SeeAudio Yume IV

こんにちは。今回は 「SeeAudio Yume IV」です。「See Audio」の「Yume」シリーズの最新モデルですが、今回も全く異なる外観に加えてドライバー構成も「2BA」に変更。さらに、ボーカル特化フラグシップ機として物議を呼んだ「Strawberryπ」とアプローチを踏襲した傾向で、まさにアニソン向けイヤホンとして強烈な個性を放っています。

■ 製品概要と購入方法について

「See Audio」は2018年7月に深圳で設立され、2019年から中国国内でCIEM(カスタムIEM)をリリースして評価を高め、その後数々のユニバーサルモデルで本格的に市場参入を果たしました。最初のグローバルモデルとして2BA+1DD構成の「Yume」シリーズ、そして日本市場限定の3BAモデル「ANOU」をリリース後、4BA仕様の「Bravery」シリーズや6BA構成の「Neko」、小型平面ハイブリッドの「Rinko」など、数々の人気モデルをリリースし、急速に存在感を増しています。またCIEMメーカーらしいハイグレード製品やコラボモデルなど豊富なラインナップも魅力です。

今回の「SeeAudio Yume IV」は、名称通り「Yume」シリーズの第4弾となる最新モデルです。See Audioが従来の理念とは異なる新たなチューニングコンセプトで製品化したハイグレードモデル「Strawberryπ」の設計思想を踏襲して開発され、各ドライバーの役割分担と連携を最適化し、純粋で細やかな音質を実現しています。
SeeAudio Yume4SeeAudio Yume4

SeeAudio Yume IV」では従来の「Yume」シリーズの2BA+1DDハイブリッドではなく、デュアル構成のバランスドアーマチュア(2BA)ドライバー構成を採用。入念なチューニング調整、最適化されたキャビティ設計、精密な電子クロスオーバーにより、スムーズで詳細なサウンドプロファイルを実現しています。豊かなトーンと高レベルの明瞭性により、活き活きとしたサウンドを実感させます。高品質・高解像度のBAドライバーの採用によりクリーンかつ正確なパフォーマンスを提供します。

SeeAudio Yume4SeeAudio Yume4

また「SeeAudio Yume IV」のデザインは夜空と夢の世界にインスピレーションを得ています。SeeAudio製品のなかでも最も精巧な職人技によりハンドメイドで製造されます。シェルはオーロラをイメージしたピンクとシアンのカラーリングでグラデーション仕上げが施されています。またクリスタルクリア仕上げのために、高度な剛性注入技術を使用して作られています。その外観は光と影の変化により美しい魅力を放ちます。

SeeAudio Yume4SeeAudio Yume4

SeeAudio Yume IV」の価格は199ドル、日本国内では31,550円前後で販売されています。

AliExpress(Angeldac Audio): SeeAudio Yume IV


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Angeldac Audio より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

SeeAudio Yume IV」のパッケージは「Yume 2」のパッケージイメージを踏襲した透明なシートにより額装されたイメージの紺色のボックスです。箱の中ではキャラクターを浮き上がらせたスタンドパネルにより立体感のあるパッケージングになっています。
SeeAudio Yume4SeeAudio Yume4
パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(「AET07」タイプ、SS/S/M/L/LLサイズ)メタルケース、説明書、保証カード、キャラクタースタンド(2種類)。
SeeAudio Yume4SeeAudio Yume4
パッケージに利用されている浮き出た加工のパネルスタンドのほか、別の表情のタイプも付属しているなど相変わらずこだわりがありますね。

SeeAudio Yume IVSeeAudio Yume IV
本体は充填されたレジン製。CIEMメーカーらしい美しいハンドメイド仕上げで、3Dプリントのシェルが多くなった最近ではむしろ目新しく感じるかもしれませんね。比較的コンパクトなシェルサイズで耳の収まりも良い印象です。
SeeAudio Yume IVSeeAudio Yume IV
ケーブルは6N OFC銀メッキ線の2芯タイプ。弾力のある被膜で取り回しの良いケーブルです。またコネクタは一般的な0.78mm 2pinですのでリケーブルも容易ですね。


■ サウンドインプレッション

SeeAudio Yume IV」の音質傾向はマニアの間では結構物議を醸している、というか賛否もそれなりにあるようです。というのも製品説明でもあるようにハーマンターゲット的なアプローチをいったん否定して音作りを行っている点がポイントで、傾向としてはボーカル域偏重、またはミッドセントリックなサウンド、ということになります。
SeeAudio Yume IV海外サイトで測定されているf値を見ると、自身のコラボ製品でもまったく準拠していないことでお馴染み(?)のCrinacle氏のターゲット(「Crinacle Target」または「IEF Neutral Target」)にも結構近い感じのフラットなカーブで、聴覚イメージではそれなりのカマボコ、ということになりそうです。
ただ実際に聴いてみると確かに中高域偏重ではあるものの低域はそれなりにパワフルだし、ちょっと違った印象もあります。この辺が「See Audio」のいう「新たな音の表現」なのかも知れません。
※余談ですが、「Crinacle Target」や「IEF Neutral Target」に対して、Crinacle氏自身が監修したコラボ製品は「H-2019」等のハーマンターゲット準拠のチューニングが多いなぁ、という私見です。はい。

最近では市場があまりにハーマンターゲット偏重になっているため、逆にV字方向への回帰や、特定の音域に特徴を持たせたアプローチなど、この流れに対抗する製品も増えています。
SeeAudio Yume IV「See Audio」も初代の「Yume」でははっきりとハーマンターゲットに「寄せている」ことを記載していましたが、同時に日本のアニソンをこよなく愛していて最適化することにもこだわっていることもパッケージングも含めて明記しているブランドでもあります。
そのため「See Audio」がハーマンターゲットから脱却したフラグシップの「Strawberryπ」も、そのエッセンスを踏襲した今回の「SeeAudio Yume IV」も、ボーカル特化、というより、正確にはアニソン特化イヤホンであることは疑う余地もないでしょう。

また、そもそもとして「2BA」というドライバー構成には「1BA」とも「3BA」または「2BA+1DD」とも異なる意味があります。可聴域すべてを1基はカバーできないBAの特性上、ミッドセントリックなモニター化を目指す「1BA」、高・中・低の各音域ごとにドライバーを配置しクロスオーバー処理する3BAまたは2BA+1DDの3ドライバー構成。これに対し、2BA構成ではフルレンジで鳴らすメインBAに高域または低域を補完するサブBAで調整する、という性格上、傾向としてはフラットまたは高域or低域偏重のアプローチになります。
SeeAudio Yume IVSeeAudio Yume IV」についても上記のf値はある程度それを裏付けるものですが、実際の印象はより複雑で、「ボーカル特化」とするためややW字に近い演出を加えていると想定されます。
またインピーダンス29Ω、感度112dBという仕様は、2BA構成のイヤホンとしては実際は結構鳴らしにくい印象です。音量そのものは比較的容易に取れるものの、より実力を発揮するためには、ある程度駆動力およびS/N値の高い再生環境が理想でしょう。必要に応じて情報量の多いケーブルへのリケーブルも推奨されます。再生環境によってはリケーブルで驚くほど印象が変わる場合もありそうです。

SeeAudio Yume IV」の高域は中高域を中心に厚みを持たせた音で、いわゆるHi-Fi的な感覚だと結構特殊です。ハイハットなどのシンバル音は太めに鳴りますが透明感が高いわけではなく聴かせたい音域をブーストしている、という印象。アニソンなどで多い高域のレンジに及ぶ女性ボーカルの超ハイトーンなども映えるように調整されており、逆に言うとそれ以外の高域はあまり正確に表現されません。強調されているようで実際はかなり癖のある高域と言えるでしょう。

SeeAudio Yume IV中音域は主張が強い、というよりかなり「太さ」と「大きさ」のある演出が行われており、ボーカル域の音像は近く存在感があります。しかし、いわゆる元気で圧力があるという感じでは無く、BAらしい寒色系ではあるものの表現そのものは滑らかで柔らかさを感じる「綺麗」な印象にまとめられています。アニソンにおける女性ボーカルの美しさを損なわないように、という明確な意図が感じられますね。ボーカル特化、アニソン特化、というアプローチのため、一般的にアニソンとしてイメージされる、アニソンアーティストによる深夜アニメ楽曲や声優のキャラソン等との相性は非常に良く、ボーカルを美しく演出し、前後の音場感で演奏がレイヤー的に定位して下支えします。しかし、最近の国内チャート上位にあるJ-POPのアニメタイアップ曲では、打ち込み系の音数の多さなどで解像感や透明感が不足し見通しが物足りなく感じたり、音場の狭さが強調されてしまうというケースもあります。なかなか難儀ですね(^^;)。むしろ70年台、80年代などの古いアニソンのほうが非常にエモーショナルで相性が良かったりします。このイヤホンは良し悪しの物差しでは難しく、とにかく自分の好みに合うかどうかで判断すべきのようです。

低域はミッドベースを中心に比較的強めのアタックがありエネルギッシュな音を鳴らします。若干の響きがあり音場感を演出しますが締まりは良くBAらしい分離感もあります。また少数のドライバー構成のため、マルチBAにありがちな低域の籠もり感はありません。重低音の沈み込みはそれなりで、この辺は割り切った音作りといえるでしょう。


■ まとめ

SeeAudio Yume IVというわけで、「SeeAudio Yume IV」は、従来の「Yume」シリーズとは異なり、なかなかのレビュアー泣かせというか、非常に特徴的なサウンドのイヤホンに仕上がっていました。
楽曲によってはっきりと「合う」「合わない」がありますし、再生環境の違いによって印象も結構変わるため店頭やイベントでの試聴でもベストマッチを得られない可能性もそれなりにあるかもしれませんね。確実に言えることは、好みに合致する方でもオールラウンドな使い方ができるイヤホンではないため、同価格帯以上で別の傾向の製品をひとつまたは複数持っている上で検討した方が良さそうです。
個人的には趣味でサブスクで配信していないような古いアニソンをCD音源で集めており、そういった楽曲とも思いのほか「SeeAudio Yume IV」は相性が良く、より「濃い音」で楽しめるという印象があります。
なお、「Yume」シリーズで最もオールラウンドなリスニングサウンドなのは「Yume Ultra」で、ニュートラル方向なのはCrinacle氏コラボの「Yume Midnight」です。どちらもコラボ製品なのがちょっと「もにょ」りますが(^^;)、「SeeAudio Yume IV」も加えて3種類とも外観も傾向も全く異なるため揃えて聴き比べるのも楽しいと思いますよ。