こんにちは。今回は「SIVGA Que(鵲)」です。新開発のベリリウム振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載し、アンダー100ドル、国内でも正規代理店経由で1万円台前半の価格設定で購入可能とかなり魅力的な製品に仕上がっています。再生環境による変化はあるものの音質的にも優れた完成度を持っている印象です。
■ 製品概要と購入方法について
「Sivga Audio」は2016年に中国で設立されたSivga Electronic Technology社のオーディオブランドで、主にハイエンドヘッドホンの市場で製品を展開しています。私のブログでもこれまでさまざまな同社製ヘッドホンおよびイヤホンなどを紹介してきました。
「SIVGA Que(鵲)」は8月2日にリリースされた新モデルで、低価格ながらベリリウム振動板を採用した10mmダイナミックドライバーを搭載するモデル。
ドライバーには新開発のベリリウム振動板10mmダイナミックドライバーを搭載。ベリリウムの音響特性により、定在波や振動による歪みなどを抑制し、高速な過渡応答を実現。クリアかつ自然な中高域とパワフルな低域、臨場感のある広い音場を楽しむことができます。
シェルは亜鉛合金製のハウジングと北米産メイプルウッド製フェイスパネルを使用。最適なチューニングにより共鳴を低減し、ウッド製フェイスパネルは反響を抑制し外観上の美しさも演出します。
「SIVGA Que(鵲)」の購入はSIVGAの公式ストア(AliExpress)、国内代理店の01Diverseのストアにて。価格は76.90ドル、国内では12,980円で購入可能です。
AliExpress(SIVGA Offical Store): SIVGA Que
Amazon.co.jp(01Diverse): SIVGA Que(鵲)
01Diverse(SIVGA公式ストア): SIVGA Que (鵲)
AliExpress(SIVGA Offical Store): SIVGA Que
Amazon.co.jp(01Diverse): SIVGA Que(鵲)
01Diverse(SIVGA公式ストア): SIVGA Que (鵲)
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Sivga Audio より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
パッケージは「鵲」のイメージを描いたブラックカラーのパッケージデザイン。SIVGAのヘッドホン製品とも共通感のある印象です。
パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピース本体装着済みMサイズのほか、2種類でそれぞれS/M/Lサイズ、イヤホンケース、説明書。100ドル未満、1万円ちょっとの価格設定を考えると結構充実した印象ですね。
本体は亜鉛合金+メイプルウッド製フェイスパネルのシェルで同社のヘッドホン製品のウッド感を踏襲したイメージのデザインです。フェイスプレートは綺麗な仕上がりで金属部品の質感も高く、100ドルオーバーの価格設定でも全然違和感のない印象。
アルミ製ではないため多少重量感はあるものの、装着感はまずまずで、付属ケーブルとの組み合わせでは比較的しっかりと固定できる印象。ケーブルは高純度OFC銀メッキ線で左右2芯の撚り線タイプ。太さのある線材ですが被膜は柔らかく弾力があり取り回しは良い印象。コネクタは0.78mmの中華2pin仕様。
イヤーピースは軸の長さの浅い白軸タイプの通常の形状の黒軸の2種類が各サイズ付属。使いやすいサイズのレザーケースも付属しており付属品としては過不足無い印象です。
ちなみに「ベリリウム振動板」という記載には結構こだわる方もいらっしゃいますね。一般的に「ピュアベリリウム」「ベリリウムコート(メッキ)」のパターンが知られていますが、「SIVGA Que(鵲)」の場合、アンダー100ドル級という価格設定から、少なくとも「Final A8000」や数百万円級の高級スピーカーのような振動板でないことは間違いないでしょう。とはいえ「ピュアベリリウム」か「メッキ」かというだけの「単純な区分」は正直ナンセンスかなと思っています。
例えばDLC振動板といっても樹脂素材にDLC被膜を形成する構成も多いですし、「ベリリウムコート(メッキ)」といっても振動板の構成としてはピンからキリまであります。またドーム部分など一部がベリリウムという可能性もあります。詳細なドライバー構成が公開されていない場合の「ベリリウム振動板」は文字通り「ベリリウムを使っている振動板」くらいの認識で思っておくのが適当でしょう。重要なのは製品としてどのような音質であるかであって、少なくとも「ユーザーの立場」ではスペックなどの構成はそれを裏付ける副次的な情報である、と私は考えています。
■ サウンドインプレッション
「SIVGA Que(鵲)」の音質傾向はU字から緩やかなV字傾向。バランスとしてはニュートラル方向の弱ドンシャリです。一般的なハーマンターゲットカーブよりやや中低域がブーストされ、V字方向の印象が強調されたリスニングサウンドに仕上げられています。それでも中高域付近は明るく明瞭感が有り、高域はベリリウムらしい優れた解像感と直線的な伸びやかさがあります。同様に低価格帯でベリリウムを採用しているような製品と比較しても解像感や質感は1段高い印象もあり、アンダー100ドル級としてはよくまとまっていると思います。
インピーダンス32Ω、感度108dB/mWと比較的使いやすい仕様ですが、再生環境により印象は多少変化します。駆動力のあるDAPやアンプではニュートラル方向のバランスで高域はより明るく伸びやかさがあり、小型のアダプタ等では多少大人しくなります。いっぽうでFiiOなどのややミッドセントリックなDAP/アンプでは逆に低域のエネルギッシュさがより強調され、多少中低域寄りの印象になります。
同様にケーブルでの変化も得られるため、再生環境に合わせて気になる方はリケーブルを試してみるのも良いでしょう。例えば、使用している上流で高域の鋭さが気になる場合は中低域の情報量の多い銅線タイプや合金タイプのケーブルを使用し、逆に中低域が強く高域が大人しめに感じる場合はV字傾向が強調される同軸タイプの高純度銅線やよりメリハリのある銀メッキ線でバランス接続を試す、といった感じですね。
「SIVGA Que(鵲)」の高域は、明るく直線的な伸びのある音を鳴らします。解像感は高くベリリウムらしい滲みの無い明瞭感と自然な滑らかさがあります。再生環境にも寄りますが、多少大人しく調整された高高域に対して中高域から高域付近の主張があり、ハイハットなどのシンバル音は適度な光沢があります。同時に比較的柔らかく自然な印象がある点は、CNTやLCPなどの硬質な振動板と比べてベリリウムらしい印象だと感じさせますね。
中音域はニュートラルな印象で凹むことなく鳴ります。U字寄りのバランスでボーカル域が若干前傾しており、優れた解像感とともに若干の温かみと色彩豊かなエネルギーがあります。中低域に厚みがあるため、男性ボーカルは豊かな存在感があり、女性ボーカルも適度な主張があり伸びやかです。
音場は広く演奏との自然な分離があり、自然な光沢と温かみのあるサウンドを楽しめます。この辺はSVGAのウッドハウジングのヘッドホン製品の音作りと共通する要素もあり、大きな特徴ともいえるでしょう。
低域はミッドベース付近に強調があり力強いレスポンスと深い重低音が楽しめます。いわゆるハーマンターゲットカーブのニュートラルバランスより中低域付近の音域が強調されている印象のため、小型のオーディオアダプター等ではより中低域寄りのバランスになり多少分離感が損なわれるケースがあります。このような場合はリケーブルによりバランス接続にしたり、よりスッキリした印象が得られる合金タイプのケーブルを試して見るのも良いでしょう。
十分に駆動力があり優れたノイズ特性を持つDAPやアンプを組み合わせることで分離が向上し、低域の質感をより実感出来ます。非常にパワフルで締まりのあるミッドベースと、深く沈み重量感のある重低音により全体的に質の高いリスニングサウンドを楽しむことができます。
ミッドベースは過度に響くこと無くハッキリした印象で解像感も高い印象。重低音は深く沈み、スピード感はそこまで高く無いものの分離は良く重量感のある音を籠もること無く鳴らします。再生環境により質感に違いがある点は留意すべきですが、同価格帯としてはよくまとまっている印象です。
■ まとめ
というわけで、「SIVGA Que(鵲)」は激戦区とも言えるアンダー100ドル、1万円台前半の価格帯において十分に競合製品に対峙できる完成度を持ったイヤホンとして登場しました。
同価格帯にはシングルダイナミック仕様の製品でも「Moondrop Ariaシリーズ」などの人気機種や「SIMGOT EM500/EM500LM」などの高評価モデルが存在します。これらのモデルと比べるとブランド的には多少地味ですが、外観の質の高さや充実した付属品、そしてベリリウム振動板なども含め全体的なコストパフォーマンスの高さなどの優れた要素を持っています。さらに音質的でもSIVGAらしい方向性を感じる質の高いリスニングサウンドが印象的です。同社は国内代理店も整備され専門店での試聴も可能になっているため確認しやすいこともメリットかもしれません。興味のある方は是非とも挑戦いただければと思います。