こんにちは。今回は 「FiiO FD15」です。FiiOの新しいシングルダイナミック構成モデルですね。既存の「FD5」の後継モデルとのことですが個人的に気になったので購入してみました。
■ 製品概要と購入方法について
「FiiO FD15」は、「FD5」の後継となるシングルダイナミックドライバー構成のミドルグレード製品です。新開発の13.8mm マグナリウム(Mg-Al合金)振動板ダイナミックドライバーを搭載し、 1.5テスラの磁束密度を持つ強力磁石および特許技術による効果的な制御を可能にした最新モデルです。
「FiiO FD15」のドライバーは、大口径 13.8mm ダイナミックドライバーを搭載。既存の「FD5」より有効振動面積は約40%増加し、電気信号を空気振動へより効率的に変換できます。振動板にはマグナリウム(Mg-Al合金)を新たに採用し、軽量かつ高剛性で洗練された中音域の再現が可能。
またガスケットには「FD5」同様にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を使用し、より力強く、より原音に忠実なサウンドを提供。さらにボイスコイル径は、8.6mm径に拡大され、よりクリアで、自然で魅力的な中音域の質感表現を実現しています。
さらに「FiiO FD15」では低音域の音響を向上させる特許技術「F.T.B.S」を採用。深みのある低音を実現しながらも、繊細な表現を可能としています。「F.T.B.S」は緻密な計算によりデザインされたシェルの繊細な形状を高精度な加工技術によって再現することにより達成されています。
そして「FiiO FD15」には、交換可能な「レッド」リングと「ブラック」リングの2種類のノズルフィルターが付属し、異なる特性によるサウンドコントロールが可能です。「レッド」は低音域を強調し、ボーカルの質感を高めた特性で、「ブラック」は高音域を強調し、より繊細で明瞭度の高い特性を持っています。
その他、4.4mmプラグに交換可能なMMCX仕様のケーブルなど充実した付属品を備えています。
「FiiO FD15」のカラーバリエーションは「シルバー」と「ブラック」の2色が選択可能。
「FiiO FD15」の価格は149.99ドル、国内正規品は28,600円です。
HiFiGo(hifigo.com): FiiO FD15
Amazon.co.jp(国内正規品): FiiO FD15
免責事項:
本レビューは個人的に製品を購入し掲載している「購入者レビュー」となります。
本レビューに対してそれ以外の金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
というわけで「FiiO FD15」です。HiFiGoでお買い物する際にちょうど発売されたタイミングだったため「ついで買い」をしておりました。そのため国内版の発売時にはたぶん手許に届いていたと思います(例によって「積み」ですね・・・)。
そういえばFiiOというと、「FD5」や「FH5s Pro」も発売直後に購入していましたがレビューとしては「積み」のままでしたね。実はそれ以外にも何機種か実は買っていたり・・・
まあ同社は製品リリースのペースが結構はやいので、他の依頼が多いタイミングだと、購入してもレビューしないままというパターンのほうが多くなってしまいがちだったりします(汗)。
モデルとしては過去にレビューした「JD7」の上位モデルになるため、パッケージは少し豪華になっています。といっても150ドル程度の価格設定のため、過去の「FH3」くらいの感じで、発売当時300ドルオーバーだった「FD5」の豪華さにくらべるとかなり大人しい感じです。
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、交換用プラグ(4.4mm)、交換用ノズルフィルター、イヤーピースはシリコンタイプ4種類(それぞれS/M/Lサイズ)、ウレタンタイプ2ペア、クリーニングブラシ、MMCXリムーバー、ハードケース、説明書など。レゴブロック状の新しいプラスチックケースに付属品がびっしり詰まっています。
シェル形状についても「FD5」由来の円筒形デザインで材質はステンレス製。形状としてはやはり「JD7」という流れでのアップグレードという印象ですね。特徴的なのは「FiiO FD15」で新たに採用された「F.T.B.S」が仕込まれたフェイス部分で、隆起した部分側面に3カ所の小さなベント(空気孔)が確認出来ます。ステンレス製シェルのため軽くはないですが、円筒形のデザインは耳への収まりは良く「JD7」などで改善されたデザインを踏襲することで装着性はより向上しています。
フィルターノズルは「レッド」と「ブラック」の2種類。標準では「ブラック」が装着されていました。どちらも裏面にフィルター材などは無く、ノズル経の違いよる微調整のようですね。
ケーブルは480本の線材を使用した単結晶銅線と銀メッキ単結晶銅線のミックス線の4芯撚り線タイプでコネクタはMMCXです。しっかりと組まれた線材で被膜はやや硬めですが取り回しは良いようです。3.5mmと4.4mmのプラグ交換が可能です。
イヤーピースはシリコンタイプ4種類+ウレタンタイプ。新しいハードケース(「FiiO HB11」という型番らしい)は引き出し式になっており積み重ねて保管できるようになっています。個人的にはちょっと気に入ったので、ケースだけイヤホンの整理用にまとめ買いしてしまいました(^^;)。
■ サウンドインプレッション
「FiiO FD15」の音質傾向はフラット方向から僅かにカマボコ寄りのニュートラルサウンド。かつての「FD5」の低域モリモリのV字傾向や、下位モデルの「JD7」の多少ハーマンターゲット寄りの弱ドンシャリと比較しても、より中音域にフォーカスしたサウンドバランスに調整されています。
いっぽうで低域は量感こそ「FD5」のようなモリモリ感はないものの特許技術の「F.T.B.S」により、深く響きのある重低音とパンチ力がより強調されたミッドベースにより心地よい存在感を発揮しており、「FD5」の後継を名乗ることがある程度理解できる質感を実現しています。
高域は2種類のフィルターにより、高域の刺激を感じやすい音域を少し調整します。一般的には標準の「ブラック」のフィルターを使用し、高域の刺激や主張が気になる場合に「レッド」ノズルを使用する、という使い方が良いようです。これは再生環境などにも影響するため一概にはいえないですが、個人的には「ブラック」ノズルのままのほうがバランス的にも良いと感じました。
「FiiO FD15」の高域は、自然な伸びの良さがあり、見通しの良さも感じさせます。全体的に多少ミッドセントリックな印象があるため主張としてはそれほど強くはありませんが、後方に下がりすぎることも無く暗く鳴らない程度に明瞭感は維持しています。鮮明さと滑らかさのバランスが良く、聴きやすくまとめられている印象です。スッキリした解像度の高い高域を好まれる方には多少鋭さが不足しているように感じる可能性もありますが、細かいシンバル音も他の音域に埋もれること無く小気味良く鳴るため、多くの場合は心地よく楽しむことが出来るでしょう。
中音域は多少前傾しつつフラットに近いバランスで再生されます。しかし平坦な印象にはならず色彩豊かで明瞭感があるため、曲によっては若干カマボコ寄り、ミッドセントリックなバランスに感じる場合もあります。
また女性ボーカルの高音など中高域は多少強調されておりボーカル域はより鮮明に表現されます。しかし歯擦音などはコントロールされ聴きやすさも維持されます。
大口径のMg-Al合金の振動板は歪みを抑えつつスピード感のあるサウンドを実現しますが、適度な柔らかさと艶感があり、寒色傾向になりすぎない自然な音色が印象的です。演奏との分離も自然で、音場は開放的で自然な広さと奥行きがあります。音数が多い曲でも混雑することはありません。「FiiO FD15」はニュートラル傾向のためメリハリのある印象とは異なりますが、FiiOらしい聴きやすく自然なサウンドを実現しています。
低域は量感としてはニュートラルな傾向のためブーストされている印象はありませんが、「FiiO FD15」の特徴のひとつである特許技術の「F.T.B.S」により、存在感のある音を鳴らします。
重低音は深く沈み全体をしっかり下支えしますが、他の音域をマスクするなど前に出すぎることはありません。ミッドベースはパンチ力があり、小気味良く主張するため、全体として心地よいアクセントを提供します。タイトな締まりがあり解像感の高さとスピードの早さがあるため音数の多い曲でも籠もること無く適度にインパクトを与えつつ自然な印象で再生されます。印象として低域は原音忠実というよりはリスニング寄りのチューニングといえますが、癖のない音作りで、クラシックを含めたさまざまなジャンルの曲と相性が良く、低域は常に快適に下支えします。
■ まとめ
というわけで、「FiiO FD15」は150ドル程度、2万円台のミドルグレードモデルとして、FiiOらしい質の高いニュートラルなサウンドで仕上げられたイヤホンでした。かつて「FD5」がリリースされた当時はFiiOでは同価格帯のハイブリッドモデルやマルチBAモデルが主流でミドルグレード以上のシングルダイナミック構成の製品はあまりなかったこともあり、「FD5」では低域を特徴とした結構攻めたサウンドが特徴的でした。しかしラインナップが大幅に整理された現在では、かつて「FH5」などが担っていたFiiOらしいニュートラル傾向のほうが「FiiO FD15」の位置づけとしては適切なのだろうと解釈しました。そういった意味で「FiiO FD15」は優れた完成度を持っており目的を果たしていると感じます。
またかつての「FD5」との比較では、「FiiO FD15」はドル建てでは「FD5」の発売当時の価格の半額以下の製品であり、そのことを踏まえても「FiiO FD15」の完成度は非常に高く、大変お買い得な製品だと思います。いっぽうで前述のような経緯もあり、「FiiO FD15」がそのまま「FD5」の後継か、というと、一概には難しいかもしれません。
少なくともV字傾向の「FD5」に比べて中音域の原音忠実性は「FiiO FD15」のほうが高く、そのため音像表現や定位などについて好感される要素を持ちます。いっぽうで「FD5」が持つ重厚な低域は非常に魅力的で、同様に力強い高域のとバランスにより心地よいV字傾向のサウンドに仕上げられています。そのため「オーディオ的な好み」という点では、私自身も「FD5」の魅力を再認識させられました。
「FD5」は非常に評価の高い製品でしたが、比較的短いサイクルでさらに話題性の高い(ベリリウム振動板を採用した)「FD7」がリリースされたため、ちょっと通好みの製品になった感はあります。
今回「FiiO FD15」が出たことで、既に販売終了にはなっていますが改めて「FD5」を聴いてみるのも良いと思います。幸い中古価格は結構落ち着いていますので、今のうちが「狙い目」かもしれませんね。