こんにちは。今回は 「Kinera Celest Relentless」です。様々なドライバー構成でコストパフォーマンス二優れた魅力的なモデルを相次いでリリースしている「Celest」ラインから、6BA+1DDの7ドライバーによるマルチドライバーハイブリッド構成のモデルがリリースされました。プレミアム感のある美しいシェルデザインを備えつつ166.99ドル、2万円台のお手頃価格を実現。CelectらしいV字方向のリスニングサウンドも心地よい仕上がりになっています。
■ 製品概要と購入方法について
Kinera」は2011年に設立された自社でBAドライバーの製造を行う規模の製造メーカーのひとつで、2016年に自社ブランドの「Kinera」製品をリリースし、以降ラインナップを拡充しマニアの間で幅広く認知されるようになりました。現在はハイエンド向けの「Kinera Imperial」、姉妹ブランドの「QoA」といったブランドで製品を展開。さらに2022年に新たなブランドとして「Celest」をスタート。低価格ながら最新技術を織り込み、中国の古代神話になぞらえた製品展開で注目を浴びています。
今回の「Kinera Celest Relentless」は「Celest」ブランドとして初めて6BA+1DDのハイブリッド構成を採用した片側7ドライバーのハイブリッドモデル。
低域および中低域には、堅牢な低周波と中周波の応答を実現する 「8mmダイナミックドライバー」を搭載。 中高域には、2基の「Celest Custom 29689」バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーユニットを搭載し、高解像度の鮮明でクリアなサウンドを生成します。 高域用には4基の「Celest Custom 10012」BAドライバーユニットが、完璧な高周波帯域を生成します。高度にバランスが取れた構成により、中音域のクリアで鮮明なボーカルと、高音域の卓越した楽器のディテール、そして高速で深みのある低音レスポンスを生み出します。
本体シェルはHeyGearsと提携し高精度で設計された3Dプリントシェルを採用。精密にチューニングされたキャビティを忠実に再現しています。シェルは肌に優しい樹脂素材を採用し、フェイスプレートには手描きにより海と鳥の神話のイメージが美しく表現されています。ケーブルは0.78mm 2pin仕様で5N 高純度銅銀メッキ線ケーブルが採用し、3.5mmと4.4mmの交換式 プラグを採用しています。
「Kinera Celest Relentless」の購入はHiFiGoおよびAliExpressまたはアマゾンのHiFiGoストアにて。
価格は169.99ドル、アマゾンでは27,822円です。Amazon.co.jp(HiFiGo): Kinera Celest Relentless
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして HiFiGo より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Kinera Celest Relentless」のパッケージはブルーを基調とした印象的なデザイン。内箱も鮮やかなブルーのカラーリングです。
パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル(3.5mm)、交換プラグ(4.4mm)、イヤーピースはシリコンタイプが2種類でそれぞれS/M/Lサイズ、ウレタンタイプが2ペア、クリーニングブラシ、ケース、アクセサリー、説明書。
本体はHeyGearsの3Dプリントシェルで非常に軽量です。6BA+1DDという、いわゆる「多ドラ」構成のためシェルサイズは少し大きめですが耳に収まりやすい形状。耳にフィットし装着性も良好です。なおおCelestでHeyGearsのレジン製シェルを採用している製品では既存の「Plutus Beast」もありますが、こちらは骨伝導ドライバーの関係で薄めのシェルを使用しているのに対し、「Kinera Celest Relentless」では十分な厚みがあり強度面でもしっかりした印象に仕上がっています。
ケーブルは、5N 高純度銅銀メッキ線を使用した8芯ケーブルが付属。プラグは4.4mmへの交換式ですが、ネジ式のカバーでしっかり固定するタイプで同様の交換式のなかでも耐久性や接点の安定性の上でもよりグレードの高い仕様になっています。
従来のCelest製品より少しグレードアップしていることもあり付属品も充実。イヤーピースは3種類の各サイズ、クリーニングブラシ、アクセサリー、ケースなどが付属します。
■ サウンドインプレッション
「Kinera Celest Relentless」の音質傾向はの音質傾向はバランスの良いV字を描くドンシャリ傾向のサウンド。
低域用の8mmダイナミックドライバーはパワフルな音を鳴らし深く豊かな印象を与えつつ、4基のツィーターBAで構成される高域も適度な主張をもって軽快なレスポンスでハッキリと再生されます。そして中音域も想像以上に広くバランスの良さを感じ、音楽的にも心地よいリスニングサウンドを実現しています。
Kineraらしいマルチドライバーの組み合わせでCelestシリーズに共通した明瞭なドンシャリ傾向で仕上げられている非常に楽しいイヤホンという印象です。
ちなみに、6BA+1DDのマルチドライバー仕様のイヤホンですがインピーダンス27Ω、感度105dB/mWと敏感すぎず、多くのDAPなどで一般的な音量で再生できるなど使いやすさも感じるイヤホンです。
ただし、比較的メリハリを強調するタイプのアンプやDAPの場合、マルチBAらしい金属質な印象がよりドライに出るなど、多ドラ故というか「Kineraあるある」というか、単純に出力の大小だけではない再生環境による印象の違いがある点は留意すべきでしょう。
同様にケーブルやイヤーピースでも多少の変化はあるため、好みのサウンドに追い込む楽しみもある、とポジティブに捉えるのが「Kinera Celest Relentless」との正しい向き合い方のような気がします(^^;)。
「Kinera Celest Relentless」の高域は、適度に前面に出る主張があり、明るく明瞭な音を鳴らします。解像感も高く、Celest製品のなかでも「Plutus Beats」や「PhoenixCall」より高域の量感は多くより伸びやかな印象があります。煌めきも感じさせつつ刺激を感じやすい帯域はある程度コントロールされているものの、鋭い音は鋭く鳴らすため若干の刺さりを感じる方もいらっしゃるかも。それでも自然、高域用BAを4基並列で鳴らすことで過度に金属質にならず滑らかさも感じさせるバランスにまとめています。
中音域は明瞭かつ豊かさがあり、ボーカル域も厚みのある音を鳴らします。V字傾向ですが凹みはほぼきになりません。またマルチBA特有の籠もりのようなものはほぼありませんが、スッキリしたキレの良さというより濃密で情報量の多い音という印象のため、シングルダイナミックとは異なる質感で音作りにはなっていると思います。また鮮明さのある印象ながらハイブリッド的な派手さは強調しておらず自然な滑らかさも感じます。
ボーカル域は自然なレイヤー感のなかで定位し、女性ボーカルエネルギーがあり伸びやかで、男性ボーカルは深く厚みのある印象。演奏との分離も適切で、音場は自然な広がりと多層的な奥行きがあります。そのため演奏が混雑することは無く、定位はややリスニング向けな演出的ではあるものの、立体感、臨場感があります。
ボーカル域は自然なレイヤー感のなかで定位し、女性ボーカルエネルギーがあり伸びやかで、男性ボーカルは深く厚みのある印象。演奏との分離も適切で、音場は自然な広がりと多層的な奥行きがあります。そのため演奏が混雑することは無く、定位はややリスニング向けな演出的ではあるものの、立体感、臨場感があります。
低域は厚みがあり量的にも存在感のある音を鳴らします。ニュートラルなバランスと比較すると多少ブースとした傾向も感じますが、低域全体でタイトで明瞭な音を鳴らすため、中高域との分離も良く、また重低音も深く重さのある印象です。ミッドベースは力強いアタックを持ち量的にもブーストされていますが直線的で滑らかさも感じます。重低音は強く響きタイトで解像感のある音を鳴らします。また深さがあり地響きのような重量感も感じさせます。質感というより臨場感など重視した多少演出的な低域ですがV字傾向のリスニングサウンドとしてよくまとまっていると思います。
■ まとめ
というわけで、「Kinera Celest Relentless」は比較的低価格ながらハイスペックな製品を相次いでリリースしている「Celest」ラインの6BA+1DDモデルとして、マルチドライバーらしい濃密さも感じさせつつ、V字傾向でバランスの良いサウンドを実現することで、オールランドに楽しめるリスニングイヤホンとして仕上がっていました。もともとハイグレードなハンドメイドのマルチBA機を多く手がけるKineraですが、比較的低コストの中華BAと3Dプリントによるシェル構成を採用する「Celest」ラインでも経験値の高さを感じさせます。またとくに高域のレスポンスの良さなどに「Celest」ラインのアイデンティティーがあり、「Kinera」や「QoA」とはチューニングの方向性を変えているのも興味深いですね。コストパフォーマンスに優れ外観も美しいマルチドライバー機を探している方には良い選択肢のひとつになると思います。