CKLVX D62

こんにちは。今回は 「MYER-AUDIO CKLVX D62」です。10mmと8mmのサイズの異なる2基のダイナミックドライバーを含む6BA+2DD構成のハイブリッド使用のミドルグレードイヤホンです。ニュートラル系が多い同クラスでもかなりパワフルな印象を感じさせるサウンドで各音域の主張が楽しいリスニングイヤホンに仕上がっています。

■ 製品概要と購入方法について

MYER-AUDIO」は比較的新しい中華イヤホンブランドですが、業界で長年の経験をもったエンジニアによって製品作りを行っているそうです。現在同社では「SLIIVO」ラインと「CKLVX」ラインの製品があり、今回の「MYER-AUDIO CKLVX D62」は「D41」に次ぐ「CKLVX」ラインの2つめの製品となります。ドライバー構成は6BA+2DDで、これがモデル名のもとになっています。

MYER-AUDIO CKLVX D62」のシェルは高精度の3Dプリントによる成型で、各ドライバーは経験豊富な職人によってハンドメイドで組み立てられています。フェイスプレートは滑らかな木目を持った木材を使用しておりレジンアシスト表面加工により、魅惑的な光沢仕上げとなっています。
MYER-AUDIO CKLVX D62MYER-AUDIO CKLVX D62
MYER-AUDIO CKLVX D62」の低域用ドライバーには8mmと10mmの2種類のダイナミックドライバーを搭載。2種類のドライバーを組み合わせることで、超低域を強化し、より深い伸びとよりパワフルな低音を実現。中音域用に2基のカスタムBAユニット、高域用に2基のカスタム2BAツィーターユニット(4BA)を搭載し、高域4BA、中音域2BA、低域2DDの3Wayによる6BA+2DDのハイブリッド構成を採用しています。それぞれのドライバーは精密なクロスオーバー技術により最適化され、オーバーラップとクロストークを最小限に抑え全体的な音質を向上させています。また4つの独立した音導管設計により干渉を抑制しています。
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ケーブルは高純度銀メッキ銅線を採用し、L字型のプラグは3.5mmと4.4mmの交換が可能です。
イヤーピースは2種類のシリコンタイプと1ペアのウレタンフォーム製が付属します。
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MYER-AUDIO CKLVX D62」の購入はHiFiGoの直営店またはAliExpress、Amazonの店舗にて。
価格は236ドル、Amazonでは37,676円です。
HiFiGo(hifigo.com): MYER-AUDIO CKLVX D62 ※現在212.40ドルで購入可能


Amazon.co.jp(HiFiGo): MYER-AUDIO CKLVX D62 ※掲載時10% OFFクーポン配布中


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして HiFiGo より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

パッケージはシンプルな黒箱タイプのデザイン。この辺の派手さの無い感じは新しいメーカーぽくて味がありますね。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、交換用プラグ、イヤーピース(2種類のシリコンタイプ、それぞれS/M/Lサイズ、ウレタンフォーム製1ペア)、レザーケース、説明書。
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本体は3Dプリントによるレジン製でステムノズルが金属製。フェイスプレートはレジンコートされた木製パネルを採用しています。今回届いたのは赤色のパネルでしたがブラウンなどカラーは個体によって多少違いがあるようです。側面部にダクト上の形状のベント(空気孔)があります。
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6BA+2DDで10mmと8mmの2種類のダイナミックドライバーを搭載するハイブリッド構成のイヤホンと考えればシェルサイズは厚みはあるものの一般的な範疇と言えます。フロントキャビティ(装着部分)の形状も前回レビューした「ANVIL114」より一般的なため多くの場合耳に収まりやすく装着性はまずまずでしょう。
イヤーピースはソニーっぽい柔らかい黒色タイプと一般的な白箱タイプの2種類のシリコンタイプとウレタンタイプが付属。付属品のほか、よりフィットしやすいイヤーピースに交換するのも良いですね。
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ケーブルはシルバーカラーの4芯撚り線タイプである程度太さはありますが軽量で取り回しも良い印象。プラグはL型で交換可能なタイプが付属します。なお、4.4mmのコネクタに交換すると奥まで入りきらずちょっと浮いたような感じになりますが、問題なく使えたので気にしないことにします(^^;)。気になる方はリケーブルしてみるのも良いかと思います。


■ サウンドインプレッション

CKLVX D62MYER-AUDIO CKLVX D62」の音質傾向は伸びやかで主張のある高域とパワフルな低域が印象的な、わりとハッキリ目のドンシャリ。ただし全体のバランスとしては多少W字寄りながら緩やかなV字を描く印象にまとまっています。10mm+8mmの2基のダイナミックドライバーの相乗効果によりブーストされた低域と、4基のカスタムBAによるツィーターユニットが並列駆動する高域はかなりエネルギッシュな印象を与えます。
ただ実際の量的には高域および低域もニュートラルな弱ドンシャリ程度に調整されており、2基のカスタムBAを中心とした中音域もあまり凹まず、ボーカル域は前傾して存在感を感じさせます。ともすると昔の低価格中華ハイブリッドのようなメリハリ重視の寒色系ドンシャリサウンドになりそうな音作りですが、個々の音域の質感と適切なクロスオーバー処理による自然なつながりにより、あまり下品な印象になることなく、ミドルグレードとしての表現力の高さと元気で楽しいサウンドを両立させています。

CKLVX D62MYER-AUDIO CKLVX D62」の高域はエネルギッシュで明瞭感のある音を鳴らします。4基のカスタムBAによるツィーターユニットを並列駆動させることでBA特有の金属質な歪みを抑え、かつ硬質で煌びやかさのある音を明るく鳴らしてくれる印象。解像感も高く見通しの良さも感じられます。高域の構成的に似たアプローチのTRNの多ドラ系のマルチBAやハイブリッド機と比べるとシャリつくような感じは「MYER-AUDIO CKLVX D62」ではほぼ抑制されており多少空気感を持った自然な明るさといった印象の音色です。高域好きの方にも好感されそうです。いっぽうで鋭い音は鋭く鳴るため高域の刺激が不得手な方には合わないかもしれませんね。

中音域はボーカル域を中心に前傾しており、パワフルな高域や低域に対してもあまり凹むことなく鳴る印象です。バランスとしてはそれぞれの音域が主張する印象ですが、最近のハーマンターゲット的なサウンドでのW字寄りの傾向とは一線を画しており、どちらかというと昔のKZのZS系ハイブリッドあたりの各音域がそれぞれに自己主張しているような「ちょっと下品な(褒め言葉)」サウンドに近い印象かもしれません。
CKLVX D62ちなみに当時「ちょっと下品な(褒め言葉)」とレビューしていた製品では「B級グルメのような上質さとは別次元の分かりやすいおいしさ」みたいなイメージで低価格ならではの良さとして書いていました。
ただ、200ドルオーバーでミドルグレードの「MYER-AUDIO CKLVX D62」については、かつての低価格ハイブリッドとは異なり、個々の音域は入念に調整が行われており、質感は大きく向上していますし、ハイブリッドにありがちな音域の壁(ドライバー間のつながりが見える印象)は非常に少なく、入念なクロスオーバー処理による滑らかさも感じられます。このような音作りをしたうえで、ある意味「わかりやすい」チューニングを行っているのは非常に興味深いところです。
このようなチューニングのため、男性ボーカルは適度な温かみを持つもののパワフルさやキビキビした明瞭感を感じさせる印象で、女性ボーカルは伸びやかで鮮やかさがあり前面に定位します。しかし最近のW字傾向のようなボーカルを強調した印象は無く、適切に分離しつつ、演奏もしっかり前傾して存在感を持っている点は他のイヤホンとは異なる傾向かもしれません。そのため音場については窮屈では無いものの広さは平均的で、定位も正確ではありません。主張の強さによる粗さを感じる場合もあるため原音忠実性やニュートラル傾向を好まれる方には合わない可能性もあります。

CKLVX D62低域は多くのエネルギーを持っており、存在感のある音を鳴らします。10mmと8mmの2基のダイナミックドライバーはミッドベースと重低音にそれぞれアクセントを与えており、相乗効果として量感以上の強さを感じさせます。ミッドベースは強めのインパクトによりブーストされており、直線的な印象では無いものタイトに締まりがあることで過度な響きを抑え中高域とは明瞭に分離します。重低音も締まりがありインパクトの強さやキレを重視した印象です。ただ重量感はそれなりで量的にもニュートラルバランスなため、低域好きの方には多少物足りなく感じる可能性があります。全体としてはメリハリのある楽しい低域ですが、派手めのドンシャリ傾向の低域を期待するとすこし異なる印象を持つかも知れません。この辺はちょっと好みが分かれそうです。


■ まとめ

CKLVX D62というわけで、「MYER-AUDIO CKLVX D62」は6BA+2DDのハイブリッド構成によりミドルグレード級の音作りをベースにしつつ、サウンドチューニングはリスニング方向に全振りの「分かりやすく楽しいサウンド」に仕上げるという、ありそうであまり無いイヤホン製品でした。
なにしろ「分かりやすい」サウンドですので、正直なところ100ドル以下の低価格イヤホンであれば結構高評価で人気も出そう、という気がするのですが、250ドル近く、4万円近い価格設定のミドルグレード製品としては好みは分かれる製品だろうと思います。
間違いなく言えることは、この価格帯の製品を購入する場合の「最初のイヤホンではない」だろうと思います。既にミドルグレードの、特にニュートラル系の定番製品を複数所有していて、かつちょっとリスニング的に楽しいイヤホンも、という方がターゲットになる「結構なマニア向け」といった感じですね。
その点を踏まえれば個人的には結構興味深く、そして「案外使うシーンは多いかも」と感じさせる、ハマると楽しい沼系のサウンドという印象もあります。興味のあるマニアの方は揃えておくのも良いかもしれませんよ。