こんにちは。今回は 「SIVGA P2 PRO」です。私のブログでもさまざまな製品を紹介しているSIVGAから新たにリリースされた、業界初のサファイア振動板を採用した平面駆動ドライバーを搭載したハイグレードモデルです。ハンドメイドのウッドハウジングの個性的な外観に心地よく質の高いサウンドを楽しめる至高なアイテムに仕上がっています(^^)。
■ 製品概要と購入方法について
「Sivga Audio」は2016年に中国で設立されたSivga Electronic Technology社のオーディオブランドで、主にハイエンドヘッドホンの市場で製品を展開しています。私のブログでもこれまでさまざまな同社製ヘッドホンおよびイヤホンなどを紹介してきました。
今回の「SIVGA P2 PRO」は、世界初の「サファイア振動板」を採用した大口径平面駆動ドライバーを搭載するハイグレードの開放型オーバーイヤーヘッドホンです。SIVGA製ヘッドホンの特徴ともいえるハンドメイドによる高品質の木製イヤーカップやCNC精密加工された金属部品、柔軟で快適な装着性を持つイヤーパッドなど職人気質による細部へのこだわりが施された高品質ヘッドホンに仕上がっています。
「SIVGA P2 PRO」は半導体製造で使用される深紫外線リソグラフィ装置を使用して生成された28nmのサファイア振動板を採用。業界初となるサファイアと金属インレイを完璧に組み合わせた平面駆動型ドライバーを搭載しています。また超低歪み特性を持つ平面駆動型を採用することでより高い原音忠実性を持ち、女性ボーカルの繊細さも美しく表現し、クラシックの奥深さやポップスのエネルギッシュなサウンドなど優れた音響特性を体感することができます。
「SIVGA P2 PRO」のイヤーカップは厳選した高級木材を使用しハンドメイドにより丁寧に仕上げられています。また金属部分はCNC精密加工が施されたスチール製で表面処理を施した上で落ち着いたガンメタル仕上げによりウッドとの調和が取れたデザインに仕上がっています。スチールプレートは一体形成により安定したテンションと強度を維持し、頭部にフィットする設計となっています。ヘッドバンド部分は高級山羊の革製、イヤーパッドはビッグデータに基づく3次元設計により優れた装着感を実現しています。
ケーブルはリケーブル可能な仕様で、標準で高純度6N OCC 4芯ケーブルを付属。4.4mmバランス接続プラグを採用し、変換ケーブルで3.5mmでの利用も可能です。
「SIVGA P2 PRO」の購入はアマゾンのSIVGA公式ストア、国内代理店の直販ストアなどで。
価格は79,800円(税込み)です。
Amazon.co.jp(SIVGA公式ストア): SIVGA P2 PRO
01Diverse(国内代理店直販ストア): SIVGA P2 PRO
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Sivga Audio より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
今回の「SIVGA P2 PRO」もリリース前の段階で「Sivga Audio」よりサンプル提供をいただきました。パッケージはライアンアートが描かれたブラウンのシンプルなデザインです。
ヘッドホン本体は牛革製のハードケースに収納されています。毎度ながらとてもハイグレードモデル感があります。平面駆動モデルと言うことでケースはより大型化していますが、収納して自立できる足つきタイプとなっています。パッケージ内容は、本体、ケーブル、3.5mm変換ケーブル、6.35mm変換プラグ、付属品用ポーチ、レザーケース。
「SIVGA P2 PRO」の本体は高級木材によるウッドハウジングをスチール製のアームとバンドで構成されヘッドバンドはウールレザーを採用しています。また大口径の平面駆動ドライバーをエッチング処理されたステンレスメッシュで覆った開放型デザインで通気性は良く蒸れやすい梅雨の季節でも快適な装着感がありますね。
外周をレザーで覆ったイヤーパッドは専用の3次元成型された形状で、低反発スポンジはソフトでしっかりとホールドされます。本体は435gとやや重量がありますが、安定した装着感で長時間の利用でも快適な印象です。側圧はやや強めの印象ですが、イヤーパッドの密着性が高くホールド感も良いため痛くなることは少ないでしょう。ただし眼鏡を着用の場合は側圧のぶん多少耳への負担があるため少し工夫した方が良いかもしれませんね。
ケーブルコネクタは3.5mm(TS/2極)ピンの両出しタイプ。従来モデルの2.5mm両出しから変更になりました。付属ケーブルは6N OCC高純度単結晶銅線の4芯ケーブルでプラグは4.4mmのバランス仕様が採用されています。シングルエンド(3.5mm)には付属の変換ケーブルで対応できます。
■ サウンドインプレッション
「SIVGA P2 PRO」の音質傾向はほぼフラットに近いものの、ボーカル域が少し前面に出た印象でリスニング寄りのチューニングで仕上げられています。「Phoenix」など従来のSIVGA製の上位グレードの開放型ヘッドホンとも共通した印象もありますが、平面駆動らしくより歪みの無い直線的な印象のサウンドにまとめられています。
そのうえで、適度に明るく音像は鮮やかさがあります。もともとは絶縁特性で特定の信号のみを通すサファイア振動板は平面駆動ドライバーにおいて音質面で影響する意図しない音の反射や乱れなどの要素を排除し、よりクリアで純粋さのある音を鳴らすことが期待できるようです。「SIVGA P2 PRO」は低価格の平面駆動ヘッドホンにありがちな輪郭の緩さが無く、よりハッキリしたフォーカスを持って表現をしてくれます。また開放型の構造ですが、音場は抜けるような印象と言うよりはフラットらしい原音のままの空間表現を描写しているイメージ。ただ完全にフラットというわけでは無く、バランスとしては僅かにカマボコ寄りで聴き心地良くまとめられています。
ちなみに、「SIVGA P2 PRO」の仕様はインピーダンス32Ω(±15%)、感度98dB/mW(-3dB)と、このクラスの平面駆動タイプのヘッドホンとしては比較的鳴らしやすく、特に4.4mmバランス接続に対応しているDAPなどであればほぼ問題なく再生することができます。ただし、DAPなどポータブル環境の多くでは特に低域の印象が多少控えめとなり、重低音は物足りなく感じるかもしれません。
この辺は駆動力の違いにより差があり、DAPのようなポータブル製品と比較し、アンプ回路に余裕のある据置き型での利用の方が明らかに量感が変化しました。
また据置き型のDAC/ヘッドホンアンプ製品でも最もニュートラルな印象だった「Shanling EH3」に対し、「FiiO K9 PRO LTD」が比較的スッキリした印象の見通しの良い印象だったのに対し、よりパワー推しの感がある「Sabaj D5」や「Topping DX7 Pro」などでは多少メリハリが強調された印象となり、据置きの再生環境でも多少の違いを実感出来ました。
「SIVGA P2 PRO」の高域は平面駆動らしい直線的な伸びのある印象で、明瞭な解像感のある音を鳴らします。サファイア振動板の採用により雑味が押さえられ、より透明度が高く見通しの良さがあります。また分離も良くスピード感も十分でエネルギッシュな印象も感じさせます。
中音域も平面駆動らしい歪みの無いニュートラルな印象で再生されます。高域同様に透明感のある印象で音像は鮮やかさがあり、同時に派手に鳴りすぎず高い質感を持ちます。演奏との分離も良く個々の演奏を十分に捉えることができます。音場はありのままの広さと奥行きがあり過度に強調したり広げたりすることはありません。ただ実際は完全なフラットでは無く、ボーカル域を中心に多少前傾しておりバランスとしては若干のカマボコ寄りになります。
低域は力強いアタックとスピード感がありますが、特に重低音の量感や深さは再生環境に少なからず依存します。もともとフラット方向にニュートラルバランスなヘッドホンのため、V字傾向のようなパワフルかつ臨場感のある低音とは異なるのですが、それでもポータブルな再生環境ではカマボコ寄りの中音域が目立つため相対的に低域は控えめに感じるでしょう。このクラスの平面駆動ヘッドホンをポータブルオーディオでドライブする場合、十分にパワーのあるポータブルアンプを併用する方が良さそうですね。
ちなみに「SIVGA P2 PRO」と最も直接的なライバルとなりそうな機種は「HIFIMAN ANANDA」(国内価格 77,000円)でしょう。
同価格帯の平面駆動タイプの開放型ヘッドホンで、「SIVGA P2 PRO」が採用するサファイア振動板と、「ANANDA」の「Stealth Magnet技術」はそれぞれ全く異なる技術ながら平面駆動ドライバーにおける悪影響を与える要素を排除しよりクリアなサウンドを目指すという似たアプローチを目指しており、また音質傾向的にも結構似ている印象です。
私自身は「ANANDA」の廉価版の「Edition XS」(国内価格 59,950円)を普段使っていますが、「SIVGA P2 PRO」と比較してフラット方向のサウンドバランスは非常に近く、透明感や煌めきといった粒立ちの良さはサファイア振動板を採用する「SIVGA P2 PRO」がより優れている印象を持ちました(ちなみに「ANANDA」のほうが「Edition XS」よりはっきりした輪郭を持つため、「SIVGA P2 PRO」と「ANANDA」の比較ではより僅差である可能性があります)。
いっぽうで奥行き感は「Edition XS」のほうが若干優れ、奥の方の細かい音の描写などに差がありました。これは良し悪しと言うより、よりフラット傾向なHIFIMANに比べ、前述の通り「SIVGA P2 PRO」は中音域、特にボーカル域が前傾した僅かなカマボコ寄りにチューニングされており、多少リスニング的な音作りをしている「アプローチの違い」といえるでしょう。
結論として言えるのは「SIVGA P2 PRO」と「Edition XS」では価格相応に若干のグレード差があり、おそらく「ANANDA」とは外観や音作りの違いはあるものの同様の価格帯としてどちらも遜色無い製品だろうと感じます。
■ まとめ
というわけで、「SIVGA P2 PRO」は約450ドル、円安の日本では8万円弱の価格設定となるハイグレードなヘッドホンですが、個人的な印象では同様に平面駆動ドライバーを搭載し、同価格帯の定番製品と比較しても十分に渡り合える基本性能を持ちつつ、他には無い個性をスペック以外にもしっかり感じさせる質の高いヘッドホンだと感じました。
SIVGAの特徴であるハンドメイドによるウッドハウジングや吸い付くようなしっかりした装着性、最初からバランスケーブル仕様となっている点、充実した付属品、そしてフラット傾向をベースとしつつSIVGAらしいミッドセントリックな心地よいリスニングサウンドを楽しめる点は重要な選択肢の要素になるかもしれません。SIVGAも正規の国内代理店が誕生し(個人的にも以前から存じ上げている、ポータブルオーディオ界隈では結構老舗代理店の代表が新たに作った会社です)、今後は店頭での試聴環境なども整備されてきそうですね。それなりに高価ですがとても魅力的な製品ですので、より多くの方に体験していただければと思います。