こんにちは。今回はEDIFIERの 「STAX SPIRIT S10」です。スピーカー製品やワイヤレスオーディオ分野で高音質かつコストパフォーマンスに優れた製品を数多くリリースしている「EDIFIER」から、同社が持つハイエンド向けサブブランド「STAX SPIRIT」としてイヤホン製品がリリースされました。12mmの平面磁界ドライバーを搭載し、既存モデルとはレベルの違う高音質を実現しています。
■ 製品概要と購入方法について
「STAX SPIRIT」は中国の大手オーディオブランド「EDIFIER」傘下のサブブランドです。2011年に日本のSTAX社と資本業務提携したことで、EDIFIERのハイエンドのヘッドホンおよびイヤホン向けのブランドとして名称の利用を開始しました。「STAX SPIRIT」ブランドでは現在までに平面駆動ドライバーを搭載したワイヤレスヘッドホンの「STAX SPIRIT S3」と、同じく第2世代として最近リリースされた「STAX SPIRIT S5」があり、新たに平面磁界ドライバー搭載のワイヤレスイヤホンが登場しました。それが今回レビューする「STAX SPIRIT S10」です。
「STAX SPIRIT S10」は、12mmサイズの平面磁界ドライバーと第2世代のEqualMass振動板技術を採用。2μmのポリマー基板と厚さ10μmの超薄型振動板で、軽量かつ瞬時応答性に優れた音質を実現。詳細な音再生が可能です。
また、Qualcomm 製「QCC5181」SoCと第3世代のANC(アクティブノイズキャンセリング)技術を採用。Bluetooth 5.4に対応し、安定した接続と低消費電力、通話品質の向上、環境ノイズ抑制を実現します。また音声通話も片側3基の高感度マイクと「aptX Voice」+「AI技術」で騒がしい環境でもクリアなハンズフリー通話を実現します。
また最新の「Snapdragon Sound with aptX Lossless」に対応することで、aptX、aptX Adaptive、aptX Losslessの各コーデックに対応。さらにアプリによる設定変更で「LDAC」「LDHC 5.0」ハイレゾコーデックの利用も可能です。
またANC使用時で18時間、ANC OFFで28時間の長時間再生と15分の充電で2時間の利用が可能な急速充電にも対応します。
その他「装着検出機能」「マルチポイント接続」「ゲームモード」「Google Fast Pair」などに対応します。また本体の詳細な設定は専用アプリ「EDIFIER ConneX」により行うことができます。
Bluetooth | V5.4 |
---|---|
ドライバー | 12mm 第2世代 EqualMass 平面磁界型ドライバー |
SoC | Qualcomm QCC5181 Snapdragon Sound対応 |
コーデック | LDAC / LHDC 5.0 / aptX Lossless / Adaptive / aptX / AAC / SBC |
ANC | 第3世代 Qualcomm ハイブリッドANC |
再生時間 | ANC OFF: 28時間 ANC ON: 18時間 |
通話NC | aptX Voice + AI技術対応 |
防水規格 | IPX54 |
アプリ | EDIFIER ConneX 対応 |
その他 | 装着検知機能 Google Fast Pair対応 マルチポイント接続対応 89ms ゲームモード |
サイズ | 56g(イヤホン) |
EDIFIER公式サイト(edifier.jp): STAX SPIRIT S10
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして EDIFIER JAPAN より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
EDIFIER「STAX SPIRIT S10」のパッケージはデザインはNeoBudsシリーズのようなブラックを基調としたデザインですが、4万円級とさらに高級なグレードとなるためボックスはより大きく内箱なども豪華仕様となっています。
パッケージ内容は本体及び充電ケース、充電ケーブル、イヤーピース(装着済みMサイズ+各サイズ7ペア)、収納ポーチ、説明書、保証書。
本体は12mmサイズの平面駆動ドライバーを搭載していますが実際に耳に装着するフロントキャビティ部のサイズ感は同社のNeoBudsシリーズに近く装着性も比較的近い印象です。
いっぽうアンテナやバッテリを収容するリアキャビティ部は大口径のドライバーとほぼ同じ幅で、より大きく厚みがあります。そのためタッチセンサーは側面のスリット状になっている部分となっています。タッチセンサーの割当ては基本的には同社の製品を踏襲しています。
本体はアンテナ部が大きくなっていますがケースサイズは多少厚みはあるものの横幅はNeoBudsシリーズのケースよりコンパクトにまとめられています。
イヤーピースはXL/L/M/S/XSの5サイズで標準で装着済みのMサイズを合わせるとS/M/Lは2ペア、XL/XSは1ペアの合計8ペアが同梱されています。
■ 専用アプリおよびモードへの変更について
EDIFIER「STAX SPIRIT S10」は「Bluetooth 5.4」および「Snapdragon Sound」を採用しており、開封時はAndroid端末では「aptX Adaptive」、iPhoneなど非対応端末ではAACコーデックで接続されます。Androidの場合はGoogle Fast Pairにより本体のフタを開けた時点で端末側で自動で認識するためスムーズにペアリングすることができます。
また端末側が「Snapdragon Sound with aptX Lossless」対応端末の場合(対応端末の詳細は「aptX」サイトのリストを参照ください)初期設定では「aptX Lossless」でペアリングされます。
またペアリングしたAndroidで、EDIFIER「STAX SPIRIT S10」がサポートする「LDAC」および「LHDC(対応端末の場合)」コーデックを利用する場合は専用の「EDIFIER ConneX」アプリでの切替により対応します。
ペアリング後にインストールした「EDIFIER ConneX」を起動し、右上の設定アイコンで設定画面を表示して「HDオーディオコーデック」で有効にします。なお、「LDAC」モードの場合、96kHzモードではビットレートが高いため屋外、特に混雑する環境では途切れやすくなることも多く、通常は「44.1/48kHz」のモードにしておいた方が安定します。
「設定」画面ではほかにもタッチセンサーの割当てや感度、マルチポイント接続のON/OFF、装着検出のON/OFFなどのモード設定が可能です。
ANC機能は「適応型ノイズキャンセリング(ANC)」、「高ノイズキャンセリング」、「低ノイズキャンセリング」、「外音取り込みモード」、「風切り音低減」および「ノイズキャンセリングOFF」の6種類のモードが選択できます。従来機種と比較するとANCの効き方は若干穏やかで、強めの環境ノイズを中心に削減してくれる印象。ANCの強さ自体は強力なモデルと比較しても遜色はありません。それでも音質重視の製品と言うこともあり、通常は「OFF」モードで使用し、屋外利用などで環境音が気になる場合に必要に応じてモードを選ぶ、という使い方が良いようです。
イコライザーも他のモデルの「クラシック」とは異なり「原音」というモードがデフォルトになっているのも特徴的ですね。もちろんカスタマイズで細かい設定を手動で設定することも可能です。
そして「STAX SPIRIT S10」の実際の接続性についてですが、こちらはBluetooth 5.4の採用やおそらくアンテナも強化されていることで接続安定性は従来機種より高い印象です。ただSnapdragon SoundとLDACの両対応の機種ということで、ギミックが多い製品にありがちな相性問題はもしかしたらあるかもしれません。SoCがSnapdragon系の場合は同じQualcommのSnapdragon Soundは特に安定しそうですが、QualcommではないAndroid端末やDAPなどの場合は基本的にLDACモードに設定したほうが音質的にも良さそうです。4万円近くとTWS製品としては高価格帯の製品ですので、この辺の相性確認は可能であれば店頭などで事前に行っておくのも推奨です。
■ サウンドインプレッション
EDIFIER「STAX SPIRIT S10」のサウンドは、ヘッドホン製品の「S3」「S5」同様に非常に質が高く、高音質という印象だった「NeoBuds Pro 2」などと比較してもレベルの違いを感じさせます。サウンドバランス自体はEDIFIERらしい高域の刺激を抑えたU字に近い弱ドンシャリ傾向ですが、全体的に情報量が多く広く立体的な音場感のなかで厚みのある音を鮮やかに鳴らします。解像感や分離といった点でも非常に優れており、平面駆動らしい歪みを抑え高いクリアランスにより、1音1音のディテールを精緻に表現してくれる印象です。
一般的に平面駆動ドライバーは通常のダイナミックドライバーより駆動力を必要とするため、出力が安定せずバランスが悪いと淡泊な印象になったり籠もりなどを感じたりするなど、有線イヤホンでもアンプ等の上流を選ぶ傾向があります。
これに対し、「STAX SPIRIT S10」では、最大の特徴である12mm平面駆動ドライバーとアンプ部分も内蔵する新しいSoC「QCC5181」との調整が抜群で、過不足のない安定した駆動力を提供することで、広く立体的な空間表現の中で、濃密さを感じる音像と粒立ちの良さを両立しています。
ともすると最近増えている低価格帯の平面駆動ドライバー搭載の有線イヤホンより「STAX SPIRIT S10」のほうが「平面駆動らしさ」を確実に実感出来るのではと感じます。4万円近い価格設定は伊達じゃないですね。
「STAX SPIRIT S10」の高域は聴きやすく刺激を抑えた印象ながら、歪みを抑え伸びのある音を鳴らします。僅かに温かみを持ちつつも明瞭で、ハイハット等も綺麗に鳴ります。
中音域は凹むことなく鳴り、癖のない自然な音像表現ながら主張は強め。ボーカル域は多少前傾しますが、平面駆動らしい歪みのない音像表現により音場は全方向に広く、音源の特徴を非常に詳細に描写します。ボーカルは女性ボーカルは明るく伸びやかで男性ボーカルは厚みがあります。演奏との分離も良く、自然な印象を維持しながら個々の音を粒立ちよく再生します。
低域はニュートラルなバランスながら十分な量感と厚みがあり、重低音を中心に質の高い音を鳴らします。ミッドベースは直線的で締まりが良く中高域との分離も良好。重低音は深く沈み地響きのような重量感がありますが、解像感は十分に高く重すぎないバランスの良さがあります。
一般的なボーカル曲はもちろん、インストゥルメンタルとの相性も良く、クラシックなども美しく再生されます。また立体的な音場感によりライブ音源やオーケストラ演奏は驚くほどの臨場感が得られます。
■ まとめ
というわけで、EDIFIER「STAX SPIRIT S10」は、高音質の平面駆動ドライバーを搭載し、全体的な性能も音質面によりこだわった最適化により、「STAX SPIRIT」のヘッドホン製品同様に既存モデルとはレベルの違うサウンドを実感することが出来ました。
フラグシップらしくワイヤレスイヤホンとしての機能面もANC、ゲームモード、装着検出機能、マルチポイント接続などひととおり網羅していますが、音質的な点や、様々なシチュエーションでよりリスニングに没頭する、という意味ではこれらの機能をすべてOFFにして、「音質に全振り」という設定で利用するのが個人的にはお勧めです。それでも4万円近い価格設定に十分納得できる質の高いサウンドを楽しめると思います。あと非常に音場が広く立体的であるため、リスニングに限らず映像ソースを楽しむ上でも優れた臨場感を実感出来ます。有線と遜色無い、あるいはそれ以上の高音質なワイヤレスイヤホンを探している方に良い選択肢のひとつになるのではと思います。
コレイルにするとさらに全体的なスケール感と中高域の透明感が出るのでより平面駆動型らしさを全面に押し出すようなサウンドになるのでなかなかオススメです