Oriolus Monachaa

こんにちは。いやー全然レビュー更新してないうちに7月も終わってしまいそうです。そんなこんなで結構以前から依頼をいただいていた製品のレビューを仕上げました(^^;)。

というわけで今回は「Oriolus Monachaa」です。オリオラスジャパン(Oriolus Japan)が昨年リリースした4DD仕様のハイグレードモデルで、今回は同社のご厚意によるレンタル機でのレビューとなります。税込み35万円オーバーという価格設定ですが、高級イヤホンに多いニュートラル傾向とは一線を画す非常に楽しいサウンドでとても興味深い製品だと感じました。

■ 製品概要と購入方法について

ハイグレードオーディオブランドとしてマニアの間でお馴染みの「Oriolus」ブランドから2023年末頃にリリースされた4DD構成のイヤホンが「Oriolus Monachaa」です。低1+中2+高1のクロスオーバー構成による4基のダイナミックドライバーを採用し、優れた解像度、正確な定位感、自然な音色を実現。さらに「PW Audio」製の特注ケーブルとの組み合わせにより本体との調和の取れたサウンドを実現しています。
Oriolus MonachaaOriolus Monachaa

Oriolus Monachaa」では近い応答速度を持ちつつ音響特性の異なる4基のダイナミックドライバーを採用。低域用1基、中音域用2基、高域用2基のドライバーを綿密にクロスオーバー調整することで、驚くほどのディテール再現レベル、正確なイメージング、自然な音色を実現。PU+LCPメンブレン素材と珍しいサイドベント構造設計を採用した独自のドライバーにより、ダイナミックレンジは20Hz~28kHzまで拡張されています。
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Oriolus Monachaa」のシェルはフォトポリマー樹脂素材によるハンドメイドによる専用設計で、フィット感の最適化を優先し、音響設計をシームレスに補完する合理的なレイアウトを採用。優れた快適性と遮音性を持ち、没入感のあるリスニング体験が可能です。
さらに「Oriolus Monachaa」ではバランスのとれたサウンド特性を補完するために特注のPW Audio製のケーブルが付属します。
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Oriolus Monachaa」の購入は各専門店にて。価格は352,000円前後です。
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免責事項:
本レビューは株式会社サイラス(オリオラスジャパン合同会社)様からのレンタル機でのレビューとなります。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

Oriolus Monachaa」は専用のバンナイズ製のプロテクトケースに収納されて届きました。中華イヤホンの無駄に派手なパッケージに慣れていると多少拍子抜けかもですが、実用性を重視した印象です。
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Oriolus Monachaa」の製品内容は、本体、ケーブル、イヤーピース(通常タイプS/M/Lサイズ、ダブルフランジMサイズ、フォームタイプS/Mサイズ)、コードクリップ、クリーニングツール、Vannuysラウンドツインチューブ、Vannuysプロテクトケース。
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ハンドメイドによる濃いブルーのレジンシェルでフェイス部のゴールドのデザインが非常に映えますね。4基のダイナミックドライバーを搭載していることもありシェルはやや大きめですが耳に収まりやすいハウジング形状を採用しており付属イヤーピースで思ったよりしっかり装着することができました。大きめのシェルですので個人差はあると思いますが、私の場合は付属イヤーピースでフィット感も良好な印象でした。
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コネクタは埋め込み型のCIEM 2pin仕様。最初からPW Audio製のハイグレードケーブルが付属するのも魅力的なポイントです。このグレードのイヤホンで納得のいくケーブルを探すのは思いのほか大変な作業ですから。
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とはいえ、印象としてはバランス重視な印象の選択のようで、解像感やメリハリに変化を持たせたい場合は、自分に最適なケーブルを探してみるのもよいでしょう。イヤホン自体のポテンシャルは非常に高いため再生環境及びリケーブルでの変化は大きく、価格に見合って十分に楽しめるイヤホンという印象です。


■ サウンドインプレッション

Oriolus Monachaa今回はレンタル機としてある程度エージングは行われているという前提で試聴しております(通常は相応のバーンインを行ったほうがよさそうです)。
Oriolus Monachaa」の音質傾向は若干中低域寄りでU字またはよりV字方向の弱ドンシャリ。一般的にフラット方向のニュートラルな傾向が多い高級イヤホンのなかではかなり個性的といえるサウンドでしょう。この価格帯でのモニター的な解像感や原音忠実性を求める方には多少趣向が異なりますが、高級イヤホンでしか出せない深みのある音を鳴らす印象で、付属ケーブルでも結構クセになる魅力があります。

なお前述の通り、ケーブル以外にも再生環境での変化も大きく、私の場合はまず据え置きの「FiiO K9 PRO LTD」で聴いていたのですが、その後複数のDAPやアンプ、オーディオアダプター等で確認したところ結構印象に違いがありました。音量自体は比較的取りやすいものの、片側4基のダイナミックドライバーをドライブするため相応に駆動力が必要なことはもちろんですが(特に低域の質感に変化があります)、さらに出力コントロールやノイズなどアンプ特性による印象の変化も結構ありますね。

Oriolus MonachaaOriolus Monachaa」の高域は明瞭で伸びやかな音を鳴らします。主張としては強すぎず自然な印象で、刺さりやすい帯域は多少コントロールされている印象はあるものの、高高域付近で強めの拡張があり、高域成分の多い曲では駆動力を上げると鋭い音は鋭く、突き抜けるような伸びやかさがあります。オーディオアダプター等で再生すると多少大人しい印象に感じる場合もありますが、そういった場合もより高域の解像感のある銀メッキ線などに替えることで変化が得られそうです。

中音域は曲によってはバランス的に僅かに凹む印象はあるものの、鮮やかでハッキリした主張により全体としては非常に鮮明な音を鳴らします。音像自体はニュートラルに近い自然な印象ですが、ボーカル域はエネルギッシュに前傾し、中高域は明るく伸びやかで中低域は豊かさと深さがあります。
音場は自然な空間表現で再生しつつ非常に広さを感じさせる印象で、とくにライブ感のある音源ではよりリアルな印象を持ちます。逆に打ち込み系の音源ではレイヤー感が強調されることで曲によっては少し遠く感じるケースもあるようです。
Oriolus Monachaaもっともこの価格帯のイヤホンを使用する用途を考慮すれば多くのユーザーが好感する音作りだろうと感じます。なお定位も比較的正確で、水平方向、垂直方向とも自然な音像表現を持ちますが、リスニング的なアプローチでもあり、モニター的な解像感や分離感とは異なるものです。付属のPW Audio製ケーブルは「Oriolus Monachaa」の特徴を活かしたバランスの良い音で再生しますが、本体のポテンシャルは高く、リケーブルによりより明瞭感や解像度を強化するアプローチもある程度は可能なようです。

低域は非常に深く厚みのある音を鳴らします。ミッドベースは自然な締まりの良さもあり、十分なインパクトを持ちつつ過度に響いたり膨らむことなくニュートラルにコントロールされています。なお、低域は再生環境の駆動力との関係性がより高く、オーディオアダプターや出力の高く無いDAP等ではやや迫力に欠けた印象になる場合もあります。重低音は十分に駆動力をかけることで非常に深く、地響きのような重量感と厚みのある音を鳴らします。同時に重低音もキレがあり高い質感でエネルギーを与えます。この特徴的な低域により、「Oriolus Monachaa」は高級イヤホンでありながらリスニングの楽しさを実感出来るイヤホンに仕上がっていると感じさせます。


■ まとめ

Oriolus Monachaaというわけで、今回じっくりと試聴する機会を得た「Oriolus Monachaa」ですが、確かに非常に高額なイヤホンではありますが、他には無い魅力がある、とても楽しい製品だと感じました。
またリケーブルについては、私の場合、数百ドル級以上の高級ケーブルはあまり所有していないため、手持ちの100~200ドル程度の中華ケーブルを色々使って傾向の変化を確認してみましたが、再生環境との組み合わせで結構違いを実感でき、音源の種類などでも好みの相性がわかれそうな印象でした。そのため、もし購入したらさらにケーブルでも沼るかも(笑)と感じさせるイヤホンでもありましたね。再生環境については、多くの高級イヤホンではAKなど駆動力よりノイズ特性の高いDAPのほうが相性が良いイメージがありますが、「Oriolus Monachaa」についてはある程度パワーのあるアンプ等でガツンと鳴らすほうが楽しいケースが多かったのも興味深いところです。価格的にも傾向的にもユーザーを選ぶイヤホンではありますが、ハマればやみつきになりそうな、とても魅力的な製品だと感じました。