Simphonio PB10

こんにちは。今回は 「Simphonio PB10」です。ディープなマニア層には有名な「VR1」を手がける「Simphonio」のなかでは最も購入しやすい価格帯(それでもアンダー500ドル級)の製品です。独自の平面駆動ドライバーとSonion製BAと組み合わせ、ニュートラルだけど非常にエネルギッシュなリスニングサウンドに仕上がっています。


■ 製品概要と購入方法について

Simphonio」というと、マニアであれば2020年にリリースされたセラミック振動板を採用した高級イヤホン「Simphonio VR1」を思い浮かべることでしょう。当時のレートでも30万円近い価格設定でおいそれと手が出せる製品ではありませんが、日本でも結構ユーザーはいらっしゃいます。私は確か展示会で当時の七福神商事のブースで試聴させていただいたのが「VR1」を最初に聴いた経験だったと思います。以降何度か聴く機会はありましたが、聴くたびによりその深さを実感するような、そういった印象の非常に玄人ぽい指向のメーカーだと感じます。

Simphonio PB10Simphonio PB10
閑話休題、そんな中国のファクトリーブランドがリリースした、平面駆動ドライバーとBAによるハイブリッド仕様のモデルが「Simphonio PB10」です。価格設定は449.99ドルで価格帯としてはアッパーミドル級ですが、「VR1」(2,299ドル)や「P-Zero」(4,899ドル)をはじめ、既存の最も購入しやすかった「RX10」(640ドル)と比較してもより低価格で、「Simphonio」としては最もエントリーなモデルのひとつとなります。
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Simphonio PB10」が採用する平面駆動ドライバーは、特別に開発された大型のユニットで、超薄型 2μm多層複合バイオメティック振動板を備え、高速で鮮明なサウンドを生成。さらに連携するBA ドライバーがその純粋な解像度で出力を強化します。究極の明瞭さ、鮮明なボーカル、洗練された周波数帯域レスポンスを備えたフラッグシップ グレードのサウンド パフォーマンスを実現します。

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シェルはCNC加工された航空グレードのアルミニウム合金を採用し、ケーブルには392コア 6N 高純度銅銀線ケーブルが付属。音の歪みを大幅に軽減し、忠実度の高い聴覚体験をもたらします。

Simphonio PB10」の購入はLinsoulにて。価格は449.99ドルです。
Linsoul(linsoul.com): Simphonio PB10


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Linsoul より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

Simphonio PB10」のパッケージはト音記号をモチーフにした製品画像をデザインした化粧箱カバーに覆われたボックス。
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パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(2種類、それぞれS/M/Lサイズと装着済みMサイズ)、ケーブル、レザーケース、説明書。
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Simphonio PB10」の本体はCNC加工されたアルミ合金の削り出しですが、しっかりとした厚みがあり剛性が高い印象のハウジングです。そのためシェル自体は多少重さがありますが、耳に収まりやすい形状のため、イヤーピースをしっかり合わせることで十分な装着感を得られるでしょう。
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個人的な印象としては製品サイトの写真はあまり写りが良くないようで、実際の製品はサイトでの印象より数倍は高級感があります。フェイスプレートの仕上がりも含め500ドル近い価格設定でも納得できる「それなりの価格の製品」らしさを感じる印象です。
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付属するイヤーピースは結構オマケ感があるため、しっかり耳にフィットするイヤーピースに交換すべきでしょう。もっともこの価格帯で中華イヤホンを購入される方であればこの辺は「そりゃそうでしょ」という感じですね。私はいつもの「TRN T-Eartips」を使用しています。ケーブルは金銀混合線の8芯タイプでコネクタは0.78mm 2pin仕様。プラグは最初から4.4mmのみというなかなかの硬派仕様です(^^)。


■ サウンドインプレッション

Simphonio PB10Simphonio PB10」の音質傾向はバランスとしてはニュートラルですが、結構押しの強い印象のエネルギッシュなサウンド。「VR1」はとにかく滑らかで自然な印象の「究極の無味無臭感」てきなサウンドだったのに対し、「Simphonio PB10」は各音域がかなり前傾して主張し、伸びるところは伸び、沈むところは沈むといった、非常に存在感のある音を鳴らします。とはいえ派手すぎることは無く、非常に濃い音ながら、しっかりとした解像感と優れた分離性により、非常に微細な音も綺麗に描写する表現力も持ち合わせています。そのうえで、自然な広さと立体的な奥行きのあるリアルな音場表現には「VR1」とも共通するような「Simphonioらしさ」を感じる事もできます。
クラシックなどの音源よりは各種ボーカル曲やライブ音源などと相性の良いサウンドに結構割り切ってチューニングしている印象もあり、決してオールラウンダーではありませんが、ハイグレードブランドらしいレベルの高さを感じることもできます。

Simphonio PB10なお、インピーダンス 12Ω、感度101dBという仕様ですが、平面駆動ドライバーを搭載したイヤホンとしてはかなり鳴らしやすく、どちらかというと敏感な印象。そのため十分に高いノイズ特性と安定したゲインコントロールが可能なDAPやオーディアダプタ等あれば十分にならすことができます。ミドルグレード以上のDAPでのミッドゲインモードでの利用が最適に近いバランスでしょう。逆にハイパワーなポータブルアンプなどではゲインを落とした方が良いかもしれませんね。

Simphonio PB10」の高域は明瞭かつ伸びの良いスッキリした音を鳴らします。最近は高域を結構ウォーム寄りにまとめている製品か、意図的に中高域にアクセントをつけて煌びやかさを強調しているようなチューニングが増えていますが、「Simphonio PB10」では直線的な高域でかつしっかりとした主張があり不足を感じることはありません。同時に刺さりやすい帯域はしっかりコントロールされており歯擦音なども不快になる少し手前で仕上げられているのが好感できますね。平面駆動ドライバーを補っているBAはSonion製のようですがハイブリッドさをあまり感じさせないチューニングになっています。

Simphonio PB10中音域は凹むことなく鳴り、バランスとしてはニュートラルながら非常にエネルギッシュな印象。ボーカル域にも主張があり比較的前傾して定位します。女性ボーカルは伸びやかで男性ボーカルも心地よい艶感と厚みがあり、存在感があります。この点は、より無味無臭な印象の「VR1」などフラット傾向のハイグレード製品と比較するとやや濃いめの音作りと捉えられなくもないですが、濃いけど派手だったり大味な印象ではなく、しっかりと繊細な表現も楽しめる点が特徴的。何というか、割とお高めの中華料理店で北京ダック食べたときのような・・・(微妙な例え^^;)。平面駆動らしい歪みの無い直線的なサウンドながら鮮やかさと密度、そしてパワーを持つことで、特にロック、ポップスやアニソンなどのボーカル域やライブ音源等を楽しく再生してくれます。

また音場は広がりは過度に強調せず自然な印象ながら奥行きと上下の伸びが良く極めて立体的なリアルさがあります。また解像感の高さ、分離の良さから1音1音の精緻な表現力の高さがあります。このエネルギッシュな密度感と立体的で解像度の高い音場感は「Simphonio PB10」の特徴的な要素ですが、いわゆるハイエンドらしい、より自然でありのままの音を楽しむようなサウンドとは異なります。この点が同社の中での「Simphonio PB10」の位置づけてあり音作りとも解釈できますね。

Simphonio PB10低域はニュートラルなサウンドバランスながら重低音を中心に非常に強く重い量感があり、地響きのようにしっかり存在感のある鳴り方をします。ミッドベースは平面駆動ドライバーらしい歪みの無い直線的な印象で、低域全体としても質の高い音と言えます。ただし上記の密度感や低域の量感については再生環境によっては多少変化することもありそうです。場合によってはリケーブルなどを試して見るのも良いかもしれませんね。また装着感が浅いとやや軽めになるため、より密着性の高く、必要に応じて長さのあるイヤーピースを選ぶほうが良いでしょう。そういった点では「Softears U.C.」などを組み合わせるのも良さそうですね。


■ まとめ

Simphonio PB10とうわけで、「Simphonio PB10」はハイグレードブランドが手がけるエントリー(価格帯としてはアッパーミドル級)という、ちょっと特殊な立ち位置の製品でしたが、それが非常に面白い内容でまとまっていたのがとても興味深い印象でした。ニュートラルだけどエネルギッシュで、濃いめだけど派手じゃ無い、この価格帯だけど結構ポップスチューイン、だけど解像感や音場感はえげつない、という、とてもオールラウンド向けとは言えませんが「刺さる方にはかなりブッ刺さる」楽しいイヤホンだと感じました。ビルドクオリティの高く、しっかりと高級感があるのも良いですね。
心理的にも経済的にも多少余裕があり、既に同クラス以上の製品を複数使っているようなマニア層向けの製品ではありますが、個人的には「結構好き」で利用する機会も増えそうなイヤホンだと感じました。