こんにちは。今回は 「TRI i3 MK3」です。「KBEAR」の姉妹ブランドでよりハイグレードな製品を多くリリースしている「TRI Audio」で最も高い人気を誇った「i3」シリーズの3代目モデルが登場しました。鮮やかなパープルカラーのシェルに平面駆動ドライバー、Sonion製BA、ベリリウム振動板ダイナミックドライバーを搭載した高性能、高音質ハイブリッドイヤホンです。
■ 製品概要と購入方法について
「TRI Audio」は、中華イヤホンブランドとしてマニアの間ですっかりお馴染みになった「KBEAR」の兄弟ブランドとして、よりこだわりのあるハイグレードモデルを多く手がけている印象がありますね。その「TRI」ブランドのなかでも特に人気が高かったのが「TRI i3」および後継モデルの「TRI i3 Pro」でした。なんと言っても特徴はそのドライバー構成で、金属ハウジングの中に「平面駆動ドライバー」、「ダイナミックドライバー」、そして「BAドライバー」の3種類のドライバーによるハイブリッドという構成ながら3種類のドライバーが絶妙なバランスで調和しすることで高い評価を得ていました。
そして「TRI i3 Pro」の登場から約3年が経過し、内部構成を大幅にグレードアップして登場したのが今回の「TRI i3 MK3」です。今回も平面駆動+DD+BAという構成は踏襲しているものの、各ドライバーのスペックアップと同時に担当する音域が変更になるなど全く新しい製品に生まれ変わっています。
まず、「TRI i3 MK3」では10mmサイズの平面駆動ドライバーは静電ドライバーに近い特性を持つ仕様で高域を担当し、中音域用には「Sonion 2356」バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを搭載。さらに低域用にベリリウム振動板の10mmダイナミックドライバーを搭載しています。
これらのドライバーを定評ある既存の「i3」「i3 Pro」のサウンドバランスを踏襲しつつ各ドライバーの特性を活かすクロスオーバーチューニングを実施。さらに3種類のドライバーから出力される音導管にはKnowles製アコースティック・ダンパーを搭載し、音の密度を調整することでよりクリーンなサウンドを実現しています。
またケーブルには4.4mmプラグの「TRI Grace Pro」5N OCC 銀メッキ同軸線ケーブルを付属。高品質バランスケーブルを最初から付属することでリケーブルの必要なく優れたサウンドを体感できます。
「TRI i3 MK3」の購入はAliExpressのEasy EarphonesまたはアマゾンのYinyoo-JPにて。
価格は199ドル、アマゾンでは29,999円です。
※ちなみにこの価格は掲載時点での初回ロット価格でドライバー価格の高騰により次期ロットからは値上げとなる予定とのことです。
AliExpress(Easy Earphones): TRI i3 MK3
Amazon.co.jp(Yinyoo-JP): TRI i3 MK3
※アマゾンは掲載時プライム在庫あり&4,000円OFFのクーポン配布中。
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Easy Earphones より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「TRI i3 MK3」のパッケージは大きめのボックスで従来より多少グレードアップした高級感のあるデザインになっています。
パッケージ内容はイヤホン本体、「TRI Grace Pro」ケーブル、イヤーピースは(白色タイプ、黒色タイプ、「TRI Clarion」タイプがそれぞれS/M/Lサイズ)、ウレタンイヤーピースが2サイズ、クリーニングブラシ、クリーニングクロス、レザーケース、説明書。
「TRI i3 MK3」の本体はアルミニウム合金製で搭載しているドライバーサイズが10mm平面、10mm DDと少しサイズの大きいミッド用BAの組み合わせと無印「i3」や「i3 Pro」より大きくなっているものの、シェルサイズはむしろ小型化しており、かつての「大型シェル」の片鱗はそこまでは感じさせないサイズ感にまとまっています。それでもあくまで「i3」「i3 Pro」との比較ですので、マルチドライバー機としての大きさとある程度の重量感はあります。
鮮やかな紫色の表面は陽極酸化処理による強固な被膜でコートされており美しい質感と耐久性を持っています。従来より小さくなったとはいえ、それなりにサイズもあり重量感のあるシェルですが、思ったより耳への収まりは良く装着性もまずまず。ただステムノズルが太く多少短い形状のため、イヤーピースによって奥まで挿入できるかによって印象も多少変化します。
付属イヤーピースは白色タイプは「KBEAR 07」に近い黒い軸のタイプ、黒色は少し柔らかく長さのあるタイプで、あとは同社の「TRI Clarion」イヤーピースも各サイズ付属します。以降の写真では「TRI Clarion」で撮影していますが、個人的には少し小さめのイヤーピースでより奥まで挿入するか、「TRN T-Eartips」や「SpinFit CP100+」などより密着製のあるイヤーピースを選んだ方が好印象でした。
そして付属する「TRI Grace Pro」ケーブルは4.4mmプラグの一択となりました。まあこの価格帯のユーザー層を考慮すればラインナップを絞ってコストを削減する方が賢明という判断は納得できますね。612本の線材を使用した同軸ケーブルで左右の2芯撚り線タイプ。結構太い線材ですが重量感のある「TRI i3 MK3」本体との組み合わせを考えるとこれくらいしっかりしたケーブルの方が合わせやすそうです。ただ耳掛け部分の樹脂加工がやや緩めなので装着時にしっかり耳に掛ける必要があります。
■ サウンドインプレッション
「TRI i3 MK3」の音質傾向はニュートラルでキレのある低域と刺激を抑えつつ伸びのある低域、そして高い解像感を持ちつつフラットに近い中音域と非常に均整の取れたサウンド。バランスとしては寒色系で緩やかなU字に近い弱ドンシャリです。以前の「TRI i3 Pro」では「TRI i3 MK3」よりV字方向にチューニングされていたため、バランスとしてはフラット方向だった無印「i3」のほうが近いかも知れませんね。ハイブリッドらしい個々のドライバーの特徴を活かしたチューニングではあるものの、音域のつながりはスムーズで違和感が無く、鮮明な印象ながら全体的に質感の高い綺麗な音を鳴らす印象です。
ちなみに、「TRI i3 MK3」はシリコンタイプ3種類、ウレタンタイプ1種類の4タイプのイヤーピースが付属しますが、装着位置の関係で特に低域の量感が変化します。ベリリウム振動板ドライバーのパワフルな低域をより実感するためには耳奥までしっかり挿入できるか、しっかり密着するタイプのシリコンイヤーピースを選択する方がよいでしょう。
またスペックとしてもインピーダンス 21Ω、感度104dBと多少鳴らしにくく、実際にも据置きタイプのアンプでもハイゲインで再生した方が好印象に感じるなど、かなりDAPやアンプなど上流の性能を要求するタイプのイヤホンです。そのため、小型のオーディオアダプターなどでは鳴らし切れない場合も考えられます。
最初から情報量の多いグレードのケーブルが付属し、しかも4.4mmプラグ仕様になっているのも納得できますね。聴いてみてやや淡泊な印象を感じたら再生環境を変更してみることをお勧めします。
「TRI i3 MK3」の高域は、平面駆動らしい伸びやかな音を鳴らしますが、主張はやや抑え気味の印象。最近の明瞭だけど聴きやすく、というトレンドにあわせたチューニングかも知れませんね。それでもシンバル音などは鮮やかさがあり伸びも良い印象ですが、体としては若干下がります。
中音域はニュートラルで優れた解像感と豊かさのある音を鳴らします。フラット方向の癖の無い印象ながら僅かにU字寄りのバランスのため、ボーカル域は若干前傾しており自然な範囲で若干近く定位します。女性ボーカルやピアノの高音などの中高域は多少アクセントがあり明瞭感の伸びの良さを感じさせます。
BAらしい寒色系で情報量の多い音ですが、定評のあるSonion製ユニットの採用とKnowles製ダンパーによる制御などにより金属質の歪みなどは無く、男性ボーカルは僅かに温かみを感じるなど豊かさがあります。
音場もニュートラルで音源の定位を正確に再現しており、特に十分に駆動力がありクリアランスの高い再生環境では分離感が向上し、よりスッキリとした印象の立体的な音場で一音一音を詳細に捉えることが可能です。
低音域はベリリウム振動板らしい解像感とスピード感により、キレの良さと深さのあるパワフルな音を鳴らします。ミッドベースは直線的で強力なアタックとキレの良さがありますが、再生環境やイヤーピースなどにより存在感や印象は多少変化します。アンプのミッドゲイン設定ではニュートラルで自然なバランスに感じたものが、ハイゲインに上げることでV字方向にミッドベースが覚醒し一気に存在感を増す、といった変化があります。また中高域との分離は良くハイブリッドらしいメリハリ感もありますね。
重低音は非常に深く沈み、ミッドベース同様にキレの良さと解像感の高さを感じさせます。重量感はそこまで強くは無いですがパンチ力があるため不足を感じることは少ないでしょう。
■ まとめ
というわけで、みたび登場した今回の「TRI i3 MK3」ですが、同社としても「満を持して」という印象で、3種類のドライバーを組み合わせたニュートラルなハイブリッド、というキャラクターはしっかり踏襲しつつ、全体的な完成度を高めた仕上がりになっていると感じました。
従来の「i3」「i3 Pro」は平面駆動でミッドから中高域をカバーし、BAはツィーターとして機能している仕様だったため、全体的なバランスとしては優れていても特に高高域の質感には中華っぽさも残っている印象でした。今回は「TRI i3 MK3」では10mm平面駆動ドライバーを一気に高域用に振って、ミッドに定評のあるSonion製BAを配置するという大胆な変更が行われていますが、このアプローチは完全に成功していると思います。また低域用にベリリウム振動板を採用することで中音域および高域と同様に高い解像感とキレの良さを実現しつつ全体の質感や音場感もしっかり下支えしています。
おそらく次回ロット以降の(値上げされる)価格設定でも十分に魅力的やイヤホンだと思いますが、現在の価格設定(ドル建てでは「T3 Pro」より10ドルしかアップしてない)はかなりお買い得だと思いますので、興味のある方は初回ロットで挑戦されることをお勧めしますよ(^^)。