin仕様で、高純度導体を使用した銀メッキOFCケーブルがバンドルし、信号伝達を強化し細部まで再現します。このケーブルのプラグは交換式で、3.5mm、2.5mm、4.4mmの各プラグが同梱されます。
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NICEHCK HIMALAYA」の購入はAliExpressの「NiceHCK Audio Store」にて。価格は329ドルです。
※新クーポンコード「WW8899」が提供されました。割引後価格はサイトで確認ください(4/3更新)。



アマゾンでも販売を開始しました。価格は49,630円です。
Amazon.co.jp(NICEHCK): NICEHCK HIMALAYA ※購入時6%OFFクーポン配布中


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして HCK Earphones より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

NICEHCK HIMALAYA」はHCKのフラグシップモデルということで、パッケージも従来よりかなりの豪華仕様になっています。表面の化粧カバーは「HIMALAYA」と文字を記載したのみのシンプルなデザインで取り外すと黒色の大きめのボックスがでてきます。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、交換プラグ(3.5mm、2.5mm、4.4mm)、イヤーピース(「NICEHCK 07」が4サイズ、「NICEHCK 08」は装着済みMサイズを含めた3サイズ)、交換フィルター、クリーニングブラシ、レザーケース、説明書、保証書。
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NICEHCK HIMALAYA」の本体はチタン合金製の金属シェルでサイズおよびハウジング形状は「Lofty」など既存のモデルを踏襲しています。ただしフェイスプレート部は丸みを帯びつつフラットなデザインに「NICEHCK」「HIMALAYA」とプリントされたシンプルな仕上がりになっています。
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ステムノズルは金属製の交換式フィルター仕様で、標準では「ゴールド」フィルター(内径3.5mm)が装着されています。交換式フィルターはノズル自体のノズル内径の違いで調整されているようです。そのため3タイプともメッシュ部の裏面にフィルター材などは使用されていません。低域強化の「ブルー」フィルターはノズル内径が2.2mmと最も小さい仕様で、高域強化の「グレー」フィルターは逆に内径3.8mmともっとも大きい仕様になっています。
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ケーブル極性ごとにブルーグレーとメタリックシルバーの線材を使用し、左右それぞれで樹脂被膜で覆った芯を束ねた2本4芯の撚り線構造となっています。線材は銀メッキOFC(高純度無酸素銅)線を使用し、プラグは3.5mm、2.5mm、4.4mmの交換式。交換時にプラグをネジ締めでしっかり固定できるため抜けの心配もなく安定した接続性を持っています。イヤーピースは「AET07」および「AET08」と形状や材質に互換性のある「NICEHCK07」と「NICEHCK08」が各サイズ付属します。


■ サウンドインプレッション

NICEHCK HIMALAYANICEHCK HIMALAYA」の音質傾向はニュートラルで自然な明瞭さを持つ寒色傾向のサウンド。チタンシェルの特性を最大限に活かした「極めて高い」制振性により、搭載されたCNT振動板ドライバーの特性を余すところなく描写し、余計な音を加えること無く正確に耳に伝達させます。CNT(カーボンナノチューブ)は振動板のなかでもシャープでキレ重視の印象となることが多く、「NICEHCK HIMALAYA」も同様の印象のドライなサウンドではあるものの表現は極めて自然で、空間表現は「圧倒的にリアル」な定位感を持って1音1音が正確に描写されます。この「リアルな描写」のなかには、寒色系のキレ重視の製品では音源から失われがちな「熱量」や「空気感」といった要素も含まれており、これまで様々なグレードのイヤホンを聴いている方であれば、その表現力の高さに息を呑むのではと思います。もちろん「好み」の要素はあると思いますが、ニュートラル系で実在感のあるサウンドを好感される方にはクラス最上、ハイエンド級と比較してもトップクラスに近い完成度を実感出来るのではと思います。

NICEHCK HIMALAYANICEHCK HIMALAYA」のチューニングはU字方向でニュートラルから弱ドンシャリ寄りのバランスで、非常に高い解像感を持つもののモニター用途ではなくリスニング向けのサウンドといえるでしょう。その最大の特徴は前述の通り、自然な広さと奥行きによる立体感のある音場と正確性を持った極めて優れた定位感です。
イヤホンは左右のスピーカーが耳に対して直接鳴るため空間表現は頭上で展開されます。そのため前面から鳴り空間を通じて耳に届くスピーカーと比べ、実在感のある定位という意味で絶対的に異なります。しかし「NICEHCK HIMALAYA」のサウンドは1音1音の距離感が非常に「リアル」であるため、集中したリスニングでの没入感が非常に高く、本来は異なるはずの定位が現実味を持ってイメージさせてくれます。それは、スタジオ一発録音によるある音源で、高級スピーカーで感じたような実在感を持つような「錯覚」に陥るほどでした。この感覚を味わうと「かなりクセになる」かもしれませんね。

また、3種類のノズルフィルターはノズルの内径で調整されており、低域強化の「ブルー」フィルターは刺激を感じやすい中高域付近から高域を若干抑制するため、よりウォーム感のあるサウンドが好みの方には良いかも知れません。また「グレー」フィルターは高域強化と言うより内径の薄さにより高域でさらにドライで金属質な印象が増すため寒色傾向がアップするという印象。ただバランスとしては標準の「ゴールド」が最も優れており、多くの場合はフィルター交換の必要は無さそうです。

NICEHCK HIMALAYANICEHCK HIMALAYA」の高域は明瞭な解像感を持ちつつ自然なバランスで伸びの良い音を鳴らします。寒色傾向でドライな印象はあるものの、派手めのイヤホンにありがちなエッジを強調した金属質な印象は無く、チタンシェルの制振性の高さにより不要な響きを吸収し、1音1音で締まりの良い音を刻んでくれる印象です。
また刺さりやすい帯域は適度コントロールされており、また高高域も過度な強調が無いため高解像度のイヤホンでありがちな長時間の聴き疲れもあまり感じさせない印象。それでも鋭い音は鋭く煌めきもしっかり表現されるため、よりウォーム方向のほうが好みの方は「ブルー」フィルターを選択する方が良いかもしれませんね。逆にもっとスッキリ感や硬質さを強調したい場合は「グレー」フィルターを、となるのですが、個人的には「NICEHCK HIMALAYA」については「ゴールド」のバランスで一択かな、という印象でした。

NICEHCK HIMALAYA中音域は凹むことなく、音源の質感を忠実に描写してくれる印象。リスニングバランスで自然かつ立体的な空間表現を描きつつ、圧倒的な定位感で1音1音を描写します。解像感という点でいえば、より高価格帯に目を向ければよりディテールを詳細に描く製品はまだまだ存在しますし、そもそもいわゆるモニター的な音とも異なる印象ですが、アナログ的なフォーカスは驚くほどしっかり捉えており、聴き入ることでより深く音源の世界観のなかへ没入できるレイヤー感があります。ここまでの実在感はハイエンド級でも実現できている製品は多くはないのではと思います。
印象としてはドライな印象の寒色傾向で軽快さやキレの良さ、スピード感を感じさせるサウンドですが、表現力の高さから本来は明瞭感でオミットされそうな熱量や空気感なども描写されるため、バラード曲なども淡泊になりすぎず、ジャズやクラシックも思いのほか楽しめる印象。またニュートラル傾向のため本来は淡々と鳴りそうなボーカルも非常に瑞々しく表現されます。

NICEHCK HIMALAYA低域は直線的でスピード感のある音を鳴らします。量的にも十分ですが反響を抑えタイトに締まる印象のため、全体としては強調のない自然なバランスとなっています。そのためブーストされた厚みのある低域を好まれる方には、イヤホン全体が淡々とした印象に感じるかもしれませんね(全体として弱ドンシャリに近いリスニングバランスのため、ややカマボコに感じるような実際はフラット方向のモニター系と比較しても低域の物足りなさが印象的となるようです)。逆にニュートラル傾向で音源の質感をより正確に捉え、心地よいスピード感とキレのあるアタックを堪能したい方には非常に満足のいく低域と感じるのとはと思います。重低音も深く沈みミッドベース同様にキレと解像感があります。


■ まとめ

というわけで、「NICEHCK HIMALAYA」は、HCKらしい「クラス以上」のサウンドを実現した「マニアのための」ハイグレードイヤホンとして優れた完成度を持っていました。しかし多くのイヤホンを楽しんでいるような「マニアのための音作り」ゆえに実際は結構「いぶし銀」なサウンドという側面もあります。
この製品が持つ「圧倒的な違い」を実感するためには、さまざまな価格帯やグレードの「多くのイヤホン」を楽しんでいることがおそらく必要で、その上で、ほんの少しの違い、もう少しの良さを求める方にこそ実感しうる「頂き」なのかもしれません。
NICEHCK HIMALAYA最近の中華イヤホンは競争激化もあって全体的な底上げが大きく、全ての価格帯の製品においても低価格帯でも80点くらいは優に超えられ、100ドル前後かそれ以上なら90点台のアベレージも出せる水準になっていると思います。しかしそのレベルからの1点1点の積み上げは非常に難しく、また嗜好性の違いなどでアプローチも全く異なるため、むしろ評価(または好み)が分かれる製品がどんどん増えていきます。「NICEHCK HIMALAYA」はリスニングイヤホンとして「ヒマラヤ」のような頂点に向けて、まっすぐ上を目指したような音作りのため、結果としてその途中の山々を制覇した(様々なグレードや特性のイヤホンを体験した)マニア向けの、逆に言うとそれ以外の方にはちょっと良さが分かりにくいかもしれない製品、という側面もあるかもしれませんね。それでも言えることは、既に「沼」に足を入れてしまった方にとっては十分に「お手頃」に体験できる「頂上」ではあるかな、とは思いますよ(^^)。