KZ ZS12 PRO X

こんにちは。今回は 「KZ ZS12 PRO X」(スイッチ付き)です。5BA+1DD構成のハイブリッド仕様で、金属シェルでより高級感がありますね。現在はEasy Earphones系のセラーでのみ取り扱いのモデルで、スイッチ付きモデルは低域を中心に結構大幅に傾向が変化する、非常に興味深いモデルだと思います。

■ 製品概要と購入方法について

私のブログでは毎度おなじみ低価格中華イヤホンブランド「KZ(KZ ACOUSTICS)」です。実は新モデルは割とコンスタントに購入しているのですが、依頼のレビューも結構「積み」になっている状況で後回しにしているうちにさらに新機種がでて・・・(うーん)。製品ペースが早すぎるのも悩ましいですね。今回の「KZ ZS12 PRO X」はEasy Earphonesの限定取り扱いとのことで(依頼として)レビューすることになりました。いやーほかの機種もそのうち「まとめ」でもやりますかね(^^;)。

閑話休題、今回の「KZ ZS12 PRO X」は外観的には「ZS10 PRO」系統のモデル感がありますが、シェルはハウジング部も含めた金属製。製品名称の通り両側で12ドライバー(片側6ドライバー)、構成としては5BA+1DDとなります。KZブランドとしては「KZ ZSX」以来の構成となるのかもですね。また最近のKZではお馴染みになってきたスイッチ有り/無しモデルの指定があります。
KZ ZS12 PRO XKZ ZS12 PRO X
ドライバーはステムノズルの高域用の「30019」BAが1基、「31736」2BAユニット×2(4BA)、低域用の10mmダイナミックドライバーによる5BA+1DDハイブリッド構成。高1BA+中4BA+低1DDの組み合わせ自体は「ZSX」と同じ考え方ですね。さらに制御回路にチューニングスイッチが付き(スイッチ有りモデル)、ダイナミックドライバーは新しい世代のものが採用されています。
KZ ZS12 PRO XKZ ZS12 PRO X
このダイナミックドライバーは製品説明を見ると「ZSN PRO 2」と同様の「スーパーリニア振動板ドライバー」、分解画像を見ると「ZS10 PRO 2」と同様の「内部磁気ドライバー」という記載。まあ表記の地下以外で同時期の製品ですし、同じドライバーという感じでしょうか。そうなると「KZ ZS12 PRO X」と「ZS10 PRO 2」の仕様上の違いは、ハウジングが金属製であることと、ドライバーはステムノズル部分に「30095」BAが追加されている、という2点になりそうですね。
KZ ZS12 PRO XKZ ZS12 PRO X
チューニングスイッチは4系統ですが、OFF状態のほかスイッチ1〜3が低域強化、スイッチ4が高域強化で主に(OFFを除き)4種類のスイッチパターンの内容が製品ページに記載されています。

KZ ZS12 PRO X」の購入はAliExpressの「Easy Earphones」、またはアマゾンの「Yinyoo-JP」にて。
価格は69ドル、アマゾンでは7,699円です。
AliExpress(Easy Earphones): KZ ZS12 PRO X ※セール価格50.37ドル


Amazon.co.jp(Yinyoo-JP): KZ ZS12 PRO X ※現在20% OFFクーポン配布中


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Easy Earphones より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

というわけで、今回はスイッチ付きモデルで届きました。パッケージはいつものKZの白箱タイプです。
KZ ZS12 PRO XKZ ZS12 PRO X

パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースがS/M/Lサイズと装着済みウレタンタイプ、スイッチ切り替えピン、説明書。
KZ ZS12 PRO XKZ ZS12 PRO X

本体は一般的なKZ製カナル型モデル、特に「ZSN PRO」シリーズや「ZS10 PRO」シリーズと共通性のあるサイズ感およびシェル形状ですが、本体はハウジング部分も金属製でより高級感のある印象にしあがっています。
KZ ZS12 PRO XKZ ZS12 PRO X
多少重量もアップしていますが思ったほど重くは無いため、装着感はほぼ同様な印象です。コネクタはqdcとカバー形状が互換性のあるKZタイプC仕様でお馴染みの銀メッキ線ケーブルが付属します。
KZ ZS12 PRO XKZ ZS12 PRO X
スイッチ付きモデルは4系統のスイッチがついていますが、前述の通り0000(すべてOFF)をベースに、1000、1100、1110の順で低域が強くなり、0001でさらに高域を下げる、という設定だそうです。しかし、実際の製品を見てみると初期値は「すべてON」、つまり「1111」に設定されています。おや、製品説明に記載が・・・(^^;)。おそらく「スイッチ無し」モデルの設定値は「1111」相当なのかもしれません。そうすると実際には、1111を基準に、1〜3はOFFにすることで順に低域を下げ、4をOFFにすることで高域を上げる、という表現が適切なようですね。


■ サウンドインプレッション

KZ ZS12 PRO XKZ ZS12 PRO X」(スイッチ付き)の音質傾向はスイッチによりかなり異なり、開封時設定の「1111」(すべてON)はかなり低域をブーストした強めのドンシャリ傾向になります。印象としては「ZS10 PRO 2」などよりパワー押し感の強さが評判の「KZ ZSN PRO 2」のバランスに近くかなり強力な低域と、派手めの明瞭さを持ちつつ刺激は抑えている印象のサウンドで、よりキレが増し、解像感や分離感を向上させた印象ですね。おそらく「KZ ZSN PRO 2」のやり過ぎ感のあるサウンドが思いのほか評判が良かったという事かも知れませんが、個人的には低域のブーストがちょっと強すぎるかな、という印象もあります。

これに対し真逆の「0000」(すべてOFF)は、かなり低域を抑えたフラット方向に近づきますが、バランスとしてはややシャリ付きのある中高域が目立つサウンドになります。それでも刺激はコントロールされています。フラット方向、中高域寄りのバランスとしては「1000」または「1001」くらいのほうがより自然な印象になるようです。
KZ ZS12 PRO Xさらに全体の印象としてはおそらく「1100」あたりの設定がKZが「U-shape」と言っているようなバランスになると思います。このモードでもKZらしいパワフルなサウンドで結構ドンシャリ感はありますが、バランスとしては個人的にはこのモードが最も好みに近い印象でした。
なお高域をアップさせるスイッチ4は付属ケーブルでは高高域付近の伸びが若干増す程度でほとんど違いを感じることはできませんでした。ただし情報量の多いケーブルに交換した場合にはある程度違いが出そうですので、好みに応じて設定するのが良いと思います。

KZ ZS12 PRO X」(スイッチ付き)の高域は、KZ製ハイブリッドらしい、硬質感のあるシャープな音を鳴らします。ただ以前のKZと比較過ぎると暗いとまでは言わないものの明るすぎない程度に調整されており、金属感のあるスッキリした印象ながら刺激はコントロールされている印象。少なくとも付属ケーブルでは歯擦音などは無く聴きやすさは維持されます。同時に細かい音も捉える詳細なディテール表現などはKZのハイブリッドらしい解像感や分離感を実感出来る要素です。前述の通りスイッチ4による変化は比較的少なく調整は再生環境、ケーブルなどに応じて好みで設定するのが良いでしょう。

KZ ZS12 PRO X中音域はV字傾向のサウンドのため多少の凹みを感じます。しかし寒色系でスッキリした見通しの良さがあるため、遠くに感じることは少ないでしょう。また演奏との分離も明瞭でハッキリした印象があります。そして、最近の多くの製品同様に中高域付近に適度なアクセントがあり、女性ボーカルやピアノの高音は主張を持って鮮明に再生されます。また全体としてはドライで寒色系のキビキビしたサウンドですが男性ボーカルなどの中低域は僅かな温かみがあり、分離感の良さと自然な豊かさを感じさせます。当然かも知れませんが、4基のBAに加え、新しいダイナミックドライバーによる表現力は数年前のKZと比較するとある程度の向上はあるようですね。ただ「0000」や「0001」のモードでは中高域の寒色傾向がやや強調されるため若干の歯擦音やシャリ付きなども感じる場合があります。
音場は左右の広がりを中心に広めの印象で、「1100」あたりのモードではV字らしいレイヤー感も実感出来ます。「1100」くらいまでは定位も想像以上に正確さがあります。もっともさらに低域を強化したモードにするとそれだけ定位の正確性はなくなりますが、臨場感は増すため、モードに応じて好みの設定を探してみるのも良いと思います。

KZ ZS12 PRO X低域はスイッチ付きモデルの場合、スイッチ1〜3で非常に大きく変化します。このスイッチでミッドベースから重低音まで同様に強化され、量感と強さが増加します。KZらしい強さがありつつ、締まりとスピード感のある低音で、重低音の沈み込みと重量感も感じられます。低域のスイッチをOFFにした状態の「0000」または「0001」の場合、低域の量感はかなり抑えられ、フラット方向のサウンドに近い量感になります。逆に1〜3の全てをONの状態「1110」または「1111」の場合、低域の暴力的な派手さが特徴的だった「KZ ZSN PRO 2」や3DD構成の「DQ6 HBBモデル」などのKZのなかでも最も低域の強いイヤホンと同等の量感になります。個人的にはこの設定はやや過剰な低域ブーストかなとも感じます。バランスとしてはニュートラル寄りであれば「1000」、バランスの良いドンシャリの場合は「1100」くらいがちょうど良いように思います。解像感や分離感は標準ケーブルだと少し物足りないですがリケーブルで多少改善されます。


■ まとめ

KZ ZS12 PRO Xというわけで、「KZ ZS12 PRO X」(スイッチ付き)モデルは、最近のZS系の強さのあるドンシャリ傾向を踏襲しつつ、スイッチ付きも出るでは、U字傾向や中高域寄りの傾向に変化させることが可能でした。印象としてはZS10シリーズのような派手さのある寒色系ドンシャリといかにもKZらしいサウンドですが、個人的には同じドンシャリ傾向でも「1100」くらいのバランスが好みでした。そのためチューニング可能なスイッチ付きモデルで正解だったと思います。既に「ZSN PRO 2」あたりのサウンドを知っていてより質感を向上したい、というニーズでは「スイッチ無し」の「KZ ZS12 PRO X」も良いかもと思いますが、自分の好みをいろいろ試したい方にはスイッチ付きモデルのほうが良さそうですね。金属製のシェルはある程度の重量感はありますが、同価格帯でもより高級感がありリケーブル「映え」もしやすいと思いますのでそういった意味でもお手頃で良い選択肢のひとつかもしれませんね。