こんにちは。今回は 「CVJ Night Elf」です。最近いろいろ「攻めてる」イヤホンをリリースしている「CVJ」から、もう見るからに「普通じゃない」デザインの低価格イヤホンが登場しました。コラボや限定ではない、あくまで通常モデルではまず見ない左右キャラ絵のフェイスデザインに10mm+6mm複合2DD+8mm DDの3DD構成という変則的なドライバー仕様で、さらにサウンドも楽しさ全振りと、もうツッコミどころしか無いものの何気に完成度は高めだったりする、そんな製品です。
■ 製品概要と購入方法について
「CVJ」は2019年に誕生した中華イヤホンのブランドで、個性的な低価格イヤホンを中心に最近存在感を一気に増している印象がありますね。中国国内のブランドサイトをみると自社工場を中心とした製造メーカーであることがわかります。現在は同社の「いろいろ攻めた製品」がより際立っている印象もありますね。そして今回の「CVJ Night Elf」も明らかに「攻めすぎ」感のあるイヤホンですね。
製品ページの解説によると「深い森に棲む神秘的な力を持つ猫の魔女が現実と神秘の世界をつなぐNight Elfをつくった」そうです。なるほど(^^;)。
閑話休題、「CVJ Night Elf」はドライバー構成に「6mm+10mm複合振動板デュアルダイナミックドライバー」と「8mm DLC振動板ダイナミックドライバー」を搭載する2ユニットで3DD仕様というフェイスプレートに負けない「攻め攻め」の構成を採用しています。仕様的に「8mm DLC振動板ダイナミックドライバー」がメインとして駆動し、10mm+6mmユニットはそれぞれウーファーとツィーターとして低音域と高音域を補完するものと思われます。
本体は3Dプリントによる樹脂製で、プラグはタイプC 2pin(qdc互換カバー型)を採用。プラグは3.5mmですが、脱着式コネクタを採用しており、他のモデルに付属したり、オプションとして販売されている4.4mmやUSB Type-Cプラグにも交換可能です。
「CVJ Nightelf」の購入はAliExpressの「CVJ Official Store」にて。価格は27.89ドルです。
AliExpress(CVJ Official Store): CVJ Nightelf
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして CVJ Audio より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
というわけで、「CVJ Night Elf」ですが、フェイスデザインとおなじキャラクターが描かれたパッケージで届きました。箱はしっかりした作りで製品価格に対してコストがかかっている印象。
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、メタルケース、説明書、保証書。メタルケースはネジ式で重量感も含め、某UMのケースみたいです・・・。いやどこにコスト掛けてるんでしょうね(汗)。
3Dプリントによる樹脂製のシェルは若干大きめ。厚みもそれなりにありますね。この製品についてはフェイスパネルの出オチ感も多少あるので(^^)、これくらいの大きさが合った方が見栄えがして良いのかもですね。なおキャラクターがプリントされたフェイスパネルは金属製です。背面にベント(空気孔)が3カ所空いています。
一体成形されたステムノズルは太さがありやや浅め。そのためイヤピを工夫しないと合わない人は会わないかも。私も多少長さのあるイヤーピースを別途用意しました。
ケーブルはグレーの樹脂被膜で覆われた2芯タイプ。多少太さはありますが被膜に弾力があり取り回しは問題ないです。プラグは交換可能ですが付属は3.5mmのみ。前述の通りそれ以外のプラグは他のCVJのイヤホンからの流用や別途購入が可能です。
■ サウンドインプレッション
「CVJ Night Elf」の音質傾向は、各音域に結構強めの主張がありつつ全体としてはW字傾向で比較的バランス良くまとまっている印象の弱ドンシャリ。「CVJ Night Elf」は複合2DD+1DDの3DD構成ですが、おそらく搭載されるそれぞれの音域に特化した3種類のドライバーがそれぞれ独立して鳴っていて、厳密なクロスオーバー制御などは特に行わずユニゾンでまとまってる、みたいな感じなのかもと思います。個人的には一聴して同社の以前の製品(「Freedom」とか)を思い出して、「あー、CVJってこういう音作りやるメーカーだったよねー」とちょっと感慨深く感じました。
確かに2DDや3DDなどの構成はハイブリッドのようなドライバー間の音色の違いが出にくいため、特に2DD構成では「Truthear ZERO」以降でサイズ(および音域)の異なるドライバーを組み合わせる構成の製品が一気に増えましたが、3DDの場合はほぼ同種のドライバーを並列で鳴らすのが現在でも一般的です。
しかし、「CVJ Night Elf」ではボーカル域などミッドで主張する8mm DLCドライバーと、前面で非常に強力に鳴る10mmウーファー、高域をフォローする6mmツィーター。それぞれが配置された距離感でお互いを遠慮すること無く鳴ることで独特の厚みとグルーヴ感みたいなものを生み出している感じがあります。
個人的に興味深く感じたのは、音域の異なるダイナミックドライバーを組み合わせる発想は同じでも、2DD構成での「はしり」だった「Truthear ZERO」はCrinacle氏監修のもとゴリゴリにハーマンターゲットカーブに寄せていった(あるいはそのための2DD構成だった)のに対し、「CVJ Night Elf」ではむしろ真逆で、3DD構成により「原音忠実性って何?おいしいの?」とでも言わんばかりに「聴いてて楽しくなる系のドンシャリ」に仕上げているアプローチの違いでしょうか。そして分かりやすいシェルデザインでしっかり「攻めてますよ」と自己主張してるわけです。魔女ヤバいっすね(笑)。
「CVJ Night Elf」の高域は刺激を抑えつつ中高域を中心に主張のある音を鳴らします。全体としては暖色寄りですが適度な煌めきもあります。また天井が低いと言うわけでは無く高高域もそれなりの主張があるのですが、それ以上に他の音域の主張が非常に強く折り重なるため相対的に下がって聴こえる感じになります。ですので音量を高めで長時間聴くと思った以上に耳に負担がかかる可能性があります。
中音域は低域ほどではないものの前面への強めの主張があり、かなり濃いめの音を鳴らします。この主張の違いは、ほぼステムノズルに直結している複合ドライバーと、その上で配置される(中音域を担っていると思われる)8mm DLCドライバーの距離の違いそのものでしょう。男女ボーカルは非常に力強く、同時にブラスの光沢感やギターの厚みなど、原音よりかなり押し出しの強い印象で鳴るため全体として色彩豊かで楽しさのあるサウンド。また3種類のドライバーのユニゾンによる厚みやグルーヴ感により包み込む感じの響きと臨場感を演出しており定位は正確ではないものの音場の広がりを感じさせます。反面、解像感や分離については相応にトレードオフしてるかな、という部分はあります。まあ分析的に聴くようなイヤホンではないことは最初から分かっていますし、「音楽を楽しむ」という視点では、ボーカル曲はもちろんインスト曲も思いのほか雰囲気のある印象です。
低域は最前面で非常に分かりやすくどーんと鳴る感じです(雑な表現)。2.1chサブウーファー強めのオーディオみたいな鳴り方というか。いやそれくらいのノリのほうが雰囲気が伝わるかなと。低域はミッドベースを中心に締まりは良いため籠もることは無いものの、ライブハウスのような臨場感のような印象ですね。重低音も解像度よりもエネルギー重視。そのため比較的音数の少ないバンドやオケと相性が非常に良いですね。試しに70年代~80年代くらいのアニソンを鳴らしてみたらひたすら胸アツでした(笑)。
■ まとめ
というわけで、「CVJ Night Elf」は複合2DD+1DDの3DD構成という変則的なドライバー仕様で中音域と高域・低域をガンガンに鳴らすという、まあ思いつきはしても、少なくともイヤホンで本気でやるところは無かったかも知れない「楽しさやノリに全振りのイヤホン」に仕上がっていました。
中華イヤホンというジャンルもこれだけ多種多様なメーカーが次々と新製品を投入している中では、個性的なアプローチというのは結構重要となっては来ると思いますが、音質の評価軸ではハーマンターゲットカーブなどのU字傾向偏重だったり、トラディショナルなV字の場合、最近では高域を聴きやすく調整する必要があったりと思いのほか自由度は高くないのかもしれません。
「CVJ Night Elf」は、まずフェイスデザインで自分自身が「キワモノ」であることを主張した上で、普通のイヤホンでの評価軸はあまり気にしない音作りをするという攻め方をしてるのかな、とも感じました。外観だけで無くサウンドも非常に面白いイヤホンですので、マニアであれば「サブアイテム」として持っているのも良いのでは、と感じさせる製品に仕上がっていると思いますよ。