こんにちは。今回は 「DUNU x Gizaudio DaVinci」です。老舗イヤホンブランドのDUNUから、定評あるGizaudioコラボモデルとして登場した4BA+2DD仕様のイヤホンです。高1+中高1+中2の4BAに低域8mm+重低音10mmのダイナミックドライバーを加えた5Wayハイブリッド構成で、滑らかなニュートラルサウンドに突き上げてくる重低音が非常に心地よいイヤホンに仕上がっています。
■ 製品概要と購入方法について
「DUNU」(または「DUNU-TOPSOUND」「达音科」)は、中国を中心とする老舗の大手イヤホンブランド。1994年からイヤホン製品の開発および製造を開始しており、2006年にはドライバーの自社開発体制を持つなど、大手らしく技術的なバックボーンも充実しています。またケーブルやイヤーピースなどの分野でも多くの製品を持つなど、豊富なラインナップが魅力ですね。
「DUNU」製品については、私のブログでも数多くの製品をレビューしています。
「DUNU」製品については、私のブログでも数多くの製品をレビューしています。
今回の「DUNU x Gizaudio DaVinci」は、「DUNU」が海外のオーディオ関連メディア「Gizaudio」とコラボしたモデルで、ドライバーは2DD+4BAのハイブリッド構成、5wayクロスオーバーを採用します。3Dプリントによるレジンシェルにスタビライズウッド製フェイスプレートを備え、さらに新たなケーブルを加えた充実した構成が魅力的なモデルです。
「DUNU x Gizaudio DaVinci」のドライバー構成は2DD+4BA。独自の独立チャンバー設計を採用したBass用8mmとSub-Bass用10mmの2基のダイナミックドライバーを搭載し、低歪みで強力なローエンド レスポンスを生成します。さらに中音域用の2BAユニット、高域用および超高域用にそれぞれ異なるBAを配置します。これら5種類、6基のドライバーユニットは、5本の音導管で出力される5Wayのクロスオーバー設計を採用。Higetech製の高精細3Dプリントにより安定した音響構造を実現しています。
また「DUNU x Gizaudio DaVinci」のフェイスプレートにはスタビライズウッド製の木製パネルを採用。3Dプリントによる樹脂製のハウジング部も肌に優しい高品質の樹脂素材を使用しており、全体的に軽量で、人間工学に基づいた形状による快適な装着性を実現しています。
さらに「DUNU x Gizaudio DaVinci」のサウンドは「Gizaudio」のTimmy氏とのコラボレーションによるサウンドチューニングを実施。過去に手がけた「LETSHUOER x Gizaudio Galileo」や「Binary Acoustics x Gizaudio Chopin」など評価の高いコラボモデル同様に、安定したサウンドを実現しています。
そしてケーブルは4芯タイプのリッツ編組構造の高純度単結晶銅銀メッキ線が付属。特許技術「Q-Lock Mini」による交換可能な3.5mmおよび4.4mmプラグが付属します。さらにDUNU独自の「S&S Eartips」および「Candy Eartips」などのイヤーピースや大型ケースなど付属アクセサリーも充実しています。
「DUNU x Gizaudio DaVinci」の購入HiFiGoサイトまたはアマゾンのマーケットプレイスにて。
価格は299.99ドル、アマゾンでは51,490円で販売中です。
Amazon.co.jp(HiFiGo): DUNU x Gizaudio DaVinci
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして HiFiGo より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「DUNU x Gizaudio DaVinci」のパッケージは製品名とウッドパネルのイメージを踏襲したデザイン。DUNU製品のパッケージは毎回コンパクトで中に入った大きめのケースに一通りのものが収納することができます。大きいケースはさまざまな付属品に加え、最近だと小型オーディオアダプターなども一緒に収納したりできるのでとても便利です。
パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、交換用プラグ、6.3mm変換プラグ、イヤーピース(3種類、各サイズ)、クリーニングブラシ、ハードケース、説明書ほかと、今回も充実したパッケージ内容です。
本体はほぼブラックに近いダークブラウンの樹脂シェルにスタビライズウッド製フェイスプレート、金属製ノズルの構成。コネクタは埋め込みタイプのCIEM 2pin仕様です。ウッドイメージを強調したブラウンのスタビライズウッドパネルは美しさと高級感があります。
DUNUでスタビライズパネルのシェルというと6BA構成の「SA6」および「SA6 MKII」がありますが、2基のダイナミックドライバーを並列配置する関係で「DUNU x Gizaudio DaVinci」はひとまわり大きい印象ですね。それでもシェルサイズは非常に軽量で耳への収まりも良い印象です。
ケーブルは適度な太さのある高純度単結晶銅銀メッキ線の4芯撚り線タイプ。ちょっと重量感のあるケーブルですがこのイヤホンとの組み合わせでは良い感じですね。取り回しも良いです。
イヤーピースは標準の白色タイプに加え「Candy」がS/M/Lサイズ、「S&S (Stage & Studio) 」が4サイズ付属します。「Candy」および「S&S (Stage & Studio) 」イヤーピースについてはこちらの記事も参照ください。写真は通常イヤーピースで撮影していますが、私の場合は最終的にS&Sイヤーピースを組み合わせました。
■ サウンドインプレッション
「DUNU x Gizaudio DaVinci」の音質傾向は自然なU字を描くニュートラルなバランスの弱ドンシャリ。しかし同時に非常にエネルギーのある重低音が特徴的で、全体的にスッキリした印象のサウンドに強いインパクトで突き上げるようなアクセントを加えています。いわゆる○○ターゲット的なバランスでまとめられていますが、5Wayと細かくクロスオーバーを調整することでハイブリッド的な印象は少なく滑らかさがあります。ボーカル域は僅かに温かみがあり癖の無い印象。また高域もBAぽさはあるもののスッキリとして見通しの良い音を鳴らしてくれます。
ちなみに、同価格帯で同様に4BA+2DDのドライバー構成は「Moondrop Blessing3」なども該当しますが、こちらは完全にフラット方向にチューニングされておりアプローチは全く異なります。どちらかというとU字方向のニュートラルバランスで重低音をブーストする音作りは「THIEAUDIO Hype 4」あたりと近く、傾向も似ていそうです(手持ちの「Hype 2」とも似ていますが「Hype 2」のほうがミッドベースが厚く、全体的に若干V字方向に感じました)。
またDUNUの既存モデルある4BA+2DD構成の「DUNU VULKAN」も全体的なバランスとしては近く比較的滑らかな印象ですが「DUNU VULKAN」のほうが僅かにフラット方向で金属シェルらしい硬さもあります。これに対し「DUNU x Gizaudio DaVinci」のほうが重低音は強く、全体としては温かみがあり刺激を抑えた聴きやすい音を鳴らします。「DUNU x Gizaudio DaVinci」は同価格帯で同様の構成のモデルと比較してもリスニングイヤホンとして「ちょうど良いところ」を絶妙に押さえており、価格的にも努力している印象がありますね。
「DUNU x Gizaudio DaVinci」の高音域は明瞭で見通しの良い音を鳴らします。BA的な硬質感はあるもののドライバーを細かく配置し入念にクロスオーバーを調整しているため歪みは無く直線的に伸びスッキリした音の印象です。ただ刺激を抑え聴きやすいバランスにコントロールされているため、突き抜けるような伸びの良さは無いため高域好きの方には若干物足りなく感じる可能性はあります。それでも多くのポップスやロックなどのボーカル曲との相性は良く、聴きやすく明瞭かつ鮮明な高音で全体を彩ります。
中音域は凹むことなく癖の無いフラットに近い音を鳴らします。そのためボーカル域の鮮やかさや強調された印象を求める方には物足りないかもしれませんが、実際は中音域はしっかりした主張があり、自然な滑らかさと、僅かに温かく彩りと豊かさのある音色が特徴的です。また歯擦音などの刺激もコントロールされています。そのため、音源を忠実に表現しつつ聴きやすい印象の心地よさがあります。
女性ボーカルは過度に強調することは無く自然ですが、伸びは良く、男性ボーカルは適度な解像感をもちつつも温かみがあります。音場は自然で分離は良く、演奏もリアルさのある表現力が印象的です。
また仕様として過度に敏感でも鳴らしにくくもないため、ある程度のノイズ特性に優れたオーディオアダプターやDAP等であれば十分に駆動させることができ、同様の印象で楽しめる点も使いやすさがあります。ただ搭載しているドライバーの特性もあるのか、駆動力のある一部のDAPやアンプの場合はゲインを上げると音色が僅かに粗くなり、むしろローゲインのほうが滑らかに感じるケースがありました。この辺はバランス接続/シングルエンドの違いも含め、最適な環境を色々試す方が良いでしょう。
低域はバランスとしてはニュートラル方向の弱ドンシャリ、という「このクラスでは極めて一般的」な量感にまとめられていますが、特に重低音のブースト感が強く、重量感のある音が底から突き上げてくるように鳴るのが非常に印象的です。ミッドベースは締まりが良く直線的な印象なのに対し、重低音はとにかく重く強さがあります。それでも全体の分離は良く、籠もることはありません。前述の「THIEAUDIO Hype 4」や「Hype 2」では低域用のウーファーをアイソバリック配置にすることで量感を調整しつつも強さをブーストするアプローチが取られていますが、「DUNU x Gizaudio DaVinci」では低域用ウーファーに加え、重低音用のサブウーファーを並列配置するという、イヤホンでは結構珍しい手法が選択されています。この興味深い挑戦はDUNUという長年の経験と実績を持つブランドだからできる完成度で成功しているようです。
■ まとめ
とうわけで、リリース以降結構高評価で盛り上がっている印象も見受けられる「DUNU x Gizaudio DaVinci」ですが、確かに300ドル級のミドルグレードイヤホンとしては、十分に高級感があり充実した外観と付属品、王道的なU字傾向のニュートラルサウンドで調整されつつ、インパクトのある重低音でリスニング的な鮮やかさと楽しさを持っている、解像感や分離性などは突出した印象では無いもののボーカル曲を中心に聴きやすくまとめられている、そしてこのクラスにしては再生環境を比較的選ばない、と良い感じに評価されそうな製品としてまとまっていると思います。言うなれば「DUNU x Gizaudio DaVinci」は同価格帯で最大公約数的に「絶妙な落としどころ」で仕上がっているイヤホン、という感じでしょうか。確かにこれは売れそうですね。
ここであえてウィークポイントを挙げるとするならば、上記のように「最大公約数的」イヤホンのため、際立った特徴を逆に捉えづらくなり個性的で「キャラ立ち」しているほうが好きな方には物足りないかも、というケースもありそう。また同様にマニアの別のケースでは、似た傾向のいくつかの製品について「DUNU x Gizaudio DaVinci」があるからいいか、みたいに購入のモチベーションが少し下がってしまうかもしれない可能性があることでしょうか(笑)。DUSK、買うのどーしよっかなー(←おまえのことかい)。
というわけで、7月には国内販売も開始されるみたいですし、このクラスの製品に興味のある方は選択肢のひとつとして検討してみてくださいね(^^)。
と思っていた人(私の事)たちには、このイヤホンを使って、凛として時雨 を聴くと、驚嘆させられる体験をするだろう。
音場内に満ち溢れる楽器の演奏音に紛れず、歌が輪郭を表し、歌として訴えかけて来る。
或いは、広大な音場の中、楽器の演奏音が、歌い手の歌を前に提示してくる感覚か。
この価格帯では出逢った事のないイヤホンですね。