Moondrop(水月雨) Kadenz

こんにちは。今回は購入済み未レビューのイヤホンを紹介する「棚からレビュー」です。紹介するのは「Moondrop(水月雨) Kadenz」ですね。海外版のリリース直後に購入していたのですが、なにしろ昨年後半からレビューが滞っていたためずっと後回しになっていました。現在は国内版の入荷待ち、という感じのようですね。

■ 製品概要と購入方法について

Moondrop Kadenz」は「水月雨(Moondrop)」のブランドを決定づけた「KXXS」や後継の「KATO」などでお馴染み「Kシリーズ」の最新モデルでおそらく「最後のモデル」と言われている製品です。「KATO」以降、1年半の設計・検証・改良を経て新たに開発された新たなドライバーでは素材の選択にも先鋭的なアプローチを採用。緻密なチューニングを通じて、水月雨が長年にわたり培ったダイナミックドライバーの設計とイヤホンの調整技術を余すところなく提供することを目指しています。
→ 過去記事(一覧): Moondrop製品のレビュー

Moondrop Kadenz」には、10mm ULT Gen2 特許取得済みスーパーリニアダイナミックドライバーが搭載されています。このドライバーでは「TAC ダイヤモンドコーティングドーム複合振動板」を採用。さらにFEA 有限要素シミュレーションとトポロジー最適化手法により設計された新開発の不規則磁気回路を備えています。独自のドーム型ベントを備えており、高周波共振波を抑制し、出力信号の歪みを極限まで抑え、クリーンで拡張されたサウンドレスポンスを実現します。一体型の真鍮製内部キャビティと外部導波管設計により鮮明で明確なサウンドレスポンスを実現します。
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この強化されたサウンドを実現するために、3D プリントテスト、FEA シミュレーション テクノロジー、方向シミュレーションを使用して内部音響キャビティ構造のチューニングを実施。歪みの少ない特性を持つスムーズでバランスの取れたサウンド再生のために最適化された内部キャビティ構造に設計されています。
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また「Moondrop Kadenz」では、利用者ごとに異なる耳管の形状による変化に対応するため、異なる物理的仕様を持つ交換可能なノズルが 3セット付属しています。ユーザーは自分の耳管の形状にに一致するノズルを選択できるため、誰もが高品質のオーディオリスニング体験を楽しめます。
さらに「Moondrop Kadenz」のノズルには、特許取得済みの第3世代防塵フィルターが搭載されています。油性の耳垢の蓄積を大幅に軽減し、ドライバーと内部空洞構造をほこりの粒子から保護します。

Moondrop Kadenz」のシェルは、人間工学に基づいた形状にMIM粉末冶金プロセスを使用して鋳造されており、高い剛性を維持しながら、ユニークかつ不規則な形状を実現しています。表面処理は手作業で磨いた後、高性能サンドブラスト処理が施され、クリアなエッジと高級感のあるマット仕上げになっています。
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Moondrop Kadenz」のケーブルは、高純度の単結晶銅銀メッキケーブルを付属。0.78mm 2pinコネクタを採用し、プラグは4.4mmバランヅ接続に対応。さらに同じ素材の線材を使用した 3.5mm変換アダプターと、32bit USB-DACを内蔵するUSB Type-Cアダプターを付属します。32bit USB-DAC内蔵USB Type-Cアダプター「ECHO-B」は、最大32bit/384kHz PCMをハイレゾ信号をサポートします。
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Moondrop Kadenz」の価格は189.99ドル。国内版は29,610円(税込み)前後です。

Amazon.co.jp:Moondrop Kadenz ※公式ストア価格26,640円


HiFiGo: Moondrop Kadenz ※参考リンク(現在日本向けは発送不可)


免責事項:
本レビューは個人的に製品を購入し掲載している「購入者レビュー」となります。
本レビューに対してそれ以外の金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

というわけで「Moondrop Kadenz」ですが、私は海外版の発売後、まだ日本からオーダーできたときに購入しています。Xの過去ポストを見ると昨年の10月くらいには届いて以下の開封写真撮ってますね(汗)。
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パッケージ内容は、イヤホン本体、ケーブル、3.5mm変換アダプター、Type-C変換ケーブル、交換ノズル、イヤーピース(2種類、S/M/Lサイズ)、ポーチ、レザーケース、説明書、保証カードほか。
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Moondrop Kadenz」の幾何学模様にカッティングされた金属シェルはサンドブラスト処理が行われており、非常にクールなデザインに仕上がっています。本体デザインは「KXXS」以降の「Kシリーズ」のフォルムを踏襲しつつ立体感を感じやすいデザインに仕上げられています。
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本体の材質は「KATO」と同様に、ステンレススティールをMIM製法(金属粉末射出成形法)により鋳造されており、より高い強度と内側は不規則な表面処理を実現しています。
Moondrop Kadenz」もステムノズルは取り外し交換が可能ですが、「KATO」のように材質で変化を持たせるというものではなく、ユーザーの耳の形状に合わせて最も最適な装着位置を選べるように、A、B、C、の長さの異なるノズルを付属させています。このアプローチはこれまでありそうで無かったかもですね。
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なお、「Moondrop Kadenz」のシェル形状は「KATO」リリース時に海外で限定販売された「マット版」とほぼ同じものを踏襲しています。両者の外観の違いはサンドブラスト処理による色味の違いとプリントされたロゴ、そしてステムノズル部となっています。
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ケーブルはリッツ構造の単結晶銅銀メッキ線タイプでプラグは4.4mm。さらに4.4mmプラグに対応する3.5mm変換アダプターとUSB Type-Cアダプター「ECHO-B」が付属します。イヤーピースはMoondrop製の「Spring Tips(清泉)」シリコンイヤーチップとウレタンイヤーピースがそれぞれ付属します。
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Moondrop Kadenz」もステンレス製ですので「KATO」などの従来モデル同様それなりの重量感はありますが、付属ケーブル及び「Spring Tips(清泉)」イヤーピースの組み合わせにより装着感はまずまずです。それでも通常版の「KATO」より僅かにシェルサイズも大きくなっていますしエッジのあるデザインのため、長時間の利用であれば従来モデルの方が耳は痛くならないかも知れませんね。


■ サウンドインプレッション

Moondrop Kadenz」のサウンドは基本的には「KATO」のニュートラル方向の印象を踏襲しつつ、より進化した新しいドライバーの採用などを経てさらに1音1音の解像度が大きく向上しました。全体としては透明感のある「Kシリーズ」らしいサウンドながら、適度に豊かさや温かみが増し、バランスとしてはよりリスニング寄り、U字方向の印象が高まっているかもしれません。同時に低域もさらに締まりのある印象になりました。
Moondrop(水月雨) Kadenzこの辺は自社の「VDSF Target Response」やハーマンターゲット(H-2109)等にほぼ準拠したニュートラルサウンドの「Dark Saber」や、基本的には「Dark Saber」と同様の方向性を持った「DUSK」「Blessing3」兄弟とは一線を画しており、より幅広い層のリスニングニーズを想定した「Aria 2」「Starfield 2」などの方向性に近づけた、という印象に感じます。まあ元々の「Aria」「Starfield」が「KXXS」の廉価版的な製品だったことを考慮すると、「Kシリーズ」の最終モデルである「Moondrop Kadenz」が「Aria 2」「Starfield 2」のアップグレードパスであることは至極当然で、そのニーズに沿って「KATO」を改良した、ということかもですね。

そのため大半のユーザーは「Moondrop Kadenz」のアプローチを歓迎するのではと思います。ただ元々「KXXS」の原音忠実性を持ちつつ柔らかいサウンドを気に入っており、「KATO」をその進化形と捉えている方には「Moondrop Kadenz」はよりハッキリとした明瞭感を持っているものの最近の流行りの音に寄せて行っている、と感じるかもしれません。そういった意味では評価の分かれる可能性もありますが、個人的には「Moondrop Kadenz」と「KATO」の使い分けができて良いかなと思ったりしています。

Moondrop(水月雨) KadenzMoondrop Kadenz」の高域は明瞭ながら聴きやすく調整されています。バランスとしては「KATO」と近くニュートラル方向ながら適度な主張を持った印象で非常に滑らかに再生されます。適度な煌めきがあり、直線的な印象で伸びますが明るすぎず、鮮やかさを持ちつつ穏やかな印象でチューニングされています。「KATO」では真鍮製のノズルを使用することでやや温かみが増し聴きやすくなりますが、「Moondrop Kadenz」では全体的に刺激をコントロールして調整されています。

中音域は「Moondrop」らしい癖の無い印象の音を精緻に鳴らします。ただ「KXXS」や「KATO」などの柔らかいニュートラルな印象のサウンドと比較すると、よりボーカル域は「Aria 2」に近いバランスで前傾し、U字方向に明瞭感のあるサウンドに仕上げられています。ただ解像感や1音1音の粒立ちの良さは明らかに「Aria 2」より優れており、また「KATO」と比較してもドライバーの進化を実感出来ます。
Moondrop(水月雨) Kadenzボーカル域も女性ボーカルおよび男性ボーカルとも非常に滑らかさがあります。女性ボーカルの高音は綺麗に伸び、男性ボーカルの低音は豊かで厚みがあります。
音場は過度に強調は無く自然な広さと深さがあり定位も正確です。また演奏との分離は非常に良く、適度な温かみを持ちつつ、窮屈になったり籠もったりすること無くよりはっきりと表現されます。この分離の良さは「KATO」やMoondropの過去の高評価モデルである「Blessing 2: Dusk」と比較しても確実に進化している点で、特に分析的なリスニングで「Moondrop Kadenz」を好感するポイントとなりそうです。

低域は「KATO」と比較しU字方向にリスニング的な改良が加えられています。バランスとしては「KATO」などの傾向を踏襲しつつも、特に重低音の締まりが向上し、キレとスピード感が増しています。結果的に「KATO」のニュートラルだけどちょっと緩めの印象から、低域全体の伸びの良さが向上し、よりエネルギッシュな聞き心地のよい音になっています。低域の解像感も増しているためEDMなど音数が多くスピード感のある曲でも楽しく感じることができるでしょう。

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そして、「Moondrop Kadenz」では3.5mm変換アダプターとともに、USB-DACを内蔵したType-Cアダプター「ECHO-B」が付属します。最大32bit/384kHz PCMのハイレゾ再生に対応するアダプターですね。また「Moondrop」ではAndroidおよびiPhone用に「MOONDROP Link」アプリを提供しており(「App Store」または「Google Play」からインストール可能)、「ECHO-B」を認識させ、さまざまな調整を行うことができます。
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いろいろ変更してみることで確かに違いがあって、好みの音を見つけるのも楽しく感じたのですが、個人的には、もともと音の良いDAPやアンプとつなげて「素」の音で聴くほうが好きかなぁ、と。。。(^^;)。いやあ、身も蓋もないっすね。スマホ派、ストリーミング派の方は良い感じの設定を探してみてくださいね。


■ まとめ

Moondrop(水月雨) Kadenzというわけで、「Moondrop Kadenz」です。文章の雰囲気から察することができた方もいらっしゃるかもですが、私自身は元々「KXXS」が大好きだった派、のため、率直な感想としては「Moondrop Kadenz」もAria/Starfieldの方向に行っちゃったかー、ではありました。しかし製品自体は非常に良くできており、その辺の一種ノスタルジーな思いも払拭させる完成度のサウンドだと感じました。そのため「まあKシリーズでそれぞれ個性があって全部持ってると楽しいよね」というのが今の感想です(^^)。もっとも、現在「Aria 2」や「Starfield 2」を持っている方はほぼリプレースになってしまうアップグレード製品だと思いますので購入時にはご留意ください。
最近ではMoondrop製品は国内で販売中または予定のあるものは海外からはほぼ買えなくなりましたが今後もぼちぼちと新製品は追っていこうと思います。実はこっそり「Meteor」をTaobaoでポチっていたり(^^;)。