こんにちは。今回は 「NICEHCK NX8」です。HCKの話題の新モデルですね。サンプルは結構以前から届いていたのですが遅ればせながらのレビューとなります(汗)。
例によって先月下旬から年末進行モードに突入してしまい更新をサボっておりましたが、さすがに年内に仕上げないとなレビューも相当たまってきました(^^;)。
■ 製品概要と購入方法について
中国のイヤホンセラー「HCK Earphones」は私のブログでもお馴染みの老舗中華イヤホンセラーで、多くのマニアに絶大な支持を受けていることでも知られています。そのオリジナルブランドの「NICEHCK」もまた多くのマニアに寄り添った「他とはちょっと違う製品」が特徴。そして同社のハイグレードモデル「NICEHCK HIMALAYA」リリース以降は高音質なイヤホンブランドとして評価および知名度も一気に向上。最近では日本での代理店もできて主要なモデルが店頭試聴や購入が可能なモデルも増えてきており今後の発展も大いに期待できます。
そのHCKの人気シリーズのひとつだった「NX7」シリーズを受け継ぐ亜婦グレードモデルが今回の「NICEHCK NX8」です。「NX7」のピエゾ(PZT)ユニットを含む7ドライバーハイブリッドから「1DD+6BA+1PZT」の8ドライバー構成に構成を変更し、優れたコストパフォーマンスを維持しつつも音質面でもより成熟したアップグレードをしています。
「NICEHCK NX8」では既存の「NX7」シリーズで採用されている2DDユニットからより高性能な10mm 二重磁気回路ダイナミックドライバーユニットに変更。BA部は「NX7」の4BAから「NICEHCK NX8」では6BA構成にアップグレードし、さらに超高域用のピエゾセラミック(PZT)を加えた8ドライバーハイブリッド構成を採用しています。
シェルは3Dプリントされたレジン製キャビティに美しい星空模様のフェイスプレートを採用。フェイス外周部はアルミニウム合金製フレームを採用し美しさと高い質感を実現しています。またステムノズルの音響フィルター交換可能の構造を採用。予備フィルターも1式付属しています。フィルターはほかの一部製品と互換性があり交換することも可能な仕様になっています。
ケーブルは0.78 2pin仕様で単結晶銅および銀メッキのミックスケーブルを標準装備。プラグは3.5mmと4.4mmを選択できます。またイヤーピースは既存の「NICEHCK 07」に加えて、新開発の「NICEHCK C04」が各サイズ付属します。
「NICEHCK NX8」の購入はNICEHCK直営店(nicehck.com)、AliExpressの「NiceHCK Audio Store」、アマゾンの「NICEHCK」にて。価格は199ドル、アマゾンで29,999円です。
AliExpress(NiceHCK Audio Store): NICEHCK NX8
Amazon.co.jp(NICEHCK): NICEHCK NX8 ※10% OFFクーポンが利用可能
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして HCK Earphones より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
パッケージはフェイスデザインをイメージした星空のデザイン。もう過去のショップブランド感は皆無で、しっかりした中華イヤホンのメジャーブランドとしての製品という印象がパッケージからも伺えますね。
パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、交換用予備ノズルフィルター、ケース入りのイヤーピース(「NICEHCK 07」および「NICEHCK C04」が各サイズ)、クリーニングブラシ、ケーブルタイ、レザーケース、説明書、保証書など。今回も非常に充実しています。
本体は3Dプリントによるレジン(樹脂)製で、フェイス部分はアルミニウム合金製のフレームで覆われ、星雲模様のフェイスプレートを装飾しています。交換可能なステムノズルも金属製です。
8ドライバー構成のマルチドライバーハイブリッドですが、フェイスサイズは比較的小さく、外観は過去の「NX7」シリーズよりコンパクトにまとめられています。ただしドライバーの収容スペースを確保するために厚みは増しており、ちょっと丸っこい感じのデザインになりましたね。それでも樹脂製で非常に軽量で耳の収まりも良く装着性もまずまず良好です。
ケーブルはミックス線タイプの2芯撚り線で、被膜は適度な弾力があり取り回しの良い印象のケーブルです。プラグは交換式では無く、購入時に3.5mmと4.4mmを選択します。
イヤーピースは従来の「AET07」互換の「NICEHCK 07」に加えて新たに高密着タイプの「NICEHCK C04」がXSサイズを含む4サイズ付属しています。
■ サウンドインプレッション
「NICEHCK NX8」の音質傾向はほぼニュートラルなサウンドをベースに中低域を多少ブースとした印象で全体としては弱ドンシャリからU字に近い印象でまとめられています。
「NX7」シリーズというと、とにかく派手でインパクト重視のサウンドが印象的だった強ドンシャリ傾向の初代からモデルを重ねるごとに成熟していった印象ですが、「NICEHCK NX8」ではインパクトのある低域によるドンシャリ系のレイヤー感のある奥行きや立体感を維持させつつ、中高域はフラット方向のニュートラルなバランスで、癖の無い非常に自然な仕上がりにまとめられています。
中低域や低域をブーストすることで、ともすると暖色系になりそうなバランスですが、高域用BAに加えて高高域用のピエゾ(PZT)ドライバーにより直線的な解像感と分離感を高めることで、派手さを抑えつつも明瞭で見通しの良いサウンドを実現しています。
付属のミックスケーブルは適度な情報量で自然な質感のサウンドを感じさせますが、8基のドライバーによるポテンシャルは今回も非常に高く、リケーブルなどによる変化もしっかり楽しめ、多くのケーブル製品をリリースしている「いかにもHCK」的にも感じます。「NICEHCK NX8」では他社のノズルフィルターを流用することも想定していますが、どちらかというと付属ケーブルのサウンドではニュートラル方向にまとめつつ、より情報量が多くキレの良さを感じやすいスッキリ系のケーブルや高域などに変化の大きいケーブルなどに替えることで自分好みの変化を楽しめるようなことを想定している印象ですね。
「NICEHCK NX8」の高域は、明瞭ながら自然な印象で聴きやすくまとめられています。刺激をおさえつつも暖色系にはならず、同時に解像感や分離は良く、直線的な見通しの良さがあります。「NX7」シリーズの特に初期のモデルのようなピエゾ感を強調した派手さは皆無で、あえてピエゾを感じさせない自然な音作りですが、明るすぎず暗すぎず、かつ明瞭さのあるニュートラルさを実現するために「縁の下の力持ち」のようにしっかりと仕事をしてくれている印象ですね。
中音域は凹むことなく鳴ります。ただ最近のハーマンターゲット系のバランスのようなU字傾向やW字傾向の用にボーカル域を前傾させた印象では無く、よりフラット方向でニュートラルな音作りを感じさせます。そのため音源の定位は正確さがあり、ボーカル域は自然な距離で鳴りますが、高域がピエゾによって存在感を感じさせつつ量感としては控えめなので、相対的に中音域の主張は強調され、不足を感じることはありません。
BAユニット部を「NX7」の4基から「NICEHCK NX8」では6基に増やしたことでつながりが良く、より歪みを抑えた自然な印象で再生され、女性ボーカルの高音も男性ボーカルの低音も明瞭かつ自然に感じさせます。ニュートラルバランスのため音場も左右、上下とも音源に忠実な自然な広さですが、キレが良く多少ブーストされた低域とのバランスでドンシャリ的なレイヤー感も多少は感じられ、全体的には広めの印象で立体的に楽しむことが出来ます。
低域はニュートラルバランスより多少ブーストされており、インパクトのある力強い音を鳴らしますが、非常にキレが良く、中高域と綺麗に分離することで全体としての自然さを損なわず、同時に明瞭で小気味良い印象でまとめられています。同時に重低音は深さをエネルギーがあり、低域の量感がある楽曲でも不足無く心地よい低音で全体を下支えします。これだけエネルギッシュな低音を鳴らしてもハイブリッド的な派手さをあまり感じさせず、同時に暖色系にならずあくまでニュートラルバランスで仕上げられている点は非常に興味深いですね。
■ まとめ
というわけで、「NICEHCK NX8」の印象としては突出したキャラクターを押さえた「とにかく自然なニュートラルサウンド」に仕上がっていますが、非常に高い経験値でマルチドライバーを組み合わせており、これまで同様のマルチドライバーを作り続け、成熟させてきたHCKならではの「玄人み」を感じさせるイヤホンでした。ニュートラル系のサウンドというと、さまざまな特許技術や構造的なこだわりなどAFUL、Moondrop系、TANCHJIMのようなテクノロジーオリエンテッドなブランドが思い浮かびますが、HCKは長年の経験でドライバーやイヤホンを熟知し、その高い経験値で結果としてこれらの技術系と匹敵するような質の高いサウンドを実現している点はとても流石だと感じさせます。また経験の積み上げだけにリケーブルなど想定していると思われる利用ケースの幅が広く、マニアにとっては「遊べる余地」が広いことも特徴と言えるでしょう。例によってプライスに対してのお得感も高く、より多くのマニアにお勧めしやすい製品だと思います。