LETSHUOER Cadenza 4

こんにちは。今回は 「LETSHUOER Cadenza4」です。Knowles製2BA、Sonion製BA、ベリリウムコート振動板デュアルチャンバーダイナミックドライバーによる3BA+1DD構成のハイブリッドモデルです。同社のモンスター級フラグシップ「Cadenza12」の下位モデルという位置づけとも取れますが、内容としてはミドルグレード製品として非常に手堅く、オールラウンドに楽しめる高音質イヤホンとして優れた完成度を実現していました。

■ 製品概要と購入方法について

LETSHUOER」は2016年に創業したユニバーサルIEM/カスタムIEMのファクトリーブランドで、中国国内ではカスタムIEMビジネスのほか話題のモデルを数多くリリースしています。平面駆動ドライバーを搭載した「S12」で一躍人気ブランドとなり、アップグレードされた「S15」も非常に高評価ですね。また同社のユニバーサルモデルではマルチドライバー構成のミドル~ハイグレード製品も多く、自社製品および同社ODMと言われている各製品も含め手堅い音作りは定評があります。

今回の「LETSHUOER Cadenza4」は、同社のマルチドライバー構成の新ライン「Cadenza」の第2弾となる片側4ドライバー・ハイブリッドモデルです。すでにフラグシップとなる「Cadenza12」(2000ドル超、11BA+1DDの片側12ドライバー構成)がリリースされていますが、今回の「LETSHUOER Cadenza4」ではよりシンプルな、Sonion製1BA+Knowles製2BA+ベリリウムコート振動板ダイナミックドライバーによる3BA+1DDのハイブリッド構成を採用しています。
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LETSHUOER Cadenza4」のドライバーには上位モデルでも採用されているベリリウムコート振動板デュアルチャンバー10mmダイナミックドライバーを搭載し、さらにSonion製BAとKnowles製の2BAユニットを搭載します。4基のドライバーには電気的なクロスオーバー制御が加えられ、各ユニットから接続される3本の音導管は3Dプリントによりシェルと一体で成形されています。
LETSHUOER Cadenza4LETSHUOER Cadenza4
本体シェルは「S15」や「DZ4」など最近のモデルでも採用されているHeyGearsの高精細3Dプリントシステムにより成形されており、内部の音導管設計やドライバー配置なども精密に出力されています。さらにCNC加工さえたアルミニウム合金製フェイスプレートによりシンプルながらクールなデザインにまとめられています。
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ケーブルコネクタは0.78mm 2pin仕様で、ケーブルは392本の線材で構成される高純度単結晶銅銀メッキ線ケーブルを採用。プラグ部分は交換式で3.5mm、2.5mm、4.4mmの各プラグが付属します。

LETSHUOER Cadenza4」の詳細情報はLETSHUOERの公式サイトにて。直接購入も可能です。
価格は270ドル、日本円では42,000円です。
LETSHUOER公式サイト(letshuoer.net): LETSHUOER Cadenza4

またAliExpressの直営サイトでも購入可能です。
AliExpress(Letshuoer Offical Store): LETSHUOER Cadenza4


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして LETSHUOER より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

LETSHUOER Cadenza4」のパッケージは、最近の「S15」のデザインを踏襲しています。シンプルなデザインですが、内箱は引き出しタイプになっているなど、300ドル級の価格設定に合わせた内容になっています。
LETSHUOER Cadenza 4LETSHUOER Cadenza 4

パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、交換式プラグ(3.5mm、2.5mm、4.4mm)、イヤーピースが2種類でそれぞれS/M/Lサイズ、ハードケース、説明書、保証書ほか。
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本体はHeyGearsの高精細3Dプリントによる樹脂製でフェイスプレートはアルミニウム合金製。ハウジング部の形状は「S15」や「DZ4」と比較するとよりシェイプされた形状で耳にフィットしやすい印象です。ただしステムノズル部分はやや太めですね。
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イヤーピースは2種類のタイプが付属します。円筒形の白色タイプと開口部の広い半透明タイプですが、半透明タイプはコシがやや弱いのでより大きめのイヤーピースを利用したい方はスパイラルドットやAZLAなどに好感した方が良いかもですね。
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ケーブルは単結晶銅銀メッキ線ケーブルで銀色の線材。「DZ4」までに使われている従来の線材とも「S15」でのケーブルとも異なるタイプです。コネクタ部品などもエッジのある金属部品が使われており、よりクールな印象があります。しっかっり編み込まれたケーブルで取り回しは良いようです。


■ サウンドインプレッション

LETSHUOER Cadenza4LETSHUOER Cadenza4」の音質傾向はハイブリッド的な解像感を持ちつつ滑らかさのあるニュートラルサウンド。クロスオーバーを高レベルでコントロールしつつ、各ドライバーユニットの特徴を活かし質の高さを引き出した印象です。様々なドライバー構成で豊富なノウハウを持つLETSHUOERらしい、非常に手堅い音作りだと感じます。
サウンドバランスはハーマンターゲットカーブに準拠しつつ、中音域が全体的に強調しており、フラット方向に整えられたW字に近い印象になるのではと思います。
なお価格帯は異なりますが3BA+1DD構成でハーマンターゲット準拠&無味無臭みでお馴染み(?)の「Truthear HEXA」と比較するとバランスとしては非常に似た傾向ながら「LETSHUOER Cadenza4」のほうが若干のカマボコ寄りぽく感じるかもですね。

LETSHUOER Cadenza4もちろん「LETSHUOER Cadenza4」と「HEXA」は同じ3BA+1DD構成といっても搭載ドライバーの(メーカー、グレード、性能の)違いとクロスオーバー制御により、価格差相応というか、解像感や滑らかさを含めた全体の表現力では数段のレベル差があるため、本来は単純な比較はあまり意味は無いとは思います。
それでもあえて似た傾向のイヤホンとして聴いてみると「HEXA」がアンダー100ドル級としては珍しいフラット系の音作りなのに対し、「LETSHUOER Cadenza4」は価格に見合う質の高いクリーンな印象で、同時にしっかり気持ちよさを感じるリスニングサウンドに仕上がっています。
またインピーダンス15Ω、感度102dBという仕様のため、音量の取りやすさという意味では極端に敏感と言うことはありませんが、再生環境によるノイズや歪みを生みやすいため、S/Nの高いオーディオアダプターやDAPの利用が前提となります。

LETSHUOER Cadenza4LETSHUOER Cadenza4」の高域はハイブリッドらしい硬質感のある明瞭な音を鳴らしますが、直線的で自然な伸びやかさを維持しつつ刺さりやすい帯域は適度に調整されており、聴きやすい印象にまとめられています。
といっても寒色傾向のイヤホンにありがちな、歯擦音などは押さえつつ、高高域に強めのアクセントを付けることでメリハリのある主張を感じさせるようなチューニングとは異なり、あくまでスムーズかつ自然な印象にまとめられています。癖の無い印象という意味ではフラット傾向のモニター的な高域の表現に近いかもしれませんね。そのため過度に人工的にならず、煌びやかさを持ちつつも適度な空気感も感じさせる印象となっています。

中音域は癖の無いニュートラルな音を鳴らしつつ、バランスとしてはボーカル域を中心に若干前傾した主張があり、緩やかなW字に近い印象となります。そのため単純にフラット傾向というわけではなく、整然とした見通しの良い透明感や高い解像感のなかでもリスニング的な温かみや豊かさを感じることができます。
LETSHUOER Cadenza4男性ボーカルは豊かな厚みと滑らかさを持っており、癖の無い音で音源の響きを綺麗に表現します。女性ボーカルも同様に滑らかながら鮮やかさがあり伸びの良さも感じさせます。
音場は自然な広がりと前後および上下に立体感のある空間表現があり、正確な定位により演奏とボーカルも綺麗に分離します。
キレやメリハリ重視の音ではなく、多少ゆったりした印象もありますが、それでもBPMが早く音数の多い曲も過不足無く表現してくれます。ボーカル曲はもちろん、各種インストゥルメンタルの表現力も高く心地よい印象。アコースティックな楽器の音色も美しい響きがあります。

LETSHUOER Cadenza4低域も明瞭さを持ちつつ、中高域同様に全体として余裕を持った鳴り方をします。ベリリウムコート振動板のドライバーを採用していることから非常に解像感のある、粒立ちの良い音を鳴らすため、ドライバーの特徴を活かしつつも、中高域の各BAドライバーの音色とも違和感を感じない印象になっています。また中低域付近のクロスオーバーも適度なメリハリをもちつつも自然で、この辺はハーマンターゲット的なチューニングをしっかり意識していそうです。ミッドベースは適度な豊かさを持ちつつも響きを抑え直線的な鳴り方で、中高域との分離の良さを感じさせつつ、しっかりと存在感を示します。重低音は深さとレイヤー感があり、より深い音を鳴らすとしっかり分離して厚みのある音を鳴らしてくれます。さすがに地響きような、とまではいきませんが、全体として非常に質の高い低域です。


■ まとめ

LETSHUOER Cadenza4というわけで、「LETSHUOER Cadenza4」は、高域Knowles製2BA、中音域Sonion製BA、低域ベリリウムコート振動板デュアルチャンバーダイナミックドライバー、という、まあミドルグレード以上のグレードで考えれば「ど直球」の構成で、サウンド的にもハーマンターゲット的なニュートラルバランスをベースに、「ど真ん中」を狙った、最近では逆に珍しいくらいの「王道」なイヤホンだと思います。まあ特に中華イヤホンは新興メーカーなどの競合も多く、数多くの新製品のなかで注目を集めるためにはある程度の「目新しさ」を求めるのは仕方のない部分かもしれません。しかしその状況の中で、「LETSHUOER Cadenza4」のようにあえて直球勝負なイヤホンを、高い完成度で手堅くまとめてくれることはユーザーとしてはとても好感が持てます。このクラスの「良いイヤホン」をひとつ持っていたい、という方には非常に良い選択肢になるのではと思いますよ。