こんにちは。今回は 「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」です。矢継ぎ早に新製品をリリースしている「Kiwi Ears」で、マニアにはお馴染みCrinacle氏がコラボしたシングルダイナミック仕様のモデルです。クリアシェルから11mmの大口径LCP振動板ドライバーと「KARS」と呼ばれる低域を強化する音導管を確認でき、外観上のアクセントになっていますね。Crinacle氏らしいニュートラルサウンドに深い低域を持ったお手頃価格のイヤホンに仕上がっています。
■ 製品概要と購入方法について
「Kiwi Ears」は2021年に登場した新しい中華イヤホンのブランドですが、非常に早いペースで新製品を投入しており急速に知名度が高まっていますね。同社のイヤホン製品は美しいデザインと質の高いサウンドで多くのマニアから注目を集めています。
「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」は「Kiwi Ears」と有名レビュアー/評論家のCrinacle氏とのコラボモデル。私のブログでも同氏のコラボモデルも結構増えてきましたね。「Kiwi Ears」による「KARS」テクノロジーを採用した11mmサイズのダイナミックドライバーシングルで搭載しており、Crinacle氏とコラボによるチューニングでニュートラルな中音域とクリーンな高域、パワフルでありながら原音に忠実な低域を実現しています。
「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」には、革新的なテクノロジーである「KARS」(Kiwi Acoustic Resonance System/Kiwi 音響共鳴システム)を搭載しています。これは特許取得済みのバンドパスフィルターで、科学的根拠に基づき適切な共振点を完全に設計された精巧な迷路状のチューブ ネットワークで構成されています。従来の電気抵抗を利用したRCネットワーク回路とは異なり、「KARS」ではヘルムホルツ共鳴を使用したチューニングを行います。「KARS」ではドライバーへの空気の流れを操作し、低周波出力を調整することで、質、量ともに従来のチューニングでは不可能だったタイトなチューニングを可能にします。
「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」のドライバーは11mmサイズのLCP振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載。カスタマイズされた日本製の液晶ポリマー(LCP)振動板を採用し、独自のフロントとリアの音響チャンバーのプロファイルを備えたデュアルチャンバー構造を採用。「KARS」との組み合わせ最適化されたカスタムドライバーとして設計されています。
そして、この革新的な技術を採用した「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」は、有名レビュアー/評論家のCrinacle氏による音色特性に従ってチューニングされています。
低域は8dBのサブベースは信じられないほど強烈ですが、300Hzで自然にカットオフされます。ニュートラルな中音域は人工的な膨らみや濁りのない、ボーカルや楽器の自然なサウンドを明瞭に表現し、3kHzのピークと高音上部への自然な減衰を伴うクリーンな高域を備えます。
「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」のカラーバリエーションは「ブルー」と「ブラック」の2色。
購入は「Linsoul」(linsoul.com)またはアマゾンの「LINSOUL-JP」にて。
購入は「Linsoul」(linsoul.com)またはアマゾンの「LINSOUL-JP」にて。
価格は79.00ドル、アマゾンでは13,300円です。
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Linsoul より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」のパッケージは従来のKiwi Earsのパッケージよりちょっとサイズの異なるボックスです。より製品画像が強調されたイメージになりましたね。今回はブルーのモデルが届きました。
パッケージ内容は、イヤホン本体とケーブル、イヤーピース(2種類、各S/M/Lサイズ)、説明書。
本体は3Dプリントによるレジン製で、ステムノズル部は金属製。透明なシェルの内部では11mmと一般的な中華イヤホンより少し大きめのダイナミックドライバーと、特徴的な音導管による「KARS」と呼ばれる構造が確認出来ます。
フェイスプレートは鮮やかなラメ模様で美しく仕上げられていますね。また大型のダイナミックドライバーを収容する金属製シャーシにも「Kiwi ears」のロゴが刻印されています。「KARS」による音導管はかなり特徴的ですが、シェルサイズは大型ドライバーを搭載しているわりにはコンパクトで、耳への収まりは良好です。ただしステムノズルがやや短いため、奥までしっかりとした装着感を得られない方もいらっしゃるかも。イヤーピースを長さのあるものや密着性の高いものへ交換するほうが良さそうです。
ケーブルはあらかじめ装着済みですが0.78mm 2pin仕様で樹脂被膜による細めの銀メッキ線ケーブルです。外観上の高級感とかは無いですが適度に柔らかく取り回しの良いケーブルです。Crinacle氏のコラボモデルは総じてケーブルは実用性重視というか、あまりこだわってない風な点も特徴かも。f値ベースの論理的な調整にこだわりのある印象の同氏らしいともいえますが、マニアにとってはリケーブルによる「遊ぶ余地」が毎回ある、という捉え方もできますね(^^;)。
■ サウンドインプレッション
「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」のサウンドは一聴して「はいはい、このタイプねー」とCrinacleのコラボモデルをいろいろ聴いている方であればすぐに分かるサウンド。つまり、癖の無いフラットベースのニュートラルサウンドをベースとしつつ高域は明瞭感と伸びがあり、低域はパンチがあり過不足を感じさせないバランスで、分析的に聴いても気軽なリスニングでも楽しめる印象。いっぽうで元気さ、メリハリの良さ、楽しさ、みたいな要素はあまりなく、多少つまらない音と感じる方もそれなりにいそう、ざっくり言うとそういう印象です。
例えば「Truthear x Crinacle ZERO」と比較すると全体としての傾向は近いものの、低域の表現について「ZERO」では低域用のドライバーを並列に配置することでH-2019的なバランスの音作りをしており、今回の「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」では1基のより大口径のダイナミックドライバーでフルレンジを鳴らしつつ、Kiwiが「KARS」とよぶ音導管構造によって低域をブーストすることで、より深い重低音を実現しています。
「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」の高域は明瞭に伸びつつ自然な滑らかさを持った印象。ハイハットなども綺麗に描写されLCP振動板らしい明瞭さがありますが、歯擦音などは調整され聴きやすくコントロールされています。明瞭で曇りなどはないものの自然な輪郭であるためキレのある印象とは異なり、シャープな高域を求める方には解像感などで多少緩さを感じるかもしれませんね。
中音域は自然な距離感を持っており定位は正確性があります。そのためボーカル域は最近の前傾したリスニング系のサウンドと比べると若干下がった印象で強調などはありません。音場も自然な広さと奥行きで強調感はありませんが不足も無い印象。
つまり中音域について実際はほぼフラットに近いニュートラルなチューニングで、それ故にポップスやアニソンなどのボーカル曲ではやや淡泊に感じるかもしれません。大口径ドライバーによる描写は自然な質感を持っており、男性および女性のボーカルと自然に分離する演奏の質感は良く、アンダー100ドル級ではニュートラル系のサウンドでありがちな粗さなどはほぼ感じない印象です。解像感や分離が高いというわけではありませんが(ケーブルで印象の変化は多少あります)、分析的なリスニングでもある程度応えられるサウンドには仕上がっていると思います。
低域はニュートラルベースの自然な量感で特に強調した印象は無いものの、ミッドベースはスピード感と締まりの良さがあり、直線的な印象で存在感があります。重低音も強調感はありませんが実際は非常に深く沈み解像感もあります。ドライバーとしては中高域の質感を高めつつ、「KARS」とよぶ音導管構造によって低域、特に重低音をブーストすることで全体的な質感を確保し、全体としてニュートラルな印象ながらリスニング的にも楽しめるオールラウンドさを持ったサウンドに仕上げられています。個人的にはこのアプローチはCrinacle氏のチューニングと相性が良く、よくまとまっていると感じました。
■ まとめ
というわけで、「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」はアンダー80ドル以下の価格設定で独自の大口径ドライバーと低域ブースト技術の組み合わせにより、ある意味で典型的なCrinacle氏サウンドを実現したイヤホンと言えます。同氏のコラボモデルは低価格からそれなりの価格設定まで様々ですが、代表的な製品は「Moondrop Blessing2:Dusk」であり、低価格であれば「Truthear x Crinacle ZERO」でしょう。Moondropからは既に「Blessing3」からドライバー構成を変更した「Dusk」も出ていますが、同氏のデータによると、これらの製品と「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」もそれぞれの個性を活かした音作りではあるものサウンドバランス的には近いチューニングが行われていますね。
今回の「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」の大きな特徴である「KARS」のような技術は、スピーカーなどでは古くから存在し、イヤホンでも「Shure SE846」のローパスフィルターや、最近でも「AFUL MagicOne」など複数のメーカーで近いアプローチがありますが(それぞれ異なる特許のため、実際の技術はどれも異なります)、ドライバーの特性を拡張するチューニング手法として3Dプリント技術の向上と併せて今後も増えてくるでしょう。
そして「Truthear ZERO」が再生環境にシビアで製品自体はより低価格ながら本気を出すのにはマニア的な武装を結構求められたのに対し、「Kiwi Ears x Crinacle: Singolo」については比較的鳴らしやすく、シングルドライバー故に上流によるクロスオーバーまわりでの変化も無いため、より手軽にCrinacle氏コラボのサウンドを実感出来る製品として最適かなと感じました。
いきなりMoondropの「Blessing2: Dusk」や最新の「Dusk」へ行くのも普通はハードル高いですし、とりあえずCrinacle氏コラボ製品を聴いてみたい、という方向けの最初の製品としては最適かと思います。そのうえで好みにあれば他のコラボモデルを試して見るのもよいでしょう。またリケーブルなどで違いを楽しんでみるのもマニア的には楽しいと思いますよ(^^)。