こんにちは。今回は 「SUPERTFZ KING KONG」です。「SUPERTFZ」（旧「TFZ」）ブランドの3千円台の低価格で購入できる低価格の2DD仕様モデルです。価格を抑えつつ、バランスの良い緩やかなV字傾向のサウンドで癖のない自然なボーカル域と心地よい中低域を楽しめるイヤホンです。
■ 製品概要と購入方法について
「SUPERTFZ」は、以前は「TFZ」としては日本でも多くのファンを持つ老舗の中華イヤホンブランドのひとつとして知られていました。デュアルチャンバー、二重磁気回路を採用したシングルダイナミックドライバー搭載イヤホンを最も初期から採用しており2016年のブランド誕生以降様々な進化を続け多くのファンを獲得し有名メーカーとなりました。歴史の中でネタ的にもいろいろあるブランドという側面もありつつ製品自体は結構安定して手堅いイメージがあります。
→ 過去記事（一覧）： TFZ製品のレビュー、まとめ、変遷（チャート図）など
今回の「SUPERTFZ KING KONG」は同社としては珍しい、6mmおよび10mmの2基のダイナミックドライバーを搭載した2DD仕様のモデルです。複合ポリマー振動板と合金サスペンション技術を採用した新たな低価格モデルです。
今回の「SUPERTFZ KING KONG」は同社としては珍しい、6mmおよび10mmの2基のダイナミックドライバーを搭載した2DD仕様のモデルです。複合ポリマー振動板と合金サスペンション技術を採用した新たな低価格モデルです。
「SUPERTFZ KING KONG」のドライバーには複合ポリマー振動板と合金サスペンション技術を採用した6mmサイズと10mmサイズの2基のダイナミックドライバーを搭載。また2DD構成の性能が余すことなく発揮するため新設計のデュアルキャビティ構造を採用しています。
シェルはポリカーボネート製ハウジングと亜鉛合金製のフェイスパネルで構成され高い耐久性と制振性を実現しています。
「SUPERTFZ KING KONG」のカラーバリエーションは「ホワイト」「ブラック」「ピンク」が選択可能。またプラグは3.5mmステレオとUSB Type-C（マイク付き）が選択可能です。
「SUPERTFZ KING KONG」の価格は3,980円（Type-Cモデルは4,580円）です。
免責事項：
本レビューではレビューサンプルとして 伊藤屋国際様 より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「SUPERTFZ KING KONG」のパッケージは低価格モデルということでコンパクトなボックスが採用されています。今回は「ブラック」の「3.5mm」モデルで届きました。
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース（S／M／Lサイズ）、説明書など。
本体はポリカーボネートの樹脂製ハウジングと亜鉛合金製のフェイスパネルの組み合わせ。フェイスプレートには「king kong」と「stage」という記載がプリントされ、SUPERTFZのロゴは本体側面にシルクスクリーンでプリントされており、例のマークの記載はありません。
シェルは大小ドライバー搭載の2DDモデルとしてはコンパクトで、透明な樹脂シェルから見える内部構造でも2基のドライバーがびっしり埋まっている感じが伺えますね。耳への収まりも良く装着はしやすいでしょう。付属のイヤーピースは1種類（各サイズ）ですので、よりフィット感の良いイヤーピースに交換するのも良いでしょう。今回私はラディウス「スパイラルドット（クリアタイプ）」を使用しました。
ケーブルは銀メッキ線の撚り線タイプでいわゆる低価格イヤホンで多い細い線材ですね。2016年～2017年頃の初期のTFZの製品のケーブルを思い出します。コネクタは従来のTFZタイプのカバー形状では無く、qdc互換のカバー形状の0.78mm 2pinタイプ。この辺もステージモニター仕様ということなのか（中国ではプロ用イヤモニというとqdcみたいなところがありますね）、製造を行っている（委託している？）工場でこのタイプがメインなのか、その辺はよく分かりませんが、リケーブルの際は注意が必要です。
■ サウンドインプレッション
「SUPERTFZ KING KONG」の音質傾向は低域が非常にパワフルで、バランスとしては中低域寄りのドンシャリ。2基のドライバーのレスポンスは非常に良く、全体的に分離の良い小気味よいサウンドで、さらにパワフルでキレのある低音が非常に心地よく響きます。小型のオーディオアダプターやスマホ直挿しなどの印象ではニュートラルな中高域に対して低域は非常にパワフルで「King Kong」という名称も何となくイメージ通りかもしれませんね。おそらく「Type-Cモデル」も同様な印象になると思います。
いっぽうで駆動力のある再生環境や情報量の多いケーブルにリケーブルすることでV字方向に明瞭感が一気に向上し、非常に見通しの良いサウンドが楽しめます。パワフルな低域に対してボーカル域は多少前傾しつつ癖のない印象で、音像も捉えやすい印象です。この場合は同時期にリリースされた「FORCE 1C」と比較してもさらにメリハリがあり、印象としては、よりステージモニター向けを想定しているとされる「FORCE 1」に多少近いイメージになります。
ある程度上流を整えてしっかり駆動させることでより楽しめるイヤホンですが、インピーダンス22Ω、感度108dB/mWと若干鳴らしにくい程度で小型のアダプターでも前述のような低域メインのサウンドを楽しめますし、小型のアダプターなどでもリケーブルで結構化けますので、3千円台の低価格イヤホンとしてはバランスも良く、かなり楽しめる製品ではないかと思います。「SUPERTFZ KING KONG」の高域は比較的明瞭な音を鳴らします。煌めきもあり伸びのある音ですが、中低域に比べると後方に定位するため相対的に刺激を抑えており聴きやすくまとめています。付属ケーブルで小型のアダプターなどでは若干暗めに感じるかも知れませんね。それでもハイハットなども綺麗に鳴るため3千円台の低価格イヤホンとしては使いやすくまとめられている印象です。リケーブルなどにより主張が増し分離感や音場も向上します。
中音域はV字傾向のためバランスとしては凹みますがボーカル域は前傾しており音像は捉えやすい印象。バランスとしては女性ボーカルの高音および男性ボーカルの中低音にアクセントがあります。早いレスポンスで輪郭も明瞭に再生されるため、実際の解像感や分離よりハッキリとした印象の音像で表現されます。デュアルドライバー構成による特徴を上手く活かしており、全体的には低域がブーストされたバランスなのですが中音域がマスクされることなく、さまざまなジャンルの曲で楽しめる印象です。音場は広くボーカルと演奏との分離も比較的良好。中低域から低域をにかけてレイヤー感のあるサウンドですが、モニター的な定位とは異なります。
低域は非常にパワフルで存在感のある音を鳴らします。重低音も非常に深く重さがありますが、それ以上にミッドベースが前面に出ており、全体的に臨場感のある空間表現を演出しています。いっっぽうで過度に膨らむことは無く自然な締まりがあり、中高域同様に小気味よく再生されます。中高域の癖のない印象のニュートラルなサウンドに対して、低域が非常に個性的な存在感を持つことで、モニター系のバランスとは異なる楽しいサウンドにまとめている印象です。また多少穿った見方かもしれませんが、この価格帯のイヤホンでモニター的な音に仕上げると解像感的にも粗さが気になりそうですが、「SUPERTFZ KING KONG」の場合はこの低域のおかでげでその辺が目立たず、ある種のまとまりの良さを感じさせる仕上がりとなっているようにも感じますね。
■ まとめ
というわけで、「SUPERTFZ KING KONG」は、3千円台の低価格イヤホンながら、質感の良い金属製のフェイスデザインに2DDのドライバー構成を採用し、音質的にも一般的な低価格イヤホンとは一線を画した、パワフルな低域を中心にしつつモニター的なニュートラルサウンドも楽しめるという、実は結構個性的なサウンドにまとめられていました。もっともこれで高域もガンガン派手に鳴るとかつてのTFZ的なドンシャリ系スタジオモニターなサウンド（オリジナルの「KING」のような）にも近づくかもなので、「SUPERTFZ」らしい音作りと言えなくもないかもですね。カラーバリエーションも豊富ですし、リケーブルによる変化も楽しめますので、興味のある方はとりあえず購入しておくのも良いと思います。またマニア以外のライトユーザー向けとしても幅広く楽しめるサウンドだと思いますよ。
