こんにちは。今回は 「KEFINE X ANGELEARS Delci AE」です。「KEFINE」ブランドによるDLC+PU振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載した「Delci」をベースに「Angelears」とのコラボによりアップデートされたモデルです。新しいカラーリング、アップグレードしたケーブル、交換式ノズルフィルターの採用、そして新しいチューニングにより、より多くの方が楽しめる製品に仕上がっています。
■ 製品概要と購入方法について
「KEFINE X ANGELEARS Delci AE」は、中華イヤホンブランド「KEFINE」のシングルダイナミック構成モデル「Delci」をベースにイヤホンセラーの「Angelears」とコラボしたモデルです。CNC加工された航空グレードのアルミニウム合金製のシェルに、10mmのDLC+PU振動板ダイナミックドライバーをシングルで搭載し、「シンプルなメタルシェルデザインを採用。さらに2種類のノズルフィルターが付属し、異なるサウンドプロファイルを体験できます。
ドライバーは10mmサイズのデュアルキャビティダイナミックドライバーをシングルで搭載。振動板はPU製サスペンションとDLC(Diamond-Like Carbon)製ドームで構成されます。DLCのドームは非常に軽量かつ高強度で高弾性と高速性を持ち、PU サスペンションとデュアルキャビティ設計を組み合わせることで、優れた高忠実度を持ったサウンドを出力します。
さらに「KEFINE X ANGELEARS Delci AE」では2種類の交換可能なノズルフィルターを採用し、異なるサウンドプロファイルを提供します。標準の「シルバー」ノズルは温かみのある滑らかな音色で、音楽性を重視したメロウなサウンドに調整され、ポップスなどのボーカル曲に最適です。もうひとつの「ゴールド」ノズルは解像度が向上し、高音域の輝きと透明度が向上。クラシックやインストゥルメンタルに最適化されています。
「KEFINE X ANGELEARS Delci AE」の購入は取扱いの各セラーなどにて。
価格は3.5mmプラグ仕様が89.99ドル、4.4mmバランス仕様が91.99ドルです。
AliExpress(Angeldac Audio Store): KEFINE X ANGELEARS Delci AE
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Angeldac Audio より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「KEFINE X ANGELEARS Delci AE」のパッケージは通常モデルの「KEFINE Delci」を踏襲し、ブラックカラーのシンプルなパッケージデザイン。
パッケージ内容は本体、ケーブル、交換用ノズルフィルター、イヤーピースは2種類でそれぞれS/M/Lサイズ、イヤホンケース、説明書、保証書。今回は4.4mm仕様で届きました。
「KEFINE X ANGELEARS Delci AE」の本体はCNC加工によるアルミニウム合金製の金属シェルを採用。シンプルなデザインは「KEFINE Delci」を踏襲ししており非常に軽量で、厚さを抑え、耳を覆うようにフィット感の良い形状にまとめられています。
「KEFINE X ANGELEARS Delci AE」は本体カラー以外に側面にaeロゴがプリントされています。そしてステムノズル部分が交換可能なフィルターとなっている点が「KEFINE Delci」と異なります。装着感はかなり高い印象。実用性重視の質実剛健な設計方針が外観からも感じられます。
ケーブルは0.05mmのOFC銅線と0.06mmの銀メッキ線を合計164本使用した撚り線タイプのミックス線ケーブルで、シルバーの線材を透明な樹脂被膜で覆っています。
交換式フィルターはネジ式で標準では「シルバー」タイプが装着されています。
イヤーピースは一般的な形状と「AET08」タイプの2種類が各サイズ付属。「AET08」タイプが選べる点がアップグレードされていますね。付属するイヤーピースのほかよりフィット感の良いものに好感するのも良いでしょう。私は今回も大量に購入してある「TRN T-Eartips」を使用しました。
■ サウンドインプレッション
「KEFINE X ANGELEARS Delci AE」の音質傾向はオリジナルの「KEFINE Delci」のバランスを全体的には踏襲しつつ、より明るくボーカルチューンのサウンドに調整されています。緩やかなV字を描きつつやや暗めでウォーム寄りの印象だった「KEFINE Delci」に対して、「KEFINE X ANGELEARS Delci AE」では若干寒色方向にチューニングを変更しており、よりU字またはW字方向の、ボーカル域を中心にフォーカスし鮮やかさを増した印象になっています。
標準の「シルバー」ノズルではオリジナルの「KEFINE Delci」に近いサウンドバランスで、「ゴールド」ノズルではより中高域から高域の主張が増し、さらにV字方向のバランスに変化します。
どちらの傾向でも、より多くのユーザーに好感されやすいサウンドに仕上がっていると思いますが、いっぽうで「KEFINE Delci」の持っていた独特な質感は少し薄れており、いわゆる○○ターゲット的な多くの製品に近い印象になった、という見方もできるでしょう。
インピーダンス28Ω、感度108dBという仕様で比較的どのような再生環境でも再生は可能ですが、本来の音場感や低域の量感を得るためには十分に駆動力のある再生環境が望ましいでしょう。「KEFINE X ANGELEARS Delci AE」ではOFC線と銀メッキ線のミックス線ケーブルにアップグレードしており、4.4mmバランス接続タイプも購入時に選択できますが、再生環境や好みに応じてさらにリケーブルを検討するのも良いと思います。できれば付属ケーブルと同様なミックス線タイプか傾向の変化の少ない銀メッキ線で情報量の多いものを組み合わせるほうが相性が良さそうです。
「KEFINE X ANGELEARS Delci AE」の高域は明瞭で伸びのある音を鳴らします。どちらのノズルフィルターを組み合わせてもオリジナルの「KEFINE Delci」より明るい印象に変化していますが、標準の「シルバー」ノズルが適度な温かみを残し刺激を抑えた聴きやすい印象にまとめられているのに対し、「ゴールド」ノズルでは一気に高域の主張が増し、スッキリした伸びのある印象となります。
より聴きやすく穏やかな印象が良い場合は「シルバー」ノズルのほうが好感しそうですが、鋭い音は鋭く、よりV字傾向のサウンドバランスを好まれる方は「ゴールド」ノズルを好感するでしょう。私自身も「ゴールド」ノズルの高域のほうが好みではあるのですが、前述の通りこのイヤホンの「らしさ」という点では「シルバー」ノズルのほうがまとまっているような気もしますね。
中音域は、癖の無い音を鳴らしつつ、より寒色方向に明瞭感が向上しておりボーカル域を中心に強めの主張があります。オリジナルの「KEFINE Delci」も若干U字寄りの印象はあったものの、「KEFINE X ANGELEARS Delci AE」ではよりボーカル域が前傾した印象があり、比較するなら多少W字寄りといったほうが良いかもしれませんね。
また音場は左右の広がりを中心により大きく感じます。そのため多くの寒色系のイヤホンのようなキレの良さより雄大さを感じさせる鳴り方ですね。「シルバー」ノズルでは中高域の主張は(オリジナルの「KEFINE Delci」と同程度に)やや抑えられており、より穏やかでウォームさもある印象で再生されるため、この雄大に鳴る印象が寄り強化されます。
これに対して「ゴールド」フィルターでは高域同様に女性ボーカルの高音など中高域付近のアクセントがより強調され、ハッキリと前傾した主張があります。メーカー表記では「ゴールド」はクラシックやインスト向けとありますが、打ち込み系が主流のJ-POPやアニソンなどは「ゴールド」ノズルのほうがより鮮やかで明瞭感のあるサウンドに感じるのではと思います。ただ全体としてキレ重視のイヤホンではないため、一貫性を考慮するならばより穏やかで柔らかい「シルバー」ノズルのほうが本来のサウンドを楽しめるのかもしれませんね。
低域は適度な厚みがあり、深く力強いインパクトのある音を鳴らします。重低音のウェイトが高くミッドベースはやや控えめに感じるかもしれませんが、雄大な音場感と滑らかさのあるサウンドバランスのため、中高域と自然なメリハリのある分離感を得るためには妥当なチューニングだと感じます。十分に駆動力のある再生環境で鳴らすことでより低域の量感が増し音場感も向上します。同時にV字方向に強調されるためニュートラルな印象とは異なりますが、癖の無い自然なリスニングサウンドで心地よい臨場感が楽しめるでしょう。
■ まとめ
というわけで、「KEFINE X ANGELEARS Delci AE」はAngelearsとのコラボバージョンとして、ガンメタリックのカラーリングとアップグレードされたケーブル、そしてノズルフィルターの交換ギミックを備えることで、結構地味な印象だったオリジナルの「KEFINE Delci」と比較して、パッケージングとしての魅力が大きく向上した製品に仕上がっていました。セラーとしての視点を取り入れることで、Angelearsのコラボはこのような「よりキャッチーな方向」に製品をアップデートするのはとても上手いですね。また音質傾向的にもちょっと個性的だったオリジナルより明瞭さを増すことで万人受けしやすいチューニングに変更されており、より多くの方に購入しやすい製品になっていると思います。ただしこのイヤホンの本来の良さを尊重する場合はオリジナルの「KEFINE Delci」のほうが良いかも、という印象も持ちました。この辺は好みの分かれる部分で、どちらもお手頃価格で魅力的な製品に仕上がっていると感じました。