LETSHUOER S08

こんにちは。今回は 「LETSHUOER S08」です。6月28日より販売開始となる新しい13mm 平面駆動型ドライバー搭載モデルです。新たに開発された 第4世代の13mm平面駆動ドライバーを搭載。平面駆動らしい歪みの無いニュートラルさと、らしくないパワフルで深い低域を両立しつつ、アンダー100ドル級で仕上げられた、意欲的な8周年記念モデルです。

■ 製品概要と購入方法について

LETSHUOER」は2016年に創業したユニバーサルIEM/カスタムIEMのファクトリーブランドで、中国国内ではカスタムIEMビジネスのほか話題のモデルを数多くリリースしています。平面駆動ドライバーを搭載した「S12」で一躍人気ブランドとなり、アップグレードされた「S15」も非常に高評価ですね。また同社のユニバーサルモデルではマルチドライバー構成のミドル~ハイグレード製品も多く、自社製品および同社ODMと言われている各製品も含め手堅い音作りは定評があります。
→ 過去記事(一覧): LETSHUOER製品のレビュー

今回の「LETSHUOER S08」は6月28日から発売を開始した全く新しい平面駆動ドライバー搭載モデルです。最新の「第4世代 13mm 平面駆動型ドライバー」を搭載し、流線型のシェルデザインは数字の「8」をイメージして軽量アルミ合金による高精度CNC加工で成形されています。
LETSHUOER S08LETSHUOER S08
LETSHUOER S08」が搭載する「第4世代 13mm 平面駆動型ドライバー」はLETSHUOERとドライバーメーカーの協同開発によりカスタマイズされた最新ユニットで、振動板にはマグネトロンスパッタリング方式による高精度薄膜形成によって製造。剛性を向上させることでより高い低歪みと高安定性、高耐久性を実現しています。
また前後2層による二層ボイスコイル回路を採用し、共振を大幅に減少。さらにPTR弾性フィルムを素材にするエッジを追加することで低域の深度を向上させより弾力ある表現を可能にしました。
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LETSHUOER S08」の純正ケーブルは、0.78mmの2pin仕様による単結晶銅銀メッキ線で、芯当たり0.05mmの線材を30本撚り線構造で束ねた4芯タイプのケーブルが付属します。プラグは交換可能で3.5mmと4.4mmのプラグが付属します。
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軽量なアルミニウム合金製のシェルは高精度CNC加工により成形されショットブラスト仕上げで肌に優しく高い耐久性があります。本体のカラーバリエーションはブラックとシルバーが選択可能です。

LETSHUOER S08」の価格は99ドル、アマゾンでは税込み17,450円で販売中です。
Amazon.co.jp(Letshuoer 公式ストア): LETSHUOER S08


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして LETSHUOER より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

というわけで「LETSHUOER S08」のパッケージですが、「8」のモチーフをデザインされた黒箱タイプ。本体のデザインも「8」なので何故かな、と思ったら「LETSHUOER」の8周年モデルなんですね。納得です。
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パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、交換式プラグ(3.5mm、4.4mm)、イヤーピースが2種類でそれぞれS/M/Lサイズ、ハードケース、説明書、保証書ほか。
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本体はCNC加工されたアルミニウム合金製。最近の「LETSHUOER」は3Dプリントされた樹脂シェルを積極的に採用していましたので金属シェルは久しぶり感もありますね。フェイスデザインは「8」の文字をイメージしており独特のシルエットが描かれています。
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LETSHUOER S08」の楕円形のシェル形状は「S12」などと比べるとひとまわり大きくみえますが、装着時に上部となる部分のフェイス幅は小さくなっているため、実際の装着性は悪くないようです。
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イヤーピースは2タイプで円形の台紙に固定されています。黒色タイプが柔らかく、白色タイプは硬めの軸があるタイプですね。付属品のほかよりフィット感の合うイヤーピースに交換するの良いでしょう。
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ケーブルは高純度銅線の4芯撚り線タイプで、プラグは交換式。ネジ止めでしっかり固定できる仕様なのは良いですね。ケーブルは芯ごとの線材はやや細めで弾力のある被膜で覆われ取り回ししやすい印象。ただ線材の印象としては高域を抑えややウォーム方向の印象ぽいので、よりスッキリした印象のサウンドを好まれる方は情報量の多い銀メッキ線などへのリケーブルを検討するのも良さそうです。


■ サウンドインプレッション

LETSHUOER S08LETSHUOER S08」の音質傾向は以前レビューした平面駆動モデルの「S15」のバランスに近く、ニュートラル方向のサウンドながら若干の暖色傾向で多少低域がブーストされた印象のサウンドです。バランスとしては若干中低域寄りで緩やかなU字、またはW字を描く傾向です。「S15」は大口径の平面ドライバーにパッシブラジエーターを加えることで低域をブーストしていましたが、よりコンパクトな13mm平面ドライバーを使用する「LETSHUOER S08」ではPTRフィルムのサウンドエッジを追加することで低域を強化するアプローチを採用しています。
またアルミ合金製で独特なシェル形状もサウンドチューニングにある程度は影響していると考えられます。おそらくこの傾向は、99ドルの「LETSHUOER S08」が329ドルの「S15」に近い印象のサウンドを実現することで「8周年モデル」としてのアドバンテージ(お得感)を感じさせたいというアプローチもあるのかも知れませんね。

ちなみに、「LETSHUOER S08」はインピーダンス26Ω、感度105dB/mWという仕様で平面駆動型のイヤホンとしては比較的音量は取りやすい印象ですが(それでも一般的なイヤホンよりは若干鳴らしにくい)、駆動力の違いにより特に高域の主張には差があるようです。
LETSHUOER S08もともと多少ウォームな印象はありますが、駆動力のあるアンプでさらにハイゲインで鳴らしたほうが、よりV字方向にバランスが向上し、高高域の解像感もアップします。またより情報量の多いケーブルに交換することで変化を得ることも出来ますが、ケーブルによっては高域の主張が増す代わりに中高域付近の雑味が増し見通しの良いスッキリした印象が多少損なわれる場合もあるため、リケーブルの場合は合金ケーブルなど見通しの良くする印象のケーブルを選択するほうが良いかもしれませんね。リケーブルの際は使用している再生環境との相性も含めいろいろ試して見ることをお勧めします。

LETSHUOER S08」の高域は自然な伸びの良さがありますが、多少ウォームな印象があり、突き抜けるような鋭さより聴きやすさを重視したチューニングです。また小型のオーディオアダプターやシングルエンドでの接続では高域の主張は若干控えめで少し後方に定位します。とはいえ籠もるようなことは無く、シンバル音も綺麗に鳴るため、ボーカル曲を中心としたリスニングでは歯擦音を抑え聴きやすくまとまっている印象を持つでしょう。十分に駆動力のある再生環境で鳴らすことでより平面駆動らしい直線的な印象となりますが、刺激などはコントロールされています。

LETSHUOER S08中音域は見通しの良いスッキリした印象ですが、中低域付近を中心にウォームさがあり滑らかさを感じる印象です。U字またはW字寄りの傾向のため、ボーカル域は多少近く定位し主張があります。中高域付近にはアクセントがあり女性ボーカルの高音などは伸びやかさがあるため、暖色系ながらスッキリした印象を維持しています。「S15」のリッチな印象の中音域とは多少異なりますが、平面駆動らしい歪みの無い印象で、ニュートラルなバランスを維持しつつ適度な豊かさと、自然な分離による広さと見通しの良さのある定位感を実感出来ます。
ただ銀メッキ線などのケーブルに換えた場合、高域の主張が増すかわりにこの音域の雑味が増してしまい標準ケーブルのほうが見通しが良く感じる場合もあります。相性の良いケーブルでは解像感や音場感の向上が得られますが、リケーブルの際は再生環境に合わせて色々試して見ることを推奨します。

LETSHUOER S08低域は、まるでV字傾向のシングルダイナミックのような力強さと深さがあり、非常にエネルギッシュな音を鳴らします。いっぽうでミッドベースは直線的な締まりも有り、いちおう平面駆動らしさも実感することができます。そのためニュートラルなサウンドと比較すると重低音を中心にブーストされている印象がありますが、実際には過度に低域が強調されているわけではなく、自然なバランスの範疇で調整されていることが分かります。間違いなくこの低域の表現力が「LETSHUOER S08」の最大の特徴であり、平面駆動的な癖の無いサウンドとパワフルで上質な低域の両立を希望される方にとっては同製品が非常に魅力的な選択となることでしょう。


■ まとめ

LETSHUOER S08というわけで、6月28日から発売となる今回の「LETSHUOER S08」は、8周年記念モデルとして特徴的なデザインだけで無く、サウンド的にも非常に意欲的な製品であることを実感出来ました。ややウォーム方向に調整されたサウンドではあるものの非常にバランスは良く、リスニングイヤホンとしてのポテンシャルの高さを実感出来る仕上がりです。また平面駆動ながらドンシャリ傾向のシングルダイナミック構成のようなパワフルで重量感のある低域は非常に特徴的で、低域好きの方にも魅力的な製品となるでしょう。同様にパワーのある低域と平面駆動ならではのサウンドを希望しつつ、高域を含めた質感や全体的な解像度、表現力なども含めてアップグレードしたい場合には「S15」が用意されているわけですが、約3分の1の価格で購入できる「LETSHUOER S08」はやはり非常に強力な選択肢となるでしょう。日本では円安のため価格設定の魅力はちょっと薄れていますが、それでも十分に価格に見合う仕上がりのイヤホンだと感じました。興味のある方は是非とも挑戦してみてくださいね。