MOONDROP DARK SABER

こんにちは。今回は過去に購入して未レビューのイヤホンを紹介する「棚からレビュー」です。現時点で依頼をいただいている「積み」イヤホンは結構あるのですが(汗) 、お盆休みも最終日とということで、この辺でちょっと息抜きという感じで(^^;)。
というわけで紹介するのは「MOONDROP DARK SABER」です。8BA+2DD構成で799.99ドルの比較的ハイグレードのモデルですね。発売して結構経ちますが未だ国内版がリリースされない製品でもあります。

■ 製品概要と購入方法について

MOONDROP DARK SABER」は「Moondrop(水月雨)」は2023年9月頃にリリースされた800ドル級のフラグシップモデルです。ドライバー構成は8BA+2DDで、2基のダイナミックドライバーは水平対向配置のドライバーモジュールを採用しています。
Moondrop Dark SaberMoondrop Dark Saber

MOONDROP DARK SABER」のフェイスプレートは何百層にも重ねたカーボンファイバーによって成形されており、美しいデザインとともに軽量かつ優れた強度を持っています。本体はひとつひとつ技術者によりハンドメイドで丁寧に構成し仕上げられています。
Moondrop Dark SaberMoondrop Dark Saber
搭載されるドライバーは低域用の10mm 水平対向デュアルダイナミックドライバー、HODDDUS(Horizontally Opposed Dual Dynamic Drivers Unit System) モジュールを搭載し、中音域用にはカスタマイズされた4BA構成のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーユニット、高音域用にはKnowles製SWFKツイーターBAドライバーユニット(4BA構成)を搭載し、8BA+2DDで構成されます。
ケーブルは「MOONDROP DARK SABER」用に用意された銀メッキ銅リッツ線ケーブルを採用。プラグ交換式で3.5mmと4.4mmプラグを利用できます。
Moondrop Dark SaberMoondrop Dark Saber

MOONDROP DARK SABER」の価格は799.99ドルです。レビュー掲載時点ではSHENZHENAUDIO以外の日本へ発送可能なセラーではほぼ販売終了となっているようです。

SHENZHENAUDIO.COM: MOONDROP DARK SABER


免責事項:
本レビューは個人的に製品を購入し掲載している「購入者レビュー」となります。
本レビューに対してそれ以外の金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

というわけで、「MOONDROP DARK SABER」です。購入したのは今年に入ってからのセールにて。もっと為替でドルが安いときに買っておけば良かったですね(汗)。数ヶ月間ほどわりとメインで使用しております。
MOONDROP DARK SABERMOONDROP DARK SABER

パッケージ内容は、本体、ケーブル、交換用プラグ、航空機用アダプタ、イヤーピース(通常タイプがS/M/Lサイズ、それぞれ2ペア)、「Softears U.C.」タイプS/M/Lサイズ)、本体用カバー、レザーケース、説明書、保証書など。「Softears U.C.」は写真で入れ忘れました(^^;)。
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本体はレジンシェルにカーボンファイバー製の木目フェイスプレートでシェルサイズは結構大きめ。透明度の高いクリアレジンで内部構成をしっかり確認出来ます。それぞれのドライバーが存在感があります。
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最近は同様のフェイスデザインの「Moondrop x Crinacle Dusk」がありますが、「Dusk」が「Blessing3」などと同様の3Dプリントシェルなのに対して「MOONDROP DARK SABER」は伝統的なハンドメイドでレジン充填タイプではないためより多くのドライバーが収容されていますが軽量に仕上げられています。結構大きめのサイズ感のため耳奥まで挿入する感じではないものの、装着感は思ったより良好でしっかり耳にホールドできます。
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ケーブルは銀メッキ銅リッツ線タイプでやや太めの線材をダークシルバーの被膜で覆っています。被膜は弾力がありますが撚り線タイプのため取り回しは比較的良好です。また一般的な中華2pin仕様のためリケーブルも容易でしょう。
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イヤーピースは太めのステムノズルに合わせた軸穴の大きいタイプ。「Variation」や「Blessing3」などに付属しているタイプと、「Softears U.C.」も各サイズが付属します。私は「Softears U.C.」を使用しました。もし交換する場合は開口部の大きいタイプを選ぶ必要がありますね。


■ サウンドインプレッション

MOONDROP DARK SABERMOONDROP DARK SABER」の音質傾向はより癖の無いフラット方向のニュートラルサウンドで、バランスとしては緩やかなU字。資料によるとMoondropによる「VDSF Target Response」に基づきつつも、実際はハーマンターゲットカーブ(H-2019)にほぼ準拠して調整されているようです。
ちなみに「Blessing3」や前述の「Dusk」もバランスとしてはほぼ同様にチューニングしていますが、印象としてはかなり違いがあり、これらの機種の中では最もフラグシップの「MOONDROP DARK SABER」はより分析的なリスニングに対応出来る解像感と一貫性のある滑らかさがあり、同時に立ち上がりが早く自然なキレの良さも感じさせます。低域はBlessing3からアップデートされ適度にアクセントとなりつつ全体として自然にまとめられています。全体としてMoondropらしい明瞭なニュートラル傾向で全体のまとまりと個々の質の高さの塩梅が非常に良いイヤホンという印象です。

MOONDROP DARK SABERMoondropには以前8BA構成で非常に評価の高かった「Moondrop S8」という製品がありましたが、よく似たドライバー構成を採用する8BA+2DDの「MOONDROP DARK SABER」の中高域も「S8」の明瞭感と滑らかさを踏襲した印象があります。
MOONDROP DARK SABER」の高域は明瞭で自然な伸びの良さのある音を鳴らします。ツィーターユニットにはKnowlesのSWFKを2基搭載しており、「S8」の1基より配分としては多くなっていますが高域を過度に強調する印象は無く、むしろ刺さりやすい帯域はコントロールされ、より聴きやすい印象に仕上げられています。解像感および分離は良好で透明感が有り明瞭ながら自然な滑らかさを感じさせます。

MOONDROP DARK SABER中音域は凹むことなく鳴り、明瞭ながら癖の無い印象です。見通しは非常に良く音像のディテールも豊かで1音1音の粒立ちの良さを感じさせます。
同時に各音域のつながりは非常に滑らかで、いわゆるハイブリット的なメリハリ感ではなく、より自然で原音に忠実です。ボーカルは自然な位置で定位し、音源をありのままに表現する印象ですが、歯擦音などはコントロールされ、瑞々しさと聴きやすさを両立しています。音場は正確で自然な広さと奥行きがあり、演奏も的確に捉えることが出来ます。中高域付近には一般的なU字傾向より大人しいものの僅かなアクセントが有り、鮮やかさを感じさせます。

低域はニュートラルなバランスのため量的にはそれほど多くは感じませんが、水平対向式の2DDユニットにより、必要十分な量と質を確保しています。
MOONDROP DARK SABER印象としては同様の水平対向式2DDユニットを搭載する「Blessing3」より強調感が無く自然で、かつ同時に僅かに温かく、インパクトの強さが適度なアクセントになっています。重低音は深さはあるものの量的に少ないため突き上げるような臨場感はないでしょう。ただ自然に中高域を下支えしており、Moondropらしいニュートラルな音作りを感じさせる印象です。
またイヤーピースを標準タイプよりフィット感の高い「Softears U.C.」を使用することで低域の存在感が増し、リスニング的な楽しさが増加します。


■ まとめ

MOONDROP DARK SABERというわけで、「MOONDROP DARK SABER」を改めて紹介してみました。個人的には数ヶ月前に購入以降、多少のエージング期間を経て試聴などの機会でよく使用してる、現在メインのイヤホンでもあります。
中高域の滑らかさや明瞭感が印象的なニュートラルバランスの製品ですが、同時に水平対向式2DDを採用した低域や他の音域などにもアクセントがそれぞれ「ちょっとだけ」入っており、原音忠実な方向の質の高さを維持しつつリスニング的にも楽しみがある点が聴いていて飽きない要素かもしれませんね。
またDAP/AMPの聴き比べやリケーブルの比較などのベースとしても優秀なので、レビューの上でも使いやすいイヤホンでもあります。純粋にリスニング向けの特性や、逆にモニター的な性能を考慮した場合の回答としてベストではないと思いますが、個人的には満足のいく音質でかつとても「実用性」が高い点を踏まえ、しばらくは活用する機会も多いかなと思っています。