KZ ZA12

こんにちは。今回は 「KZ ZA12」です。中華イヤホン界隈ではお馴染みKZから4BA+2DD構成のハイブリッドでアンダー60ドルの価格設定のモデルです。2DD部は2種類のサイズの異なるドライバーが補完し、全体としてKZらしい寒色系の明瞭感を持ちつつ、モニター的なニュートラルなチューニングで非常に聴き応えのあるイヤホンに仕上がっています。

■ 製品概要と購入方法について

私のブログでは毎度おなじみ低価格中華イヤホンブランド「KZ(KZ ACOUSTICS)」です。といっても最近のモデルはあまりレビューしてないですね(汗)。今回も「KZ ZS12 PRO X」同様にEasy Earphonesの限定取り扱いとのことで(依頼として)レビューすることになりました。
例によって同社製品もコンスタントに購入しているのですが、気が向けば、あと余裕があればその辺もぼちぼちレビューしようかなという気持ちはあったり。

さて、今回の「KZ ZA12」は4BA+2DDのハイブリッドモデルですが、シェル形状は従来型のZS系ではなく、最近のAS系や「Symphony」「Sonata」などのタイプを踏襲していますね。KZのハイブリッドで2DDというと往年の「ZS5」や「ZS6」(どちらも2BA+2DD)を彷彿とさせますね。
KZ ZA12KZ ZA12

KZ ZA12」は10mmと8mmの2種類のダイナミックドライバーと「30019」および「31736」の2種類のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーをそれぞれ2基ずつ搭載します。2基のダイナミックドライバーはサブベース、ミッドベースおよび中低域をより正確に表現し、BAは中高域から高域、そして超高域を繊細かつ詳細に再生します。

KZ ZA12KZ ZA12

また「KZ ZA12」では「Tuning Version」と「Standard Version」の2種類を用意し、「Tuning Version」では最近のKZではお馴染みの4系統のスイッチ回路を搭載。スイッチ1、2は低域、スイッチ3、4は中音域および高域の出力を強化します。
KZ ZA12KZ ZA12

KZ ZA12」の購入はアマゾンの「Yinyoo-JP」にて。
価格は「標準版」が8,199円、「チューニング版」が8,299円です。
Amazon.co.jp(Yinyoo-JP): KZ ZA12 ※掲載時22% OFFクーポン配布中


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Easy Earphones より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

というわけで、今回はスイッチ付きモデルで届きました。パッケージはいつものKZの白箱タイプです。

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パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースがS/M/Lサイズとウレタンタイプ、スイッチ切り替えピン、説明書。

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KZ ZA12」のシェル形状は最近のAS系や「Symphony」「Sonata」などのタイプを踏襲したデザイン。同様のシェル形状で内部フレームの違いでさまざまなドライバー構成を実現している点は低価格イヤホンブランドとしてのKZらしさを感じさせます。
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2基のダイナミックドライバーはステムノズルに対して縦に並んでますが、直列配置では無く少し位置をずらす調整が行われています。4基のBAは「30019」を1基ステムノズルに配置し、もう1基の「30019」と2基の「31736」はダイナミックドライバーの横に配置されています。ドライバー設置の考え方自体は4BA+1DD構成の「ZS10 Pro」と同様であることが分かりますね。

KZ ZA12KZ ZA12

ケーブル、イヤーピースは現在のKZの他モデルと同じ、銀メッキ線タイプとフジツボ型イヤーピースです。最近はKZタイプC(qdc)互換のケーブルも増えており、リケーブルもしやすくなっていますね。

KZ ZA12KZ ZA12

「Tuning Version」では側面に4系統のスイッチがあります。他社のミドルグレード等のスイッチ付モデルは各スイッチに個別に調整した設定を割り当てていることが多いですが、KZの場合はかなりシンプルで、「KZ ZA12」の場合も、スイッチ1および2が低域を+1dB(1&2だと+2dB)、スイッチ3および4が中音域および高域を+1dB(3&4だと+2dB)アップする仕様。ですので1~4すべてをONにすると全ての音域が2dBアップする、みたいな感じですね。今回届いた個体では「すべてON」の状態が初期値でした。

ちなみに、今回「KZ ZA12」とあわせて、販売する「Yinyoo-JP」で取り扱う新しいイヤホンケース「KBEAR BP01」とイヤーピース「KBEAR KT01」も同梱頂きました。
KBEAR BP01KBEAR KT01

「KBEAR BP01」はPUレザー製のケースで高級感があり適度な厚みがあるのでリケーブルしたイヤホンでもしっかり収納できます。「KBEAR KT01」は高密着シリコンによるイヤーピース。「Softears U.C.」より若干柔らかく、より耳にフィットしやすい印象。価格も手頃で良いですね(個人的には各サイズごとの販売も期待しています)。

Amazon.co.jp(Yinyoo-JP): KBEAR BP01 1,899円


Amazon.co.jp(Yinyoo-JP): KBEAR KT01 1,699円



■ サウンドインプレッション

KZ ZA12KZ ZA12」の音質傾向は中高域寄りでニュートラルバランスのサウンド。最近のKZもU字寄りの弱ドンシャリ傾向にまとめることが多いですが、「KZ ZA12」は「ZS10 Pro」系の寒色系の硬質な高域と比較的スッキリした中音域と下支えする低域が特徴的です。とはいえ「ZS10 Pro」の頃のKZというとメリハリ重視の派手なサウンド(≓粗さがあり質的が高いわけではない)というイメージがありましたが、現在の「KZ ZA12」でのチューニングはかなり綿密で、メーカーとしての進化を改めて実感します。明瞭で解像感を感じるサウンドながら音域のつながりは非常に滑らかで、4BA+2DDというハイブリッド構成を想像以上に上手くコントロールしている印象です。中音域~高域は適度に前傾しつつも全体的にはモニター的なチューニングと言えるでしょう。

ただ初期状態の「1111」(すべてON)の場合、聴きやすさを重視した今どきのサウンドと比較すると結構シャリ着く印象に感じる場合もあるため気になる方は「1100」(低域のみを強化)のチューニングにすると聴きやすい印象になるのではと思います。ちなみに、「KZ ZA12」はインピーダンス45Ω、感度103dBと、イヤホンとしては結構鳴らしにくい仕様です。またスイッチ設定によってはさらに変化があり、再生環境によっては結構印象が変わる可能性があります。

KZ ZA12KZ ZA12」(スイッチ付き)の高域は、往年のKZ製ハイブリッドを彷彿とさせる、硬質感のあるシャープな音を鳴らします。スイッチ「1111」では高域の主張が強く、明瞭で伸びのある音を鳴らしますが、結構シャリ付きのある印象となるため刺激が気になる方はスイッチ3および4をOFFにしたほうが良いかも知れませんね。金属感のある音ですが、昔のKZのようなギラつく感じの歪みは無く直線的な印象を持っています。
KZの場合リケーブルの影響が大きく、情報量の多いケーブルでは分かりやすく音量から変化しますが、ニュートラル方向の「KZ ZA12」の場合、ケーブルの傾向がより反映されやすい印象もありますね。そのため、高域の強さが気になる方は低域の厚みを増すタイプの銅線やレアアース系の合金線ケーブル等を組み合わせて見るのも良いでしょう。

中音域は凹む事無く再生され、寒色系でスッキリした見通しの良い音を鳴らします。若干鳴らしにくいため再生環境によってはボーカル域が多少大人しい印象に感じる場合がありますが、高域同様により駆動力のあるプレーヤー/アンプの組み合わせやリケーブルなどにより結構変化があります。
KZ ZA12また演奏との分離も明瞭でハッキリした印象があります。ボーカル域も若干前傾して定位しますが癖の無いニュートラルな印象で、結構モニター的なチューニングといえます。音場は自然な広さがあり左右及び前後とも窮屈さは無く、定位も想像以上に正確な印象。これまでのKZのドンシャリサウンドになれているとちょっと拍子抜けするかも知れないニュートラルさです。
もともと寒色傾向のためリケーブルおよびバランス接続による明瞭感や分離の向上でもキツく感じることは無く質感を底上げしてくれるため、それなりのグレードのケーブルとの組み合わせでも楽しめるポテンシャルも発揮できそうです。

低域はニュートラルなバランスで2DDの構成は音圧より質感を重視した設計になっています。締まりのあるタイトな印象で直線的なミッドベースと適度に沈むスピード感のある重低音が印象的です。複数のドライバーを組み合わせるメリットは音圧をブーストする目的のほかに、KZやTRNの低価格中華ハイブリッドのマルチBA構成のように低価格ユニットの質的な差異を複数のドライバーで補完するアプローチがありますが、「KZ ZA12」の2DDはまさに後者のアプローチと言えるでしょう。低域~中低域の範囲で2種類のドライバーでとにかく癖の無い音を鳴らすようチューニングされている印象です。さすがにスイッチ1および2をOFFにした状態では量的にも少ない気がするため、一部の再生環境やケーブルで低域が多くなる場合以外はONにしておいたほうが良いでしょう。


■ まとめ

KZ ZA12というわけで、「KZ ZA12」はKZのコストを抑えつつ質感を向上させる技術力の進化を感じさせる製品でした。サウンドバランスは想像以上にモニター的ですが、分析的なリスニングでも低価格イヤホンにありがちな粗さは非常に少なく、各ドライバーのアサインも非常に良く練られている印象です。
正直な印象として同じKZでも数年前の100ドル越えのハイブリッド製品やマルチBA製品と比較しても確実に質感は向上しており、60ドル以下の価格設定としてはかなり良い完成度だと思います。同時に分かりやすく寒色系の音作りは非常にKZらしく、100ドル以下のハーマンターゲット傾向の人気製品とも明確に異なる印象である点も好みに応じた選択肢が増えるという意味で良いと思います。
またレビュー掲載時点では22% OFFのクーポンが出ており、実質6千円台前半で購入できるのもかなり有り難いですね。興味がある方は早めに掴んでおくのも良いと思いますよ。