
こんにちは。今回は 「TANCHJIM 4U」です。高度な技術的裏付けに基づくニュートラル傾向のサウンドで定評のある「TANCHJIM」は大手セラーの「HiFiGo」とコラボした70ドル以下、約1万円のお手頃価格のモデルです。同社の上位モデルの技術を反映しつつ心地よいリスニングサウンドに仕上げ、さらに音質傾向を変更できるロータリースイッチを搭載するなど非常に興味深い製品に仕上がっています。
■ 製品概要と購入方法について
今回の「TANCHJIM 4U」はHiFiGoとのコラボによりリリースされたアンダー100ドル級のモデル。「TANCHJIM」(タンジジム)は2015年に設立された中国のイヤホンメーカーで、科学的な解析やロジックに裏付けられた専門性の高い調整によるニュートラルでバランスのよい音作りとシンプルな製品デザインでファンも多いブランドです。
「TANCHJIM」というと100ドルオーバーのミドルグレードの製品の印象が強いですが、同時に50ドル以下のエントリー級モデルも「OLA」「One」「TANYA」と結構充実したラインナップが存在します。しかし、50ドル超のアンダー100ドル級というと「TANCHJIM」ブランドとして最初の製品である「darkside」(販売終了)くらいまで遡る必要があるのでは、という気がします。この非常にニーズが高そうな価格帯でコラボモデルとしてリリースされたのが今回の「TANCHJIM 4U」となります。


「TANCHJIM 4U」はコンパクトで快適な装着感を実現する最適化されたシェル構造を採用。ドライバーには、同社の第4世代アーキテクチャ「DMT4」をアップデートした「DMT4 Ultra」デュアルチャンバーダイナミックドライバーを搭載しています。LCP複合振動板を採用し、歪みが少なく明瞭度の高い非常にクリアなサウンドを生み出します。また強力な磁束を生成する高出力磁気構造設計を採用。駆動しやすく広大なダイナミックレンジと歪みの低減を実現しています。


また本体背面には4方向に調整可能な回転式の回路フィルターシステムを搭載。低音レスポンスが調整され、4種類の異なるサウンドシグネチャが得られます。


「TANCHJIM 4U」の購入はHiFiGoの直販サイトまたはアマゾンのストアにて。
価格は69.99ドル、アマゾンでは10,773円です。
HiFiGo(hifigo.com): TANCHJIM 4U
Amazon.co.jp(HiFiGo): TANCHJIM 4U
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして HiFiGo より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「TANCHJIM 4U」のパッケージは正方形のボックスでサイズは「OLA」に合わせていますね。ただパッケージデザインは最近の「KARA」や「ORIGIN」のように製品画像を大きく載せたタイプになっています。


パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(2種類、3サイズ)、スイッチ切り替え用工具、布製ポーチ、説明書、保証書など。


本体は金属製で鋳造によるダイキャストだと思われます。フェイスプレートは鏡面パネルが貼られておりロゴがプリントされています。本体は非常にコンパクトで多少重量はありますが耳への収まりも良く装着感は良好です。


サイズ的には最近のDMT5ドライバー搭載の「ORIGIN」に近く、DMT4仕様の「HANA」や「Oxygen」と比べると「TANCHJIM 4U」はこれでもひとまわり大きいサイズ感だったりします。本体材質をダイキャストにすることで従来モデルより多少のコストダウンには繋がっていそうですね。


本体背面のロータリースイッチは付属のマイナスドライバーを使って回転させることで変更できます。内部のPCB基板からの電気制御により出力をコントロールする方式ですね。通常のスイッチより耐久性があり確実に変更できるのは良いですね。またステムノズル先端は汗などの水分にも強い防水タイプのメッシュフィルターで覆われており、全体的な耐久性も確保されています。


ケーブルは銀メッキ線の撚り線タイプで弾力のある被膜により取り回しも良い印象。コネクタはCIEM 2pinタイプですが本体側の凹みは小さく、リケーブル時は中華2pinタイプも利用できます。
■ サウンドインプレッション
「TANCHJIM 4U」の音質傾向は硬質でキレの良いLCP振動板の特性を活かし、実績のあるDMT4ドライバーでニュートラルで見通しの良いサウンドを実現しています。バランスとしては標準の「Atmosphere」モードがバランスの良いU字または緩やかなV字方向の弱ドンシャリ。また各スイッチは中低域~低域の量感に影響し、「Atmosphere」>「POP」>「Natural」>「Monitoring」の順で低域が抑え気味に変化し、「Monitoring」モードでは多少中高域寄りながらほぼフラットに近いサウンドになります。
最近の「TANCHJIM」の特に低価格モデルはフラット方向のバランスでボーカル域をやや温かくアクセントを置きリスニング性を高めるアプローチが増えていますし、ハイブリッドの「KARA」も弱ドンシャリのバランスながら中音域には近い印象がありました。しかし、今回の「TANCHJIM 4U」は同社としてはよりトラディショナルなチューニングで、特に「Monitoring」モードは無味無臭に比較的近く、癖の無い印象で音源を自然に表現してくれます。
そのため、最初に聴いたときは、「おや、これはちょっとあっさり目のOxygenかしらん」という感じの印象をもちました。おそらくバランスとしてはハーマンターゲットに近いものの標準の「Atmosphere」モードは多少V字方向のサウンドで、イメージとしてはやや高域を抑えてあっさりさせた「Oxygen」に近い印象です。しっかりと駆動力のある再生環境で鳴らすことで聴きやすい弱ドンシャリ感を楽しむことができます。
さらに「POP」モードではW字寄りの最近の低価格モデルにも近いバランスとなり、「Natural」モードの場合は多少フラット方向に近い印象で最近の「ORIGIN」のSフィルターを搭載したバランスにちょっとだけ近いかな、というバランスになります。
もちろん「Oxygen」や「ORIGIN」と比較すると、バランスが近いだけで詳細な表現力の違い、特に解像感や音場感などはグレード相応に違いがありますが、全体的に自然な輪郭ながら多少寒色寄りでスピード感のあるサウンドに仕上げることで、100ドル以下のニュートラル傾向のイヤホンとしては十分に高い完成度と感じます。

なお、インピーダンス32Ω、感度122dBとスペックとしては一般的ですがちょっと鳴らしにくく、特に低域の量感などはアンプの出力などで結構違いがあります。
もともと「TANCHJIM」製品全般の音作りとして低域を強調するサウンドではないものの、「Atmosphere」モードでも使用している再生環境で低域が軽めでやや淡泊に感じる場合は、情報量の多いっバランスケーブルなどにリケーブルすることで印象に変化がある可能性があります。
「TANCHJIM 4U」の高域は、明瞭感があり綺麗な音を鳴らします。明瞭で煌びやかさも感じる音ですが「Oxygen」や「HANA」などの従来機種と比較すると多少刺激を抑えあっさり目に調整されていることがわかります。高域については基本的にどのモードでも同様のバランスのようですが、高音域の情報量や伸びは再生環境で結構変わるため高域に音数の多い曲を好まれる方はしっかりとしたアンプやDAPのハイゲインなどで鳴らすことをオススメします。もちろんリケーブルも有効ですね。
中音域は癖の無いニュートラルな音で特に「Monitoring」モードはほぼフラットな印象です。LCP振動板を使用することでレスポンスは良く適度なスピード感があり、音色的にも結構あっさりした印象にまとめています。これは上位モデルと比べると解像感や分離感などはやや下がるため、窮屈さや混雑した感じにあまりならないよう意図的に調整しているのかな、という印象をもちました。その影響もあり、「POP」モードでは若干中低域を抑えることでW字方向の傾向となり、相対的に女性ボーカルの高域付近のアクセントが強調されますが同時に若干の粗さも感じました。また「Monitoring」モードも分析的に聴くにはやっぱり解像感やより詳細な見通しの部分で及ばない印象もあるため、リスニング的なチューニングの「Atmosphere」モードと「Natural」モードを上手く使い分けるのが正解なイヤホンかな、と感じました。低域は直線的で締まりが有り、上位モデルと比較しても結構質の高い音を鳴らしてくれる印象です。他の音域同様にレスポンスはよくスピード感のある音を鳴らし、ミッドベースも心地よくパンチ力があり解像感も高い印象。重低音も地響きのような重量感こそないものの十分に深く力強さがあります。再生環境によっては「Atmosphere」モードは結構低域の量感が増す印象となりますが、それでも過度にブーストした感じでは無く自然なバランスにまとまっていますね。
■ まとめ
とうわけで、「TANCHJIM 4U」は「TANCHJIM」らしさと同時に「らしくない感じ」も共存しており、マーケット的なニーズを捉えたコラボモデルだからこそ、という印象の製品でした。60ドル台、1万円程度の価格設定でニュートラル方向のバランスのイヤホンとしては十分にレベルが高く、サウンドチューニングのギミックも含め、「TANCHJIM」的なサウンドの「入門機」としてとても分かりやすく多くの方に「お勧めしやすい製品」だと感じました。
いっぽうで「TANCHJIM」製品をよく知る、色々持っている「オタク」な方々は、同社の50ドル以下の製品の「攻めてる」感じと比較すると「ちょっと及第点狙いすぎ」みたいな印象を持つかもしれませんね。少なくとも今回の「TANCHJIM 4U」については、これまでの「TANCHJIM」というブランドと同社の製品を見る限りは単独では製品化しなかったかもね、と感じさせる部分もありました。まあマーケット的にみれば100ドル以下の価格帯は世界的にもボリュームが狙えるゾーンのため、「TANCHJIM」も積極的に製品を投入してもいいのでは、と思うわけですが、今回の「TANCHJIM 4U」のセールスが好調であれば今後のラインナップにも変化があるかもしれませんね。個人的には今回のコラボをベースによりブラッシュアップしアップグレードした単独モデルの登場も期待したいと思います。







