こんにちは。今回は 「Kiwi Ears Canta」です。1基のダイナミックドライバーと2基の平面駆動ドライバーを収容した個性的な構成のハイブリッドイヤホンです。明瞭感のあるV字傾向でロックやポップスなどのボーカル曲を意識したチューニングとなっており、非常に興味深い製品に仕上がっています。
■ 製品概要と購入方法について
「Kiwi Ears」は2021年に登場した新しい中華イヤホンのブランドですが、非常に早いペースで新製品を投入しており急速に知名度が高まっていますね。同社のイヤホン製品は豊富なラインナップと質の高いサウンドで多くのマニアから注目を集めています。
「Kiwi Ears Canta」は1基のダイナミックドライバーとひとつのシャーシに収容された2基のカスタム平面ドライバーによる個性的な構成のハイブリッドイヤホンです。この構成により全体にわたって質感と音色の豊かさが向上します。ダイナミック ドライバーとカスタム平面ドライバーの組み合わせにより、自然で力強い音質で一貫したサウンド再生を実現します。
「Kiwi Ears Canta」のサウンドチューニングは、男性および女性の両方のボーカルを強調するように巧みに調整されています。豊かな中音域と鮮明な中高音域を提供し、あらゆるジャンルのボーカルを明瞭かつ際立たせます。サブベースは、ポップ、ヒップホップ、ロックなどのジャンルに最適な、パワフルなインパクトと魅力的なキックベースを提供します。ミッドベースにおける自然な暖かさがボーカルと楽器に質感を与え、高音域はクリーンで耳障りな音がありません。その結果、豊かで魅力的、かつバランスの取れたサウンドプロファイルが生まれ、オーディオマニアと音楽愛好家の両方に最適です。
「Kiwi Ears Canta」の購入はLinsoulの直販サイトまたはアマゾンの「LINSOUL-JP」にて。
価格は89ドル、アマゾンでは15,490円です。
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Linsoulより製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Kiwi Ears Canta」のパッケージは今回も製品画像を載せたボックスデザイン。ブラックのシェルデザインにあわせてモノトーンに仕上げられています。
パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースは白色、グレー、ブラックの3種類のタイプでそれぞれS/M/Lサイズ、ハードケース、説明書。
「Kiwi Ears Canta」の本体はハウジング部分が樹脂製でフェイスプレート部分は金属製。ダイナミックドライバーと2基の平面ドライバーを搭載していますが、各ドライバーのサイズは公開されていませんが、シェルサイズはKZやTFZなど一般的なカナル型デザインの製品と同様のサイズ感でまとめられており、装着性も一般的な印象。シンプルなデザインでより実用性を重視した製品としてイメージされているようです。
付属ケーブルは中華2pinタイプの銅線ケーブルで、「Quartet」「 Forteza」の付属ケーブルと同様の線材のようです。被膜は柔らかく取り回しは良い印象。コネクタは一般的な2pin仕様のため手頃な銀メッキ線などへのリケーブルを検討するのも良いでしょう。
また標準で3種類のイヤーピースが付属しますが他にもよりフィット感を高めるため定番の「スパイラルドット」や「AET07」(互換品含む)、SpinFit「CP100+」、TRN「T-Eartips」などへの交換も良いと思います。私の場合は例によってTRN T-Eartipsを組み合わせました。
■ サウンドインプレッション
「Kiwi Ears Canta」の音質傾向はやや中低域寄りで緩やかなV字を描く弱ドンシャリ。比較的明るく、全体的に鮮明な印象のあるサウンドですが、同社の「Forteza」のような、より分かりやすいドンシャリ傾向のハイブリッドと比べると、高域の刺激を抑え、適度に中低域に厚みを持たせることで、相対的にロックやポップス(主に洋楽)などのボーカル曲との相性を向上させています。そういう意味では、最近増えているミッドセントリック傾向、つまりU字やW字寄りのイヤホンとは異なる傾向のサウンドで、V字タイプのアプローチとしては興味深い音作りだと感じます。
インピーダンス14Ω、感度104dB/mWとややインピーダンスが低めですが、情報量の多いケーブルにリケーブルすると再生環境によってはV字傾向が強調される場合があります。特に比較的聴きやすいサウンドを好まれる方は標準ケーブルのままのほうがよさそうです。
「Kiwi Ears Canta」の高域は明るく鮮明でエネルギッシュな音を鳴らします。付属の銅線ケーブルはそれほど情報量が多いわけではありませんが、「Kiwi Ears Canta」との組み合わせでは、高域については小型のオーディオアダプター等ではある程度主張を抑えて聴きやすくまとめる傾向があります。駆動力のあるDAPやアンプ等でゲインを上げるとメリハリが強調され、高域もより力強く再生されます。銀メッキ線などへのリケーブルでも近い変化がありそうですが、バランスに変化がでることもありますので色々試して再生環境と相性が良いものを探してみるほうが良さそうです。
中音域は、自然な印象で再生しつつボーカル域は鮮やかさがあります。前述の通りハイゲインでの再生やリケーブルによりV字方向にメリハリが強調され中音域は相対的に多少凹みます。それでも全体として明瞭感があるため、不足を感じることは少ないでしょう。
ボーカル域はやや前傾しているものの近すぎず自然な距離感で定位します、質感が良く鮮やかで、淡泊に感じることはないでしょう。最近の製品で多くなっている○○ターゲット寄りでかつU字またはW字傾向によるボーカル強調、あるいはミッドセントリックなイヤホンとは似て非なる印象で、ドンシャリ(V字傾向)らしい各音域のバランス感と前後へのレイヤー感を維持しつつ、中高域および中低域にアクセントを持つことでボーカル域にも豊かさを持たせています。
音場は低度な広がりと奥行きがあり音像表現も明瞭ですが、ただ原音忠実性という意味では解像感や分離はそこまで高いわけではないですし、定位感なども異なる場合もあります。どちらかというと雰囲気重視の音作りとも言えるでしょう。KiwiEarsは比較的近い価格帯の製品を複数ラインナップしていますが、構成による音作りの方向性にちゃんと違いを付けてキャラクターを分けているという感じもありますね。
低域は十分な量感を持ちつつ分離の良さとスピード感のある音を鳴らします。おそらく2基の平面駆動ドライバーは中音域および低域に影響していると思われますが、平面ドライバーらしい歪みを抑えレスポンスの良い音を鳴らしつつ、ひとつのシャーシに2基のドライバーユニットを収容することで軽くならず十分なインパクトとパワーを提供します。ミッドベースはスピード感があり、重低音は多少ブーストされ深い沈み込みと重量感を感じさせます。キレや解像感という意味ではそこまで高くないため、低域の情報量の多い曲では多少物足りなく感じる場合もありますが、製品説明でも記載の通り、ボーカル曲を中心としたリスニングに特化していると考えれば、ボーカル域を心地よく下支えしてくれる低音と言えるでしょう。
■ まとめ
というわけで、「Kiwi Ears Canta」は1DD+2平面ドライバーという個性的なドライバー構成を一般的なシェルサイズにまとめ、ボーカル域にフォーカスしたイヤホンとして雰囲気の良いサウンドを楽しめるイヤホンにまとまっています。
ただし、ここでいうボーカル曲は主に洋楽のロックやポップスなど、最近のトレンドに沿って音数を減らして各音域の雰囲気を重視した音源を想定しているようで、打ち込みメインで音数が多く、女性ボーカルの高域などを強調されるJ-POPやアニソン向けとは異なることは念頭にした方が良いでしょう。逆に言うと、アニソンなどはあまり聴かない方にとっては、より心地よく使いやすいイヤホンと感じる可能性が高くなりますね。W字傾向で中高域にアクセントがあるタイプのイヤホンが多少うるさく感じる場合には「Kiwi Ears Canta」は良い選択肢のひとつに鳴るかも知れません。選択肢が多いのは良いことですね(^^)。