こんにちは。今回は 「TANCHJIM ORIGIN」です。購入ツイートから少し期間が空きましたがこのタイミングでのレビューとなります。「TANCHJIM」のミドルグレードの代表的モデル「Oxygen」の事実上の後継機種ともいえる製品で、最新の第5世代DMTドライバーを搭載し、非常に高い解像感と透明性を持つニュートラルなバランスながらリスニング的な温かみも感じるイヤホンに仕上がっています。
■ 製品概要と購入方法について
「TANCHJIM」(タンジジム)は2015年に設立された中国のイヤホンメーカーで、科学的な解析やロジックに裏付けられた専門性の高い調整によるニュートラルでバランスのよい音作りとシンプルな製品デザインでファンも多いブランドです。
同社が有名ブランドとして周知されたのは2018年にリリースされたミドルグレード製品の「Oxygen」でニュートラルで質の高いサウンドを実現することでマニアの間で高い評価を獲得しました。今回の「TANCHJIM ORIGIN」は「Oxygen」の後継モデルとも言えるモデルで、独自の「第5世代DMTダイナミックドライバー(DMT5)」をシングルで搭載。従来より進化した超低高調波歪みを実現。自然な音色を備えた豊かでダイナミックなサウンドをもたらします。 本体は304ステンレス鋼を使用し、鏡面仕上げのキャビティと立体的なロゴデザインを採用しています。
同社が有名ブランドとして周知されたのは2018年にリリースされたミドルグレード製品の「Oxygen」でニュートラルで質の高いサウンドを実現することでマニアの間で高い評価を獲得しました。今回の「TANCHJIM ORIGIN」は「Oxygen」の後継モデルとも言えるモデルで、独自の「第5世代DMTダイナミックドライバー(DMT5)」をシングルで搭載。従来より進化した超低高調波歪みを実現。自然な音色を備えた豊かでダイナミックなサウンドをもたらします。 本体は304ステンレス鋼を使用し、鏡面仕上げのキャビティと立体的なロゴデザインを採用しています。
「TANCHJIM ORIGIN」では新たに第5世代の独自DMT(DMT5) 10mm デュアル磁気回路デュアルキャビティダイナミックドライバーを搭載します。「HANA」などの従来モデルに搭載されるDMT4(第4世代DMT)と比較し、磁束の強さや歪みの小ささ、優れたダイナミクス、高効率性能を実現。また振動板には専用に開発された柔軟性と剛性を両立した複合振動板を採用。より理想的な振動特性を実現し、高剛性と高平滑性を両立。振動板全体で大きなダイナミクス性能を得ることに成功しました。
さらに音響学設計により最適化された真鍮製ウェーブガイドを装着し内側の特殊な波状パターンによりエネルギー伝達効率などの改善を実施。バックチャンバー構造とガイド付きリーケージバルブ構造も搭載し、内部の空気圧を調整し、DMT5のダイナミックレンジをより向上させます。
また3種類の交換式ノズルフィルターを採用。それぞれのノズルにはステンレスと防水音響フィルターを組み合わせた二重構造のフィルターを装着しており、異物の侵入を防ぎつつ滑らかで自然な印象にする効果があります。各フィルターは「標準」(S - Standard)、「ダイナミック」(D - Dynamic)、「ライトクリア」(L - Light)の3種類を選択できます。
ケーブルはリッツ線構造を採用した6N無酸素銅銀メッキ線ケーブルが付属。コネクタは0.78mm 2pin仕様。イヤーピースは独自の「T-APB」気圧バランスイヤーピースが付属します。
「TANCHJIM ORIGIN」の価格は259.99ドル、国内版は税込37,800円です。通常価格では国内版もほぼ変わらないかむしろ低価格ですので、保証なども考慮し通常は国内版の購入で問題ないでしょう。
HiFiGo(hifigo.com): TANCHJIM ORIGIN
Amazon.co.jp(国内正規品): TANCHJIM ORIGIN
免責事項:
本レビューは個人的に製品を購入し掲載している「購入者レビュー」となります。
本レビューに対してそれ以外の金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「TANCHJIM ORIGIN」のパッケージは最新の仕様で「KARA」と同様のサイズの大きめのボックスで、品画像を前面にしたシンプルなデザイン。
パッケージ内容は、本体、ケーブル、「T-APB」イヤーピースは本体装着済みMサイスのほか、2種類で各S/M/Lサイズ、レザーケース、説明書、保証書など。
本体は「Oxygen」や「Prism」「HANA」といったモデルを踏襲したステンレス製の鏡面仕上げ。フェイス部分のサイズはこれらの機種とほぼ同じで非常にコンパクトですが、背面部分の厚みは増しており、フィット感を増すようにステム下部がすこし盛り上がった形状になっています。またコネクタ部分の横に少し大きめのベント(空気孔)があり、圧力をコントロールし音抜けを向上しているようです。構造としてはセミオープン型に近いのかもしれませんが、音漏れなどはほぼ感じない印象です。
またノズル部分が交換式フィルターとなっているため多少太めの形状となっています。こちらは「KARA」の3Dプリントによる樹脂製ノズルに近くなっています。どちらかというと、付属する「T-APB」の口径に併せているのかもしれませんね。多少厚みは増しましたし、アルミより重量のあるステンレス製ですが、耳への収まりのよさから装着性は非常に高く、使いやすい印象です。
交換用フィルターは台座に固定されており、一般的な同種のフィルターと比較し、標準の「S」フィルターは黒のシリコンリングで、「D」がライトグレー、「L」が透明(ホワイト)のリングが装着されています。シリコンリング以外で形状的な相違点はほぼ皆無ですね。そのため、個々のフィルターは側面にシルクスクリーンで「S」「D」「L」とプリントされています
ケーブルは透明な樹脂被膜で覆われたOFC銀メッキ線ケーブルでコネクタはCIEM 2pin仕様です。こちらも「KARA」の付属ケーブルと同様ですね。細く適度に弾力のある被膜で手触りや取り回しは良好。本体側のコネクタにも少し窪みがあるため、リケーブルの場合はCIEM 2pinのほか、KBEARなどにある突起部が全く無い2pinケーブルは使用できませんが、一般的な中華2pinのように若干の突起部でも利用できるようです。
イヤーピースは「Prism」および「KARA」に同梱しているもとの同じ「T-APB 気圧バランスイヤーピース」でソフトな質感のシリコン製。開口部の大きさの違いで2種類のイヤーピースが付属します。
■ サウンドインプレッション
「TANCHJIM ORIGIN」のサウンドは、若干の中低域寄りのニュートラルで、従来より多少硬質な印象ですが同時に僅かに温かみがあり自然な印象のサウンドに仕上がっています。
かつての「Oxygen」より中高域の主張が増すことで、ボーカル域は少し前傾し、より明るく鮮やかさがあります。そのため「Oxygen」のやや暗めの印象が気になっていた方には「HANA」や最近の「KARA」などのアプローチに近づいたと感じるでしょう。
とはいえ「Oxygen」を継承した非常に癖の無い清流のようなニュートラルかつ滑らかな印象もあり、明瞭さや解像感が向上することでよりクリアになった印象。どこまでも見通せるような音場感も好印象です。
標準の「S」フィルターではバランスとしては最もフラット方向に近く、想像以上に書く音域の主張のある明瞭な音を鳴らします。
これに対し「D」フィルターではV字方向のメリハリが増し、ミッドベースを中心に低域のインパクトを感じやすく、中音域の音場感も増します。
また「L」フィルターでは中高域から高域にかけての見通しが良くなり、よりスッキリとした透明感のあるサウンドになります。
もっとも、これらのフィルターでの変化は再生環境で感じ方に違いがあり、小型のオーディオアダプターなどではそれほど大きな違いは感じないかもしれません。
「TANCHJIM ORIGIN」の高域は明瞭かつ鮮やかさがあり、印象としてやや硬質な音を鳴らします。標準「S」フィルターでは多すぎることは無く、スッキリしつつ聴きやすい範囲で調整されています。鋭い音は鋭く煌びやかさはあるため、フィルターの組み合わせなどで多少の刺激を感じることはあるかもしれません。
とはいえこの価格帯のニュートラル系のイヤホンでは聴きやすさより、解像感や分離性、さらには質感としての原音忠実性という点の方が重要になると思いますが、「TANCHJIM ORIGIN」は十分に基準をクリアできていると思います。バランスとしては「Moondrop Blessing2」などに近いハーマンターゲットを意識したフラット方向のイヤホンだと思いますが、同社の新しいダイナミックドライバーはより滑らかに感じさせますし、「Moondrop KATO」と比較すると「TANCHJIM ORIGIN」のほうがやや硬質でスピード感があるため同様に透明ながら、さらに鮮明な印象を受けます。
中音域は癖の無いニュートラルな音を鳴らします。高域同様に透明感が有り見通しも良い印象ですが、想像以上に主張があり、ボーカル域は「Oxygen」より前傾しより近くに定位します。前述の通りフィルターごとの違いは大きくは無いものの、特に駆動力のある再生環境で鳴らす場合は「S」フィルターではボーカル域が少し濃いめに出るため、より音場感を得やすいV字方向に変化する「D」フィルターのほうが好印象となる場合が多そうです。
また男性ボーカルは僅かに温かみがあり豊かさや厚みはどのフィルターでも優れているものの、女性ボーカルの特に高音については「L」フィルターのほうが抜けが良く感じる場合があります。この辺は再生環境及び好みによって変化しますので色々試してみる方が良いでしょう。
音場は自然な、というか音源に忠実な広さがあり、高い解像感および分離によって得られる優れた透明感により、どこまでも見通せるような忠実性があります。この音場表現の原音忠実性の高さは「TANCHJIM ORIGIN」の最も特徴とすべき点のひとつでしょう。逆に言うと、この音場感を楽しめる音源を聴くかどうか、というのもこの製品を選ぶうえでのポイントになるかもしれません。
低域は十分な量感を持ちつつも、中高域の主張に対して全体的にはニュートラルなバランスで調整されています。中高域との分離も良くクリーンな印象です。ミッドベースは締まりが良く直線的な印象でパンチ力があります。スピード感を強調したようなキレ重視の音とは異なりあくまで自然な印象ではあるものの解像感は高く、心地よく全体を下支えします。重低音は深く沈みミッドベース同様に解像感に優れます。ただし地響きのような量感や重量感とは異なるため、「D」フィルターを組み合わせてもパワフルな低域を好む方向けでは無いかもしれませんね。
■ まとめ
というわけで、「TANCHJIM ORIGIN」はミドルグレードのシングルダイナミック機として、「Oxygen」の後継として、現在のトレンドを踏まえた手堅い仕上がりでまとまっていました。同時に全体的なバランスが多少変化しており、やや硬質で鮮やかになったことで低域の印象などで相違点もそれなりにあるため、たとえば「Moondrop KXXS」から「KATO」のような純粋進化とはまた異なるのも興味深いですね。いっぽうで全体としての完成度は非常に高いもののいかにも「TANCHJIM」らしい手堅い音作りのため突出した特徴という点では、特に試聴しても同価格帯の競合製品より多少地味に感じるかもしれません。特に再生環境によってフィルター等の最適解が多少異なることもあって、そもそもブランドとして好きかどうか、みたいな要素も購入する上での選択には影響するかもしれません。私自身は「TANCHJIM」については最初の「Darkside」こそあまり好みではなかったものの、以降の「Oxygen」からはかなり好きなブランドとして基本的に発売後すぐに無試聴購入を続けています。今回の「TANCHJIM ORIGIN」も個人的にはとても好印象で良い買い物だったと思っています(^^)。