こんにちは。今回は 「7Hz FIVE」です。5基の6mmダイナミックドライバー並列で配置したかなり個性的な5DD仕様のミドルグレードイヤホンです。音質傾向も同社の往年のモデルを彷彿とさせる強ドンシャリ傾向でパワフルな低域と伸びのある高域が楽しいリスニングサウンドを演出します。こういう分かりやすく楽しめるイヤホンも良いですね。
■ 製品概要と購入方法について
「7Hz FIVE」は個性的なイヤホン製品でマニアの間でも独自の地位を確立している印象の中華イヤホンブランド「7Hz(Seven Hertz)」の新モデルです。見るからにインパクトしかない5基の 6mm ダイナミックドライバーによる5DD構成を採用。高精度の電子クロスオーバー技術により個々のドライバーを制御し、各音域をシームレスに統合します。
「7Hz FIVE」は、片側 5基の6mm ダイナミックドライバーを搭載。カスタマイズされた各ドライバーはそれぞれの音響チャンバー内で独立して動作し、相互に補完することでバランスの良いサウンドを生成。この業界初の5DD設計により比類のない明瞭性と分離が実現し、豊かで臨場感あふれるサウンドを実現。さらに「7Hz FIVE」では海外製の高精度電子部品を使用し設計された電子クロスオーバー回路を採用して各ドライバー制御しています。低・中・高周波数の各音域をシームレスに統合し、洗練された聴覚体験が提供されます。
この5DD構成のサウンドチューニングにより、「7Hz FIVE」は、重厚で迫力のある低音域、力強い中音域、滑らかで疲れを感じさせない高音域を実現します。高エネルギーと高速ダイナミック レスポンスを備えたこのイヤホンは、高品質のスピーカーに匹敵するサウンド体験を提供し、豊かで詳細なオーディオでユーザーを包み込みます。
「7Hz FIVE」の購入はLinsoulの直販サイトまたはアマゾンの「LINSOUL-JP」にて。
価格は149ドル、アマゾンでは25,880円です。
Linsoul(linsoul.com): 7Hz FIVE ※セール価格131.12ドルで販売中
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): 7Hz FIVE ※プライム扱い/5%OFFクーポン配布中
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Linsoul より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「7Hz FIVE」は3.5mm仕様と4.4mm仕様が選択できます。今回は3.5mm仕様で届きました。
製品画像を掲載した化粧カバーに覆われたパッケージです。
パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースは「AET07」が4サイズ(Mサイズ装着済み)、柔らかいシリコンのイヤーピースがS/M/Lサイズ、交換用メッシュパーツ(前後2種類)、シリコン製ケース、説明書。
本体は樹脂製で金属製のフェイスプレートによるシンプルなデザイン。5基のドライバーが並列に並ぶ形状のためフェイス部分のサイズは結構大きめですが、厚みを抑え耳を覆うような装着感になります。
イヤーピースはいわゆる「AET07」タイプとに加えて粘着性のある柔らかいシリコンのタイプが各サイズ付属しています。「AET07」タイプは安定した装着感ですが、粘着タイプもサイズが合えばしっかり耳に密着して解像感が向上するため結構好印象です。ただ(耳穴が細い)私の場合はSサイズでも奥まで装着できなかったので、例によって「TRN T-Eartips」に交換しました。
ケーブルは線材を平たく樹脂カバーで覆ったきしめん状の銀メッキ線ケーブル。「7Hz Sonus」などに付属しているケーブルの同様のものですね。比較的硬めの被膜ですが絡まりにくく取り回しは思いのほか良く、外観的でも良いアクセントになっていますね。
■ サウンドインプレッション
「7Hz FIVE」の音質傾向はパワフルな低域と伸びの良い高域がハッキリと鳴る、かなり分かりやすいドンシャリ。KZやTRNなどの中華ハイブリッドでもちょっと大人しく感じるくらいの強めのV字カーブを描く印象です。
非常に深く力強い低域の明瞭と突き抜ける高域は、ハーマン系のサウンドが増えた昨今では結構「やりすぎ」感もありますね。分かりやすいドンシャリではお馴染みの、いわゆる「原音忠実(Hi-Fi)って何?それおいしいの?」系イヤホン(笑)ですが、バランスは非常に良く、とても楽しい製品に仕上がっています。
また「7Hz」というブランドでは「Times」以降のモデルはわりとニュートラル方向の音質傾向が増えている印象ですが、「7Hz FIVE」は初期の「i99」のような楽しさがありますね。
インピーダンス12Ω、感度105dB/mWという仕様ですが5基ものドライバーを安定して稼働させるためにはしっかりした駆動力が必要で、DAPのハイゲインやポータブルアンプを利用したほうが良いでしょう。
また小型のオーディオアダプターを使用する場合は4.4mmモデルを選ぶほうがよさそうですね。リケーブルによる変化もしっかり実感出来そうですので、情報量の多い銀メッキ線ケーブルを基準として、いろいろなケーブルを試して見るのも良いと思います。
なお、「7Hz FIVE」が本気を出すためにはある程度のバーンインが必要かも知れません。100時間程度のエージングにより多少覚醒した印象があります。
「7Hz FIVE」の高域は明瞭かつエネルギッシュな音を鳴らします。とにかくパワフルな低域を鳴らす印象のイヤホンですが、それに負けない勢いで高域もブーストされており、高域もまたかなり強力な主張があります。小口径ドライバーを活かしたキレのある高音で、伸びの良さがあり見通しも良い印象。鋭さもしっかり表現されていますが、刺さる直前くらいで刺激は調整されています。ただしっかりした駆動力のある環境やエージングが進んでいない状況ではかなり音量を上げないと全体的に暗めで抑揚の少ない印象と鳴るため、上流もある程度パワフルにすることが望ましいでしょう。
中音域はハッキリとしたV字傾向のため相応に凹みます。そのためボーカルは少し後方で定位しますが非常にハッキリとした明瞭さがあり、また中高域および中低域も多少ブーストされているため全体としては前後にドンシャリ傾向らしいレイヤー感を強調しつつボーカル曲もしっかり楽しめる仕上がりになっています。
女性ボーカルやピアノの高音は適度な煌めきがあり、男性ボーカルは低音を中心に心地よい響きが豊かさを与えています。クロスオーバー制御された5DDという、かなり異色の構成と言うこともあり、解像感や分離は同価格の製品と比較するとそこまで高いわけではないですが、1音1音のキレの良さからハッキリした印象もあり、音数が多い曲でも窮屈感や籠もり感はありません。
音場はドンシャリらしい広がりがあり、主張の強い低域と高域が前面に出ることで前後にレイヤー感が生成され心地よい臨場感を演出します。ただ定位としては正確では無いため分析的なリスニングには向きません。明らかに原音とは異なりますがリスニングサウンドとしては非常に楽しく、心地よい表現力があります。
低域は「7Hz FIVE」にとって最大の魅力であり、非常にエネルギッシュで深く強い音を鳴らします。おそらく5基のドライバーのなかでも複数のユニットが低域に割り当てられているようで、シングルドライバーとは異質の心地よく深い響きを実感出来ます。それでも音像は明瞭で滲んだり籠もったりすることは無く、情報量の多い音源でも締まりのある質感で表現されます。
ミッドベースは強い量感があり、製品説明にあるようにスピーカーでのリスニングのような空間表現を感じさせる響きがあります。重低音も深く沈みますが、キレより厚みや響きを重視した印象で、「7Hz LEGATO」のよりキレと強さのある重低音とは異なる印象です。
■ まとめ
というわけで、「7Hz FIVE」は5DD構成というかなりトリッキーな構成を採用することで、とにかく楽しく心地よいドンシャリ傾向のイヤホンに仕上げられています。最近のボーカル曲にフォーカスしたミッドセントリックなイヤホンと比べると面白いくらい傾向が異なりますが、ハードロックやEDM、インストゥルメンタルに加え、これはこれでボーカル曲も結構楽しいのが興味深いですね。
価格的にもミドルグレードに属しますし、既にさまざまな傾向のイヤホンを複数所有しているような方を対象としたマニマ向けの製品ではありますが、私自身がマニアが過ぎている(限界ぽい)せいか、400ドルオーバーの「i99」あたりを考慮すると、150ドル以下の「お手頃価格」で、こんなに楽しいイヤホンが購入できるのはむしろ有り難い、みたいに感じてしまいます(汗)。そういう方がいらっしゃれば、今すぐラインナップに加えていただくのも良いのでは、と思うイヤホンでした。